ナザリックの代わりに転移したよ   作:鈴木颯手

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010「工作員たち」

 カルネ村の襲撃の翌日、ガゼフ・ストロノーフと兵士たちは村を後にした。本来は傷を癒しながら村の復興を手伝う予定であったがヒーラーであるブラキウムの治癒を受けて完治し、一刻も早く報告するべく戻っていったのだ。村の復興に関してはアストロ帝国の兵士が力を貸している為に余裕があり、必ず必要というわけでもないのも影響していた。

 そして、カルネ村の復興を進める傍らでオフィークスは原作のアインズの行動をなぞるように配下を各地に派遣していた。

 その一つである城塞都市エ・ランテルの冒険者ギルドにて、とある三人組が姿を現した。別に目立つような恰好をしているわけではない。装備品はそれなりに整っているがあくまで一般的な範囲に収まっており、特異な点はなかった。強いて言えば冒険者になったばかりであることくらいである。

 

「……陛下のおっしゃる通り(カッパー)で出来る仕事はあまりいいものがないな」

「仕方ないでしょう。別に原作のように急速にランクを上げる必要はないといわれているのです。地道にやっていきましょう」

「その通りだ」

 

 彼らはアストロ帝国に属する特殊工作員である。工作員と言ってもこの世界で冒険者として活動させる目的で作られた者達である。彼ら以外にも4組が王国で、3組が帝国、竜王国、聖王国にそれぞれ分かれて向かっている最中である。

 リーダーであるアルゴは剣士であり、前衛を担当する。女性のミラムはヒーラー兼バックアップ担当となっている。最後の一人、ミファクは盗賊も熟せる魔法詠唱者(マジックキャスター)である。この三人はレベル50に設定されている為によほどのことがない限り死ぬことはないがいざというとき以外で実力を出すことは禁止されていた。

 

「んじゃさっそく何か依頼を受けてみるか」

 

 そういってアルゴは依頼が張られている掲示板を眺める。この世界の文字は現実世界とは違うものであるために本来は読めないがそこは言語翻訳機能を持つ眼鏡をつける事で解消されている。アルゴはそれを見越して眼鏡をつける設定をつけられている。

 

「ふむふむ、薬草取りくらいしかないな」

「それってトブの大森林に行ってとってくるやつだよな? めんどいな」

「となると依頼ではないがモンスターを討伐してみるか? それならエ・ランテル周辺で出来るぞ」

「それもそうだな」

 

 アルゴ達“ペルセウス”はこの日よりエ・ランテル周辺のモンスター狩りを開始した。そして、僅か1週間でエ・ランテル周辺のモンスターを駆逐し、強大な力を持つ新人が現れたと噂になっていくがそれはまだ未来の話である。

 

 

 

 

 

「素晴らしい商品だ。購入しよう」

「ありがとうございます! では金貨2枚と銀貨10枚となります」

 

 リ・エスティーゼ王国の都市であるエ・ぺスペルのとある店にて恰幅の良い男が高価な品を買っていた。彼はズベン・カマリと言い、帝国兵に偽装したスレイン法国兵に襲われる前にカルネ村にやってきた商人であり、アストロ帝国に属するNPCである。彼はオフィークスの命令に従い商人としてリ・エスティーゼ王国で活動していた。

 エ・ぺスペルはエ・ランテルと王都リ・エスティーゼの中間地点に位置している為に往来する者達でにぎわっていた。そのためにエ・ランテルやリ・エスティーゼに及ばないながらも様々な商品が売られている。ズベン・カマリはその中からいくつかをピックアップして購入していたのだ。先ほど購入した物も高価な部類に入る調度品であり、富裕層向けの物だ。

 

「仕入れはこれで良し。後は指示通りに王都に向かい、店を開くとしましょうか」

 

 商品を運んでいるという偽装のため、馬車を走らせたズベン・カマリだがエ・ぺスペルを出て直ぐに不幸に見舞われた。

 

「へへへ、おいデブ。命が惜しければ荷物と金をすべて出しな」

 

 盗賊である。王国の主要な道を走っていたのに十数人の盗賊が現れたのである。そのことからも王国がどれだけ腐敗しているかがうかがえるがそんなことは現状においてはどうでもよかった。下種な笑みを浮かべながらそう要求する盗賊に対しズベン・カマリは飄々とした態度で答える。

 

「貴方がた如きに渡せる荷物も金もないのですがねぇ……」

「ならば死んでもらおうか!」

 

 ズベン・カマリが断ると同時に盗賊たちが一斉に襲い掛かる。四方八方から迫る盗賊に対しズベン・カマリはたった一人であり、誰から見ても盗賊になぶり殺しにされると予測するだろう。

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)雷撃球(エレクトロ・スフィア)

「なっ!?」

 

 ズベン・カマリがそう唱えると彼の手に雷の球が出来上がる。それを上へと放り投げると馬車を中心に雷が広がり、周囲の人間を焼き払った。最強化が施されたその魔法は盗賊たちの体を炭化させ、あたりに肉が焼ける不快な臭いを発生させた。

 そして、ともに雷に飲み込まれたはずのズベン・カマリは健在であり、馬車も傷がついたりしている様子は一切見受けられなかった。

 

「どうですかな? 私の魔法の味は。代金はあなた方の命で勘弁しておきましょう。……さて、余計な時間を取られましたが王都に出発しましょう」

 

 誰に聞かせるわけでもない独り言をつぶやきながら彼は馬車を走らせる。

 ズベン・カマリ。ペルセウスなどの冒険者になった者達と同じく特殊工作員だが単独での行動を基本とするためにレベルは70と高めに設定されている彼は戦闘が専門のアルゴ達よりも断然に強かったのである。

 

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