時は近未来、カジノ合法化に伴い街も変化し世の中の光と闇がハッキリと分かれた時代。
そんな荒廃した世界で、1人の少年【苗木誠】から物語は始まる。
苗木「そんな!!僕は高校に行けないだって!?」
とある街にある小さな家の中で苗木誠は叫んだ
苗木ママ「そうなのよ誠ちゃん、最近は高校に行くだけで1000万もかかるのよ。」
母親が頬に手を当て首を傾げ困った顔をする。
苗木ママ「幼なじみの舞園ちゃんだって働くって言ってるのよ。誠ちゃんもこれから働かないとダメじゃない。」
苗木「い、いやだ!!働きたくないでござるうううううう!!」
こまる「え?お兄ちゃん働かないの?ニートになるの!?今の時代ニートは犯罪なんだよ!!」
とても軽蔑した目で妹のこまるが睨みつける
苗木「見ないで!!そんな目で僕をみないで!!」
母親がため息をつきながらバッグに手を入れる。
ガサゴソと中から何が出てくるかと思いきや、なんと大きな札束が姿を現した。
苗木「100万円だ!!」
苗木の目の色が瞬く間に変わる。
苗木ママ「誠ちゃん、これはね、パパが貴方のために頑張って貯めたお金なの。」
苗木「嘘でしょ……僕に1番厳しかったあのパパが!?」
苗木ママ「この100万で、仕事探してきなさい。」
苗木ママ「あと、もう大人なんだから一人暮らししなさい、いつまでも実家でゴロゴロされても困るのよ」
苗木ママ「この国では18歳を過ぎたら一人暮らししなきゃいけないって新しい法律が出来たのよ」
苗木「えぇ!?そんな法律ができたの!?そんなぁ!!」
こまるもすかさず後押しする。
こまる「そうだよお兄ちゃん!!あたし達家族でしょ。ママもパパもみーんなお兄ちゃんの事応援してるんだよ!!」
苗木ママ「一人暮らし、頑張りなさいね」
苗木「みんな、、、、」
泣きそうになるのをグッと堪え宣言する
苗木「僕頑張るよ!!立派な大人になります!!」
笑顔で手を振る家族を背に翻し、苗木は街へと旅立って行った。
〜1年後〜
苗木「クソッ出ろよ!!早く吐き出せよこのクソ台!!」
洗濯してないパーカーを身にまとい、もう数ヶ月切ってない髪をボリボリかきながら苗木誠は人をダメにする機械とにらめっこしていた。
舞園「ちょっと。落ち着いてくださいよ苗木くん。」
隣で幼なじみの少女【舞園さやか】が苗木を咎める。
苗木「だって5万もぶち込んでるんだよ!!なんで出ないか理解できないよっ!!」
ここはパチンコ・スロット店クズの集まる場所。
舞園「大丈夫ですよ、あと10万くらいつっこめば出ますって、わかるんですよ、私エスパーですから。」
舞園は相変わらずのニコニコ顔で青いストレートの髪を手でいじくりながら笑っている。
スカートであぐらをかくその姿は、元アイドルとは到底思えない。
苗木「そ、そこまでゆーなら、僕は舞園さんを信じるよ!!」
~1時間後~
苗木「だああああああ!!なんでっ……なんで勝てないのぉ……?」
舞園「あっちゃー……ダメでしたか……。」
ついに1年前に親から貰った100万が底を尽きてしまった。
苗木「くっそおおおおおお!!」
苗木が台をバンバンしながら泣き叫ぶ。
店員「お客様!!他のお客様のご迷惑になりますので、台を叩くのはおやめ下さいっ!!」
店員の男に羽交い締めにされる。
舞園「苗木くん!!心配しないでください。」
まわりで見ている客が驚くくらいのジャンプで
舞園がパチンコのイスの上に飛び乗り、ヤンキー座りで苗木の顔を覗き込む
舞園「借りればいいんですよ!!」
苗木「……借りる?」
苗木は舞園の勢いに意表をつかれた様に目をパチクリさせる。
舞園「そう、借りる。苗木くんみたいなボンクラでもお金を借りれる所、私知ってるんですよ。」
ボンクラという単語は気に食わなかったが、お金という単語には逆らえなかった。
~九頭龍ファイナンス~
苗木「すいませーん!!お金貸してください、100万円ほどお願いします~!!」
辺古山「ふむ、今は社長が外出していてな。
この私【辺古山ペコ】が対応しよう。」
そう言って出てきたのは灰色スーツに身を包んだメガネのスレンダーな女性だった。
辺古山「見た所返せる見込みが無いようだが、本当に貴様は返せるのか?」
辺古山が無機質で屈託のない笑顔を浮かべながら、グレーの髪ををかき分ける。
背丈の高い高身長のせいで威圧感が彼女の周りの空気だけを歪めていた。
苗木「そ、そんな事ないですよ。すぐ倍にして返します!!」
辺古山「ふむ、そうか。ならこの100万円を«トゴ»で貸そう。」
苗木「トゴってなんですか?」
苗木がすっとぼけた声で聞き出す。辺古山も幼馴染であるはずの舞園も呆れ顔だ。
辺古山がよくそんな知識で来られたなと言わんばかりの顔でため息をついている。
すかさず舞園が答える。
舞園「苗木くん、10日で5割の利子って事ですよ。」
辺古山「いや、10分で5割だ。」
舞園「へ?10日で5割ではなくて?」
辺古山「そうだ、10分で5割だからな。」
舞園は辺古山の真剣な眼差しで本気だと察する。
苗木「うーん!!よくわかんないや!!」
苗木が首を傾げる。
舞園「とにかく返せばいいんですよ、分かりましたか苗木くん?」
苗木「はーい!!」
辺古山「ちゃんと返すことだ。」
辺古山のため息がとどまる所なく吐き出される。
舞園「良かったですね苗木くん!!またパチが打てますよ!!」
~1年後~
苗木「クソッ!!出ろよ!!早く吐き出せよこのクソ台!!」
舞園「ちょっと苗木くん!!おちついてください!!これ以上暴れたら警察がっ、警察が来ちゃいます!!」
舞園が苗木を店員より先に羽交い締めにする。
舞園「私達2人とも未成年なんですからっ!!バレちゃいますよっ!!」
苗木「返してー!!僕の100万を返してよ!!」
舞園「諦めてください苗木くん!!消えたお金は戻ってこないんですっ!!」
苗木「うっ、うっ、うわあああああああん!!」
黄昏に沈む街を背景に、2人の影が悲しく映る。
苗木「ぐずっ……えぐっ……舞園さんお金貸してえええええええ!!」
舞園「ダメです!苗木くんは学習能力が低すぎですよ!!」
苗木「うっ……そもそも舞園さんが借りろって言うから借りただけなのにぃ……。」
舞園「なんですか!?人のせいにするんですか!!」
あからさまにふざけんなとばかりに舞園が苗木を睨む。
舞園「なんですか?やりますか????」
舞園が腕をシュッシュとさせながらボクサーの様にかるくジャブをする。
2人揃って互いに飛びかかろうとしたその時、2人の目の前を刀が通り過ぎ壁に突き刺さる。
辺古山「ふむ、面白いな、人様から金を借りといて、まだ借りようとするのか。」
舞園「こ、この声は……」
舞園が顔を引きつらせ後ずさる。同じような顔で苗木も反応する。
苗木「ぺこ……やま……さん……。」
黄昏が辺古山のグレー髪を栗色に染め上げる。
無機質な笑顔で鬼の如く鞘を手に持っている。
辺古山「さあ、借りた100万と利子を返してもらおうか。」
もう辺古山の顔は笑ってはいなかった。
ただ静かに静寂の中で無表情でも怒りが読み取れるくらい憤怒していた。
苗木「おいくら万円でございますでしょうか……。」
苗木が震え声で聞き出す。
辺古山「そうだな、利子も入れてと……。」
辺古山「100億円ぐらいだな。」
舞園「えぇ!?100億!!いくらなんでもそれは……。」
舞園がそう言いかけるが辺古山が言葉を被せる。
辺古山「いくらなんでも何だ?借りたのは紛れもなくこの男だろう。」
辺古山「さあ払え!!」
苗木「無理ですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
苗木は駄々をこねる子供の様にジタバタしてまた泣きべそをかく。
辺古山「そうか、払えないか……。」
辺古山の口が一瞬だけ舌なめずりしたかと思うと、壁に足をつけて刀を抜き取り苗木に向ける。
辺古山「なら、今ここで死ね!!」
その宣告は苗木誠という少年の人生の中ではあまりにも早すぎた。
舞園「逃げますよっ!!いそいでっ!!」
次の瞬間、叫び声ともとれる大声を合図に舞園が苗木の腕を取り走り出す。
辺古山「逃がすかっ、地獄の果てまで追いかけてやるっ!!」
沈む夕日は辺りを群青色に染め上げていた。
気づいたら夜の海の中で休む事を忘れたマグロの如く、2人細い路地を駆け抜けて走っていく。
〜???〜
どれだけ逃げたのだろうか、ここが何処なのかもわからない。
日はとうに暮れ、夜と街が共鳴し合う時を告げる電光掲示板の光が眩しく目の中に映る。
この街は息をしていた。
まるで感情が存在する様に。
様々な人々が怒って、泣いて、笑っている。
ネオンに照らされた巨大なバルーン人形は黄金に輝き私を手招きしている様に感じた。
2人で逃げなければこの街に喰われてしまう、そんな気がした。
黒い服の男達が真後ろを通り過ぎる。大きなゴミ箱の裏でそっと息を潜める。
隣で一緒にしゃがんでいる苗木も汗をかいている、息はまだ荒い。
どうやら逃げてる間に迷い込んでしまったらしい
金と、狂気と、光と、闇がつきまとう街に……。
噂で聞いた事があった、この国のどこかにカジノシティがあると。
この街の名はたしか……。
【キボウガミネカジノシティ】
「おいでよ」
そう誘われている、私を街が呼んでいた。
行こう、心の準備ができた。
舞園「行きましょう、苗木くん」
おかしい、返事がない。
ふと、隣を見ると苗木くんが倒れていた。
それに気がつくと同時に、私の意識は暗転した。