「貴様! 何者だ! それに、ガゼフ・ストロノーフはどこに……!?」
「彼の死に場所はここではない。故に、俺が代わりに相手しよう」
突如としてガゼフ・ストロノーフ及び彼が率いていた兵士たちが消え、代わりに一人の青年が姿を現した。瞬きしたときには既に入れ替わっていた為にニグンは困惑したのだ。それは陽光聖典の隊員たちも同じであり、騒めきながら青年の方を見ているが臨戦態勢を崩していないあたり特殊部隊としての実力がうかがえた。
「貴様が? ガゼフ・ストロノーフですら我々に膝をついたのにお前ごときが?」
青年の不敵な笑みをニグンは嘲笑する。ガゼフ・ストロノーフは英雄級の実力者であり、周辺諸国において彼と戦える存在はそれほどいない。そんなガゼフに代わり目の前の青年が相手するというのは無謀に見えたのだ。
「まぁいい。貴様を殺してからガゼフを殺すとしよう。やれ!」
ニグンはいつまでも構っている暇はないと部下に指示を出して天使に攻撃をさせる。二体の
「よっと」
青年は軽い動作でロングソードによる突きを躱し、天使の上を跳躍すると地面に着地する寸前に手に持った刀で天使を横薙ぎに切り払った。たったそれだけ、しかも跳躍中という力がうまく入れられない状態にもかかわらず天使は消滅した。
「なっ!? 馬鹿な!?」
「俺はガゼフ・ストロノーフに代わり相手をするといった。どうだ? 彼に代われる程度には実力があっただろ?」
青年はまるで小馬鹿にするようにそう言ってくるがニグンに怒りの感情はない。ただただ驚愕するばかりであった。
「っ! 全天使でかかれ! 相手はガゼフ・ストロノーフ並みの敵だ! 決して油断するな!」
ニグンの判断は早かった。ガゼフ・ストロノーフ並みと評して部下に命令を出すがニグン本人としてみてみれば明らかにガゼフよりも上であると感じていた。
「(こんな辺境の地に英雄級の実力者が潜んでいたというのか!?)」
「質で無理なら数で、か。判断はいいがそもそも火力不足だ」
そういうと青年は刀を構えて駆けだした。その速度は陽光聖典とは別の、漆黒聖典と呼ばれる少数精鋭に属するとある人物を彷彿とさせるほど素早く、あっという間に天使の前に躍り出ると刀を滅多矢鱈に振り回した。自棄になったとさえ思える攻撃だがそこから多数の斬撃が飛び出したことで話は変わる。それらは追尾機能でもついているのか近くの天使に向かって軌道を曲げて向かっていき、あっけなく天使を全滅させてしまった。
「ば、馬鹿な……!」
「戦士系の最上位スキルでね。敵に自動追尾してくれる斬撃を出せるのさ。ま、味方にもあたるから一人の時ぐらいしか使えないがな」
青年は何でもないように言っているがそれがどれだけ異常な事なのかをニグンは理解している。どこの世界に天使を一瞬で全滅させる力を持つ者がいるというのだろうか? そんなことはスレイン法国が保有する“神人”……、とある血を受け継ぐ者たちにも不可能であろう。
「っ!? 神人でも、無理ならば……!」
そして、ニグンは一つの可能性に行き着く。スレイン法国が建国された理由。神人が誰の血を引いているのか。そして、それがやってくる周期が今であることに。
「あ、あなたは。貴方様は“ぷれいやー”なのですか!?」
「その通りさ。君たちがずっと待ち望んだプレイヤー様だよ」
青年、オフィークスの言葉にニグンは膝から崩れ落ちた。それは絶望からではない。歓喜に打ちひしがれて立てなくなったのだ。突然崩れ落ちた隊長に事情を詳しく知らない隊員たちは困惑するがニグンはあふれ出る感情を抑えながら簡潔に伝える。
「お、お前、達。……あのお方は、敵ではない! 我々が! まち、のぞんだ。六大神様と同じ存在だ!」
涙ながらに話すニグンの言葉に陽光聖典の隊員達は驚愕し、その意味をうまく理解できないほどの衝撃を受けた。
そんな、混沌した状態の陽光聖典をオフィークスは微笑みながら彼らが落ち着くのをその場で待つのだった。
ふと疑問に思ったのですがニグンは何故アインズとの戦闘で彼がプレイヤーだと気付かなかったのか。魔神を殺せる天使の一撃を耐え、それどころか逆に一撃で葬り去るアインズを見てそのような結論に至ってもおかしくないのに。
彼はプレイヤーのことを知らされていなかったのか。一応陽光聖典の隊長だしありえないとは思うけど……。