ナザリックの代わりに転移したよ   作:鈴木颯手

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007「王国戦士長」

「オフィークス殿! 民たちを救っていただき、感謝する! 本当に、感謝する!」

「……」

 

 ガゼフ・ストロノーフ。王国では珍しく、いや奇跡と言っていい成り上がった人物だ。彼は平民の出でありながら御前試合で国王にその武を認められ、側近として仕えることが許された。貴族の反発を避けるために貴族位こそ得ることはなかったが兵士たちを率いる王国戦士長の地位を賜り、王国の為に武を使う忠臣であった。

 そんな彼に国王はエ・ランテル近郊の村々を襲撃する帝国兵の退治を命じられ、王都から遠く離れたこの地まで赴いてきたのだ。そして、襲撃を受けたであろうカルネ村にて彼はオフィークスと名乗る青年の歓迎を受けた。彼はカルネ村の人間ではなく、たまたま村に立ち寄ったところを帝国兵が襲撃したために撃退したという。村長からも本当のことだと証言を得たガゼフはオフィークスに感謝を示したというわけだった。

 

「頭を挙げてください。戦士長殿。私は自分にできることをやっただけですよ」

「そうかもしれない。だが、恥ずかしながら王国においてそれを成せる人物は少ないのだ。私とて力がありながらこうして帝国兵の後を追い、村の生き残りを助けることで精いっぱいだった」

 

 本音から、そういっていることがわかるガゼフの言葉にオフィークスは笑みを浮かべる。ああ、原作通りに素晴らしい人物だと感じながらも彼らの為に水を用意していく。

 

「失礼だが貴殿は王国の民ではないのか?」

「ええ、詳細は話せませんがこの国に来たのは偶然だったとだけ。こう見えて祖国ではかなりの地位を有していたのですよ」

「それは貴殿の立ち振る舞いからも察することが出来る。貴殿ほどの人物が貴族であったのならその国はさぞ幸せであっただろう」

「そうとも言い切れませんよ。国とはいえ亡びる時は一瞬ですから」

「……」

 

 オフィークスは予め用意していたストーリーに基づきガゼフと話をした。そして、日が沈む直前、ガゼフのもとに王国兵が慌てた様子で飛び込んできた。

 

「戦士長! 村を包囲するように人影が!」

「なんだと?」

 

 兵士のその言葉にガゼフは驚くが最初から知っていたオフィークスは真剣な表情をしつつも今後の動きを脳内でイメージしていくのであった。

 

 

 

 

 

「ガゼフ・ストロノーフ。お前はここで死ぬのだ。大人しくその場で横になれ。苦痛なき死を与えてやろう」

 

 スレイン法国の特殊部隊。陽光聖典の隊長であるニグン・グリッド・ルーインはそう言って目の前で瀕死の状態になっているガゼフ・ストロノーフに言った。

 ここまでの流れは原作通りに進み、ガゼフ・ストロノーフが村人を助けるべく特攻を仕掛けたのだ。ただし、一つだけ違う所は美鈴によって兵士たちにバフがつけられたことである。美鈴はバックアップに特化したビルドをしており、その気になれば陽光聖典すら倒せてしまう程のバフを掛けられる程だったがあくまで接戦を繰り広げられる程度のバフをかけることとなった。

 その結果として陽光聖典の隊員達が召喚する炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)は兵士たちが抑える事が出来、ガゼフは陽光聖典相手に接近することが可能となったがニグンが召喚した監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)にはかなわなかった。最終的にスタミナの差で兵士たちが倒れていき、原作通りにガゼフも瀕死となったのだ。

 

「まさかここまで戦えるとは思わなかったぞ。だが、これでおしまいだ」

「ふ、それもそうだろう。何故なら、あの村には俺よりも強い御仁がいるからな」

 

 ガゼフのその言葉は彼の本心であったがそれをニグンは嘘とみなした。英雄の領域に踏み入りかけているガゼフを超える人物が辺境の村にいる? そんなわけがないと。それほどの実力者がこんなところに訳もなくいるはずがないと考えたからだ。

 

「妄言は大概にせよ。だが、もういい。ガゼフ・ストロノーフに止めを刺せ。一体でやらずに四方八方から一斉に攻撃するのだ」

 

 瀕死だからと言ってニグンが手を抜くことはない。ガゼフは情報よりも戦えており、窮鼠猫を噛むの如く思わぬ一撃をもらう可能性だってあるからだ。故に確実にガゼフを殺せる指示を出したのだ。流石のガゼフでも消耗し、傷を負ったこの状況で四方八方からの攻撃に耐えられるわけがなかった。

 

「(……ここまでか)」

 

 ガゼフは目を閉じ、自分の死期を悟ったがふと、彼の脳内に声が響いた。

 

-そうだ。お前の出番は終わりだ。ここからは、我々の出番だ。

 

 その言葉と共に、ガゼフの視界に広がる世界は一変した。先ほどまで天使や陽光聖典に囲まれた平原にいたはずなのに部下と共に村人が多く入っている倉庫らしき建物にいたのだ。

 

「……ここは?」

「戦士長様。ここは村のはずれにある倉庫です。オフィークス様の指示でみんなでここに隠れていたんです」

「……そのオフィークス殿は? おつきの者たちの姿も見えませんが……」

「オフィークス様たちは戦士長様と入れ替わるようにいなくなりまして……」

 

 村長も何が起こったのか理解はできていないのだろう。ただ起こったことを説明するがやはり何が起こったのかはわからなかった。しかし、それでもガゼフは自身がオフィークスに助けられたことだけは理解できた。

 

「(やはり、彼は素晴らしい御仁だ……)」

 

 安心からか、ガゼフは笑みを浮かべながら後ろに倒れこんだ。オフィークスの勝利を心の中で願いながら。

 

 

 そして……。

 

「な、何者だ貴様!?」

「この世界に現れし最高の存在だよ」

 

 そういってオフィークスはニグンに、監視しているだろうスレイン法国に向けて笑うのだった。

 

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