TS魔法少女は誰に恋をする   作:mitose

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第2話

「それでキミは…どこ所属の魔法少女かにー?」

 

「………は?」

 

 

静寂の中、妙に高く間の抜けた声だけが響いた。

 

ま、魔法少女?何?誰のこと?僕に言ってる??

この生物は何を見てそう言ったんだ??

 

頭の上に?を沢山出現させながら僕はとりあえず自身を確認するように下を向こうとした。

…が、いつの間にか頭の上に乗っていた何かが垂れ下がり視界を覆い始めた。

その何かを手に取り、見えるように下げ少し遠ざけてみる。

 

鍔の広い…三角帽子?綺麗な赤色の糸で紡いだと思われるそれは先端部分が犬の耳のように折れ、

円柱の下部、鍔と繋がる箇所に三連星の装飾が月明かりに照らされキラキラと輝いていた。

 

 

「礼儀を重んじる…縄張りを荒らすその行動と違い随分と丁寧な魔法少女だにー。

 悪い子では無いとは思うけど一体どこの魔法少女だにー?」

 

「その…さっきから言ってる魔法少女って誰のこと?」

 

 

さっきからこの生物は僕の事を魔法少女と言っている気がするが当然僕は魔法少女じゃない。

ただの中学生だ。しかも男子。だからこの疑問は当然である。

 

 

「…魔獣を倒すそのスキル、ただの少女が出せる物では無いにー。そしてその格好、そのオーラ。

 ミーの良く知る魔法少女以外の何物でも無いにー!何を言っているにー?」

 

「いやいや!確かに化物を倒したあれはよく分からないけど、僕はただの人間だし、少女じゃなくて男だよ!」

 

「男だに?ミーにはどこからどう見ても可愛い少女にしか見えないにー」

 

 

何を言っているんだこのへちゃむくれは。

どこからどう見ても男だろ。なんか変な帽子持ってるけど。

とりあえずこの帽子のせいで中断していた自身の確認を再開してみる事にする。

 

 

 

 

 

…は?………はぁ!?

 

下を向き自身を確認しようとし、まず目に入ったのは大きなリボン。

胸の辺りにあるリボンは帽子と同じ赤色をしていた。というか全体的に赤色だ。

短いこの上着、ボレロって言うのかな…随分とフリルのついたボレロの内側にはこれまたフリル沢山の長いワンピース。どちらも赤系だ。

そのワンピース(ちょっと違う、なんとかスカートみたいな名前だった気がする)は少し色が薄く、その胸元には先程のリボン。

そして足元は短いブーツ。チェーンと先程の帽子についている物に似た星型の装飾が綺麗に彩り可愛らしい。

 

そんな明らかにファンシー寄りファンタジーな格好をする男子中学生。…多分変態だと思うんですけど(名推理)

確かに魔法少女然とした格好。これは魔法少女だ。たとえ変態でも魔法少女に見えない事もない。

急に顔が熱くなる。自分でも顔全体そして耳まで真っ赤になっている事が分かる。

 

い、いや、鏡を見ない事には!

ふと顔を上げるとそこにはカーブミラー。

急いで駆け寄り自身の変態度を確認する。高ければ死ゾ。

 

見慣れた顔の変態を目視しようとカーブミラーを覗き込むと……

初めて見る顔が、真っ赤になっているその顔がこちらを見返していた。

 

 

 

 

 

今の僕と同じ格好をした謎の少女はポカンと口を開けて僕を見ている。

ピンク色?いや淡い赤色をしたその髪は左側に向かい大きく流れるように7:3、8:2かな?で分けられており、

右側には小さい編み込み、その先端はこれまた同じく星型のアクセサリーで止められていた。

少しツリ気味でまつげの長い赤色の目をパッチリ開いており、血色の良い唇したその口もあんぐりと開かれていた。

ちょっと間抜けな感じだがパッと見でもジッと見でもかなりの美少女だ。多仲さん程じゃないけど。

 

そりゃそんな顔するよね。だって似た格好をした変態男子中学生が君の目の前に居るんだ。

ここまで僕の容姿について一切触れていなかったがそれには理由がある。

 

コンプレックスマシマシだからだ。

同年代の平均身長から一回り以上小さく。かろうじて女子の平均身長には勝る程度の身長。

黒寄りの茶色で、毎朝少しでもましに見えるように頑張るがそれでも寝癖かと思われるような癖のある髪。

常時眠そうな半目状態にも見える目と、これでもスポーツ少年のはずがどこか不健康そうな顔。

これでも全体を通して自分の中ではまだ中の下位だと思いたいが…きっと世間の評判はもっと厳しい筈だ。

そんな自分が同じ格好をして目の前に居るんだ、彼女だって驚き不審がる筈だろう。

 

と、とりあえず何とかして彼女の誤解を解かなくては。

 

 

「は、はは、はじめまして!…こ、これは違うんです!そういう趣味じゃな……」

 

 

明らかに誤解が解けるとは思えない説明を行う僕だが、何故か彼女も同様に慌てている様子だった。

んん??なぜ彼女は慌てているんだい?

 

……そういえばこれ、カーブミラーじゃんね。僕写ってないね。僕が居なくて君が居る。

あっ、そっかぁ…(クソ雑魚知能)

 

とりあえずカーブミラーに手を振ってみる。

彼女も寸分変らず動作で手を振り返してくれた。うん、可愛い!

なるほどねぇー…通りでねぇ…。

 

 

「……外傷は無いみたいだけど頭の方やっちゃったかにー?」

 

 

へちゃむくれ、いや長いからへちゃでいいや。は呆れるように僕に声を掛けた。

多少混乱はしているが頭は至って正常だ!この野郎抗議の一つでも、と思い振り返る。

 

 

「キミの事を詳しく知りたいけど、その前にマリを休ませなくちゃだにー!」

 

 

僕が口を開く前に、へちゃは慌てながらその短い手から優しい光を出現させた。

その光は先程の化物に倒された青髪魔法少女を包み込み、まるでシャボン玉のようにフワリと浮かび上がった。

その際、うつ伏せになっていた青髪魔法少女が仰向けになり、その素顔を確認することが出来た。

やっぱり見たことある気がする。けど僕には青髪の知り合いは居ない。

 

 

「ミーは一旦この子を家で休ませる為に帰るにー!

 …キミのオーラは覚えたからここから逃げてもすぐ見付けられるに。逃げても無駄に!

 キミが誰で何処に所属している魔法少女か、後で必ず教えてもらうからにー!」

 

「えっ?あ、はい…」

 

 

へちゃは言葉の波を叩き付けるだけ叩き付け、抗議の時間を僕に一切与えず空へ飛び立った。

シャボン玉っぽい光に包まれた青髪魔法少女も紐で引っ張られているかのように同じ方角へ飛び立って行く。

北へ向かう彼女たちをぼんやり見ているといつの間にか辺りには喧騒が戻っていた。夕焼けが冷えた体を暖かく迎えてくれる。

 

僕はとりあえずどうしようか。帰るか。

 

 

 

 

 

 

 

帰る前にあの青髪魔法少女が倒れていた箇所と崩れた砂山さんの家をそれぞれ確認したが、

まるで何事もなかったかのように、時間が巻き戻ったかのように元に戻っていた。すべて夢だったのだろうか。

 

先程まで忘れていた感触で手に持っていた何かを思い出した。

短いバトンのような両端にキラキラとした宝石をあしらったそれ、またそれを持つ手や腕を見る。

そういえば赤いオーラの大剣はいつの間にか消えていた。自身から出ていたオーラも。

カーブミラーをチラリと確認すると赤髪魔法少女と目が合う。すべて夢であって欲しい。

 

取り敢えず自分の家に帰る為に歩みを進めようと一歩踏み出した。踏み出した所で考えた。

これ、家に帰っても絶対僕って解らないよね。なんだぁテメェ?ってなるよね。

詰んだ…。

 

 

 

このニュータウンは10年程前に出来た比較的新しい住宅地だ。

その中心には広い公園があり、調整池とそこから流れる人工の小川が流れている。

小さい頃はここで水浴びをしたりザリガニ釣りをしたりと幼馴染のホウタ、後もう一人幼馴染が居るが最近会ってないな。

その二人と一緒によく遊んでいた。遊具が減ったように見える。小川もこんなに小さかったっけ?

 

時刻は18時を過ぎていた。公園はもう誰も居らず、その中で僕はポツンと一人ベンチに座っている。

一応家族へはSNSアプリのルインを使用し、遅くなるから晩ご飯食べててと伝えたので大丈夫そうだ。

なんで僕が公園に居るかと言うと、逃げても無駄!と言っていたへちゃを待っているのである。

 

何も分からないまま赤髪魔法少女になった僕は、このままでは帰れないので戻る方法を考えていた。

僕の持つ魔法少女と呼ばれる物の知識から戻る方法を色々試してみたが、全く効果は無かった。

変身の切っ掛けであるバトンを離しても何も起こらない。『解除!』に始まる変身解除の言葉も虚しく響くだけ。

周りから見れば魔法少女になりたいコスプレ少女だ。いくらこの子が可愛くても白い目で見られる事は間違いない。

30分位試して見た所で疲れてベンチに横になった。もしかしたらとポーズとったりしなければ良かった。

 

 

「…マリの魔法具を忘れて取りに戻って来たにーが、まさかキミが持っていたなんてに」

 

 

気配も無く急に声が掛かり、焦った僕は飛び上がるように起きた。

急に現れるのは心臓に悪すぎるからやめてよ…。

 

現れたのはさっきのぬいぐるみ、へちゃだったがその様子から何となく怒りが感じられた。

 

 

「マリの魔法具を奪い、一体何をする気だったんだにー?

 そもそもキミは何処の魔法少女だに?返答によっては少し痛い目を見てもらう必要があるにー」

 

 

気配の無かったへちゃが、なにやら剣呑なオーラを発生し始めていた。

 

「ちょっとまって!ホント誤解だって!!

僕は魔法少女も知らないし、その魔法具?ってのも全く分からないよ!!」

 

 

僕は手と顔を左右に振りつつ違う誤解だとアピールする。

本当に何も知らないし。てか声も随分と高く可愛らしくなってる…ってそんな事考えてる場合じゃない!

 

 

「知らないはずがないに!ミーはスキルを使い魔獣を倒した姿をこの目で見たにー!」

 

「ホントだって!!このバトンみたいなのを握ったら急に光って大剣が現れて、気が付いたら化物が倒れてたんだよ!!」

 

「そう!それが魔法具で、その大剣がスキルだに!!

 ………え?そ、そのマリの魔法具で大剣が出たに…?」

 

 

へちゃは急に驚いた顔を見せる。剣呑なオーラも鳴りを潜めた。

理由は分からないが突破口が見えた気がする。一気に捲し立てよう。

 

 

「この魔法具だよ!その…マリさん?の魔法具を握った時に赤いオーラの大剣が出現したんだ!

 そしてこの魔法少女の姿になったんだ!何故か分からないけど!!」

 

「僕はただの中学生!それも男子中学生だ!!逆に教えてよ!!

 一体何がどうなってこうなっちゃったの!?これ返すから戻る方法を教えてよ!!」

 

「……」

 

 

僕の必死な叫びを聞いたへちゃは黙り込んだ。

困惑しつつなにやらブツブツとつぶやいている。

 

 

「……魔法具は固有(ユニーク)のはずだに…他の魔法少女が使用することは……いやそれよりも男が……」

 

 

考えている様子のへちゃを僕はじっと見つめる。何とかこの場を切り抜けられると良いけど…。

暫く考えていたへちゃだが、落ち着きを取り戻し口を開いた。

 

 

「…その様子だと本当に何も知らないようだにー。

 出来ればもう少し詳細とキミが誰なのか教えて欲しいに」

 

 

その様子に安堵した僕は今までの状況など全てを一から説明した。

自分の名前、性別、年齢やここの近くに住んでいる事。

下校時にこの状況に巻き込まれ、化物に襲われそうな所を魔法少女のマリさんに助けてもらった事。

そのマリさんが化物にやられた時、偶然手にもった魔法具によってこの姿になった事。

多仲さんの事は伏せた。少なくともあの場には居なかったし余計な事を言って巻き込んだら申し訳ないし。

 

説明が終わった僕はようやく一息ついた所で気になる事を聞いてみた。

 

 

「そういえば君の名前は?と言うか偶然誰も居なかったから良かったけど、

 もし誰か居たら明らかに不審者になっちゃうんじゃ…?」

 

「あ、それは大丈夫だに。ミーの姿は魔法少女にしか見えないから問題は無いにー!」

 

 

問題しか無い。これじゃ僕が完全に不審者じゃないか。ホント誰も居なくてよかった!片田舎バンザイ!

 

 

「確かにミーの事説明してなかったに、申し訳ないにー…。

 ミーの名前はミュルミューラだに!魔法少女をサポートするネコ型妖精で、

 妖精界には『ストップストップ!!』…何だに!ここから先が大事な所なんだにー!!」

 

「名前だけ分かれば十分だよ。後は戻る方法を教えて欲しいかな。

 それが終われば僕はもう君たちに関わらない!僕は何も見ていない!…あ、この記憶だけ消せたりとかも出来る?」

 

「そんな器用な魔法は無いに。

 それに変身や解除は魔法具さえ近くに有るなら思い念じるだけで可能だにー」

 

「…え?それだけなの!?本当に!?」

 

「そりゃそうだに。もし掛け声や詠唱が必要なら隠れて変身出来ないに。非効率だに」

 

 

なんだそんな簡単だったのか。なら早速!

目を瞑り念じる。戻れ…戻れ…変身解除…解除して下さい神様魔法具様!

 

………行けたかな?目を開けてみる。

うん、駄目だ。胸元のリボンが悲しく揺れる。

 

 

「…あの…駄目みたいですけど……??」

 

「知ってたに。あれだけ戻りたい気持ちを口に出してたからに。

普通ならその時点で変身が解除されてる筈だにー」

 

 

確かに。

 

 

「仮説。あくまで仮説だにー。

 男が魔法少女になる事もイレギュラーだけどそっちは置いとくに。

 本来、魔法具は魔法少女毎に固有の物で、今その手にあるのはマリの魔法具だに。

 何かしらの力で無理やり発動は出来たが、戻る為にはキミ…レント固有の魔法具が必要なんじゃないかにー?」

 

 

ほうほう。それなら僕の魔法具があれば戻れると。

……ん?僕の魔法具?それを作ると言う事は…事は……

 

 

「という訳でミーと契約して(魔法具を手に入れて)魔法少女になろうに!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁあ!それ最後絶望しか待ってないやつぅぅぅぅぅう!!」

 

 

 

 

 

 

 

「へちゃ…ミュルミューラ様、……それ以外に方法は無いんでしょうか?」

 

 

契約して魔法少女になるのは嫌じゃ!絶対なりとうない!…いや既になってるっちゃなってるけど。

何か他の方法があれば藁でも蜘蛛の糸でも掴んで見せる!

 

 

「へちゃ??…あるかもないかもしれないに。大体全てがイレギュラーなんだにー。

 今のレントを解析する事で原因が分かるかもしれないけど、そもそもあまり時間はないに」

 

「時間?なんで時間が無いの?」

 

「キミ達魔法少女は魔力、マナを少しずつ消費して存在しているに。

 幸いキミは初めての変身の割に多めのマナを所持しているにー。

 ただ、それでも何時かはマナが尽きてしまうに」

 

「マナが尽きる?それは人間に戻るだけなんじゃ?願ったり叶ったりだと思うけど…」

 

「違うに!人間に戻るにもマナは必要だに。

 本当にマナが尽きてしまった時は戻るどころか存在が消えてしまう、つまり死が待ってるに」

 

「魔法少女めっちゃ大変じゃん!!それ聞くだけで既にやりたくないんだけど!?…いやもうなってるけど!!

 ホントみんな良く魔法少女になったね!?どこかのインキュベーターみたく騙したの?」

 

「騙す訳が無いに!ちゃんと説明してるにー!!それを防ぐ為にも魔法具が必要なんだに…

 魔法具にはスキルの発動以外に『マナが尽きる前に判断し人間に戻す機能』『非常時に人間に戻す為の少量のマナ保持機能』、

 の2つの魔法少女緊急補助機能を持ってるに。また、魔法具から離れるもしくは壊れる際には自動解除が発動されるんだに!」

 

「そしてマナの回復は人間に戻った時に魔法具の補助で高速化されるに。

 常時ほんの少しずつ回復するけどそれより遥かに早く回復出来るに」

 

 

魔法具、割と至れり尽くせりだった。

そりゃ魔法少女の持つ精強な力もリスク無しで使用出来るなんて世の中そう甘くない。

だけどこの魔法具はそのリスク、デメリットを十分補っていると思う。

 

確かに魔法具が壊れるレベルの戦いが行われたなら、人間に戻っても戻らなくても待ってるのは死のみだ。

だがもしその状況で生き残れたら、マナ消費ゼロの人間状態でマナの回復しつつ再度制作した魔法具を持ってまた戦える。

正直そこまでの状況でもう一度戦いたいと思う魔法少女がいるのかは別の話だけど…。

 

そして、固有の魔法具が無い僕はこの恩恵を受けられず、このままだとこの赤髪魔法少女の力で死ぬ。

今年って厄年だったっけ?

 

 

「レントの魔力は後3~4日位で尽きるに。それでもう一度聞くけど…ミーと契約して魔法少女ならないかに?」

 

「……ぐぬぬ。取り敢えず仮の契約に出来ないかな?別の方法も行けるなら魔法具返すから」

 

「問題ないにー!そもそも一度契約したら一生魔法少女って訳でもないから、辛かったら何時でも辞めれるに。

 本来だったら制作した魔法具の分位は働いて欲しいけど、今回は一般人を巻き込んだこちらの不手際でもあるしOKだにー!」

 

 

ホッ…。

一度契約したら最後、絶望一直線の世界では無かったようだ。

 

 

「…だけど」

 

「ん?」

 

「ミーは出来ればレントに手伝って欲しいに。さっきのような強い魔獣、ケルベロス型2種…あ、これは魔獣の種族と強さだに。

 1種だと魔法少女が数人は必要だに。その2種でも一人では厳しいけどキミは初めての変身なのに一人で倒したに」

 

「正直、魔法少女になれる素質のある子は少なく、現在も十数人しか居ないに。

 だから少しでも素質ある子には魔法少女になって欲しいにー…」

 

「そして、今この御香原市はマリ一人だけだに。さっきの戦いを見ても分かる通りまだ魔法少女になって半年の彼女には厳しいに。

 強制は出来ない…だけどもし続けてくれるなら全力で支えるに。時間は沢山あるから考えておいてくれると助かるに」

 

 

確かにさっきの戦い、あの青髪魔法少女だけではキツそうだ。

だからといって自分が手伝えるレベルの物なのかな…。

だけど、彼女一人だけに全てを背負わせて見て見ぬ振りもイヤかも…。

だけどだけど、死ぬのは怖い。コレを乗り越える根性が僕にあるのか…。

 

 

「……その件は一旦保留でお願いします」

 

「了解にー!では早速、契約申請と魔力検査が出来る我が隠れ家に案内するに!

それが終われば明日中にはレント用の魔法具を用意出来るに!」

 

「え?魔法具出来るの明日なの!?」

 

「そうだに!流石にどれだけ早くても1日は掛かるにー!

 大丈夫、魔力検査システムで同時に他の方法を探る為の情報収集も出来るに!

 まだ魔法具で元に戻れる確証は無いから、出来る限り早急に進めたいに!」

「あ、いや、それは良いんだけど、その前に流石に家に帰りたいなぁ…。心配掛けれないし。

 ……だけど明日までこの姿確定じゃ家に帰れないかぁ…」

 

「??………にっ!!」

 

へちゃ…ミュルは何が言いたいかを察してくれたようだ。頭上で豆電球が光ったように見えた。

「レントもまだ中学生だったに!確かにこのまま帰らないとなるとご両親も心配するだろうにー。

 だけどあれさえあれば……まだ契約前のキミに特別サービスだに!!」

 

「おぉ!?なにか良い物があるの??」

 

 

いつの間にか自身のお腹の前に目の前に小さなカバンを出現させたへちゃ…ミュ…ああもう面倒くさい!

…へちゃはガザゴソとカバンの中を漁る。某猫型ロボットみたいだ。

 

 

「テテレッテレー!身代わり人形分身くーん!だに!」

 

 

自分で効果音を出しつつへちゃは藁人形っぽい何かを出した。

ネーミングと良い何処か不気味な一品だ。所々赤黒いシミがあるのは魔力か何かだと思いたい。

 

 

「これを持った魔法少女が誰かを思い浮かべ念じれば、そっくりそのままのコピーを作れるに!

 授業中や夜中に出現する魔獣を倒す為に魔法少女と入れ替えれるよう開発された魔法人形にー!

 マナはコピー作成時に少しだけ消費するけど後はゼロのエコ設計!

 多分、レントの普段の様子を思い出しながら念じれば行けるはずだにー」

 

「な、なるほどー…どっかのアニメで似たようなの見た事あるから何となく分かるよ…」

 

 

小憎たらしくドヤ顔してるへちゃから怪しい藁人形を受け取る。

もうちょっとデザイン何とかしようよ。夜使いたくないよ僕…。

 

 

「ささっ!早速試してみるに!はよ、はよだにー!」

 

 

へちゃに促され、取り敢えず藁を握りしめ目を瞑り、自分の普段を思い出し念じてみる。

ちょっとイケメンに…あ、いや、イケメンにしたら家族にバレる。

いつもの自分…いつもの自分っと…。

 

 

しばらくすると、不意にポン!と軽い音がし、手に持った藁の感触が無くなった。

 

 

目を開けると……

いつも鏡で見るいつもの自分の姿がそこにあった。

ほぇーすっごい…。ちゃんとさっきまでの制服を着てる姿だ。

 

 

「おおっ!!これが普段のレントだに?…本当に男だったんだにー!」

 

 

藁人形もといレント人形を物珍しそうにクルクル周りながら眺めるへちゃ。

正直あんまり見て欲しくない。なんか気恥ずかしいし。

 

 

「うん、そうだよ。無事成功したみたいだね。そんでこの後どうすればいいの??」

 

「後は本人の目を見ながら命令すればいいに。『代わりに過ごして』とかにー」

 

 

そんなフワッとした感じでいいんだ…。

とりあえず試してみよう、まず目の前に立ってっと。

……僕ってこんな感じなのか…いつも鏡で見てたけど目の前に生身が居ると新鮮、いや不気味だなぁ。

 

 

「レント人形、命令。『僕の代わりに過ごして』お願いね」

 

 

目を見ながら呟くと命令が反映されたのか、目の前に居るレント人形が自然な動きで動き出した。

そしてこちらを見たと思ったら一言。

 

 

「了解、レント!そっちも気を付けて行ってらっしゃい」

 

 

その自然な動作。声。ホントに僕が目の前に居るみたいだ。

対して今の自分は謎の赤髪魔法少女。あっちが本物のレントで今の僕は偽物なのかと錯覚してしまう。

 

柔らかい笑顔で手を振りながら自分の家、鷹田家に帰るレント人形を眺める。

その笑顔に胸の奥がキュッとなった。自分の記憶と心が少し離れた気がした。目眩がする。

謎の感覚に吐き気を覚えたがその意味は全く分からない。

あまり見たくないコンプレックスモリモリの自分を目の前で見たからだろう。そう結論付けた。

 

 

「どうしたにレント?今日中に申請したいから早く行くにー!」

 

 

幸い、目眩と吐き気はすぐ収まったが、呆けている僕を心配してかへちゃが声を掛けた。

 

 

「あ、ああ大丈夫だよ。そんじゃ行こっか!…あのシャボン玉使うの?ちょっと楽しみなんだよねー」

 

「……残念ながら今日はマナを使い切っちゃてもう無理だに…。だから歩いて行くに!」

 

「そんなぁ…」

 

 

楽が出来ないと分かった僕は肩を竦めながらふわふわ進むへちゃの後ろを付いて行くように歩き始めた。

遠くないといいなぁ…。

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