ナザリックの代わりに転移したよ   作:鈴木颯手

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聖王国編の映画が今年公開と聞いて投稿


002「双子と乙女と天秤と弓矢」

「陛下、凄く変な顔をしてる……」

「ポル。失礼だよ」

 

 男、オフィークスの顔を見た双子の幼女が小声で何かを話している。彼女達は男が設定した13人の幹部のうちの二人だ。黄道12星座になぞらえて〈ジェミニ〉の称号を与えられていた。

 真顔で思った事を言ってしまうポルとそんなポルに代わってしっかりしているスート。二人とも天使族であり戦闘では主に回復訳(ヒーラー)として活躍する。

 

「ポル、そんなに変な顔になっているか?」

「うん。なんか妖怪みたい」

「ポルー!?」

「ははは、もう我慢するのは止めたからな」

 

 ポルの失礼な物言いにスートの顔は真っ青になるがオフィークスは咎める事はせずに彼女たちを呼び二人の頭を撫でる。

 

「「ふあ……」」

「ポルの性格は俺が“こうであれ”と決めたんだ。ポルはそれに従い行動しているにすぎないからな」

「う、うん。分かった……」

「陛下、もっと撫でて」

 

 顔を紅くしながら二人はオフィークスに撫でられ続けるがその横で羨まし気な視線を感じそちらを向く。そこにはチャイナドレスを扇情的に着こなす美女がいた。〈ヴァーゴ〉の称号を持つ美鈴(ミーレイ)である。

 

「へ、陛下。ぜひとも私にもご褒美を……」

「爆乳おばさんは引っ込んでて」

「は?」

 

 胸元を強調しながらご褒美を求めて来た美鈴に対しポルは何気なくつぶやいたがそれは彼女の逆鱗に触れるものだった。まるでヤンキーの如きドスの利いた声を出すと頭を撫でられてご満悦だったポルの胸元を掴み持ち上げる。身長差も相まってポルの体は宙に浮く。

 

「てめぇ、貧乳の分際で随分と生意気な事を言いやがるな」

「事実を言っただけ。だって貴方は30歳。私は人間換算で10歳。勝利」

「……」

 

 ポルは無表情のままVと手で作るが美鈴はそんなポルに怒りを爆発させたようでどこからともなく剣を取り出すとそのまま振り上げた。

 

「死 ね 」

「これこれ。やめんか。陛下の御前だぞ」

 

 怒りのままに剣を振り下ろそうとした美鈴に声をかけたのは〈リブラ〉の称号を持つブラキウムである。男が作り出したギルドの中で最年長であり、豊富な知識を持つご意見番的な設定の元作られたキャラクターである。その関係上美鈴の行動を真っ先に諫めたのである。

 

「ポル、おぬしも美鈴に対して暴言を吐くのはやめないか」

「ん。少し言い過ぎた。謝罪する」

「……」

「美鈴?」

「……私も、少し、ほんっ! の! 少し! ……やりすぎましたわ。謝罪しますわ」

 

 ポルは素直に謝り、美鈴は不承不承という言葉がふさわしい程仕方なしに謝罪をした。そんな一連の様子を男は楽し気に見ていた。ユグドラシルを始めて12年。こうして転移の時を迎えたことに男は喜びをあらわにしたのだ。

 自分が作り上げ、育てたキャラが動いている。これほどうれしい事はないといわんばかりに。

 

「陛下も、少しは家臣の暴走を止めていただきたい。陛下がそのようでは部下に示しが付きませぬぞ」

「分かっているさ。だがお前らがこのように動き、話し、馬鹿をしているのはとても楽しくてな」

「……陛下がこの日をどれだけ待ち望んでいたのか。それを知らない者はここにはおりませぬ。そこに関しては何も言うつもりはありませんよ」

 

 男の作り上げたキャラクターに男の事情を知らない者はいない。フレーバーテキストには「陛下は転生者であり、いずれ来る転移の日に向けて準備を進めている。そして我ら家臣一同はその日を迎えるのを心待ちにし、転移後は陛下の為により一層の忠節を尽くすものである」と記載されている。ユグドラシルにおいては何の意味もないそれも転移すればそれが現実となる。つまり、このように記載されている事で男は事情を説明することもなく部下に自分のこれまでの情報を与えると同時に裏切らない忠臣を作り上げたのである。

 

「ですが、それに浮かれてばかりはおられませんぞ。異世界に転移した以上周辺の調査は必須。速やかに部隊を編成するべきでしょう」

「ブラキウム。その心配はなさそうですよ」

 

 小言を言うブラキウムを制したのは〈サジタリウス〉の称号を持つテレベルムである。弓を用いた遠距離戦に特化したキャラであり、性格は冷静沈着を体現している。

 

「と、いうと?」

「陛下は転移前に調査部隊の編成を終えているようです。その指揮官に私が命令されました」

「なんと……」

「その通りだ。でなければこうして悠長にバカ騒ぎを見ていないさ。そういうわけだ。テレベルム、部隊を率いて周辺の探索に向かえ。十中八九平原が広がっているだろうが念のためだ。現地民との接触は控えて情報収集に専念せよ」

「了解しました」

 

 テレベルムは男の命令に従うと転移の指輪を用いて部隊のもとに向かった。直ぐにでもギルドの地上部分より出陣し、調査を始めるだろう。

 

「……なるほど。陛下は本当の意味で準備万端だったというわけですな」

「その通りだ。では諸君、改めて宣言しよう」

 

 男が真剣な表情でそういうと同時に幹部たちは姿勢を正して男に向き直る。

 

「我々は予想通りにユグドラシルより全く別の異世界へと転移した。ユグドラシルでの日々は全てこの日、この時のための準備であった。故に、この時をもって我ら“アストロ帝国”は動き出す! さぁ! 諸君! わが野望の為に動け! 励め! 貢献せよ!」

「「「「「「「「「「はっ! 偉大なる皇帝陛下のため! 偉大なるアストロ帝国の為に!」」」」」」」」」」

 

 この時を持ちアストロ帝国は動き出した。そして、転移したことを理解したNPC達は雄たけびを上げ、喜びをあらわにするのだった。

 

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