緊急出動!てぇてぇを守れ!   作:フユガスキ

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くしゃみは助かるが風邪は患ってほしくない

 放課後、俺は予定通りに校内の見回りに行っていた。尤も、今回は一部屋のみのものだが。

 

「ラミィのかき氷柱はいかがですかー?」

 

「今ならラミィ水のシロップも掛けま――」

 

「こら!ねねちゃん!んなもん、ないからぁー!」

 

 ねねがラミィの自作かき氷に純度100%のラミィ水を掛けようとして、ラミィに止められているようだ。カワイイ。

 

 この部屋は放課後にのみ開放されるだだっ広いホールのようなもので、何かしらの活動に自由に使える場所である。喧嘩でも夜の営みでもゲームでも運動でも、はてにはラミィのように売店すら置くことができる。そのため、学生の青き春を挑戦へとし向けるこの場所は、数多くの生徒が学生を忘れて楽しむことになる。

 ここで問題となるのが、イジメや犯罪といった風紀の乱れるような行いだが、度が過ぎたときに注意できるよう一応風紀委員が要ることになっている。

 

 だが、今年度の生徒の目的はそこではない。ホロライブとの関わりだ。

 この場は風紀委員としての介入は極力控えるように言われている。だから、全生徒が普段は認められていないホロメンとの会話を楽しむ権利が与えられたということである。

 

 これは至って問題視されるべきこと……なんてことはない。

 

 元々、ホロライブと関係を作るというのは、彼女らの自然体が損なわれることに繋がるため、それでは皆不幸になるから関係を作らせなかったのだ。

 だが、今度の場合、自然体が損なわれないでかつ、皆が幸せになれるのである。というのも、この場は自由参加であるため、ホロメンのうちの誰かが自発的にやってきたことになるため、これすなわち、ホロメンが俺らに関わりに来たという話である。無論、ホロライブ内でのみ関わりたいのなら、邪魔しないが。

 

 そして、なんと言っても俺にとっての嬉しいことは、風紀委員という肩書をかなぐり捨ててホロメンと関われることだ。

 今日この場でホロメンがいる箇所は、AZKi、すいちゃん、わためぇ、とその他歌が上手い生徒数人によるライブ会場、フブキとその他大勢によるユルいゲーム大会、ラミィとねねちの売店、そして、別々に適当に歩き回っているすばちょこるなと、ししろんポルカである。

 

 歩き回っているホロメンは、どうやらナンパなどは避けている様子なので、ラミィ水かき氷を食べた後、フブキのゲーム大会に参加しよう。ライブは今度のソロライブまでお預けである。

 そうと決まれば、まずラミィとねねのところへとむかっていった。

 

「かき氷を一つ」

 

「はい、何味にしますか?」

 

「ラミィす……無味で」

 

「え?味いらないんですか?」

 

 最近多いなぁとボヤきながら、ラミィは手動の削り機で削った氷にストローを挿して、はいどうぞ、と手渡してきた。

 俺はラミィの手に触るのは畏れ多くできずに、細心の注意を払ってかき氷を受け取った。やはり、アイドル単体なら下心を持っても、百合ともなってくると触るのは憚られるのである。

 

 そして、かき氷を受け取った俺は、かき氷を勢いよく食べ、脳へのキンキンとしたダメージと煩悩とを戦わせながら、フブキのゲーム大会へと向かった。

 

 フブキはワイフ……ではなくフレンズとしてゲームを盛り上げ、皆が満足行くよう順番を作って遊んでいる。

 

「にゃー…やーらーれーたー……。って狐じゃい!」

 

 猫やんけ、でお馴染みのオタク系フォックス、白上フブキ。彼女は所謂オールラウンダーというもので、割と色んなものを卒なくこなす。

 また、親しい隣人、黒上フブキも彼女の人気の一つであり、彼女を一言でまとめるなら、オタクに優しいオタクである。

 

 オタクは本来、同族嫌悪の世界の生き物であり、寛容や寛大とは正反対の奇異な生物である。お前とか言うなよ、お前、なんて言う言葉はいくらでも生み出される。

 そんな中、オタクの為のオタク、とかいう素晴らしい狐が発見されたのだ。かわい…けしからん!

 

 やはり、ホロライブはどこまでも超えてゆく……。

 そういう、可愛い娘の集まりなので、みんな見ようね!

 

 おっと、話が反れた。

 そういうわけで、適当に参加しても、適切な距離で接してくれるフブキの大会に参加したい所存です。

 

「は?風紀委員来たんだけど……」

 

「見張りか?うぜー」

 

「あれ?なんかおかしいぞ、フブキのとこに行ってないか?」

 

「は?普段あれだけ規制してんのに?」

 

「まじかよ、自分は楽しむのかよ。引くわ」

 

 などなど。様々なアンチコメントが寄せられているが、痛くも痒くもない。なぜかって?ホロライブを前にして、他人を気遣うやつがいるか?そういうことだ。

 多少のお言葉は貰ったものの、やはり注目を集めるのは大会であり、俺もその大会の一参加者に過ぎないのだ。

 

「はーい、今日は終わり終わりー!白上が疲れちゃったから、終わりだよー!おつこーん!おつこんおつこーん!みんな、付き合ってくれてありがとねー、じゃーねー、おつこーん!」

 

 なん、だと……?参加できていない……だと……?

…………………………ふっ、仕方ないか。また今度の機会にでも、ホロメンと遊ぼうか。うん。……はぁ。

 いや、もちろん、残念だが文句は言えまい。彼女らとて最大限頑張ってくれたのだ。一人で数千人を幸せにできるのだから、本当によく楽しませてくれている。

 

 さて、そろそろ、会議も終わった頃だろうし、委員室に行こう。

 

――――――

 

「――兎も角、一部のヒトを特別扱いするなんて間違っているし、そんな権利を風紀委員が与えられているわけじゃないだろ!いい加減にしろ!」

 

「いかにも。間違ってはいないが特別扱いしているわけではない。彼女らに対して不純異性交遊を図っているので、風紀を保つために規制しているに過ぎない」

 

「くっ、そんな証拠はあるのか!」

 

「証拠ではなく、校則です。程度の判断は学校に全て委ねられているので、そちらを確認するといいでしょう。なんなら、校則改変の意見書を提出しては如何ですか?」

 

 まだ続いているのか。っていうか、なんだこの、かませ犬臭あふれる会話は。

 やはり、オタクというのは、あくまで紳士でなければならないだろう。立場を弁えて、最大限にオタクを楽しむのだ。

 

「つまりは、だ。俺達から干渉するのは疑いがあるが、ホロメンから話しかけてもらえるのならば、問題がないわけだな」

 

「いや、そんなことはない。ここは風紀委員であってファンクラブではないからな」

 

「では、これのどこがダメなんだ!?」

 

「貴様が言っているのは、男の娘とTS娘とフタナリって一緒だよね、と同じことだ」

 

「それを同じにするな!……はっ」

 

「そういうことだ」

 

 いや、どういうことだよ。話に関係性がないんだが?

 と、一人ドアの前でツッコミを入れていると、日も暮れて物音のしなくなった廊下でコツコツという音とともにここに近づいてくるのが聞こえた。

 

 件のお祭りの後、普通は全校生徒が帰ることになっており、お祭りの際、教室に残るものはいない。つまり、委員会、部活、生徒会関係か教師の一部、もしくは警備でなければここを通ることはない。

 そして、警備のヒトは巡回するにはまだ早く、可能性があるのは教師と委員だけである。また、お祭りで委員と部員はほぼ全員が参加しており、唯一仕事で学校に残ったのは生徒会だけである。このことから、ここに来る可能性があるのは、顧問か生徒会の誰か――否、生徒会長ことお嬢は個人的に関係がなければ来るはずがなく、副会長は書紀をパシってることから、来るとすれば書紀こと天音かなた、もしくは、生徒会会計である。

 

 つまり、ほぼほぼホロライブ関係者がここに立ち寄る可能性がある。しかも、この会議をホロメンに聞かれるのは非常にマズイ。何がマズイって、ホロライブ関係の話題が問題として委員会で話し合っていると知られるのがマズイのだ。もし知られてしまえば、問題点として挙げられることを意識して、自然な行動ができなくなってしまうかもしれない。それは俺達の活動理念に反する。

 したがって、この会議を今すぐ中止させる必要があるだろう。

 

「大丈夫だ。分かっている」

 

 俺がドアを開けて入ろうとした矢先、ハル先輩が先にドアを開けて静止してきた。

 中を覗いてみれば、既にエリア先輩しか残っていなかった。

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