ナザリックの代わりに転移したよ   作:鈴木颯手

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009「神」

 この世界に最初にプレイヤーが降り立ったのは凡そ600年前の事である。当時、人間はその圧倒的弱さから亜人達の食料として扱われていた。そんな人間をプレイヤー、六大神は見捨てておけず、亜人を駆逐して人間が生きていける土地を確保した。

 やがて六大神は寿命で死に、たった一人だけが残されたがその100年後に悲劇が起こる。次にやってきたプレイヤー、八欲王は自分たちの快楽を優先する最悪の存在だったのだ。彼らは六大神最後の生き残りを葬り去るとこの異世界を蹂躙し、好き勝手に動き始めたのだ。それどころか世界の法則を曲げ、異世界には存在しなかった位階魔法、ユグドラシルの魔法を現地民が使えるようにしたのである。

 この行為は世界に多く存在していた竜王(ドラゴンロード)との戦争を引き起こした。当初こそ竜王が優勢であったが死んでも死んでもよみがえる八欲王の前にたった一体を残して全滅する結果となった。

 そして世界を支配するに至った八欲王は最終的に仲間割れの末に死に絶えることとなり、現在の世界が形成されていくことになった。

 その後も100年周期でプレイヤーが現れるようになっているとされているがこれら二つの勢力以外に明確に降り立ったという記録は残されていなかった。一応、200年前に登場した13英雄の中にプレイヤーがいた可能性があるがそれもスレイン法国、六大神が保護した人間の末裔の彼らには把握できていなかった。

 

 スレイン法国は待ち望んでいるのである。人間を導き、守り手となってくれる神、プレイヤーの存在に。

 スレイン法国は警戒しているのである。人間を滅ぼし、欲望のままに世界を蹂躙するプレイヤーの存在に。

 

「神よ……!」

「どうか、我らを……!」

 

 しかし、人間誰でも最悪の想定より最高の想定を信じたくなるものである。ニグンの言葉を聞いた陽光聖典の隊員たちは自分達を救ってくれる神としてオフィークスを崇め始めたのである。スレイン法国が長年待ち望んだ存在がこうして、目の前にいるのだ。誰もが崇めたくなるだろう。

 そして、目論見通りの展開に持ち込めたオフィークスは笑みを浮かべながら言った。

 

「一応、伝えておく。この先にあるカルネ村は俺が懇意にしている村でな。個人的に襲撃されるのは困るんだ」

「っ! は、はい! 攻撃はしません!」

 

 オフィークスの言葉にニグンは条件反射に返答した。ニグンとてプレイヤーが懇意にする村を襲う気はない。たとえ襲ったとしても倍返しでは済まない程の報復を受ける可能性は高い。最悪の場合、スレイン法国という国が消滅するかもしれなかった。プレイヤーはそれだけの実力があるのだから。

 

「ついでにガゼフ・ストロノーフの暗殺もやめてもらおうか。彼は個人的に気に入っている存在でな。俺と敵対するならともかく現状ではガゼフには死んでほしくはないからな」

「か、かしこまりました!」

 

 これについてはニグンはさすがに一瞬だが躊躇した。ガゼフ・ストロノーフは王国において最大の戦力だがスレイン法国にとってガゼフが生きているのは不都合だった。

 というのも彼が属するリ・エスティーゼ王国は貴族の腐敗が進み、腐りきっていた。王家では第一王子と第二王子が王位継承権を争い、貴族は王派閥と貴族派閥に分かれていた。更に王国の裏では八本指と呼ばれる組織が暗躍し、王国を養分に私腹を肥やしていた。肥沃な大地を保有する国家でありながらこの体たらくである為にスレイン法国は隣国のバハルス帝国に併合してもらおうと考えていたのだがそれを阻んだのがガゼフなのである。何しろ彼の実力はバハルス帝国も無視できるものではなく、結果的に帝国はリ・エスティーゼ王国をゆっくりと弱体化させる方針に切り替えたのである。しかし、それほど悠長に待っていられないとスレイン法国は今回の暗殺を決めたのである。

 

「納得がいかない、というよりは本国の命令に逆らう事になるから躊躇しているといった感じか?」

「……おっしゃる通りです。私としては了承したくとも事情を知らない本国が果たして聞いてくれるか……」

「それならば一度本国に帰り俺の存在を教えればいい」

 

 オフィークスはそういうとインベントリより光り輝く水晶を取り出す。彼が取り出したそれにニグンは目を見開いて驚く。

 

「そ、それは……!?」

「魔封じの水晶。知っているようだな? これには第10位階魔法が込められている。これをもっていけば少なくとも俺の存在は理解してくれるだろう」

「第10位階魔法!? そ、そんな神の御業を……!」

 

 ニグンはこの任務を受ける前にオフィークスが取り出した物と同じ魔封じの水晶を受け取っていたがそれに込められた魔法は第7位階魔法である。これでもスレイン法国をはじめ周辺諸国にとっては貴重なものだったがそれを軽く超える第10位階魔法と言われてニグンは戦慄したのである。

 

「ほら、受け取れ」

「え!?」

 

 そして、そんな貴重なアイテムはオフィークスはあろうことか投げ渡してきたのである。突然の事に大慌てで受け取ったニグンは大切な物を持つように持った。

 

「んじゃ、俺は戻る。……もし、スレイン法国が俺との会談を希望するというのならカルネ村に来い。ただし村人に考慮して数は5人以下とさせてもらう」

「わ、わかりました。必ず本国に伝えます」

「ああ、そうしてくれ。……もっとも、そんな必要はないかもしれないがな」

 

 オフィークスは星が広がる夜空を見上げ、意味深な発言をするがニグンにはその言葉は聞こえず、陽光聖典は撤退していった。

 こうして、ガゼフ・ストロノーフ暗殺を目標とした一連の騒動はオフィークスの介入により静かに幕を閉じることとなるのだった。

 

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