Side:オフィークス
転移した以上あるべきことは多い、と見せかけて実はやることはない。何故なら転移前にほとんどの準備を終わらせたからだ。
俺のギルドであるアストロ帝国はナザリック地下大墳墓と似ていて地下に領土が広がっている。地上1階、地下10階からなるナザリックを超える規模のギルドだ。もちろん普通ならばこんな規模のギルドがあるわけがなく、俺がチートとしてゲームに介入した要素の一つだ。
総人口は5000人。多いように見えるがそれだけ地下が広大という事であり、狭いという事はない。ギルドホームに関しては一人では制約が多かったからな。一番介入した要素だ。
地上には主に低レベルの戦闘系キャラを配置している。いわゆる歩兵たちだな。彼らは人間種、亜人種、異形種に区画されてそれぞれ住んでいる。種族が違うと何かと衝突や不便な点が見られるからな。
地下は1階から農場、牧場、工場1、居住区1、倉庫1、工場2、研究所、居住区2、倉庫2と総合指揮所、俺の部屋となっている。つまり地下10階は俺専用の場所というわけだ。農場は一番でかく、小麦や米を中心に様々な野菜、果物を育てている。その下にある牧場にいる家畜に食わせるエサもここで作っている。牧場には牛を中心に鳥と豚、数は少ないがヤギと羊も生産している。これらは一部を除き食用となっている。工場は二つに分かれており、一つが洋服や日常雑貨を作る工場1、もう一つが武器を生産する工場2となっている。研究所は新しい魔法などの開発をするところで基本的にユグドラシルでは不要な施設だが転移すれば別。転移直後には稼働が開始している。総合指揮所に関してはその名の通りこれから行う全ての戦争を指揮できる場所だ。そのためのモニターや通信アイテムがおかれ、様々な地図が保管されている。今後はこの世界の地図がメインに活躍することになるだろう。居住区には商店や図書館などの日常生活に必要な物が設置されている。
このように転移後を想定したギルドとなっており、実際に今は全力稼働中で国民は労働に励んでいる。……ナザリックでは異形種ばかりで労働環境はブラックと言える状態だったが俺の帝国は人間種が多く存在する。そのために規則正しい労働環境となっている。中には仕事を進んでやりたがるやつが、いや、おそらく忠誠心からみんなそうだろうがそこは守らせる。肉体を追い込んで長時間やるよりも適度に休息を挟んだ方が結果的に効率はいいからな。
「初動で行うべきことがないと暇になってしまうな」
「ならば新しい体になれるために戦闘訓練するのはどうでしょうか?」
「ん? そういえばそれがあったな。すっかり忘れていた」
ああ、一つだけやり残したことがあったか。確かに転移後の戦闘確認は必須だ。アインズが初めて戦闘する場面でも描写されていたが画面に表示されていた様々なステータスが脳裏に浮かんでいるがだからと言ってきれいに動けるかは別の話だ。いざというときに戦えない、というのでは話にならない。今まで使い込んできたレベルまで新しい肉体になれる必要があるな。
そんなわけで俺は居住区に存在するコロッセオに来ている。戦闘と言えばコロッセオという安直な考えで作った場所だが結局今日まで使う事はなかった。ギルド内で戦闘をするという事がなかったからな。
「さて、まずは手始めに……」
ポルとスートを連れてやってきた俺は肩慣らしに軽く動いてみる。俺の種族は特別製で神人類というものだ。人間の完全上位互換と言っていい種族だ。尤も、俺専用に作り上げた種族である為に同族は俺以外に存在しない。特徴としてあげれば異形種並みのステータスを得られることだろう。異形種は種族レベルが得られる為に素のステータスが高い傾向にある。一方で人間や亜人種は種族レベルが存在しない為に職業レベルのみで構成されることになるがこちらは強力なスキルが多数存在しており、強くなるなら異形種でも職業に特化するべきと言われていた。
そして俺は剣士であり、刀剣を用いた近接格闘戦に特化している。魔法も習得しているがこちらは数えられる程度しか保有していない。精々が自身にかけるバフばかりだ。
一撃二撃と刀を振るうがまるで使い慣れた体のようにしっくりと来る。この調子なら違和感なく戦えるだろう。
「
魔法に関しても特に問題はなさそうだ。俺が使える最大の魔法も絶好調。それ以外の強敵相手にはほぼ無意味な2~6の魔法も特に問題はない。
「お疲れ様です。そろそろ休憩されてはいかがですか?」
「もうすぐ2時間。調査隊も戻ってくるかも」
ポルとスートの言葉に俺は目を見開いて軽く驚く。体を動かすことに夢中になって気づけばかなりの時間が経過していたようだ。幸い、
「どうですか? 画面越しとは違って実際に動くのは」
「なんとも言えない気分だ。初めて動かしたのにまるで違和感がない。これまでも使っていたかのような好調さだ」
「そうなるように設定した?」
「してないさ。ま、俺としては体に慣れる必要がなくなった以上うれしい誤算ではある」
実際、忘れていたとはいえ即座に戦闘になってもこれで普通に戦えることはわかったのだ。後は、実戦を経験し、戦場の空気に慣れることと、痛みを受けるという事を試せばいいな。そして、両方をいっぺんに解決できる方法は、数日中には訪れることになるだろう。