ジェダイ・ナイト アソーカの相棒は………爆豪!?   作:ナナシのG愛好家

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マジ久しぶりです。最近ヒロアカ熱が再稼働したのと暇ができたのでぽろっと投稿。


入学試験~怪物の卵たち~

《No side》

 

「やべぇ、やべぇぞ!!」

「急げ急げ!!」

 

 慌てふためく声が聞こえてくる。反応に成功したたった一人の少女、志村華が飛び出したからこそ、他の参加者たちが我先にと走り出したのだ。ただそんな中、一人だけ立っている人物がいた。

 その人物に、誰も見向きもしない。急いで走り出さなければ合格が厳しい、そう考える者達に、他の人間を気にかける余裕はない。だからこそ、目を瞑り、立ち尽くす爆豪を、だれも気にすら留めない。そんな中爆豪が行っているのは、深呼吸だった。

 

「(落ち着け……深く、深く、心の奥底に入る様に)」

 

 彼が行っていたのは、一種の瞑想だった。このヒーロー科を受験するにあたり、爆豪勝己という人物には、他のメンバーにはない著しいハンデがある。個性の熟練度だ。

 人々が生まれ以って持つ超常的な力、『個性』は、無個性でなければ4歳までには発現する————逆を言えば、5歳になっても個性が発現しなければ、その人物は無個性の可能性が高くなる————と言われている。4歳、殆ど物心ついた時から彼らは己の『個性』と共に在る。彼らは考えるまでも無く、己の個性の使い方を知っている。一方で爆豪は己の『個性』である『爆破』を失い、新しい個性を、それもつい1週間前に貰ったばかりの状態だ。他のメンバーとは、『個性』の熟練度の差が圧倒的に低いのだ。言うなれば、ゲームの対界で言うところの、自分の持ちキャラが使えなくなり、まったく勝手の違うキャラを強制的に使わざるを得なくなった状態、といえばわかりやすいだろうか。

 無論1週間、爆豪はもともと自他ともに認める、『戦闘』という局面において天才的なセンスを発揮する爆豪は、ある程度、O,F.Aの使い方を心得ている。だが足りない。他のメンバーに対して、圧倒的に敬虔が足りない。特に足りないのが『反射』だ。元々『爆破』を使う爆豪だからこそ分かる。個性を使う者達は、個性を『使う』とは考えない。個性を『道具』ではなく、己の体の一部ととらえるのだ。

 物を掴もうとするとき、わざわざ腕を『使う』とは考えない。『掴もう』と考えれば、身体が動く。個性も同じだ。だが、爆豪の『O.F.A』の熟練度はそこまで高まっていない。だからこそ、彼は集中する必要があった。初めは体の一部に纏わせていた。しかし、その強大すぎる力は、鍛えている爆豪ですらその肉体を破壊しかねない。故に、体内にあるO.F.Aの因子に働きかけ、そのエネルギーを、全身に、

 

「(薄く……広く……)」

 

 纏わせるように、ゆっくりと、広げていく。

 

ワン・フォー・オール(O.F.A) 全身強化(フルカウル)

 

 欠点は、一度纏わせるのに時間をかけること。全身に掛ける分、一度に発揮する力は弱い。元の使用者であるオールマイトのパワーを100とするのならば、せいぜい5がいいところだ。だが、その身体強化を使って、彼には遅れを取り戻すための知恵と策略があった。

 

「(初めによーいドンでスタートしなかった時点で、大幅な遅れが出やがったな。一人あっさり跳び出したのは予想外だがよ……)」

 

 身体強化を施した高速移動でスタートエリアから走り出せば、ちょっと言った場所で、大規模なぶつかり合いが起こっていた。数だけは多いロボットを、次々と受験生たちが倒していく。

 

「(やっぱスタート地点から周りには結構な数が配備されてやがったな。)」

 

 これは爆豪たちが事前に話し合った計画通りだった。そしてその戦況も。ちらりと見れば、まだ動いているのは『2』と書かれたロボットばかりで、そこに混ざっていたであろう『1』と記された残骸なども散らばっている。逆に『3』数字が書かれたロボットは一体も居ない。大型の物の残骸すら見当たらない所を考えると

 

「(得点の高いロボ(ほんめい)はこんな浅ぇ場所には居ねぇ。だから。)」

 

 この練習エリアは市街地エリア。爆豪は、横の壁へと移動し、跳躍しては、壁を蹴っての三角飛びの要領で、激戦区を大きく飛び越えた。

 

「(あそこに居たのは全体の3割ってところか……残りは俺と同じように通り抜けていったはず。なら、)」

『目標ヲ発ケ

「そこだぁ!!」

 

 近くに居たロボットに向け、蹴りが直撃する。5%とはいえ身体強化、元より脆かった試験用ロボは、あっさりと破壊されて動かなくなる。

 

「(やっぱ脆ぇ、なら作戦通り……!!)」

 

 アソーカと———オールマイトはなぜか不参加だった———話し合い、過去の話から立てた作戦が『マグロ作戦』そこまでロボに耐久力はない、という情報から、とにかくマグロのように動き回り、見敵必殺を心掛ける。

 

「ラァッ!!」

 

 時にそのまま粉砕し……

 

「大丈夫か!?……ったく、気を付けろや。」

「……ん、ごめん……」

 

 時に助け

 

「なぁ……これポイントってどうなるんだ?」

「平等に分配されんじゃねぇの?少なくとも倒した人間にのみってことはねぇだろ。お前も普通に活躍したしな。」

「普通て……」

 

 時に共闘し、得点を稼いでいく。そんな中で……事件は起きた。

 

「あ?なんだ?」

 

 『3』と書かれた高得点ロボを破壊した爆豪だったが、そこで、大きな『音』を聞いて動きを止めた。まるで巨大な何かが迫ってくるような、嫌な予感に冷や汗をかく。そして次の瞬間、彼は

 

「な……」

 

 目を見開き、上を見上げることとなった。太陽光をさえぎり、大きな影を作る。車が数台通れる車道を含めた道も、『それ』には狭すぎたようだ。十数階もあるようなビルに手をかけ、鉄筋が入ってるであろうコンクリートをまるで砂の城か何かのように罅を入れ足元に瓦礫が降り注ぐ。あまりの恐怖で、悲鳴を上げ、逃げ出す者達がいる。爆豪も、その光景に、思わずフルカウルを切ってしまう程。『大きい』というのは、それだけの威圧感があった。特に、実戦も殆ど経験していない……ヒヨッコどころか卵である中学生たちには。

 その巨大なロボの名前は『ゼロポイント(0P)』倒してもなんの得もない、フィールドを徘徊するお邪魔虫。そう言う扱いのロボだ。だがここまでだとは、だれも予想していなかった。こんな強大な相手を……彼らは予想していなかった。逃げよう。相手にするだけ無駄だ。『爆破』が使えるのならば意気揚々と向かっていたかもしれない。だが……自分の能力はまだ熟練度も低く、体になじんでいないO.F.A。勝ち目はない。それを爆豪の頭は理解していた。だが、その怪獣のような前傾姿勢のロボット、そのロボットが近づく中、一人だけ逃げようとしない……逃げることのできないものが居るのを、爆豪の目はとらえてしまった。

 

「つぅ……っ!1」

「ッ!? あいつは……」

 

 丸い顔をした少女、その顔は、一瞬会っただけだが、憶えていた。転びかけた自分を【個性】で助けた少女、足を挫いたのか、逃げるに逃げられなさそうな、苦しそうな表情をしていた彼女。その彼女に、運悪く、たった今、0Pが触れたビルの崩れた瓦礫が、彼女に向けて降り注ごうとしていた。

 

「あっ……」

 

 大きくなっていく影、それに気が付き、彼女の顔が絶望に染まる。その時爆豪の身体は……自然と動いていた。

 

「え?」

 

 次の瞬間、降り注ごうとしていた瓦礫が、凄まじい突風の風圧で吹き飛ばされる。

 

「ぐあっ……!?」

「ちょ、き、君!? 何をしたん!?」

 

 そして、大きく倒れこむ爆豪に、唖然として声をかける。

 

「あ……君、あの時の……!?」

「ハァッ……あぁ……問題ねぇ。」

「問題ないって……そんなわけないやん!? そんな顔色で!!」

 

 その顔から、あの時の子だとこちらも気が付く少女に対し、問題ないと強がる爆豪だが、息は荒く、脂汗は流れ、顔色もいいとは言えなかった。先ほどの風圧、とっさに出たのは、O.F.A100%中の100%。とっさに跳び出したそれは、パンチ一発で転機すら変えて見せるオールマイト並みの出力を出した。しかしその過剰ともいえるパワーに耐え切れず、鍛えたはずの爆豪の腕は、紫色で痣のような色になっていた。腕全体がこんな色になっているという事は、内出血で腕の内部はぐちゃぐちゃになっていることだろう。『四肢が爆発四散する』というオールマイトの忠告は間違いではなかった。あのトレーニングで身体づくりをした爆豪の身体でこれなのだ。もし日々のトレーニングもロクに積んでいない緑谷の身体だったら……考えるだけでゾッとする。

 

「とにかく……逃げっぞ!!肩貸すから立てや!!」

「肩貸すって……挫いた足は左足だよ!!そんな酷いことになってる右腕借りれるわけないじゃん!?」

 

 彼女はそう声を上げる。

 

「うるせぇ。良いから離れねぇと……」

 

 先ほどから0Pは動かない。有事に備え、これ以上前進しないようプログラムが組まれているのだろう。だからさっさと逃げるぞと、いいから肩を貸せと彼女を引っ張り上げようとする爆豪に対し、

 

「その子の言う通りだよ。」

 

 と、声が聞こえてきた。見れば、ふわり、とその動きやすいジーンズ姿で宙を飛ぶ少女……あの時爆豪に話しかけていた、志村華が飛んできた。

 

「テメェ……」

「まったく、派手な風圧が見えたから来てみれば……凄いことになってるね。」

 

 やれやれ……とため息をつきながら、爆豪の腕を見て彼女は言う。

 

「だったら私がサポートしたげる。さ、とにかく逃げるよ」

「あ、ありがと……」

「待てや。」

 

 お礼を言う少女に対し、爆豪は華に待ったをかける。

 

「……どうしたの?」

「なぁ……このクソロボ……倒せねぇか?」

 

 まさかこの期に及んで無茶しようとしてんじゃないよね?と目で問いかけてきた華に対して、爆豪の出した答えは、無茶苦茶な物だった。

 

「なっ、そんなことしても無意味やん!!早く逃げよ、ケガも直さんと

「オールマイトなら……」

 

 無理だと、逃げようという少女の言葉を遮り、爆豪は言葉を紡ぐ。

 

憧れのヒーロー(オールマイト)なら、逃げねぇだろ。」

「ッ!!」

 

 その言葉に、華が眼を見開いた。

 

「俺達は何になりに来てんだ?ヒーローだろうが。ピーピー喚いて、ビビって逃げるクソナードじゃぁねぇだろうが。時間がねぇ。ツインテに丸顔、テメェらの『個性』教えろ。俺の想像通りなら……」

「ま、丸顔て……」

「ツインテって……ちゃんと自己紹介したでしょ!?」

「うるせぇ!!……さっさとしろや。」

 

 二人の講義を、時間がないと黙殺する。彼の鋭い眼光に、怯んだように二人は黙り込んでから

 

「ゼ、無常力(ゼログラビティ)!!触れたものを無重力に出来る……キャパオーバーになると吐いちゃうけど……」

物体浮遊(サイコキネシス)。重さに制限があるけど、物体ならなんでも浮遊させられるよ。」

「……分かった。丸が

「麗日お茶子!!名乗ったから丸顔はやめて!!」

「……麗日、テメェの個性で人を無重力にしたら、どれだけ耐えられる。」

「え?う~んと……あと1分くらい?」

「5分持たせろ。」

「ハァ!?」

「片腕逝った俺の『個性』じゃああのクソロボの上までいけねぇ。テメェの個性で飛距離を確保させろ。耐えろ。」

「ちょ、今まででも『個性』使ってて結構限界なんだけど!?」

「関係ねぇ。個性発動してるだけでいい。吐きながらでも耐えろ。」

「無茶苦茶やぁ……」

 

 そうぼやくものの、時間がねぇ、という言葉と共に彼の人を殺せるんじゃないかというレベルまで鋭くなった眼光に、しぶしぶやる、と言っては

 

「無重力にすりゃ重さはゼロだが……ツインt……志村、テメェ空を飛ぶときは靴や服に『個性』使ってんな?推進剤にする。俺にやれ。」

「麗日ちゃんに比べたら……優しめね。ハイハイ、仰せのままに。で、どこまで運べばいいの?」

「決まってら。」

 

 その言葉に、爆豪は笑みを浮かべる。

 

「あれだけデケェロボだ。一度倒れたら立ち上がれねぇ。おまけにあのピカピカ光ってやがる頭。弱点はあそこで街が居ねぇだろ。」

「実際今までのロボも頭を壊したら止まってたしね。」

「あそこまで俺を運べ。そしたら一撃を叩きこむ。」

「ちょ、ちょっと正気!?アンタ――」

 

 華が驚き、言葉をかける中、爆豪は笑みを浮かべて返答する。それを聞いた彼女は、

 

「あ~もう仕方ない。どうなっても知らないわよ!!」

 

 そう言って爆豪の服に触れる。お茶子も同様に爆豪に触れれば、爆豪の身体は重力から解放され、独特の浮遊感が彼を襲う。目を瞑った彼は、再びフルカウルを起動させ、地面を蹴った。迎撃とでもいうように0Pの腕が振るわれるが、華がシャツを動かしての方向転換で回避させて見せる。回避行動に引っ張られ、折れた腕にかかった負担が激痛という形で現れ、奥歯を噛み締める爆豪は、正気かと言われた時の、彼女の言葉を思い出していた。

 

「アンタ、また腕を壊すレベルであの力(・・・)をつかったりしたら、もう再起不能よ!?足だろうと腕だろうと、これ以上の戦闘は出来ないわ!?」

 

 あの力……と言うあたり、意味深な発言を残したあの不潔な男……もとい志村転孤をかばったあたり、彼女たちも、O.F.Aの秘密をある程度知っているのだと察しは着く。故に爆豪はこういった。

 

「そうかもしれねぇな。が、んなことはどうでもいい。」

「は?」

「さっきも言っただろ、オールマイトなら、逃げねぇだろ。」

 

 俺が戦う理由なんざ、それだけで十分だ。彼はそう言った。一度間違えた。失敗した。アイツを……自分の手で失ってしまった。爆豪の持っているその罪悪感は、彼に『二度と自分は失いたくない。多くの人を助けたい』という気持ちへと変わっていた。そしてその気持ちが、彼の中に今だ燻る反骨精神と、オールマイトへの憧れに(ヒーローを目指した原点)に繋がり、彼はそう言っていた。逃げたくない。この強大なロボットを相手に、無様に逃げだす一般人(モブキャラ)にはなりたくない。だって憧れは逃げないから。憧れだったら立ち向かうから。ここから離れて得点を稼ぐ(自分の為に逃げる)よりも、今目の前に居る強大な敵と戦う(周りの皆を助けること)を選ぶだろうから

 

「(だから……オレは……!!)」

 

 よぎるのは、そばかすのついた気弱な親友(クソナード)の顔。思い出すのは、あの森の中での光景。アイツならこうする。あの底抜けのお人よしならきっとこうする。そこにあるのもまた、重しのように彼にのしかかる罪悪感だった。志村華、彼女の個性のおかげでたどり着いた。これがそうなるかは分からない。だけれども、彼は確信していた

 

「死ねぇ!!」

 

 放たれる爆発的な一撃。憧れて止まない、最強の、英雄から受け継いだ最強の一撃。その強烈な拳が、圧倒的な破壊力に耐えられない主人公のライバル(爆豪勝己)ではない、今代の担い手(爆豪勝己)の、その始まりの物語。その幕開けになることを。ふっ、と体が重くなる。既に痛めている左腕だけでなく、折ったばかりの右腕からも痛みが襲ってきて顔を歪めながらも、彼は華の個性の効果で、ゆっくりと落ちて行くなかで、プレゼントマイクの、終了のボイスを聞いていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 一方時は戻り別グラウンド。そこではアソーカが

 

「温いわね。せめてブラスターライフルをもって装甲を分厚くしたり車輪形態から変形してバリア張ったりして出直してくることね!」

 

 試験用ロボをフルボッコにしていた。ライトセイバーがないとはいえジェダイはジェダイ。フォースで身体能力を強めた拳程度で、1Pのロボットはダウン、バトル・ドロイドよりも耐久力がない。フォースで二体のロボをぶつけ合わせて得点ゲット。3Pすら容易く撃破してしまう。クローン戦争、反乱軍と帝国軍の戦い、そしてその後の帝国残党(スローン大提督)との戦い、それらすべてを最終的に勝利で飾ってきた彼女は、今回は楽勝ね、爆豪には悪いけど、もしかしたら一位も夢じゃないかも?と考えていた時のことだった。迫るロボットの一体をフォースで吹き飛ばそうと構えた時、

 

「ほらよ、お望みのブラスターだ。」

 

 という言葉と、懐かしい音(・・・・・)と共に飛んできた赤い光が、そのロボットを破壊した。

 

「ッ!!アンタは……ッ!?」

「久しぶりだな。ジェダイの“お嬢ちゃん”」

「その声は……!!」

 

 振り返った先に居る男。西部劇からそのまま出てきたような風貌に、トレードマークの帽子。そしてその手には、スコープのようなサイトのついたカスタム拳銃。そしてなにより、生前(・・)の青い肌こそないが、そのかつての目のような、爆豪にも似た深紅の瞳、そこに笑みを浮かべる男の事を、彼女は知っている

 

「キャド……ベイン!!」

 

 ジェダイになりたて、未熟者(パダワン)時代で経験したクローン戦争において、彼女の師アナキン・スカイウォーカーと戦った分離主義勢力に雇われた賞金稼ぎ。ジェダイを何人も仕留め、パルパティーン最高議長融解未遂、銀河元老院占拠、幾度もの脱獄、さらには、世界で最も警備の厳しい施設(ジェダイ聖堂)に侵入してジェダイの秘宝まで盗み出した賞金稼ぎ。アソーカも、師匠であるアナキン共々幾度となく煮え湯を飲まされてきた。そんな彼が、そこにいる。

 

「そうカッカするな。今は同じ受験生同士だ。留年しなけりゃ一生に一度の試験だぞ?楽しもうや。」

 

 そう言いながら歩いていくベインの隣に、アソーカは降り立つ。

 

「随分なご挨拶ね、それにしても貴方がヒーロー志望とか、いったいどういう心境の変化?」

「なに、ヒーロー業は金になる。ヴィランはリスクが大きすぎて割に合わん、特に俺のような弱い個性ではな。」

「見え透いた嘘じゃ誤魔化されないわよ。」

 

 ロボを薙ぎ倒しながら、ベインをそう睨むアソーカ。評議会襲撃の時も、パルパティーン誘拐未遂の時もそうだった。キャド・ベインという男は実力以上に、作戦と対応力の天才なのだ。早撃ちの天才として誇張抜きで銀河一の技量を誇る彼だが、単独での戦闘能力ならアナキンやキット・フィストー、今のアソーカにだって及ばない。彼の最大の強みは計画力。適切な仲間とチームを組み、ミッションを成功させる。だからこその賞金稼ぎ最強。そしてその自負とプライドがこの男にはある。

 

「おいおい心外だな。俺はリスクの高いことはしない主義なんだぜ?」

「ジェダイ聖堂襲撃した癖してどの口で言ってんのよ。」

 

 あの仕事リスクしかなかったでしょ、といえばばつが悪そうに目を反らす。

 

「あれはお前達の警備がザルなのが悪い。」

「は?この世界でヴィランやるよりもジェダイ聖堂襲撃する方が簡単だって言いたいの?」

「実際そうだろ。お前達は警備のプロって訳じゃない。そして建造が古い故にあるジェダイ聖堂の構造上の侵入経路。ガードが四方八方に居てシステムが厄介だった元老院の方が忍び込む方がまだ難易度が高かった。」

「言ってくれて……!!というかそもそもそんなサポートアイテムどうやって持ち込んだのよ!!」

 

 反則でしょ反則!!という彼女に対し、

 

「知らないのか? 申請すれば一つまでOKだ。」

「何よそれ私も持ち込めばよかった!!」

 

 あ~も~!!と、唸り声をあげながら戦う二人の成績は、上位だったとだけ伝えておく。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

《3日後》

 

 どこにでもあるような一つのアパート。爆豪と試験で共同した少女、志村華は、買い物袋を手に、そこの一室に入って行った。

 薄暗いけど、どこか洒落た雰囲気のある家具、カーテンが閉められ、昼間だというのに電灯の明かりが照らしている。そんななかで、ベットに転がって本を読む、水色の……少々色素の抜けた髪色の青年が居た。

 

「もう転弧、またそんな体制で本なんて読んで。目を悪くするよ?」

「あぁ……ゴメン華ちゃん。」

 

 本ならいいとおもったんだ。つい最近ゲームのやりすぎで起こられた彼女の弟、修行中の爆豪にちょっかいをかけていた彼は、小指と薬指が布に包まれた指出しグローブを付けて読んでいた本を脇にやり、ベットから起き上がる。台所にあるごみ箱をみては、

 

「あ~!!また転弧ゴミを塵にしたわね!?」

「ちゃんと手は洗ったよ。」

「手軽な『個性』の訓練だからって……ゴミ袋から塵が出ないようにするの結構大変なんだよ?」

 

 と、口を酸っぱくして言う彼女に、ごめんと返すだけの転弧。どうやら姉には弱いらしい。

 

「合格通知ってまだ来ないのかなぁ……」

 

 そして、ふと気になったかのように、冷蔵、冷凍庫に買って来た物を入れながらふと呟いた華。すると

 

「あぁ、それなら届いてたよ。」

「なんて!?」

 

 さらっと転弧が答えていた。

 

「ランニングついでにポスト確認しておいた。華ちゃんの分は机に置いてあるよ。」

「そう言う事は早く言って!転弧、結果は?」

「俺は合格。」

 

 ニヤリと笑った彼が、華の結果を聞いてゲームを始めるまで、時間はかからなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《同日 爆豪家》

「勝己~!アンタに雄英から郵便物が来てるわよ~!」

「雄英から?ッ!!よこせ!!」

「勝己ィ!! 親に向かってなんて口効いてんのよ!!」

「うるせぇ!!」

 

 自身の母親からの連絡に、爆豪は厳しい母親からどやされることもお構いなしに、彼女から荒々しい言葉と共に厚く重みのある茶封筒をひったくり、自室に駆け込んだ。

 

「結果は……って、重ぇな……。」

 

 手に取った質量は、明らかに紙が入ってるそれではない。封筒を開けて取り出してみれば、中に入っていたのは端末のような物。

 

「なんだこりゃ?」

 

 といぶかしみながら、机に置いてみれば、次の瞬間

 

『私が~……』

「うおっ!?」

『投影された!!』

 

 大音量とともに、度アップで爆豪の前に現れたのは、彼の憧れ。

 

「お、オールマイト!?」

 

 雄英は確かに名門ヒーロー高校で、№2ヒーローエンデヴァー等も雄英OBだ。しかし、いきなり現れたその存在に、面食らった彼は椅子から飛び上がった。

 

『HAHAHA!驚いたかい?爆豪初年!なんと今年から、雄英に教師として雇われることになったのさ。』

 

 君にも黙っていてすまないね、サプライズだ!と笑みを浮かべるオールマイト。

 

『さて、まず敵ポイントからだな。事前に説明されていたと思うが、爆豪少年の倒したロボットの数は25体、内12体が3Pとはすごいね君!合計敵ポイントは57Pだ!これだけでも十二分に合格確定のハイスコア!だが、実はこれだけじゃないのさ。』

「だけじゃない?」

 

 その言葉におうむ返しに首をかしげる爆豪に、オールマイトは笑みを浮かべる

 

『実は敵ポイントのほかにももう一つスコアがあってね……それがこれ!レスキューポイント!』

 

 ジャジャーン!と提示されたプレートには『RESCUE』と記されており、多くの受験生がほかの追い詰められた受験生を救助する様が画面に映る。

 

『君は別の受験生の子を身を挺して守ったね!そのうえで協力して0Pを撃破した!そのことに特典が多く盛られてね!』

 

 57点と記された数字が増えていく。60を超え、70を超え、80を超え、90を超えて……その数字は、3桁に上った。

 

『レスキューポイント44点!合計点101点でぶっちぎりの1位だ!まさか主席合格に至るとは思わなかったよ!爆豪少年……頑張ったな。』

「あっ……」

 

 その労わるような声に、思わず爆豪はポロリと涙を流した。

 

『さぁおいで、ここが君の、ヒーローアカデミアだ!』

 

 主席合格、取るならNo.1、そんな傲慢な発言を繰り返していた。個性を失った自分では、もう戻れないと思った。けど、その結果は……

 

「~~~~~~~~ッ!」

 

 自分の憧れに、『おいで』と言われた。認められたような気がして、涙が流れる。母に伝えようと部屋の扉を開けてリビングまで下りていくと、その泣きはらした顔に、

 

「ど、どうしたの勝己!まさか……落ちたの!」

「違ぇわ!主席合格じゃボケェ!」

 

 思わずそう言って爆破をかましそうになったのであった。

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