緊急出動!てぇてぇを守れ!   作:フユガスキ

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クラス替え

 ライブを見終わり、参加倍率の高い視聴者参加型ゲームに不参加のまま配信が終わり、ゲリラ歌枠に耳を澄ませながら床についた俺は、歌枠を閉じて寝入った。いい夢が見れるだろう。

 

 夢は見れなかったが、次の朝、ツイッターを確認しつつ学校に到着すると、校門前に人だかりが出来ていた。何かあったのだろうか。そう思って近づいてみると、遠目で少し見づらいが、クラス替えの張り紙だった。

 

「お前、どこ?」

 

「ワイは3組やな」

 

「じゃあ、変わっちまうな」

 

 そんなやり取りがそこら中から聞こえてきた。中には、同じクラスになって喜ぶ者もいるが。というか、モブのくせに、ワイとかいう一人称使うんじゃないよ。

 だがしかし、妙に急なクラス替えである。どういうことだ?それに少し一クラスあたりの人数も減っているようだ。

 

 まぁいいか。今度も俺はホロメンと同じ教室にいるし、委員会の仕事に支障はない。

 取り敢えず、昨日の会計の書類を風紀委員会室に置き、その足で教室に行って荷物を整理し、ホロメンを待つ。今日も挨拶は豪勢にいこう。

 

「はあちゃまっちゃま〜!!」

 

 最初の登場は赤井はあと、はあちゃまである。流石にはあちゃまっちゃまー、と挨拶するのは恥ずかしかったため、クラスメイトはまばらに挨拶をした。

 

「こんトワワー」

 

 次に姿を見せたのは同じくツインテの常闇トワである。トワ様!トワ様!TMT!TMT!と返事をした。

 

「こん――」

 

 線だー!線だ!シオンよ……シオンよ……と挨拶する前から騒ぎ立て、ねえぇぇぇぇ!までがお約束になりつつある紫咲シオン。今日は寝坊しなかったようだ。

 

「こんねねー!」

 

 今日はお団子ヘアではなく、おかっぱにした桃鈴ねねが元気よく登場する。だが、恥ずかしかったのか、隠れるようにして席に座った。ちゃんと挨拶したんだけどなぁ。

 

「こんるしー?」

 

 比べるまでもなく小声で挨拶するのは、潤羽るしあである。目には光が宿っていない。ふぁんでっど達、何とかしてください。

 

「にゃっはろー、にゃっはろー」

 

 今日も滑舌の悪いさくらみこが最後に登校した。後ろで不知建の四人がじゃーねー、と手を振っているので、教室がわからず案内されたのだろう。

 

 ホロメンたちが集まり、よろしくねー、とてぇてぇ環境を作り出している中、スマホに通知が入ってきたので見てみると、どうやらホロライブの新メンバー発表のようだ。またもや、急なことである。

 JPの新メンバーということは5期生の後輩ということになる。そうか、ついにねぽらぼも先輩か……。ENIDを除いて。

 

 名前を確認してそれぞれのアカウントに飛びまくり、最初のツイートを見て回ると、あら不思議、一人凍結されているメンバーがいる。何をやったんだ?

 そう思っていると新たな担任がドアを開け、皆を着席させた。

 

「えー、一応新たなクラスということで、最初の挨拶をしたいところだが、その前に、転入生を紹介する」

 

 転校生?

 ということは、クラス替えは人数調整ということだろうか。

 学年長に連れられ教室にぞろぞろと5人の転校生が入り、黒板の前に横一列で並んだ。

 

「はい、こちらの5人と他のクラスにも数名ずついるから、適度に慎むように。では、君たちは名前順に空いてる席に座って」

 

 この学校は少々特殊なため転校生が来るのは見慣れているが、その中でも異彩を放つ少女がいる。座った席からして、恐らくはラから始まる名前だ。

 すると先生が、自己紹介を簡潔に1番から、と言うので、自己紹介が始まった。なぜかあるこの自己紹介、そろそろ学校七不思議みたいなものに入ってもいいのではなかろうか。マジ、なくなってほしい。

 それぞれ挨拶していき、遂に件の少女に到達した。

 

「んんっ。……刮目せよ!」

 

 え?

 思わずそちらを見て、少女の言ったとおり刮目した。それも、クラス中が予想にもしなかった言葉に、振り向かざるを得なかった。

 

「吾輩の名は、ラプラス·ダークネスだ!」

 

 ラプラス……?どこかで聞いたことがあるような気がする。確か、ついさっきの記憶だ。どこで見たんだっけ。……あ、思い出した。ホロライブの6期生の一人がそんな名前だったはずだ。凍結してる娘は覚えていたが、他はうろ覚えである。

 

 しかし、そうか。特徴的な二本の角に頭のカラス、そしてあの容姿体型、確かにプロフィール画像にそっくりである。

 

「後のことは幹部に聞け」

 

 それだけ言って座り、自己紹介を終えた。

 

――――――

 

「ここに集まってもらったのは、説明するまでもないだろう。ホロライブの6期生、holoXについてだ」

 

「私は、さほど問題ではないと思いますがね」

 

 一時間目の授業が始まる前の休み時間。俺たちは急遽、人通りの少ない廊下に集まった。holoXに対して、風紀委員としてどう対処するか、を急ごしらえではあるが諮るためである。

 

「そこの天使では話にならん。片桐はどう思う」

 

「直接的な事柄でしか話のできない単細胞には難易度が高いのも至極当然でしょう。懇切丁寧に説明してあげなさい」

 

「そ、そうですね……。個人的には、少し対処を変えたほうがいいと思います」

 

 そう言うと、ハル先輩はドヤ顔をエリア先輩に向け、エリア先輩は自分の天使のわっかをハル先輩の頭につけようとした。わっかを つけると あいてが しぬ。

 エリア先輩の気が済んだのか、自分の頭にわっかを戻して、俺の説明を促した。

 

「はい、おそらくエリア先輩の言わんとするところは、秘密結社なのだから初配信前までの関わりが増えることはない、と言っても過言ではない、ということでしょう」

 

「そうですね」

 

「ですので、その点に関しては問題ないと思います。ですが、今までの枠に収まらないのは、幹部、と呼ばれる方です」

 

 幹部――鷹嶺ルイは総帥のラプラスに頼られる、言わば外交的な役割の人物なのだろう。こういったホロメンは例がないため、対応するルールがない。

 無論、いつものように仕事ができればいいのだが、初配信まではそれもできないため、どうにも手の出しようがない。

 

「いや、それに関しては問題ないだろう」

 

 そう自身のある調子で言ったのはハル先輩だ。

 どうやら、その鷹嶺ルイは、双子キャラにしか興味がなく、その他の有象無象は一定の距離を保ち続けているらしい。それに、なんとホロライブの先輩らに挨拶し回っているらしく、話す暇がないらしい。因みに双子キャラについては、最初の自己紹介で言ったらしい。なくなってほしいとか言って、申し訳ありませんでしたァァ。

 

 ということで、様子を見るという形で結論を出し教室に行くと、ラプラスが複数のホロメンに囲まれていた。

 

「ラプちゃんお行儀いいね」

 

「え、うん」

 

「次の時間は移動だから、時間割これね」

 

「ぁ、ありがとうございます」

 

「この化学のせんせぇは寝ても大丈夫。でも、数Ⅰのせんせぇは寝ると怒られるにぇ。あ、でも、問題は当てられにゃいから、安心だにぇ」

 

「へ、へぇ〜、そうなんすね」

 

 かわいい(かわいい)


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