全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

70 / 90
オカマキャラって強いしカッコいいからむっずい。


第六十八話 確定演出

「さぁ!!宴を始めよう!!」

 

パリリッ!!

 

ズォォォンッッ!!

 

「いいぜ!乗った!!」

 

「来いよノッポ!!丸焼きにしてやる!!」

 

那岐が言葉を発すると同時、三人は行動に移る。

 

鹿紫雲と秤はわざとらしく注意を引き、梦覚はパンダを回収に向かう。

 

「領域展開!!」

 

(登場即座の領域展開!やつの術式はバフ系統か!!)

 

ズララララッッッ!!

 

私鉄純愛列車。そのステージへと一瞬で塗り替えられ、一切の得がない情報が那岐へと送り込まれる。

 

「大当たり確率239分の1、それまで俺が時間を稼いでやる。感謝しろよ」

 

「大当たりの情報は秘匿!!加えてそうそう当たるものではないようだな!!」

 

((当たるまでは一対一!!その間にあわよくば殺し切る!!))

 

パリリリッ!!ゴォォッ!!

 

鹿紫雲は領域内に入れられた那岐の正面に立ち、互いに呪力を練りだす。

 

ティウンティウンティウン!!!

 

「大当たりィィ!!!!」

 

「「なっー!?」」

 

瞬間、二人の背後で鳴り響く突発大当たりの音。

 

二人の一致した思惑は瞬時に塗り替えられ領域は解除、そして溢れ出す呪力!!

 

秤金次、まさに豪運!!!

 

「悪いな、豪運なもんで。こういう状況は確定演出なんだわ」

 

「呪力制限の解除に加えて本人の豪運!フッハハハハハハ!!!良い術師だ!!!」

 

(座標がズレてやつが式神から降りている!)

 

パリリッ!ガギンッ!!ズドォンッ!!

 

鹿紫雲の呪力を纏った一撃を、那岐は自前のサーベルで防ぎ、鈍い音が鳴り響く。そのチャンスを逃さなぬよう秤が攻撃を仕掛けに行くが巨大な式神の腕がそれを遮る。

 

「ワタツミ!吐き出せ!!」

 

((!!))

 

「跳べ秤!!」

 

ゴボボボッッ!!バシャァッ!!

 

海坊主のような体躯の式神が海を吸い上げ、埠頭一体を水に浸し、秤と鹿紫雲はコンテナの上に飛び乗って回避する。

 

シュウゥンッ

 

「おい!式神が消えたぞ!!」

 

「二体一も悪くはないが!私の術式はこうでなくてはな!」

 

極の番イザナギ。二つの岩を設置、そこから術者の望む八百万の神を模した式神を、一定時間自在に一体だけ呼び出すことができる。

 

「黄泉の国からおいでませ!!火之迦具土神(ひのかぐつち)!」

 

古風な装いに炎を纏う刀を装備する人形の式神。甘く見積もろうとも、特級の呪力出力を誇っている。

 

ゴォォォッッ!!ジュワァッ!!

 

ポタッポタッ

 

汗が吹きでる程の熱が一瞬にして場を制す。

 

「海水が沸騰してやがる」

 

「鹿紫雲、サウナは好きか?」

 

「知るか」

 

鹿紫雲の呟きにニヤニヤと笑いながら秤は問いかける。

 

「お前は本体を叩け。式神があんだけの呪力濃度なんだ、縛りで本体の呪力は大したことはねぇハズ」

 

「じゃあお前が本体を殺れ」

 

「あぁ!?親切が分かんねぇのかこのやろう!」

 

「乳繰り合うでない!!どっちでもいいわ!!」

 

「「じゃあ俺だ!!」」

 

お互いの静止を聞かず火之迦具土神の式神を無視して那岐へと向かっていく。

 

ガッ!バキィ!!ドッ!

 

「ぬぁっ!!火之迦具土神!」

 

ドッ!!ジュワァァァ!!!

 

片方の攻撃を防御しても、もう片方の攻撃が横腹を抉る。単純な呪力量が化け物の秤の攻撃も、常に帯電する鹿紫雲の攻撃も、どちらを受けようと那岐には致命的な一撃。

 

「結局俺がこっちかよ!!クッソ熱いな!!!」

 

火之迦具土神は常に発火する呪具と呪力を保有する式神。熱による攻撃である以上、一撃で秤を仕留めることは出来ず持久戦を強いられる。

 

バゴォォンッ!!!!

 

「おら!!!沈んでろ木偶の坊!!」

 

ガガガッ!!バリリッ!!

 

ビリッ、、、

 

(帯電する呪力!!まともに受ければ身体が保たんな!)

 

ズドドドドッッッ!!!!

 

「おらどうした!!もっと食らいつけよ!」

 

「ッ!!」

 

ガシッ!!

 

「おっ?」

 

「フンッ!!!」

 

ブォンッ!!

 

那岐は呪力を流し込み、サーベルを間に挟んで帯電を防ぎながら、拳を振るう鹿紫雲の腕を掴んで投げ飛ばす。

 

(おっと、やべぇな油断した。だが!この程度なら着地、、、)

 

バッ!!

 

那岐は沸騰する海面に飛び込み、秤が今まさに勝利を収めようとする火之迦具土神の式神を解除、別の式神を召喚する。

 

加弥比加尼(かみひかね)

 

パキンッ!!

 

「海が凍った!?」

 

「お前の呪力は海水が苦手なのだろう。ならばこちらの方が私に俄然有利!!」

 

ダンッ!!ペキキッ

 

「スケートリンクか、綺羅羅とのデート以来だな」

 

「あんま強く踏むな。海面しか凍ってねぇ、割れたら落ちるぞ」

 

ガジャンッ!!

 

「「「?」」」

 

突然三人の間に鹿紫雲の如意が落ちてくる。

 

同時に、梦覚が三人の横から現れる。

 

「随分厄介な術式ねぇ。パンダちゃんはちょっと遠くにおいておいたわよ。鹿紫雲ちゃん、それ使いなさいな」

 

「呼び方を変えろ気色わりぃ」

 

「あら、名前呼びの方がお好きかしら?」

 

「ハジメちゃんってか」

 

「お前ら後で潰す」

 

三人のやり取りをみた那岐はサーベルに込める呪力を若干緩め、三人に問いかける。

 

「、、、お前達、阿弥部高聡という男を知っているか?」

 

「「!!」」

 

「?誰だソイツ」

 

「彼奴は私の数少ない友でな。共に呪術師のみの世界を作ろうと奮闘したのだ。そこの二人は知ってるのではないか?」

 

「貴方、、、東京にいたかしら?」

 

「私の担当は京都だ。東京では彩華(さいか)とミゲルが五条悟の足止めをしとったわ」

 

「ん?てことは夏油ちゃんの相手してたのね」

 

四人の上がりきったボルテージが徐々に下降を始め、秤の術式による音楽も凪ぎ始める。

 

(まずいな、ラウンドが終わる。時間稼ぎが狙いか?)

 

「おい、俺が知らねぇ話ばっかすんな。結局お前は何が言いたい?」

 

鹿紫雲の問いかけに那岐は一つ間を置いて静かに話し出す。

 

「私は世界などどうでもいい。数少ない友が利用されるのを黙ってみてはおれんだけだ。利害は一致している。どうだ、私と協力してみないか?」

 

しおらしくなった那岐の問いかけ。しかし、鹿紫雲の求めるものに、彼は不純物でしかない

 

「断る。協力じゃなくて俺を屈服させるってんなら考えてもいい」

 

天目一箇神(あめのまひとつのかみ)

 

ガコンッ

 

「「「?」」」

 

「別に構わん。今の話は忘れろ」

 

「ってめっー!!」

 

ドポォンッ

 

突如三人の立つ氷面が丸く斬られて落水する。

 

全員が同時に落とされる事態を避ける為に離れた位位置取っていたにも関わらず、同時に足元の氷が丸く切り取られた。

 

(同時に三人を落とした!)

 

(地上!地上に出なきゃ不味い!!)

 

秤は終わりかけのラウンドで呪力を膨大に練り、頭上の氷を叩き割る。

 

ズォッ!!!バギンッ!!!

 

そして間違いに気付く。三人は距離を取っていた、鹿紫雲の呪力は電気と同様の性質であり、海中では呪力がまともに練れない。

 

ビバッバ(しまった)!!」

 

秤が鹿紫雲のピンチに気付くと同時、梦覚は赤い林檎を出して鹿紫雲にハンドサインを出す。

 

「「バビモバャンッ(鹿紫雲ちゃんっ)!!」」

 

「!!」

 

無論、鹿紫雲はハンドサインなど知るはずがない。しかし、優れた術師であるほど婉曲な合図を露骨に理解する。

 

「!!!」

 

その合図にラウンドが丁度終わった秤は梦覚を引き入れて領域を展開する。

 

鹿紫雲は呪力を最大放出、瞬時に電気分解が発生して大爆発が巻き起こる。

 

ドパァァンッッッ!!!!

 

ザバァァアンッッッ

 

氷のせいで海水に満たされていた埠頭内は爆発によって元の姿を取り戻す。式神と共に上空に飛んで逃げていた那岐はその場に降り立ち、驚嘆する。

 

「なんと、、、!まさか無傷とは、流石に驚くぞ」

 

領域内から再び膨大な呪力を纏う秤と赤い林檎を手に持つ梦覚が現れる。

 

そして爆ぜた海水の中から呪力強化の御蔭で無事だった鹿紫雲は問いかける。

 

「おい、どうするつもりだ。俺の呪力はもう空だぞ」

 

「アタシの術式はそんなに燃費がいいものじゃないのよ。もう一つ、貸しね」

 

パァンッ 

 

赤い林檎が弾けると同時に鹿紫雲が微妙な空中に投げ出される。

 

ストッ

 

「おい!テメ、、、」 

 

バリリッ!

 

苛立つ鹿紫雲は呪力を漏らし、その違和感に気付く。

 

「どうした?」

 

「呪力が戻ってる、、、?」

 

梦覚真慈の術式、因果律への秒侵入(ラプラスクロックエントリー)

 

三種の林檎を生成、それぞれが役割を持っている。

 

赤い林檎は他人を、青い林檎は自分の動きを術者の呪力を消費して記録し続け、壊すと同時に任意の時間分巻き戻す。

 

「アンタ何者だよ」

 

「、、、ただの一級術師よ、"元"ね」

 

ヒュォッ、ドォンッ!!

 

「っぶねぇ!!」

 

「まだ私との決着はついていないぞ!」

 

カチンッ、バヂヂヂッ!!

 

(っ!式神の狙いは俺か!)

 

式神の標的は鹿紫雲に絞られ、那岐は梦覚と秤を牽制する。

 

「天目一箇神は刀の神だ!!如意如きでは歯止めにもなりはせんぞ!!」

 

ガガガガッ!!!バヂィンッ!!

 

「神だなんだとほざけ!!そんな下らねえもの信じてんなら呪術師なんて辞めちまえ!」

 

ゴォンッ!!ドォンッ!!

 

(相も変わらず莫大な呪力出力!!だが!あとたったの三分間!逃げ切れば確率変動は終わり大当たりを簡単には引けない!)

 

「そんな流暢にしている暇は無いがな!」

 

ザグッッ!

 

「ゴポッ」

 

ガヂンッ!!

 

「!!?」

 

那岐のサーベルが秤の腹に滑り込んだ瞬間、秤は身体を前に曲げて自身の肋と腰の骨でサーベルを挟み動きを制御する。

 

ドッ!バゴッ!!

 

その機を逃さずに梦覚の拳は那岐の横頬を貫き、鹿紫雲の方へと吹き飛ばされる。

 

「オラァッ!!!」

 

パチチッッゴォンッ!!

 

鹿紫雲の呪力を纏った一撃で麻痺しながら式神も同じ箇所へ集められる。

 

「チャンスだ!叩き込め!!」

 

「指図するんじゃねぇ!!」

 

「イクわよぉ!!!」

 

ドドドガガガガッッッ!!!

 

(私は終わるのか?こんなところで、、、?)

 

那岐の心にあるのは、呪術師らしかぬ夢物語。死んだ友が救われることに賭けていた。

 

ーーー

 

「うわっ、使いづらそうな術式持ってるね。君」

 

「、、、分かるのか?」 

 

「そういう呪霊とくっついてるからね。条件はあるけど」

 

誰もいない静かな山の奥、阿弥部はその場におおよそ似つかわしくない和装で那岐へと話しかける。

 

「何の用だ。私は今忙しい」

 

「スカウトに来たんだ」

 

「断る」

 

「話くらい聞いてから断れよ。どう見ても暇だろ?」

 

岩の上に座る那岐に阿弥部は笑いながら話しかける。

 

「聞く気もないということだ。私はほとほと人間には愛想を尽かしている。弱者を救うことなき悪心の塊なれば、その悪が世界に闊歩する世の中が平和と来た。実に下らん」

 

「なら、、、私と一緒に世界を壊してみないか?」

 

「、、、?荒唐無稽な夢を語るなら寝間着姿のほうがいいぞ」

 

「そんな気はない、私は本気だ。君の言う通り、この世は非術師という癌に毒されている。我々術師は、一人で何百人という非術師の働きや美しさを持つというのに、利用され、挙げ句にゴミのように捨てられる」

 

ギリイッ

 

阿弥部は拳を握りしめて真っ直ぐに那岐を見つめる。

 

「この世は病気だ。救いようのない、非術師という病原菌の集団によって引き起こされる病気。君の笑える世界を、術師という真の人間の可能性を、もう一度だけ信じてみないか?」

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

 

那岐の心に一瞬だけ浮かんだの可能性の三文字、彼は、大して信用しない自分の直感を、もう一度だけ信じてみることにした。

 

トンッ、カサッ

 

「良いだろう、もう一度だけ私は可能性に賭けてみることにする。決行はいつだ」

 

「!嬉しいな。でも残念なことに、まだ君が私の仲間の二人目なんだ。何も決まっていない」

 

「、、、とんでもない愚か者だな」

 

「急に酷いな。夢というのは語り続けることが大事なんだよ」

 

ーーー

 

那岐は、自分の信じた男と飛びかける意識の中で再会した。だが、それが気付けになったか、最後の呪力を振り絞る。

 

飛びかけの意識の糸を繋ぎ、地面を強く踏み抜く。

 

「ッッッ!!!」

 

ダゴォンッ!!!

 

「「「!!」」」

 

「ごぐの番ッ"ッ"!!!」

 

イザナギ。彼の術式は、極の番を使うことを前提とした術式。それにより、消費する呪力は莫大で一日一度放つのが限界のはずだった。

 

しかし死を垣間見た彼は瞬間的に自身の呪力の前借りという縛りを用いて二度目を放つことに成功した。土壇場で見せた、呪術師の急成長である。

 

(後のことなど考えない!!!今ここで!捻り出せ!!!)

 

数の利が、均された。

 

武甕槌大神(たけみかづち)、天目一箇神

 

ビジャァァンッ!!!

 

「本体の呪力は殆ど空だ!叩くなら今しかない!」

 

ビュンッ!カツンッ

 

鹿紫雲の投げた如意が那岐の近くに刺さり、鹿紫雲は呪力を放出する。

 

「喰らえ!!」

 

バリバリバリリッッッ!!!!

 

那岐へと進む稲妻は武甕槌大神の方へと曲がり、空中へ空撃ちされる形となった。

 

素手になった鹿紫雲を逃さないように天目一箇神が襲いかかるが、式神を秤は全力の呪力強化の拳でくり抜く。

 

「させねぇ!」

 

メキィッ!ゴォンッ!!!

 

「刀の方は死にかけよ!!秤ちゃん追撃!」

 

「ああ!!ビリビリは任せた!」

 

ラウンド終了まで、残り一分弱。

 

ビシァンッ!!ゴォンッ!バゴゴゴッ!!バリリッ!!

 

重たい呪力強化の拳の音、神の鳴らす雷の音、鹿紫雲の持つ電撃が大気を割く音、四人の疲弊とボルテージは最早最高潮を超えている。そして、事態が動くまで、残り十秒。

 

メキョッッバゴォォンッッ!!!

 

秤の上段蹴りで天目一箇神の式神は形を保てなくなり姿を無くす。

 

(ラスイチ!!後は雷野郎と本体のみ!!)

 

ほぼ同時、晴天を暗雲が支配し、黄金色の龍が雲の中を暴れ回る。

 

「轟かせ!武甕槌大神の雷鳴を!!」

 

ゴロロッッ!!

 

(こんな予備動作の長い技、まともに受けてやる義理はない!)

 

「古き術師よ、、、よもや逃げるわけではあるまいな?」

 

パリリッ、、、

 

超重度の戦闘中毒者(バトルジャンキー)である鹿紫雲に、その煽りは想像以上の効果を発揮した。

 

「上等だ!!正面から受け止めてやる!!!」

 

鹿紫雲は呪力を全力で練り、全呪力を武甕槌大神の雷槌へと向ける。

 

「金ちゃん!ラウンドは!?」

 

「ラスト五秒!!」

 

(離れることはできるけど範囲が分からない!アタシの術式はあと三回が限界!)

 

「チッ!記録(レコード)!!」

 

シュルルルルッ

 

梦覚は青い林檎で記録を始め、秤は防御へと呪力の容量を振る。

 

「雷ッ鳴ィ!!!」

 

「爆ぜろ!!!!」

 

ガジャァァッンッッッ!!!!

 

バリバリリリリッッッッ!!!!

 

互いの雷がぶつかる。それは誰の目から見ても相殺ーーなんてものじゃない。鹿紫雲の圧勝である。

 

空に浮かんだ式神は半身を焦がして消えていき、鹿紫雲周りの空気はパリパリと未だ電気の余韻を残す。

 

(怪物め、、、だが!)

 

「呪力は空になったようだな!!」

 

グヂュルルッ

 

巻き直し(リワインド)

 

パァンッ!

 

梦覚は青い林檎を遅れて爆ぜさせ、大ダメージを無かったことにする。しかし、その反動で大量の呪力を持っていかれ、疲労感が一気に押し寄せる。

 

秤は二つの雷撃を膨大な呪力のガードで防ぐが、身体を伝った電撃で内臓が弾け、その再生中にラウンドが終了した。

 

「さぁ、、、展開してみせろ!最後の領域を!」

 

死んでも賭ける、それが博徒の生き様!

 

「領域展開」

 

坐殺博徒!!

 

バララララララララ!!!

 

秤金次、本日三度目の領域展開!!

 

しかし、確率変動も全て終わり、体力的にも回すのは一回が限度、鹿紫雲の助けも領域に入れていない梦覚の援護も期待できない。

 

つまり、もう一度突発で大当たりを引く必要がある!!

 

緑シャッターが二人の間に降り、スロットがスタートする。

 

「スロット!!スタートぉ!!!」

 

ガララララララッッッッ!!!

 

(ひりつく!!身体が!心が!熱くなってるのを感じる!!)

 

(当たれば私は負け!!出るな!出るな!!出るな!!!)

 

「当たれ!当たれ!!当たれぇぇ!!!!」

 

チュインッ!

 

5

 

チュインッ!

 

5

 

座席争奪通勤リーチ!!!

 

(期待度は限りなく低い!!でもこれで!)

 

「ラストォォォオオオ!!!!」

 

「はずれろぉぉぉおお!!!!」

 

チュインッ!

 

3

 

「ハズ、、、レ、、、、、、!ゴボッ」

 

ガクッ

 

秤は脳内麻薬(アドレナリン)で遅れていた内臓を損傷した激痛と、死を伴う重症を自覚する冷静さを取り戻す。

 

ズゥゥゥッッッ

 

領域は解除、残っているのは激痛で今にも死にかけている秤と、呪力が無くなった鹿紫雲。そして、紫色の林檎を手にした梦覚の姿。

 

ゾクゥッ

 

直後に那岐が確信した嫌な予感。絞りに絞った呪力を全開に、疲弊しきった梦覚の腕を蹴り飛ばして林檎を空中へ放り出す。

 

「アタシがここにいたことが、、、確定演出よ!!」

 

パリリッ!

 

「残りカスだ、くれてやる」

 

鹿紫雲の弱々しい電撃が炸裂。林檎は空中で弾ける。

 

バヂュンッ!!

 

術式発動 因果律崩壊(コラプス)

 

三つ目の林檎は紫。梦覚は、鹿紫雲と出会ったその瞬間から、ジャケットの中でずっと記録し続けていた。効果は、彼が見聞きしたものの十秒間の完全再現。

 

バララララッッッ!!!!

 

再現したのは、確率変動に突入した二度目の領域!!

 

チュインチュインチュイン!!!!

 

ドパンッパンパンッ!!

 

♪〜♪〜♪

 

鳴り響く音楽に祝の花火。そして、溢れてやまない

 

膨大な呪力!!!

 

死んでも賭ける!死んでからも賭け続ける!!

 

秤金次、実力で掴んだ最後の大当たり!!!

 

ギュルルルッ!

 

「そう簡単に逝かせちゃくれねぇよなぁ!!」

 

「黄泉の国へ!!大人しく三途を渡れぇ!!!」

 

メキャッッッッゴォォォォンッッッ!!!!!

 

絞りカスすら出ない、ただの人間のパンチ。呪力で完全強化した秤の拳は重々しく頭蓋骨を砕き、那岐を海へと放り出した。

 

(負け、、、、、、、、、た、、、か)

 

ドポォンッ!

 

「「「、、、、、、、、、、、、?」」」

 

「おいコガネ、得点はどうした」

 

ポンッ

 

「対象が自害したため、ポイントにはなりませんでした」

 

「はぁ?なんでだよ」

 

「なるほどね、、、彼、やっぱりいいオトコね」

 

「ほんと見境ねぇなアンタ、、、。俺は彼女いるから勘弁だぜ」

 

「俺もカマはパスだ」

 

「ツレないわねぇ」

 

疑問符を浮かべる鹿紫雲と秤を他所に、梦覚は理解したようで、疲弊しきった三人はその場に座り込み、あるいは倒れ込んだ。

 

継愚那岐VS鹿紫雲、秤、梦覚

 

勝者 鹿紫雲、秤、梦覚




オマケの初期案
梦覚 真慈(むきさめ しんじ)
得点75
術式
因果律への侵入(ラプラスロックエントリー)
自身で口に出して数えた秒数だけ時間を操れる。
時間を操る、とは文字通りに加速も減速も戻すも飛ばすも止めるも自由。
ただし、数えた秒数に限られ、さらに選ぶ対象には限界がある。それでも超強い術式。
極の番、領域は無し。
呪力量は術式に引っ張られる形でかなり多い方、縛ってる七海くらい。呪力による肉体の強化もできるが得意ではない。
元々呪霊が見える体質、窓に近い人間。
マジシャンなので、謀り騙しはお手のもの。
仲見世と違い、得点の全ては敵対した術師のもの。
死滅回遊が始まってから下水道に身を隠しており、死んだ人間達がそこにいると思い込んでいる。常に発狂したような状態、しかし脳の奥底では理解しているためルールを追加し、死人を蘇らせようとしている。無差別に襲うわけではないが刹那は高得点保持者なので襲撃することにした。

本編
梦覚 真慈(むきさめ しんじ)
術式
因果律への秒侵入(ラプラスロックエントリー)
元々窓の人間だが、家族が全員呪霊に惨殺された過去を持つ。呪術師になろうとしたが、才能が芽吹くことがなく、窓としての日々を過ごしていた。
呪力は普通にあるため補助監督という道もあったが、呪術師への想いを捨てきれずに日々鍛錬を重ね、術式が無くとも三級程度の実力を持っていた。呪術師になるための試験(あるのか知らんけど)を受けようと決断していた。そんな折に羂索に弄られて術式の獲得に成功する。
術式を手に入れたのは死滅回遊よりかなり前の出来事で、かなりの研鑽を重ねて術式を使いこなしている。
青いリンゴと赤いリンゴと紫色のリンゴを生成する。
記録(レコード)
赤いリンゴは他人が対象。
青いリンゴは自分自身が対象。
二つのリンゴはそれぞれの対象に付き、回転を始めてから対象の時間を10秒間記録する。
巻き直し(リワインド)
その記録を始めてからの過去と現在を入れ替えることができる。
過程飛ばし(スキップ)
さらに5秒先の未来まで入れ替えることもできる。
いずれも一度発動すると弾けて記録はやり直すことになる。
同時に合計七つまで生成できる。
崩壊(コラプス)
紫のリンゴは記録を始めてから永遠に記録を続ける。その間は呪力を絶えず注ぐ必要があるが、その効果は絶大。記録を始めてから起こった出来事を一つ、"自由になんでも"出現させられる。
誰かの極の番だろうと領域展開だろうとそれは対象を選ばない。
一個目の術式そのものはもしかしたら何処かで出るかもしれませんね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。