とれーなーとおぐりのほのぼのびより   作:ryanzi

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予防接種戦争直前だよ!(無慈悲)

地下に存在する無数の部屋の一つ。

そこに理事長、秘書、トレーナーたちが集まっていた。

さらにはメジロ家御用達の主治医もいた。

 

「注目ッ!今日は予防接種の日である!」

 

全員に戦慄が走る。予防接種、それはトレセン学園で一番面倒くさいイベントだ。

まだどこか子供っぽいウマ娘たちはとにかく注射を嫌がる。

ただでさえ力が強い彼女たちが抵抗するのだ。それはもう大変だ。

壁の修理費だって安くはないのだ。

だから、いかに迅速に、そして被害を抑えながら注射するかに重点が置かれる。

そのために抜き打ちという形で行われることになった。

事前に知らせていたら、ほとんどのウマ娘の姿が学園から消えるからだ。

 

「一ついいですかね、理事長」

 

「英一郎か!何だ!」

 

「古谷とテイオーが駆け落ちしました」

 

古谷とは件のトレーナーのことだ。

子どもっぽい二人はとっくに察知して逃げ出していた。

彼もまた、ずっと予防接種を受けていなかったのだ。

 

「心配無用ッ!すでに機動部隊を差し向けておいた。

おそらく今日中に発見できることだろう。

それに、ルドルフくんも彼らを追いかけている!一石三鳥だ!」

 

「あのー俺からも質問いいですか?」

 

「拒否ッ!君の質問には答えないぞ!金課くん!」

 

金課は手足を拘束されている状態だった。

 

「無課金ワクチンというものをタキオンさんが開発してくれました?あとはわかりますよね?」

 

たづなが無慈悲に言った。

 

「馬鹿野郎俺は勝つぞ!」

 

「はい、主治医さんお願いします」

 

「関係ありませんが、無課金のSyuziiです」

 

「なっ・・・まさかお前が数々のゲームで俺を打ち破った・・・うわあああああ!」

 

「あと、二本目もありますからねえ。一本じゃ効かなそうなので」

 

「どうも~無課金勢のUnsだよ~」

 

「なっ、お前はわがライバル・・・・ぐわあああああ!」

 

セイウンスカイは既に接種済みだった。

これから起こる混乱の中でゆっくり休むためだ。

 

「他に質問のあるものはいるか!」

 

「はい・・・」

 

「芦田くんか!君は確か、予防接種は初めてだったな!」

 

「ええ・・・・そのことなんですが、どうして僕はガラスケースに隔離されてるんですか?」

 

会議室は微妙な空気に包まれる。

 

「・・・その、言いにくいことなんだがな・・・」

 

いつもの理事長らしさがなくなっていた。

 

「今回、理事長室で会議しないこととも関係するんだが・・・

実は、あの部屋に隠しカメラが大量に仕掛けられていたんだ・・・。

そして、その映像がウマチューブなどいくつかの動画サイトにアップされてしまった」

 

「それは穏やかじゃないですね・・・」

 

「まあ、君は意外と人気にはなってるんだ・・・。

リアル逆異世界転移ということでな・・・。

いつ異世界でトレーナーになってもいいようにと本気で生きる者も現れ始めた。

とりあえず、君は今のところプラスの影響を与えているんだが・・・。

その・・・我が学園の職員の一人があるコメントを見つけてな・・・」

 

たづなはずっと目を逸らし続けていた。

 

「・・・異世界から来た人間がこの世界の病原体に耐えれるのか、というものだった。

または別世界から何かとんでもない病原体を持ち込みやしないかという心配もあったんだ」

 

「なるほど、納得できました。確かにそれは危険ですね・・・」

 

「・・・だが、安心したまえ!今すぐ予防接種ができる用意はしてある!」

 

綾秀とタキオンが部屋に入ってくる。

二人が持っていたものは注射器・・・というにはあまりにも大きすぎた。

大きく分厚く重くそして大雑把すぎた。

それはまさに硝子塊だった。

 

「ふっふっふー!これぞ私の最高傑作!複合同時ワクチン!消毒作用もあるぞ!」

 

「芦田・・・この前、先輩を見殺しにした罰を受けてもらおうか・・・!」

 

「いや、あれはトレーナーくんが一方的に悪いだろ」

 

「あの・・・一度の何種類ものワクチンを打つのはよくないのでは・・・」

 

だが、二人は無慈悲に近づいてくる。

 

「安心したまえ、君の世界ではどうか知らんが、こっちの世界ではよくなった」

 

「だからよお、大人しく打たれろや!ひゃはははは!」

 

「トレーナーくん、ちょっと黙ろうか」

 

「はい」

 

さすがの芦田も恐怖で少しだけ体が震える。

 

「大丈夫ですよ、芦田さん」

 

そんな彼を後ろから抱きしめたのが桐生院だった。

 

「桐生院さん・・・」

 

桐生院はこの世界に来てからまさに姉のような存在だった。

だが、英一郎は溜息をついて、こう告げた。

 

「あっ、理事長。今日一日、桐生院さんを隔離しておきましょう。

芦田くんは出しておくにしても、彼女は彼と同じ空気を吸ってしまいましたから」

 

「採用ッ!」

 

「ちょっと!英一郎先輩!理事長!どういうつもりですか!」

 

「安心してくれ、桐生院。君のミークの接種はちゃんとやっておくから」

 

そうこうしている間に針が芦田のうなじに打ち込まれる。

 

「ふわあああああああああああ!」

 

「すまない、芦田くん・・・これもトレーナーとして必要なことなんだ」

 

「ところで、英一郎さんはその必要なことをやったんですか?」

 

たづなが笑顔でそう尋ねる。

 

「ええ、やりましたよ?書類も提出したはずですが?」

 

「あら・・・それではこの映像はおかしいですね?」

 

スクリーンに突如として映像が映し出される。

そこには書類を偽装する英一郎の姿があった。

 

「・・・フェイクだ。これはフェイクに違いないんだ」

 

「あら?嘘をつく悪い赤ちゃんでちゅね~」

 

すでに彼の背後には哺乳瓶・・・否、哺乳瓶型注射器を持ったクリークが忍び寄っていた。

 

「ばっぶううううううううう!」

 

これで四回。すでに四回も悲鳴が上がった。

オグリはその中に芦田のものがあったことから何かを察し、彼を探し始めた。

タマモも金課の悲鳴を聞いたが、何も行動しなかった。

無課金ワクチンの開発および接種自体が彼女の依頼によるものだったからだ。

生徒会長のシンボリルドルフはトレーナーとテイオーを追跡しているのでいない。

 

そして、ここからが本当の地獄だった。

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