ドッキリ大作戦は大失敗に終わった。
翌日のミーティングではずっと理事長が沈黙していた。
なお、徹とフクキタルのトレーナーは休暇を貰った。
古谷は土器を作ろうとして曜変天目を作ってしまったので、静嘉堂文庫に誘拐された。
そして、終わりごろに、いつも付けてない眼鏡を外しながらやよいはこう言った。
「四名だけ残れ。綾秀、芦田、睦月、
「えっ」
彼らはとくに逆ドッキリやら関連行為が酷かったのだ。
睦月に関しては、スカイと一緒に釣りに行っていた。
ドッキリという本来の目的やら業務やらトレーニングやらをすっぽかして。
こうして他のトレーナー、教員、たづなは出ていった。
四名と理事長だけ残されたあと、沈黙が続く。
そして、その沈黙は理事長が破った。
「企画したのに!トレーナーにドッキリを仕掛けると!」
いつもの感じではなかった。
「
怒鳴り声は室外まで響いた。
「その結果がこれだ」
外にいたデジタルは泣き出した。
「トレーナーの嘘つきども!皆、噓をつく!SS(怪文書)でもそうだった!」
理事長は突然、電波を受信したかのようなことを叫ぶ。
「トレーナーは
「理事長、それはあまりの侮辱です」
芦田がそう言うが、理事長の怒りは収まらない。
「
「いくら理事長でも・・・」
綾秀が耐えかねて言おうとすると、理事長がすぐに遮る。
「トレーナーどもはドイツ人のクズだ!」
((((いや、日本人なんだけど・・・))))
「
大音声。
「トレーナーとは名ばかり。育成学校で学んだのは・・・」
「「「「育成学校出ていません」」」」
「・・・いつもトレーナーは私の計画を妨げる」
デジタルはハンカチを取り出し、泣き続ける。
さすがの怒声にオグリも心配そうに部屋の前にやってきた。
「あらゆる手を使い―私を邪魔し続ける!
トレーナーの大粛清を先代のように!」
そう叫ぶと、彼女は力が抜けたように椅子に座る。
「私は育成学校など―出てはいないが、それでも独力で―理事長になったぞ」
彼女はなおもまくし立てる。
「裏切り者ども・・・奴らは最初から私を裏切り、
ウマ娘への恐るべき裏切りだ!だが見てるがいい・・・償ってもらうからな!」
泣き続けるデジタルを樋渡史が慰める。
「デジタルさん、泣かないで・・・」
少しの沈黙が続く。
「私の命令は届かない。終わりだ・・・」
こうしてお説教は終わった。
「・・・うう」
「ほら、アシダ。しっかりしてくれ」
お説教を受けていた四人はすっかりげんなりしてしまっていた。
芦田はオグリに肩を抱えられて、何とか歩いていた。
「すみません・・・あんな逆ドッキリをしてしまい・・・」
「いいんだ、次から気を付けてくれたらいい。
・・・というか、よく協力してくれたな、病院側も」
「院長さんがオグリさんと僕のファンだったようです」
「そうか・・・アシダは人気者だな」
「オグリさんのおかげですよ。
オグリさんが一生懸命頑張ったからなんです。
僕はただ、それをお手伝いしただけです」
そう言った瞬間、アシダの頬がむにっとつねられる。
「そんなことを言わないでくれ。
君がいたから、私も成長できたんだ・・・。
なあ、アシダ、君が来た日のこと覚えているか?」
忘れるはずもなかった。
あの日は芦田にとって、大事な日だった。
「ええ、もちろん」
「そのときの信用してるって言葉もだな?」
「はい。あの時は初対面のオグリさんがそう言ってくれたことが嬉しかったです」
「・・・でもな、本当は不安もあったんだ。
いきなり現れた君がトレーナーになるなんて・・・。
それに、まだ高校生ぐらいっていうのも余計に不安だった」
「ですよねえ・・・」
「でも、今は違う」
そう言うと、急に抱き着いてきた。
「仲直りのハグ。これは君を信頼している証だ。
私と一緒に頑張ってくれた君にだからこそ、こういうことができるんだ。
昨日はすまなかった。あんなに怒ってしまって」
「いえいえ、僕の方こそ・・・」
そう言って、芦田の方からも抱きしめる。
樋渡史とデジタルは幸せに死んだ。
そんな彼らの渾名は『死ねば美青年&美少女』。
「ほわあああ、あたし幸せですうう・・・」
「刻が見えるよ・・・」
「・・・でも、あの視線が今日は何だか悲しそうというか怒っているというか」
「そうだね・・・まるで彼氏をNTRた女性のような視線を感じるよ・・・」
今日も一部の者のみ感じられる視線が芦田を見つめていた。
その視線には怒りと悲しみが籠っていた。
タキオンがその話を聞いて、新薬の製造を始めたのはまた別の話・・・。
「それはそうと、今週はアシダをこき使えと理事長から言われているんだ。
さっき仲直りしたのとはまた別問題だ。これからの一週間も頑張ろうな」
「えっ」