全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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原作のキャラクターがぼちぼち登場する頃合いです。
ここまで読んでくださってる方、本当に毎日感謝しています!
これからも夏休みが終わるまでは三日以内、夏休みが終わっても一週間投稿を心掛けていきますのでどうかよろしくおねがいします!


入学、仲間、そして再開
第七話 夜明け


 人生が変わるような、目まぐるしい夜が明けた。

 

 刹那が目を覚ました後は、病み上がりだというのに怒涛の質問攻めと五条の愚痴が延々と続いた。

 

 学校では友達を作らないように意図的に人と距離をおいていた刹那は困惑しっぱなしであった。

 

 中学校はやむなく中退。刹那は元々頭が良かったため、さして問題にもならず、不都合なことは五条が全て隠蔽した。

 

「…疲れました…」

 

「大変だったな、この数日間」

 

 高専の共有スペースのソファでぐったりする刹那を見て伏黒は薄く笑って答える。

 

 伏黒はあの後、一日死んだように眠った。連絡がなく心配した姉の津美紀に物凄く叱られ、あわや警察を呼ぼうかというタイミングでそのことを思い出した五条により説明されことなきを得た。が、しかしその言い訳が車の事故でちょっと怪我して入院してるなどと言ってしまったせいで、現在伏黒は病院にいるという設定で高専で寝泊まりしている。ちなみに五条は夜蛾によるチョークスリーパーを食らった後、罰として夏油の任務を肩代わりし、海外出張の真っ最中だ。

 

「えぇ、ほんとに大変でした。学校を辞めるから書類をたくさん書かされましたし、まだ身体があちこち痛いのに二時間くらい問答させられたし、術式のことは話させられますし」

 

 現につい先程まで刹那は学長と夏油と今後について話していた。

 

「…ははっ」

 

 一息に愚痴をこぼす刹那に対し伏黒が唐突に笑い出し、頬を少し膨らませて刹那は伏黒をジトリと睨む。

 

「…何がおかしいんですか恵君」

 

「いや、初めて会った時は、愚痴なんて言わない人形みたいな印象だったのに別人みたいでな。つい」

 

「…五条先生が愚痴をずっと溢すから移っちゃっただけですよ」

 

 刹那は頬をほんのり紅く染めながら伏黒から目を逸らす。伏黒はその様子をみて苦笑する。

 

「おっ、恵じゃないか」

 

「よっ!」

 

「…こんにちは。パンダさん。あと、禪院さん」

 

「苗字で呼ぶんじゃねぇよ」

 

 眼鏡をかけたポニーテルの女性、禪院真希とパンダが伏黒に声をかける。刹那の瞳が告げる情報は二人共異質。極端に少ない呪力の女性と、呪の込められた人形。

 

「白黒の熊…?」

 

「刹那は初対面だよな」

 

「なんだ恵ー、高専に雌連れ込んでー」

 

 伏黒が刹那と親しげにしているのを見て腰をくねらせるパンダ。

 

「おっ、恵ぃ、色を知る歳か?生意気だな」

 

「おっさん臭い表現しないでくださいよ真希さん。パンダさんも雌はやめてくやってください」

 

 同じ様に独特な表現で伏黒をイジる真希。それに対して口を尖らせる伏黒が、刹那のこと説明しようとしたところで真希が口を挟む。

 

「言わなくて良い。分かってる分かってる、アレだろ? 悟が言ってた再来年、お前と同じ私等の後輩予定、刹那だっけ?」

 

「初めまして。阿頼耶識刹那です」

 

 気怠げな体を起こし、姿勢を正して真希とパンダに挨拶をする。

 

「おう、私は真希、実家は嫌いだから名前で呼んでくれ」

 

「二人共、今日は何しに高専に来たんですか」

 

「私は正式に家出て、再来月…一月からこっちにくることになったからな。それの書類の手続き。コイツはオマケだ」

 

 

「俺はパンダ、よろしくな。んで、話は変わるが、刹那」

 

 二人も同じ様に自己紹介をする。

 

 軽く挨拶を済ませるとパンダが刹那に神妙な顔つきで近づく。

 

「はい?」

 

「俺って呪骸なのよ、夜蛾学長いるだろ?あれ俺のパパ」

 

「あ…呪力の波長似てますもんね」

 

「そこまで分かんのか。まぁいいでさ、もしかして刹那、さっきの反応を見るにパンダのことご存知でない?」

 

「? パンダさんのことは今知りましたけど…」

 

「いや、そうじゃなくて、パンダよパンダ! 上野のマスコット! 動物の王様!」

 

「動物の王ではねぇだろ」

 

 真希の鋭い突っ込みが入り、パンダの身体を背中から叩く。

 

「えっと、恵君…」

 

 グイグイ近づくパンダ、刹那は伏黒に助けを求める。

 

「あ~パンダさん、刹那は家がちょっとアレで…少し世情に疎いっていうか」

 

 伏黒もまさか動物のパンダを知らないとは思わず説明に詰まってしまう。

 

「刹那、お前マジでパンダ知らないのか?」

 

「すいません…」

 

「いや、別に謝ることじゃねぇよ、ただ中学生でパンダを知らないやつっているんだなって。お前どんな家庭環境で育ったんだ?」

 

「それは…できれば聞かないでほしいです」

 

「おっと、すまん」

 

 二人の会話でパンダの勢いが落ち、別の質問を始める。

 

「じゃあどの動物なら知ってるんだ?」

 

「えっと、熊と犬と猫…猫…? あっ! カラス!」

 

「こりゃほんとに動物…つーか、色々と何も知らねんだな」

 

「パンダ超ショック」

 

「犬と猫は分かるけど、何で熊は知ってるんだ?」

 

 誰にも反応してもらえないパンダをよそに、伏黒は素朴な疑問をいだいて問いかける。

 

「昔襲われて、先生に聞きました」

 

「え"、なんて聞いたんだよ?」

 

「たしか…山登り中に出会って逃げたって言った気が…」

 

 真顔でなんの疑いもなく言い放つ刹那に笑いが堪えられない真希が吹き出す。

 

「ハッハッハ! 先生も大変だっただろうな!」

 

 意図しないところで真希が笑いだしたため、混乱する刹那。中学生そこらの女子に説明された、一般人の非現実。そこに二人の声が響く。

 

「あ、せっちゃん!」

 

「薬の時間だよー!」

 

「あ、美々子さん、奈々子さん」

 

 二人は昔、呪術師であることから村ぐるみで監禁されていたが、学生の身の上で小旅行をしていた夏油と五条と硝子に偶然助けられ以来高専で保護されている。現在は硝子の手伝いをしながら五条や夏油に呪術師の授業を真希たちと受けている。

 

「もうそんな時間ですか」

 

「お前どっか悪いのか?」

 

 真希が質問し、伏黒も刹那を心配そうに見る。

 

「ただの貧血と栄養失調ですよ、心配し過ぎです」

 

 刹那の家は貧乏…というより、あらゆる決定権が与えられてなかったため、生存に必要最低限の物しか与えられておらず、それは食事も同様のことだった。

 

 普段長袖や肌の露出が少ない服を選ぶが、虐待や栄養失調によって見るに耐えないほど傷だらけになり細くなってしまった身体を隠すためだった。

 

「お前ほっそいもんなぁ」

 

「もっと食え、悟が帰ってきたらカツアゲしようぜ」

 

 パンダと真希が気を遣ったのか陽気なことを話す。

 

「あはは、カツアゲはちょっと…」

 

 苦笑する刹那だが、不思議と全然罪悪感は感じない。

 

「じゃあそろそろ行きますね」

 

「じゃあ、また後でねー」

 

 刹那が行くと同時に奈々子が真希たちに手を振る。

 

 二人の背中が角を曲がり見えなくなると真希が口を開く。

 

「恵、あれの原因って虐待か?」

 

「…まぁ、そうですね」

 

「あれ、救けたのお前なんだろ?」

 

「…なんでそんなこと聞くんです?」

 

「質問を質問で返すなっつの。まぁ、なんだ」

 

 パンダと真希が二人で伏黒の頭をくしゃくしゃと掻き回す。

 

「ちょっ、なんですかいきなり」

 

「「よくやった」」

 

「俺はパンダだけど人助けってのは誰にでもできるもんじゃないってくらい知ってるさ。ましてや、虐待とかの家庭環境なんてな。殆どのやつは見て見ぬふりだ」

 

「それに…女だったら男がトラウマになってもおかしくはないのに、お前と一緒にいて笑ってる。だからそんな不安そうな顔すんな、恵」

 

 先輩二人の言葉が胸を通り抜けていくように体に染み込む。

 

「うっし、しんみりした雰囲気は終いだ。付き合え恵、ボコってやる」

 

「え、今からですか?!」

 

「たりめーだろが、おらとっとと着替えろ!どうせ悟がその辺準備してんだろ!」

 

 伏黒の背中を真希がバンと音を出して押し、更衣室に促す。

 

「先行ってるぞー」

 

 パンダの声と共に運動場へとかけていく。

 

「…よくやった、か…」

 

 自分の手のひらを見つめ、固く拳を握りしめる。

 

 俺はヒーローじゃない、呪術師だ。でも、願わくば

 

 少しでも多くの善人が救われるように、報われるように

 

 …もっと、強くなろう。

 

 伏黒は自身の胸にそう固く誓った。

 

 




至らぬ点があると思いますが、皆様に少しでも面白いと思っていただけるような作品を書きたいと思っています。
オリキャラはそんなに出ませんが要望があればプロフィールみたいなものを書こうと思ってます。
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