幻想法廷 ~転生裁判官の事件簿~   作:虫野律

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7話~13話まで連続投稿です。


淋しがりの君②

 1回目の公判を終え、レギーや証人が法廷からいなくなったタイミングでディランが声を掛けてきた。

 

「『第2回公判期日は追って連絡します』ってどういうことだよ?」形式的には質問文だけど、ディランも俺がやろうとしていることは理解しているはずだ。まだ半年の付き合いだが、それなりに仲はいいし。

 

「……なぁ」ディランの問いには答えずに、「ディランも本当は色々おかしいって思ってるんだろ?」とほとんど確信していることを訊ねた。

 

 例えば、シエンナの語った犯行場所。庭師を必要とするほどの立派な邸宅ならば応接室くらいはあるはずだ。それなのに、債権者と債務者の関係でしかないレギーを居間に招き入れるだろうか。

 

「……」ディランが黙る。が、一拍の後、ぼそりと言った。「俺は嫌だからな」

 

 意訳すると〈これ以上捜査はしたくない。俺抜きでやってくれ〉ってとこかな。

 

 まぁ世の中そんなに甘くないよね、とにっこりしてやる。ディランが「うへぇ」と嫌々嫌いな食べ物を否応なしに口に入れられたときのような声を洩らした。

 

「悪いが付き合ってもらうぞ」なんてったってディランは担当刑事兼検察官だからね。「とりあえずは遺体の確認をしたい」

 

 俺がそう言うとディランの顔は、いよいよもって医者に行くことを勧められそうな色合いになってきた。

 

 どんだけ働きたくないんだ。日本だったらヒモ系ニートとかになってたんじゃないか? というか、この世界でもあり得るな。

 

 俺が友人の行く末について心配していると、ディランが「なんだよ」と不満を口にした。

 

「刺されないように上手くやれよ」

 

「……」意味分からん、とディランが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 事件性の疑いのある遺体は、保存用の魔法──氷魔法と闇魔法の複合魔法により発見時の状態のまま、お城の地下に保管される。

 この魔法はかなりの難易度で、中々使い手がいない。領地によってはこの魔法を使える人材がおらず、腐敗を止める手立てがないこともある。しかし、クライトン伯爵領には1人だけ使い手がいるのだ。それも、とびきり上等なのが。

 おかげで犯罪捜査は随分とやり易くなっている。非常にありがたい。

 

 ディランと共に階段を(くだ)る。目的の階は地下1階なので、階段はすぐにお役御免となった。

 

「切断面は綺麗だったんだよな?」保管用の部屋、所謂、死体安置所へ続く通路を歩きながら、ディランに再確認する。

 

「……ああ」やや煮え切らない返事、あるいは図星をつかれた、かな。まだ面倒事を嫌がっているのだろう。いい加減諦めてほしい。

 

 どうして俺が切断面について気にしているのかというと、レギーに、生きている人間、つまりは動いている人間の首を一太刀で切り落とす技量があるとは思えないからだ。

 要するに、レギーを実行犯と考えると違和感が拭えないということだ。

 

 ディランもそのくらいは理解しているのだろう。「そこは気になるよな、やっぱり……」と自白した。

 

 そう思ってたんなら初めから報告書に記載してくれ、と言ったとしても、ディランにとって真実を明らかにすることは二の次三の次だろうから、あまり意味はない。

 ディランにはディランの価値観があるのは当たり前だけどさ、もうちょっと道徳心というか倫理観の守備範囲を拡げてもバチは当たらないと思うよ。

 

 それはそれとして、遺体安置所に到着した。解錠し、中に入る。生きた人間のいない広い室内には、ひんやりとした空気──寒空とは違った風情だ。

 

 ベッドというには簡素にすぎる台が並んでいて、端にある台に首の繋がっていない遺体が横たわっている。

 

 あれか? という意を込めてディランを見る。ディランは、口をヘの字にしつつ肩を竦めることで肯定を示すというひねくれた所業を見せた。

 

 遺体へと歩を進める。

 

 遺体の手首には、名前と、遺体に保存用魔法を掛けた日が記載された木製のタグが(くく)り付けられているので、確認する。「……ルーバン、13日1月1347年」これで間違いないね。

 

 早速、切断面を調べる。というか、すでにおかしい点が見えている。

 

「ディラン」

 

「なんだよ」

 

「これって頸椎(けいつい)を斜めに切ってるよな?」

 

「そうだな」

 

「そうだなって、お前なぁ……」これは伝えてほしかったよ。

 

 この前、俺は、斬首刑を上手く執行するために〈頸椎と頸椎の繋ぎ目を切るコツ〉をライラに教えてもらった。つまり、首を上手く切るには頸椎そのものを切ろうとしては駄目なんだ。

 しかし、この遺体はそんな一般人用の基本をガン無視して、頸椎ごとバッサリ両断している(超人どもは骨なんて豆腐のようにスルッと切る)。

 

「レギーに剣術の心得や戦闘経験はあるのか?」

 

「さぁ?」

 

「調べてないのか?」

 

「……一応、軽く聞き込みはしたさ」ディランが頭を掻く。「みんな、『レギーに剣術? 戦闘経験? あの腹を知らんのか?』って否定はしてたよ? けど、もしかしたら周りに知られないように隠してるかもしんねぇだろ」言い訳である。

 

「はぁ……」溜め息が出るが、今は捜査優先だ。「他に伝えてない重要事項は?」とディランの目を見据える。

 

「……」少しの間。そして溜め息。今度はディランだ。「ないこともないような気がしなくもない」

 

「黙秘権はない。早く吐け」

 

「……現場の居間によ」

 

「うん」

 

「血溜まり、あー、つまり死体のあったとこからそこそこ離れてる壁に、血痕付きの切り傷があった」

 

「……」えー、それは場合によってはかなりヤバイんじゃないか?「大きさは?」

 

「傷の深さは大したことなかったけど」と前置きしたディランは、「長さはこれくらいだ」と指を広げた。

 

 大体15センチか。

 

「シエンナたちには、その傷について訊いたのか?」

 

「訊いてないから安心しろ」

 

 要するに、ディランは、俺が詳しく捜査しようとする可能性を踏まえて、重要参考人以上の人物に警戒心を持たれないように立ち回っていたということだ。要領がいいというか、気が利くというか。不真面目なのに変な奴だ。

 

「じゃあ現場に行こうか」俺があっさり言うと、ディランは、「はいはい」と快諾(?)してくれた。

 

 

 

 

 

 

 お城を飛び出した俺とディランは、特別、紆余曲折はしていない道(比喩ではない)を進み、ベルフィス町に向かった。

 しかし、途中でディランが、「昼飯食おうぜ」と空腹を主張したため、ベルフィス町に到着したのは午後の3時過ぎだった。その後は寄り道せずにルーバンの邸宅へと歩を進め、時計の針が午後4時前を指し示したところで、やっと目的地に()き着くことができた。

 誰か自動車を開発してくれないかなぁ、と願わずにはいられない。

 

 ルーバンの家は、まさに〈豪邸〉と呼ぶに相応しい外観をしていた。家自体も大きいし、庭も広いし、塀も高い。

 

「どういったご用件でしょうか」後ろから少女の声。振り返ると、声の主──奴隷のイリスが感情の読み取りにくいすまし顔で俺たちを見ていた。

 

「少し調べたいことがありましてご訪問しました。今、よろしいでしょうか?」拒否されても捜査する権限はあるが、あえて波風を立てる趣味はない。

 

「……大丈夫だとは思いますが、一応、シエンナ様に伺ってきますのでお待ちください」とイリスは門を潜り、敷地内に消えていった。

 

 閉じられた門をぼんやりと眺めていたディランが、不意に、「下手(したて)に出すぎじゃねぇか?」と苦言を呈してきた。

 

 日本人的な感覚は、ディランには理解できないようだ。

 

「かもしれないけど、なんというか……癖? みたいなもんだよ」我ながら漠然とした釈明だ。

 

「嫌な癖だな」ディランの率直な感想が、なんだか可笑しくて吹き出してしまった。「なんで笑うんだよ」

 

「ごめんごめん。悪気はないんだ」

 

「別にいいけどよ。あんまりやりすぎると捜査しにくくなるぞ」舐められては駄目だ、ということだろう。

 

「分かってる」

 

 と、ここで門が開かれ、「お待たせしました。どうぞお入りください」と主の指示を得たらしいイリスが言った。

 

 

 

 

 

 

 現場の居間は、結界魔法により捜査関係者以外の立ち入りが禁止されている。だから、魔法発動中はシエンナたちや第三者が手を加えることはできない。つまり、ほとんど発見時のままということだ。

 

 問題の傷を見る。たしかにディランの言うとおり、遺体のあったであろう場所から離れた壁に傷がある──7メートルほどの距離(居間はかなり広い)。周りに似たような傷がないせいで、かなり浮いている。

 

 しかし、そんなことよりも血痕だ。血の付き方が、俺の想像と違っていたんだ。おそらく今の俺は難しい顔をしているだろう。

 

 傷に沿うように血痕があるのかと思っていたが、そうではなく、傷に微量の血液を叩きつけたような付着の仕方をしている。

 床の血痕も特徴的だ。大きな血溜まりのあるソファ周辺(遺体のあった場所)とこの壁の間の床に、複数の血の雫が落ちているのだ──雫の数は壁に近づくにつれて減少し、概ね壁の方向へと細長く伸びた状態で床に付着している。

 

「……」確信した。やはり真犯人は別にいる。

 

 いや待て。落ち着け。決めつけてはいけない。他の可能性もないわけではない。確信の前に確認だ。

 

「レギーのスキルは分かるか?」努めて平静に訊ねる。

 

「料理系らしいぜ」でも、とディランが続ける。「料理することは嫌いなんだと」見るからに食べるの専門だもんな、納得だよな、などと言っているが、太っている凄腕料理人もいるだろうし、この発言には同意しかねる。

 

「スキルについてはレギー本人の供述のみか?」ちゃんと裏は取ったのか?

 

「裏?」ディランが、ああ、まぁ、といった音を挟んでから、「レギーの友人や知り合いはみんな、『レギーの料理は旨い。いいスキルなのに勿体ないよな』って感じのこと言ってたぜ」と述べた。

 

 ほうほう。じゃあ、少なくともレギーが料理系スキルを持っているというのは、信頼できる情報だろう。

 普通の人は、スキルを持っていないか、持っていても1つだけだ──俺も、魔法系スキルの〈法令魔法(ファンタスティック ロー)〉しか保有していない。たしかに、2つ以上のスキルを持つ者も存在するが、それはあくまで例外と言ってもいい割合でしかない。

 したがって、レギーが奥の手として2つ目(又はそれ以上)のスキルを保有している可能性は低く、つまりは、レギーはこの現場を作り出す手段──俺の推理に合致した能力を備えていない可能性のほうがずっと高いはずだ。

 

 じゃあ、次は……。

 

 

 

 

 

 

 ルーバン邸を出て、次の目的地へ徒歩で移動しながら、シエンナ、ヒューゴ及びイリスのスキルについてディランに訊ねると、「シエンナは演技系スキルを1つ持ってて、あとの2人はスキルなしだ」と返ってきた。

 

 演技系スキルとは、演技が上手くなったりするスキルのことだ。

 

「シエンナたちを実行犯だと疑ってんのか?」ディランがこちらを見ずに質問した。

 

 そういうわけじゃない。「一応の確認だよ」と伝える。

 

「ふーん」納得はいかないけどそんなに興味もないから流すか、とでも思ってそうな言い方だ。

 

 ふと、パンのいい匂いがしてきた。目的地はすぐそこだ。

 

 

 

 

 

 

「走る豚?」イリスとヒューゴの証言に登場したパン屋の主人が、ディランの言葉に眉をぐにゃっと曲げた。

 

 ディランを小突きつつ訂正する。「豚ではなく武器商人のレギーさんです」いてぇ、と横から聞こえたが大したことではない。レギーの外見の特徴を伝え、「13日1月の午後に彼がこのお店の前を通ったはずなのですが、見ませんでしたか?」と再度、訊ねた。

 

「あー?」またしても眉を動かしている。「そんなデブは見てないな」と如何にも炭水化物をよく食べていそうなシルエットのパン屋の主人が否定した。

 

「では、ルーバンさんのところのヒューゴさんとイリスさんはご存じですか?」

 

「ああ、知ってるよ」

 

「同じ日時に彼らがここを通ったか分かりますか?」

 

「分からないな」だってよ、と息継ぎをし、「常に外が見えるとこにいるわけじゃない。中でパンを作ってることだってあるし、便所にも行く。それに、いちいち通行人に注目してないしな」と尤もな理由を語った。

 

「〈目撃はしなかった〉ということでよろしいですか?」俺がそう問うとパン屋の主人が、「あ」と声を出した。

 

「何か思い出しましたか?」

 

 しかし、パン屋の主人が口にしたのは、「便所の後はちゃんと手を洗ってるからそこは安心してくれ」というよく分からないアピールだった。「どうだい? なんか買っていかないか?」これなんか若い奴に人気だぞ、と謎の肉がふんだんに挟み込まれたパンを指差した。

 

 たしかに運動部の中高生は喜びそうだけど。ディランも興味を示しているけども。「この肉はいったいなんの肉なんですか?」

 

 パン屋の主人が、にやりと自分ではハードボイルドな渋い笑みとでも思っていそうでとても残念な肉々(にくにく)しい笑みを浮かべて言った。「それは企業秘密(トップシークレット)だ」

 

「……」

 

 ガサ入れしたほうがいいのだろうか。

 

 などと考えていると、「1つ買うわ」とディランが俺の思考をぶった()った。

 

「あいよ」パン屋の主人が、にっこりと何も考えていなそうな笑みを見せた。

 

「ノアは買わないのか?」

 

「……」

 

 流石に黄緑色の生肉はちょっと……。

 

 

 

 

 

 

 ディランには強み──ボスであるダーシーが利用価値を認めたであろう点が2つある。そのうちの1つが裏社会との繋がりだ。ディラン曰く、スラム育ちには珍しいことではないそうだ。

 

 そんな、半グレのディランに頼むのは、〈風魔法を使う殺し屋〉の捜索だ。

 

「風魔法?」ディランが訊き返す。が、すぐに「あー、たしかにあるかもな」と理解を示した。

 

 俺は、遺体の状態と現場を見て、〈ルーバン殺害の手段は風魔法だったのではないか〉と考えた。

 風魔法には、〈風の刃〉を飛ばすという、ファンタジーお馴染みの魔法が存在する。そして、その魔法ならば頸椎だって容易く切断できる。

 また、射程を設定すれば、任意の位置──例えば、術者から10メートルの位置など──で消滅させることも可能だ。つまり、現場にあった傷は、壁に到達する前に〈風の刃〉を消滅させようとしたが、少しだけ操作を誤ってしまった結果、消滅が僅かに遅れてしまい、貫通には至らない浅い傷を付けてしまったと解釈できるということだ。

 血痕の状態も、〈風の刃〉を壁の方向に飛ばして首を切断したのならば矛盾はない。

 

 さて、どうして殺し屋とかいう非日常の住人が出てきたのかというと、シエンナたちが嘘をついている、則ち、共犯者のいる可能性が極めて高いことを前提に推理した結果だ。

 ディランの、雑なようで意外とよく見ているであろう捜査によると、シエンナ、ヒューゴ及びイリスの中に風魔法を使える者はいないらしい。ということは、彼女たち以外の実行犯──共犯者が存在していることになる。

 現場を見るに、風魔法のレベルはそれなり以上であると考えるべきだろう。したがって、実行犯たり得る人物は限られている。魔法の学校のないクライトン伯爵領ならば尚更だ。

 この条件をクリアし、かつ犯罪に加担することに抵抗がない人間となると、裏社会の人間が最も妥当なところだろう。

 たしかに、シエンナたち以外の、ルーバンを殺害する動機のある人物──堅気の──が、高レベルの風魔法スキルを有している場合も絶対にないとは言い切れないけど、その場合、風魔法の保有について知られていない状態でなければ疑われてしまう可能性が高い(実行のハードルが高い)ことも考慮すると、やはり〈動機のある人物=風魔法スキルの保有者=実行犯〉である確率は低いはずだ。

 以上から、〈外部から殺しを請け負ってくれる人を連れてきた〉と結論づけた。則ち、〈風魔法を使う殺し屋〉だ。

 

 俺が現時点で推定(・・)している事件の真相はこうだ。

 まず、シエンナ及びヒューゴが、ルーバン殺害について正犯(せいはん)意思を持って共謀(きょうぼう)し、命令に逆らえない奴隷のイリスを巻き込み、計画を立てる。次に、〈風魔法を使う殺し屋〉に依頼を出し、実行行為を担当させる(実行犯)。

 また、シエンナ、ヒューゴ及びイリスが口裏を合わせて嘘の証言をすることで、レギーを犯人に仕立て上げ、自分たちが疑われないように偽装工作をした。

 結論、ハイヴィース王国の法律実務上、殺人罪に関し、この4人は全員が共同正犯(殺し屋以外は共謀共同正犯)ということになり、それぞれが殺人罪の全責任を負う(減軽(げんけい)事由ではない)。

 

 で、今から何をするかというと──。

 

〈風魔法を使う殺し屋〉の捜索についてディランは、「それは分かったけどよ」と承諾。次いで、「ノアはどうするんだよ?」と他意のない様子で問うた。

 

「俺はシエンナたちの動機を探る」

 

「やっぱり疑ってんじゃねぇか」ディランは鋭くはないツッコミを入れ、「裁判官様が嘘ついていいのかよ」と嫌らしく笑った。

 

「いやいや、それは誤解だ」嘘はついてない。「ディランは『シエンナたちが実行犯(・・・)だと疑ってんのか?』って訊いたじゃん」

 

「だから嘘ついてんじゃん」じゃん、のところで俺の物真似をしてきた。

 

「だからさ、実行犯とは思ってないから否定したんだよ」あくまで共謀共同正犯として疑っていただけだ。

 

 ディランの口が半開きになる。しかし数瞬の後、「……あのさぁ」と何度注意しても態度が改善されない不良学生に諦め始めた新任教師のような顔で切り出した。「法律家のそういうとこ……言葉に拘るとことか屁理屈こねるとこ、嫌いだわ」マジで嫌いだわ、と友情を破壊することも(いと)わぬという気概を感じさせる発言。

 

 ちょっとにやけてしまう──ディランに少しばかり距離を取られた。

 

「昔、大学の教授が言ってたんだけどさ」と俺が昔話を始めると、「は? 大学? お前、大学行ってたのか?」とディランは少しばかり距離を詰めてきたが、構わず続ける。「法律を勉強していくと、どんどん性格が悪くなっちゃうらしいよ」だから〈嫌い〉はむしろ褒め言葉なんだよ、と回りくどく感謝を伝えた。

 

 ディランは、呆れと困惑と諦めが入り交じったような面持ちで、「法律家がおかしいのか、ノアが特別おかしいのか……」と呟いた。「でも、ジェイデンは変人っぽくねぇし、やっぱノアがアレなんだな」失礼な自問自答を終えたディランが、晴れやかな表情を浮かべる。

 

 なんて奴だ、と思ったところで、仕事の話に戻す。「一応、シエンナたちが真実を話している可能性もゼロではないから、聞き込みもするつもりだよ」

 

「ほーん」聞いている雰囲気は皆無である。

 

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