緊急出動!てぇてぇを守れ!   作:フユガスキ

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ガチ恋勢の反乱

 世の中には様々な考え方が存在する。ハル先輩のような後方腕組み、他にも杞憂民や指示厨。エリア先輩のような単推しや箱推しなどなど。

 その中にガチ恋勢と呼ばれる民もいる。彼らはホロライブの魅力に魅了され、人生を捧げる覚悟を決めた猛者のことを言う。

 

 唐突にこんな話が切り出されても困ると思うので、端的に説明しよう。

 俺ら風紀委員が焼き肉屋に向かう途中、所謂ガチ恋勢の過激派の十数人による現体制への抗議デモに出会ってしまった。

 抗議デモと知っていれば近づかなかったのだが、夜道だったこともあり看板に何と書いてあるのか分からず、声はホロライブについてだと判断したため、エリア先輩が近づいてしまったのだ。相手側からすれば、敵である風紀委員が注意しに来たと思っても仕方ないだろう。

 

「ホロメンとの会話の必要性を認めろ!」

 

「今度、話し合いの場を設けさせて頂きます」

 

「ホロメンだって学生だ!一部の学生のみ待遇が違うのは、この学校の校則に反する!」

 

「今後、風紀委員として、その件に関して検討して参ります」

 

 風紀委員の注意喚起に対して即刻撤廃!恋愛自由!を謳うガチ恋勢に適当な対応して、逃げるように学校を後にした。エリア先輩、対応に慣れすぎだろ。

 

「エリア先輩、話し合いの場ってマジですか?」

 

「えぇ、今のままでは埒が明きませんからね。ここで一旦、外の意見に耳を貸すのも有効な手段です」

 

「そんな簡単に決められたら困る。委員の予定は基本的にホロメンの安全を確保することだ。他に時間を割けない」

 

「それは、片桐に任せればいいでしょう。私達は次の会議に彼らを呼ぶだけです」

 

「え、ちょ、俺だけで見回りするんですか!?」

 

「なるほどな。いい案だ。よし、片桐に一任しよう」

 

「ちょ、ハル先輩、マジで?」

 

 いや、いやいやいや、もう俺はしたくない。ただでさえ、今日の隠密行動がバレたのだ。またバレるかもしれない。

 だが、会議に参加したいわけでもない。この先輩達と一緒にいたら、胃がいくつあっても足りないだろう。

 

「………………はぁ、分かりました」

 

「よぉし、今日の焼き肉は旨くなりそうだな!」

 

 こういうのって、何て言うんだっただろうか。セクハラ?パワハラ?まぁ、ハラスメントだろうな……。知らんけど。

 

 そして、ヤキニククイーンという名の焼き肉店に入ると、ハル先輩が予約していたのか席に案内された。

 先に言っていたように、俺の分は奢りとなり、三名分の食い放題を買った。

 

「食え食え。もっと食え。これなんてよく焼けてるぞ」

 

「え、まだ生焼け……」

 

「食え食え」

 

 韓国海苔を食べまくってるエリア先輩を片目に、俺の皿には生焼けの肉が並んでいき、俺はちょっと焦げてるぐらいが好きなんですよね〜、などと言って網に戻してから食べた。

 

「そうだ。片桐、将来を占ってあげよう」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

 エリア先輩の占える将来は、最長で一日後のことを指す。それまでに起きる事が分かるそうだ。例えば、前にやってもらった時は、明日の夜は男の性欲を一人で満たしている、だとか言っていた。もちろんした。

 だから、これはどちらかというと、未来予知というものだろう。便利なものである。

 

「明日は……む、ラミィと話している?どういうこと?」

 

 え、ラミィって、雪花ラミィのことだろうか。いや、確実にそうだろう。そうじゃなければ、エリア先輩が反応するわけない。

 

「どこですか?いつ、会いますか?」

 

「それよりも、ホロメンと関係性はないんだな?」

 

「ないです。ハル先輩」

 

「ん、じゃあ、日時は昼休憩時だ。教室内で話しかけられている」

 

 つまり、違う教室なのに、わざわざ俺と話す用事があったということだ。思い当たる節は……獅白に目をつけられたことか。

 

「じゃあ、風紀委員の部屋で弁当を食べるので、鍵開けといてください」

 

「おう」

 

――――――

 

 次の日、俺は無駄に食わされた焼き肉で胃もたれしつつ、適当な薬を飲んで学校へと歩を進めた。

 

「今日は、なるべく気をつけて行動しないとな。というか、むしろホロメン全員が知ってる可能性もあるわけか。……はぁ」

 

 エリア先輩に注意されたのは昼、つまり、それまでに会うホロメンは俺の昨日のことを知らない可能性がある。

 だから、船長、団長、フレア、るしあ、ぺこら、には知られてないのだろう。

 

「止まりな」

 

「―――ッ」

 

 この声は獅白?なぜ?未来予知で言われてないぞ。

 いや、ここは至って冷静に対処しなければならない。不自然なくこの場から逃げれるよう模索しなければ。

 

「なんでしょう。獅白さん」

 

「昨日のこと、まさか忘れてないですよね?」

 

「何のことですか」

 

 流石にギャングタウンの血は濃いか。プレッシャーが凄まじい。俺より小さいのに迫力は大きい。

 

「はぁ……まあいいです。けど、まさか、ねねちゃんじゃなくて私だとは思いませんでしたよ。てっきりねねちゃんをストーカーしてると思ってましたから」

 

「別にストーカーしてませんが」

 

「ほら、昨日のこと覚えているって言ってるようなものですよ」

 

 む、鋭いな。このまま会話の主導権を握られると、逃げ出せない可能性があるので、ちょっと話題を変えようか。

 

「……俺の住所はこの近くです。たまたま、登校ルートが被ってしまっただけじゃないですか?」

 

「知ってますよ。定期考査の結果も優秀でよく目にした名前でしたし、偶に帰り際に見かけますし。でも、こっちは割と遠回りのはずです。こっちにわざわざ来る用事は、昨日のことを考えて一つしかないんですよ」

 

 なるほど。確かに疑われても仕方がない。というか、俺の家知ってるのかよ。

 まぁ、それはさておき、残念ながらこちらの道を選ぶ理由は他にもある。それは、最も近い道はホロメンがよく通っているのだ。俺はなるべくホロメンから離れたほうがいいので、結果的にこの道をよく使うのだ。

 

 だが、これは話せない。話してしまえば、風紀委員のやってることが、水の泡である。

 

「なるほど、それで俺を心配してくれたんですね」

 

「そう、ストーカー……え?」

 

 おお、ししろんの困惑顔なんて珍しい。今日の俺はツイてるな。まぁ、声をかけられた時点で、大凶なのだが。

 

「昨日のような人気のない場所に独りで座っていたり、登校ルートが人気のない道だから、俺が何かしらのイジメを受けていて、こうせざるを得ないと思ったんですよね。でも、大丈夫です。俺がちょっと人ゴミに酔いやすいだけなので、はい」

 

 まくしたてるように喋って、相手の良心と俺のパッションの相乗効果を利用してこの場を収めようとしてみたが、どうだろうか。中々良くできたと思う。

 

「それよりも、ちょっと学校でやることを思い出したので、先に失礼します」

 

「え、あ、うん」

 

 よし、逃げるべ。

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