全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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※申し訳ありませんが、五条VS宿儺はあまりにも言葉にするのが難しいため、原作の方でお楽しみいただけると幸いです。正直刹那の動きも中々理解不能ですが。
因みに観客は夏油、硝子、日下部、秤、綺羅羅、加茂、日車、鹿紫雲、パンダ、狗巻、猪野、三輪、西宮、染秀、冥冥、憂憂です。
あと、会話の描写はカットしているので、誰が喋っているかは脳内補完をお願いします。


第七十七話 選択式の猫の箱

 猶予は約一ヶ月。たったそれだけの時間の後でこの時代と世界の命運を決める。沈黙した呪詛師達は生き方を、呪術師達は己の死に様を覚悟し思案している。

 

「おかえり、悟」

 

「ただいま傑。どう? 僕がいないからって寂しくて泣いちゃった? 今どんな気分?」 

 

「そうだな……例えるならGWが終わった気分」

 

「僕が泣きそう」

 

 五条悟と夏油傑。この時代を代表する自他ともに最強を誇る男達は高専が使えない今、非術師が近寄らない建物の屋上にて日の傾きを見ながら話していた。

 

「まぁ、冗談は置いといて。僕があの呪物から出た後一応色々見て回ったよ。そしたら、高専が管理する呪霊の封印がいくつも破壊されてた。傑でしょ? その呪霊達を回収したの」

 

「これからの呪術師の在り方は一変する。残しておく意味はないさ。浄界も梵界も天元様がいなきゃまともに継続して機能しないだろうし、必要ないよ」

 

「僕がいない間生徒たちは?」

 

「強かったよ。皆、前を向いてる。夜蛾学長は既に覚悟を決めていた……止める気には、なれなかったかな……」

 

「…………そうか」

 

「全部終わったら、墓参りに行こう。三人で」

 

「……うん」

 

 目隠し越しに五条は表情を曇らせる。ありがとう。その一言にどんな意味がどれだけ込められていたのかを量るには、彼と過ごした時間は術師としても、人としても長すぎた。

 

 ガチャ、ガチャンッ

 

「やぁ二人共。どんな女が好み(タイプ)かな?」

 

 歪な車輪の音と、秋の空と同じ様に澄んだ声。戦線を離脱した彼女は命を繋ぎ止め今に至っている。

 

「九十九さん。アンタ動いて良いの?」

 

「へーきへーき。凰輪も復活したから使えるしね、階段登るのはまだ難しいけど、こうして動く分には問題ないよ」

 

「ふーん……。ならいいや。で、好きなタイプ? 悪いけど僕はそんなの考えるような余裕無くてさ、他あたってよ」

 

「私も今は菜々子の精神面が不安だし、考える余裕は無いかな」

 

「しけてんなー、いい歳した男が二人で」

 

「あんたも結構な……」

 

「ぁ"あ"?」

 

「こら悟。女性の歳に触れるのは失礼だよ」

 

「お前も大概だよ」

 

 カラカラと音を立てて九十九は二人に並び、同じ景色を見ながら溜め息を一つつく。

 

「で、ホントは何なの? そんな下らない質問しに来たわけじゃないでしょ」

 

「いやぁ……なんというかね。色々あるけど取り敢えず……次で全部終わりだからさ。色々話そうと思ってね」

 

「羂索は一年達が。そして宿儺は五条君が。羂索は五条君が戦っている間に死滅回遊を終わらせるつもりだったんだろうが……彼女への宿儺の執念を見誤ったようだね」

 

「つまり……」

 

「攻め時だ」

 

 不敵に嗤った五条とそれに賛同するように夏油は目を見開いてニヤリと嗤ってみせる。

 

「12月24日、文字通りに全てを終わらせる。全部が全部上手くいく訳ではないし、向こうもそれなりに考えはあるだろうがこちらにもとっておきはある」

 

「悠仁含め、皆その作戦に反対は無い。特に真希は一度見てるしね」

 

「私は正直反対だよ。リターンは確かに大きいし全体で見ればリスクも少ない……でもそれは……」

 

 夏油が言葉に詰まるところで九十九はその発言を止めるために軽く声を出して制止する。

 

「こらこら、女の度胸を踏みにじる発言は控えたまえよ夏油君。その未来を作らないために君が頑張れよ」

 

「当然です。この身を潰す覚悟はとっくに出来てる」

 

「潰れないよ。お前の強さは僕が保証する」

 

「はぁ……冷えてきた。戻ろうか」

 

 夏油は九十九の車椅子を後ろから押して部屋へ戻ろうとする中、五条は日の落ちた空を蒼い瞳で見上げた。

 

「終わり……ね。そろそろ終わりたいね。色々疲れた」

 

 12月22日

 

 ザァァッ……パシャパシャッ

 

 シャワーを浴び終えた刹那はいつもの制服に腰帯に刀を挿し、呼吸を一つ置いて外へ出る。

 

 東京中心に近い場所。呪霊、呪詛師が敵対することこそ無いが聞こえなくなった人の気配と喧騒は静かすぎるほど浮き彫りになる。

 

「…………きっと上手くいく」

 

(皆もそれぞれ考えがある。準備はしすぎる程良い)

 

「……眠れませんか? 悠仁君、野薔薇」

 

 夜闇に紛れた彼女は振り向くことなく二人の気配から人物を言い当てる。月明かりが三人を写し、刹那は確認の為に振り返る。

 

「へへ、当たり!」

 

「寒いでしょ? 湯冷めするわよ」

 

 屈託のない笑顔を向ける虎杖と、笑顔を向けつつもホッカイロをこすりながら心配を向ける釘崎。

 

「悠仁君は大丈夫ですか?」

 

「……元々、俺が蒔いた種だ。覚悟はあるし、それを実行できるのは刹那だけだって分かってる」

 

「ふふ……先生達には秘密の作戦ね。正直刹那にはおんぶにだっこかもだけど」

 

「いえ、この作戦においては僕の役割は小さいですから。二人こそが要です」

 

 それをいうなら、それだったら。三人は謙遜と謙虚の言葉を重ね続けて話し、いつの間にか笑顔が溢れていた。

 

 その場にいないもう一人の大切な仲間と笑い合うため、彼らの脳に後退の文字はない。

 

「ふー……勝つぞ」

 

「当然!」

 

「当たり前です」

 

 12月24日

 

 世界中に知らされた五条悟VS両面宿儺のビッグマッチ。

 

 更に、オプションとして知らされた隣区、新宿にて特級術師阿頼耶刹那を含む一年生VS羂索の戦い。

 

 時代の節目を飾る二戦が今、始まろうとしている。

 

 二人の呪力に影響されたか、曇天の空は東京全土を覆っていた。

 

 ──ーッッ!!! バウッ!!! 

 

 ゴゴゴゴンッッ……!!! 

 

 そこに劈く一つの轟音に崩れる建物の音。空は開戦を知らせるべく渦巻く雲が晴れ、開放される轟々たる呪力。

 

「始まったね。そろそろその物騒なものを下げてくれないかな?」

 

 新宿。人気は無く、羂索の手によって調伏済みの呪霊が溢れかえっている。高層ビルの屋上で二人の戦いが始まる様子をスマホで見ながら彼女の右手の刀は羂索の首を狙っている。

 

「……ふん」

 

 チャキッ

 

「カラスがこっちにも集まってきたねぇ」

 

 羂索は上空を飛び回るカラスに向かって手を振りながら嘲笑って刹那に軽く話しかける。彼女は最初から右眼を開放、出し惜しむ気は無いことを示している。

 

「君も少しは視聴者サービスをしたら? 君の顔を見るために見ている人間も沢山いるんじゃないか?」

 

「それだけの観客なら……貴方が血に染まればそれなりに盛り上がるんじゃないですか?」

 

 カチンッ

 

「ハハハハ!! 楽しくなりそうだ!」

 

 納刀とほぼ同時に上がる笑い声。そして次の瞬間、刹那の斬撃を予め用意しておいた数本の呪具で弾き、さらに新宿の上空に打ち上がる火花。

 

「さぁ! 思う存分呪い合おうか!!」

 

 バフンッ!! タンッ

 

「!」

 

 呪霊の消失反応に加えて目眩ましの小麦粉。

 

 羂索はビルから後ろ向きに手を広げて飛び降り、追撃に呪具を飛ばす。

 

「大人しく当たるとでも……」

 

 ピクッ

 

 呪具を弾こうとした瞬間、彼女は気付く。小麦粉と同時に撒かれた火薬の匂いとアルミの反射。今火花を起こせば爆発が彼女を襲うのは明白。

 

「……チッ」

 

 タンッザシュシュッ! 

 

「流石だね」

 

 クイッゴゴゴゴッ! 

 

 呪具は軌道を変え、ビルを縦から割くように破壊して瓦礫が落下する。

 

 呪具の攻撃を掠りながら回避し、刹那はビルの壁面を走りながら駆け落ちていく。地上約二百メートルの自由落下戦闘──ではない。

 

 パッ ガガガッ!! 

 

 彼女は依然よりもより自由な翼を得た。距離を瞬時に詰めるだけではない。

 

 刹那は落下中に瓦礫から瓦礫へ瞬時に飛び移りながら呪具を破壊し、羂索は刹那に初撃を許す。

 

(地を踏まない呪力強化の打撃は問題なし。それに術式でどんな小細工をしてくるか……)

 

 ビキキッ ブワッ!! 

 

(最高硬度の虹龍と最高厚度の冥虎! どう突破してみせる!!)

 

 この初撃は二人の力関係を明確に左右する。呪霊の性質を自由に引き出せる以上、ベストな攻撃が通らなければ刹那の振りは確実なものとなる。

 

 落下しながらも自らの挙動を保つ真っ黒な靄は二人を包むことなく、刹那の右腕から羂索の装甲の最も厚い部分へ真っ直ぐに繋がる。

 

 ……ゾワッ……! 

 

「……ッ!?」

 

「時速は百Km! 上乗せ一トン!!」

 

(さらに空気を圧縮、内部で爆ぜさせる!!)

 

 疑似 星の怒り&撃震掌

 

星の衝撃(クラッシュ)!!」

 

 メゴォッッドヒュンッ!!!! 

 

 ズドォンッ!! バキバキバキバキッッ!!! 

 

 二百mを超えるビル。半分を超えた時点で人間の落下速度は時速百Kmを超える。その速度に上乗せされた1トンと内部破壊の為の空気の圧縮と開放。その一撃は羂索の最高の防御力を容易に貫通してみせた。

 

 まるで隕石が墜落したかのような巨大なクレーター。

 

 呼吸が困難に、両腕と潰れた胸の様子から羂索はダメージを隠せない。

 

 ヒュルルッ──ストンッ

 

 反転術式で明らかにダメージの許容量をオーバーした右腕を治しながらもその眼光は羂索を捉えて離さず、いつもの彼女からは考えられないほど強気に言い放つ。

 

「言い忘れてましたけど、僕達は負ける気で来てません。勝ちますから」

 

「…………ハハ……」

 

 カラスを通じて始まった二つの大戦。高専組は複数のモニターから二つの巨大な呪力の爆発を見ていた。

 

「いや……五条は分かってたが……」

 

「パンダの術式に似せたね。恐らく重さも私の星の怒りと同等。これなら……」

 

「そう都合の良い話でも無いみたいだぞ」

 

「残念なことにそのようだな」

 

 九十九の分析に脹相と日車は刹那を指さしながら答える。

 

「あれは術式の模倣じゃない。あくまでも疑似(ニセモノ)だ。九十九と違って身体に影響がある」

 

「身体の負担は反転術式で軽く出来ても明らかに肉体への許容量をオーバーしている。そう何発も撃てるものじゃないだろう」

 

 その発言に加わるように鹿紫雲は濁った戦闘狂の笑顔で問いかける。

 

「……これが例の阿頼耶識の力か」

 

「なんだ、知ってたのか?」

 

「噂だ噂。昔いくつかの戦と絡んだとか、名家の頭を暗殺していくつか潰したとか。そんなもんだが……まさか実在したとは」

 

「先に言っておくがアイツとは戦うだけ無駄だぞ鹿紫雲。アイツはぶっちゃけ五条さんとか夏油さん側だ」

 

「……だから戦りたいんだろ」

 

 パリリッ……

 

「おい黙って見てろ。二組とも本格的に動き出したぞ」

 

「刹那も大概だな……! もう何箇所にクレーター作ってんだよ」

 

「流石に私も初めて見るよ。彼女の全開戦闘……願わくば、五条君の戦いとは別日でしてもらいたかったけどね」

 

 ビル群が崩れ、呪霊の消失反応が新宿の各地で柱のように立ち上がる。刹那の持つ黒い呪力は移動し続ける羂索を追う一つの蛇のように追撃していく。

 

 チュドォンッ! ゴォンッ!! 

 

「合追、九尾火車(つづらびぐるま)

 

 九尾の狐に火車の速度。当然というように呪力量は特級。花火のように空で回る車輪は爆ぜながら刹那を追いかける。

 

(見失うわけにはいかない。かといって祓うのも難しい位置から追いかけてくる……)

 

 羂索は過去数度の彼女の戦闘の観察から、刹那の行動を読み切って行動している。にも関わらず完全な逃走と防御の姿勢は崩れない。刹那の優位はそれほどに大きい。

 

「合追、無手無手瞳礼(むてむしゅどうらい)

 

「!」

 

 羂索の身体から飛び出す無数の黒い腕と無数の瞳。刹那の斬撃を刻まれながらもある程度躱していく。

 

「おかしいだろ。これでも二級程度なら数人を瞬殺できる呪霊だぞ」

 

「その数人より僕の方が強い。それだけです」

 

 ギュルルッキキキンッ

 

(かかった!!)

 

 ぴゅるっバシュッ

 

 仕込んでいた低級の呪霊が刹那を襲い、コンマ一瞬の隙ができる。その瞬間、超重力場が刹那を襲う。

 

反重力機構(アンチグラビティシステム)

 

 ズンッ!!! ズパンッ!! 

 

 超重力場。それをものともしない彼女の斬撃は羂索の腕を斬り飛ばす。

 

「首を狙ったんですがね」

 

「少しは効いて欲しいものだね……腹が立つよ」

 

 額に青筋を浮かべながら羂索は呟く。同時にまともに入った斬撃の手応えのなさから考察を深まる。

 

(斬撃の効き目が薄い……身体にスライムみたいな呪霊を着けてるのか。斬ってもすぐにくっつく。"寂滅為楽"なら貫通できるけど、それは最後だ)

 

 ゾワゾワゾワッ……! 

 

「「!!」」

 

「二人共楽しそうですね」

 

「私達とは大違いだ」

 

 渋谷から新宿。それだけの長距離であっても背筋を鳥肌が伝うほどの呪力の圧。二人が天才であり明らかに現代の強者の一角であっても、あの二人にはそれを恐怖させる圧がある。

 

 スッ……

 

「それじゃあボチボチ私達も……」

 

「そのふざけた考えごとブッ壊してあげますよ……!」

 

「「領域展開」」

 

 胎蔵遍野(たいぞうへんや)

 

 未了無還門(みりょうむへんもん)

 

 ズァァッッッ!! 

 

 漆黒の空間に禍々しく立つ人を冒涜したような巨塔。閉じない領域と、現代に還った阿頼耶識の超才。濃密な呪いが二人を包む。

 

 ──ー

 

「……昔、刹那さんと領域で勝負したことがあります」

 

「え、勝った?」

 

「いえ負けましたけど。というか、刹那さんとは基本的に領域で勝負しても無駄なんですよね」

 

「? どゆこと?」

 

「普通に領域を展開しても閉じ込められないんだよ。アイツは」

 

「……閉じ込められない?」

 

「アイツの右眼は基本的に機能しない。盲目の術師は呪霊なんて見えないだろ? でも、天与呪縛で外部のエネルギーとの違いで結界の境目が分かるんだ。だから走って逃走っていう掟破りが出来る」

 

「まぁ、そんなことしなくても普通に領域勝負強いから

 

 、彼女に逃走は基本選択に上がらないんだけどね」

 

「金ちゃんは?」

 

「俺はそもそも勝負にならねーよ。アイツの斬撃に術式が乗ると感覚が無くなるんだ。反転術式が機能しなくなるから当たろうが当たるまいが変わらん」

 

「二人が領域を展開したらどうなる?」

 

「……宿儺と羂索の領域は結界を閉じない。これは仮説になるけど、結界は外側からの力に弱い。五条君と刹那の結界は……」

 

 壊れる。

 

 パキィンッ!! 

 

 九十九の予想は外れた。

 

 五条の結界は壊れたが、刹那の結界はその形を保っている。彼女は過去に宿儺と対峙した時、渋谷に避難していた非術師を巻き込まない為に伏魔御厨子を閉じ込め、御厨子の必中効果をその身に受けた。しかし今回は自由戦闘(フリーダム)

 

 "門"の犠牲と共に、彼女は羂索の必中を打ち消し、外郭を強化し互角に持ち込む。

 

 それを即座に理解した羂索は外の呪霊たちに結界の破壊を指示し、内部で必中効果を押し合う。

 

(扱いにくい門の方を犠牲にして外郭の強化と必中効果の打ち消しに持っていったか! この空間……!)

 

 彼女の翼は、何者にも観測されない靄の中で真の意味で羽ばたける。

 

「閉じられた箱は、開けてみるまで何が入っているか分からない」

 

 クンッ……

 

 ジュワァッ!! 

 

「熱ッ」

 

 バキュンッ! 

 

 羂索の地面のみが姿を変え、マグマへと変化し足袋を燃やし溶かす。飛び退いた先に靄が質量と形を伴って槍のように羂索の肩を狙うが、重力で押し潰して無力化する。足場を低級の呪霊で作り、着物の裾に手を入れて話す。

 

「観測するまで解らない……ね。この領域はまるでシュレディンガーの箱だね」 

 

「一丁前にそっちの方面にも詳しいんですね」

 

 ギギッ……!! キンッ

 

「これでも"千年生きててね"。嫌でも知ることになるさ」

 

 羂索は自身の呪具と刹那の刀と鍔迫り合いながら語る。

 

 即座に呪具を斬り崩し、追撃に羂索の喉元を掠る。

 

(思ったより結界の破壊が早い……! まだ"計算"が終わってないのに!)

 

「おや、焦ってるねぇ。外の呪霊は最低でも一級。特級まで育てているのが殆ど……何を企んでいるか分からないが、取り敢えず一回目だ」

 

 ズンッ!!! カシャァンッ!!! 

 

 ──ー

 

「「「「「!!」」」」」

 

「割れた!!」

 

「あの野郎! 呪霊を玉にして重力で撃ちやがった!!」

 

「刹那ちゃん!」

 

「不味いぞ、羂索の領域は健在だ! このままじゃ!」

 

 破壊された領域から一同が目にしたのは片手を天に上げ、呪霊に指示を出す羂索と簡易領域を剥がされながらその呪霊達を斬り刻む刹那の姿。

 

「……簡易領域!!」

 

「喰らう前に領域の破壊と"同時"に展開したのか!」

 

「器用すぎんだろ……!」

 

「でもめっちゃ剥がれてくじゃん。あの子どうすんの?」

 

「分からん……だが、間違いなく今の五条よりも不味い状況だぞ!」

 

 バキィンッ!! 

 

「剥がれた!」

 

 簡易領域が完全に剥がれた瞬間、さらにもう一度簡易領域を展開する。

 

「まただ! 術式が使えるようになるまで繰り返すつもりか?」

 

 ──ー

 

「良いね、失敗作や九十九由貴とは比べ物にならない」

 

「彼らを馬鹿に出来るほど貴方は立派な人物のつもり? それこそバカバカしい!!」

 

 ズンッ!! ビキキッ! 

 

(刀が呪力を吸い続けているからか? やはり出力が落ちるている……)

 

 ドガガッ!! ガキンッ

 

 ピンッ

 

 身体に負荷をかけすぎたか、刹那の左腕から刀が落ちる。同時に頬を殴られるが、スリッピングアウェーの要領で回転して受け流す。

 

 パッ

 

 瞬間、刹那は瞬時に屈んで両足を羂索の腹に、胸ぐらに両手で掴みかかる。

 

(今更何を……)

 

(刀があるから出力が落ちる。とか思ってるのならそれは大間違いだ……! 僕の術式は、まだ焼ききれてなんてない!!)

 

 ピッ

 

「位相、波羅蜜、光の柱」

 

「その詠唱はッ!!?」

 

 ギュゥウンッ

 

「疑似、無下限呪術。赫」

 

「!!?」

 

 五条家相伝、地面や建物を削り取るほどの超威力を伴う呪力の弾丸。焦った羂索は自身の身体を呪霊に変化させて護る。

 

 ドゥン゙ッ!!!!! 

 

 赤い閃光は、羂索の身体を貫いた。

 

 彼女は燻ぶる煙の中から姿をみせ、上着を脱ぎながら呪力と戦闘のギアをさらに上げていく。

 

「狸寝入りはもういい。さっさと立て羂索。僕は優しくない」

 

 

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