とれーなーとおぐりのほのぼのびより   作:ryanzi

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たのしい断食

凄まじい衝撃波が山の木々を吹き飛ばす。

すでに断食道場は数時間前に跡形もなくなっていた。

 

「ぐ、ぐがああああああああッ!」

 

理性をとっくに失ったオグリキャップが叫ぶ。

そして、瓦礫から一人のボロボロの青年・・・芦田が這い上がってきた。

 

「くっ・・・オグリさん・・・」

 

 

 

二日前のこと・・・

 

 

 

オグリはしょんぼりとしながら電車に揺られていた。

そんな彼女を慰めるように芦田は頭を撫でてやる。

さらにその横では、勢金課がタマモに拘束されていた。

 

「なあ、アンタも本当に二泊三日の断食に参加する気なんか?」

 

「ええ、オグリさんがこれから頑張るというのに、僕が頑張らないでどうするんですか?」

 

「アシダ・・・頑張らなくていいぞ」

 

「私も頑張らないから、なんて言うのは禁止ですよ?」

 

「うぐっ・・・」

 

「ところで、俺はなんで拘束されてるんですかね、タマモさん?」

 

「日頃の行いを思い出すんや。アンタは食と同時に課金も断つ必要がある」

 

無情にも電車は断食道場のある街の駅に着いてしまった。

 

「せ、せめて最後の晩餐ならぬ朝食を・・・」

 

「駄目です」

 

「た、たまも・・・最後の課金を・・・」

 

「駄目に決まっとるやろが」

 

それから山を登り、断食道場に辿り着く。

そこは伝統の長い古寺でもあった。

まあ、その伝統とやらも終わるのが確定したのだが。

 

「やだやだやだやだ!」

 

「アンタったら・・・テイオーのトレーナーの真似をするなんて・・・」

 

門に入る直前で金課が駄々をこねだしたが、結局門に入れられた。

なお、タマモはここで帰ることになる。

彼女は別に暴食でもなければ廃課金でもないからだ。

山の麓まで下りた彼女は、こう呟いた。

 

「さて、カフェテリアのご飯をタッパに詰めとかんとな」

 

彼女は来る破滅をすでに予感していた。

 

 

 

数時間後・・・

 

 

 

「オグリさん・・・腹枕なんて聞いたことがありませんよ」

 

「こうでもしないと空腹が誤魔化せないんだ」

 

オグリは自分の腹の上に芦田の頭を乗せていた。

こうして腹を圧迫することで空腹感を調和していたのだ。

なお、二人が寝転んでいる傍で金課はエアスマホをしていた。

 

「まさかぜんさあばあいちいになった・・・」

 

 

 

二日目の朝・・・

 

 

 

「・・・いつの間にか寝てしまっていたようですね」

 

「ちゅうちゅう・・・」

 

目を覚ますと、芦田の指をオグリが吸っていた。

 

(可愛い・・・って駄目じゃないですか!年は近いとはいえ、教え子なんです!)

 

片方の手で、芦田は自らの頬をひっぱたく。

でも、指はそのまま吸わせた。可哀想だったからだ。

しばらくすると、彼女も目を覚ました。

 

「・・・忘れてくれ」

 

「わかっていますよ」

 

なお、金課は仏像ではなくスマホの木像を彫り始めていた。

彼にとって空腹は苦痛ではなかった。無課金だけが苦痛だった。

 

 

 

その日の夜・・・

 

 

 

「あっ、何かの境地に辿り着きそう」

 

そう言って、金課は光を放って消えてしまった。

より正確に言えば、空間が光を放ちながら割れたのだ。

その穴に金課は落ちていき、穴は塞がれてしまった。

仕方ないので、芦田とオグリは縁側で寝転んだ。

両者ともに空腹が限界レベルにまで達していた。

ただでさえ大食いのオグリにはきつい修行だった。

だが、明日の午前十時まで耐えれば断食は終了だ。

 

「・・・アシダ」

 

「どうしたましたか?」

 

「いや・・・そういえば、アシダが前にいた世界の話を聞いたことがないなって思っただけだ」

 

「うーん・・・オグリさんたちがいないのを除くと変わらないんですよね・・・。

いえ・・・いくつか違う点ならやっぱりありますね。

例えば・・・この世界って、やっぱり厳しいところはありますが・・・幸せだと思います」

 

「幸せ・・・か」

 

「ええ、僕の世界って今思い返してみると、悪いことが多かったというか・・・。

僕の家族は例外でしたけど、それ以外がですね・・・まあ、酷いというか・・・。

例えば、別の街から引っ越してきた友人がいたんです。神浜市って街から。

その街はもう数百年前のことでいつまでも東西対立していたりとか・・・。

あと、東側が治安の悪い地域とされているんですが、普通に西側でも犯罪が頻発したりで・・・」

 

「そこ本当に日本なのか?」

 

「日本でしたよ・・・ええ、人口三百万人の新興都市でしたし・・・。

この世界には存在しないようですがね。地図見ても見つからなかったので・・・。

他には・・・僕の通っていた学校はいかにも小説でありがちな学校でしたね。

校則が厳しくて、生徒間でも教師との間でも対立があったりって・・・。

僕の幼馴染が生徒会長になってからは改善しましたが・・・今はどうだか・・・」

 

「・・・家族も幼馴染もいたんだな」

 

「ええ、たまには帰りたいって気分にもなります。

でも・・・思い返してみると、やっぱり帰りたくはありませんね。

僕はどちらかというと弱い人間なんです・・・どうしても幸せな方に行ってしまう。

本当のことを言えば、もしオグリさんのトレーナーでなければ、この断食道場からも、

とっくに脱走していました。それは間違いありません。」

 

「でも、私の担当という理由とはいえ、私と一緒に断食を耐えてくれているじゃないか」

 

「それを言ったらそうなんですがね・・・そういえば、もう一つ違う点がありましたね。

・・・でも、それは僕の世界でもほとんどの人に信じてもらえないことですから。

またいつか話すことにしますよ・・・うう、お腹が・・・」

 

「そうか・・・なあ、アシダ」

 

「なんですか?僕はまだ殺されたくありませんよ」

 

そう言って彼は少し距離を取る。

 

「・・・本当に殺気を感じ取るのがアシダは上手いな」

 

「ええ、前の世界でそういうこともありましてね・・・」

 

「そうか・・・すまない、アシダ。

私は空腹の余り、お前を憎むようになってしまった。

最初の日、私はアシダを信用するって言ったのに・・・」

 

「仕方ないですよ・・・その、もう少し理性を維持することはできませんか?」

 

「すまない、もう駄目だ」

 

 

 

そして最初に至る・・・

 

 

 

既に十時間以上にも及ぶ戦いは未だに互角だった。

道場も、その周りの森林も、今では更地になってしまっていた。

確かにオグリの力に芦田は遠く及ばない。

それでも彼は実に攻撃を巧妙に避け、オグリを傷つけまいとした。

まるで以前にも荒事を体験したことがあるかのような身の運びだった。

 

「くっ・・・もう駄目ですかね・・・」

 

ふと足元を見ると、偶然にもリンゴが落ちていた。

おそらく、寺の僧侶のための食料だったものだろう。

さらに、その瞬間、腕時計の針がようやく十時を指した。

 

「・・・よし!」

 

木の実を掴むと、オグリに向かって突進する。

そして、手に持っていた果実を彼女の口に突っ込む。

彼女は芦田の手すらも食い千切ろうとする勢いで食べた。

大事には至らなかったが、手は血まみれになった。

食べ終えたオグリはようやく理性を取り戻した。

 

「・・・あ、アシダ?」

 

「ええ、オグリさんのトレーナーの芦田実ですよ」

 

「こ、これは・・・それにその手・・・まさか・・・!

すまない!私が・・・私が弱かったばかりに・・・!!」

 

何が起こったのかを察し、泣き出した彼女の頭を芦田は優しく撫でる。

 

「いいんですよ、よく頑張りましたね。

さあ、トレセンに・・・僕たちの家に帰りましょう」

 

「・・・ああ!」

 

寺だったもの<ナニイイカンジニオワラソウトシテンネン

 

超高速で帰った二人はカフェテリアの食料を食い尽くすことになった。

もちろん、そのほとんどはオグリによるものだったが。

芦田はいつも通りの量だけを食べた。

これを予感していたからこそ、タマモは事前に料理をタッパーに詰め込んでいたのだ。

そして、この暴虐に一人のウマ娘が怒ったのはまた別の話・・・。

 

「(生かして)あげません!」

 

そして、勢金課はひょっこりと帰ってきた。

 

「はい、別世界のおみやげ」

 

「えっ、なんやこの毒物」

 

それは絵の具で構成された料理だった。

いや、料理というにはあまりにおこがましく、冒涜的だった。

 

「食え!空腹で無課金だった俺には一番のご馳走だったんだぞ!

タッパーに詰めた料理食べてるお前にも味合わせてやる!」

 

「ぎゃああああああ!」

 

タマモはしばらく寝込んだ。

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