ウマ娘 ∼Antithesis hero∼   作:Carboxyl

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 ごめんなさい、前回の投稿から大幅に遅れてしまいました。ああでもないこうでもないと推敲するうちにいつの間にか月日が急流のように速く流れていました。
 一月は行く、二月は逃げる、三月は去るとはよく言ったものです。
 言い訳はともかく、次回の投稿はもっと早く出来るように頑張ります。改めて申し訳ございませんでした。


第12話 覇王君臨

 さてさて、今年もやってきました、有馬記念。今年は何と言っても年間無敗、グランドスラムという前代未聞の大記録をかけて挑むテイエムオペラオーさんへの期待が世間を賑わしています。その他にも何度目になるかはもはや数え切れませんが、今度こそオペラオーさんに雪辱を果たせるか、メイショウドトウさん。永久不滅のシルバーコレクター&ブロンズコレクター、念願のGⅠ獲得なるか、キンイロリョテイさん。・・・等々、期待が寄せられるメンバーが多く揃っています。

 そしてそして、注目すべきは我が恩師、キングヘイローさん!

 

 「きゃあああああ、キングさん仕上がってるぅぅぅ!!!エメラルドカラーの勝負服が映えるぅぅぅ!!!カッコイイィィィッ!!!」

 

 「キングたる者仕上がり抜群で当然よ!お〜っほっほっほ!!!」

 

 あたしはキングさんの控室でその晴れ姿をこれでもかと拝ませてもらっていた。

 

 「・・・キングヘイローさん。初めて見える事が出来ましたが、こうしてテレビではなく己の目を通して見るとその風格が際立ちますね。流石はかの黄金世代の一角・・・。」

 

 「でも思ったより親しみやすいしすごく良い人で驚いたよ。・・・何よりデジちゃんと仲良さそうなのが羨ましい。」

 

 「・・・後半の方が本音ですよね?」

 

 「悪い?」

 

 「いいえ?私は何でもストレートに物を言ってしまう貴方が羨ましいですよ。」

 

 「へへ、それはどうも・・・。」

 

 「・・・皮肉のつもりだったのですがね・・・。」

 

 結局あたしは本当にグリーンさんとサスミさんと一緒に中山レース場まで来てしまった訳ですが、お二人の関係が微妙なのは相変わらずで少し気になってしまいます。あたしが原因っぽいので電車の中ではひたすら謝り倒そうとしたのですが、「君が謝る必要は無い」と逆に謝り倒されたので何が何だかよく分かりません。

 

 「さぁ、レースはもうすぐよ。私がトゥインクルシリーズで走るのもこれで最後になるし、栄光の、一流のラストランというのを見せてあげる。」

 

 キングさんはマイルCSの後、有馬記念を最後にトゥインクルシリーズを引退しドリームトロフィーリーグへと歩を進める事を発表していた。これでトゥインクルシリーズに残るであろう黄金世代のウマ娘ちゃんと言えばセイウンスカイさんくらいになりましたが、キングさん曰く「彼女も近いうちに最後に派手にやってドリームトロフィーリーグに来るでしょう」との事です。

 

 「頑張って下さい、キングさん!応援してましゅっ!」

 

 「任せなさい。必ず一着を取ってやるわ。」

 

 キングさんは威風堂々とそう言い放ち控室から出ると、あの弱気そうなウマ娘ちゃんがドアのすぐ近くに立っていた。

 

 「あ・・・。」

 

 初めて会った時同様、もじもじまごまごと、何かを話したい様子であるのは分かるのですが全く切り出さない。

 それを見たキングさんは何事も無かったかのように素通り・・・、するかと見せかけて立ち止まった。

 

 「・・・お互い、全力を尽くしましょうね。」

 

 そう言うとキングさんは再び歩みだし、パドックへと向かっていった。弱気そうなウマ娘ちゃんは相変わらず俯いたままで何をするでもなくその場に留まっている。

 

 「・・・どうするおつもりで・・・?」

 

 このままでは何も進まないと思ったので、あたしは弱気そうなウマ娘ちゃんに話しかけてみた。

 

 「・・・分からない。」

 

 弱気そうなウマ娘ちゃんは首を小さく横に振り話を続けた。

 

 「・・・オペラオーさん包囲網は確実に作られる。今更、後に引く事は出来ない。・・・でも・・・。」

 

 「でも・・・?」

 

 彼女はまた小さく首を横に降ると、無理やりのような、苦しみが垣間見えるような引きつった笑顔を見せた。

 

 「いや、何でも無い。・・・せっかく、有馬記念に出てきたんだ。もう少し、楽しまなきゃね・・・。」

 

 弱気そうなウマ娘ちゃんは深呼吸した後、踵を返してこの場を去ろうとした。

 

 「・・・レース、精一杯頑張って下さい!応援してますから!」

 

 あたしは咄嗟にそう口にすると、弱気そうなウマ娘ちゃんは振り返り、信じられないものを見るような目であたしを見つめてきた。

 暫くその状態でしたが、くすりと小さく笑ったかと思うと、「あまり期待しないでね」と苦笑いしながらそれだけ言い残し彼女もまたパドックへと向かって行った。

 

 「・・・あの、デジタルさん。あの方は・・・?」

 

 「そう言えば、サスミさんはあの事に関してご存知ではありませんでしたね・・・。」

 

 あたしは以前弱気そうなウマ娘ちゃんから聞いた「オペラオー包囲作戦」の事を簡潔に話した。

 

 「なるほど・・・。私は彼女ではありませんからね。文句を言うだけなら幾らでも出来ると突っ込まれるかもしれませんが、トレセン学園の一員として、頂点を目指さない姿勢というのはとても嘆かわしく思います。」

 

 サスミさんは静かな怒りを抱えていたましたが、対してグリーンさんはこの話題には相変わらず浮かない顔を見せる。

 

 「さ、さぁさぁ!キングさんもパドックに向かった事ですし、あたし達は観客席に移動しちゃいましょう!ほら、食べ物も沢山買い込みましたので!」

 

 レース場にはコースだけじゃなくてファストフードやレストランと言った来場者のお腹を満たすサービスも完備されているのも魅力の一つです。勿論入っているお店はレース場によって様々ですから、各レース場を訪れてウマ娘ちゃんを応援しつつB級グルメを楽しむ旅なんて事も出来たり。

 あたしがそこら辺で買い込んだ焼そばやサンドイッチ等をビニール袋から覗かせると、さっきまでの暗い雰囲気は何処へやら。グリーンさんとサスミさんは目を輝かせて歩み寄って来た。

 

 「うわあ・・・!こんなに沢山!?有難う!」

 

 「・・・気を使わせてしまい申し訳ありません。美味しく頂きます。」

 

 「いえいえ、これくらいなんて事は・・・!」

 

 そうそう、その笑顔があたしにとって何にも代えがたい活力なのです!推しに暗い顔は似合わないっ!させたくないっ!スマイルが一番です。

 

 「ささ、ファンファーレがなる前に速く移動しましょう!」

 

 「うにゅ、りょおはあい。」

 

 「・・・ン"ッ!!!」

 

 早速サンドイッチを手に取り頬張りだしていたグリーンさんのあまりの可憐さにあたしは胸を貫かれ、あっという間に意識が吹き飛んでしまった。何とかあたしを観客席まで運び、レース開始までに起こしてくれたサスミさんとグリーンさんには感謝してもしきれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やあやあドトウ。今日も調子が良さそうだね。」

 

 「は、はい〜。今日こそは勝ちたいと思って、万全の準備を〜・・・。」

 

 皐月賞ウマ娘、テイエムオペラオー。クラシック級でもダービーウマ娘アドマイヤベガ、菊花賞ウマ娘ナリタトップロードと言ったライバル達と激戦を繰り広げた上、その年の有馬記念ではグラスワンダー、スペシャルウィークに続いて三着を取るなど力を見せていたが、その実力を遺憾なく発揮するようになったのは年明けからだった。

 京都記念、阪神大賞典、天皇賞春、宝塚記念、京都大賞典、天皇賞秋、ジャパンカップとシニア級中長距離路線にて堂々の勝利を勝ち取り続け、王者の座をほしいままにしていた。

 対するは、メイショウドトウ。クラシック級では制約のせいでクラシック三冠路線に挑めず、代わりにあちこちのオープン級のレースを転々としていたがイマイチ勝ちきれずに注目を集めることは無かった。

 しかし、ドトウも年明けからは徐々に頭角を現し始め、中京記念、金鯱賞等を制した後、宝塚記念からはオペラオーと安定して競り合う大器となった。が、いずれもオペラオーには先着を許し続けここまでGⅠレースは一度も勝てていない。その為、最もオペラオーを凌ぐ可能性のあるウマ娘として注目され、本人も雪辱を果たさんと執念を燃やし続けていた。

 結局、今回の有馬記念でも一番人気はオペラオー、二番人気はドトウと最早「テンプレ」と言われる人気順となったが、そう言われるほど彼女達の強さは圧倒的で、安定していた。

 

 「うむ、その心意気や良し!ここまで、ボクとドトウは同じ道を歩み、幾度と無く戦を交えてきた・・・。

 だが、それはジェネラルリハーサル!この有馬記念こそ本番!大舞台を飾る最高のショーはここでなければならない!」

 

 オペラオーは両手を天高く広げてそう言うと、額に右手を当て若干髪をめくり上げ、左手を真っ直ぐにドトウに差し出すというナルシスト宜しく一部の者以外がやるとかなり大火傷を負いそうなポーズをした。

 

 「さぁドトウ、本気で向かって来い!ボクはそれを数ミリの差で打ち砕く!良きライバルとの戦いを制してこそ、真の覇王と言えるだろう!」

 

 「は、はい〜・・・!私だってぇ、負けるつもりはありません・・・!」

 

 お互い戦意は十分であった。宣戦布告も済み後はレースが始まるのを待つだけ・・・、のハズだったのだが、ドトウは周りをきょろきょろと見渡して何処か落ち着かない様子であった。

 

 「ん?どうしたんだいドトウ。」

 

 「あ、え〜と・・・。私、有馬記念に出るのは初めてなので慣れていないだけかもしれませんがぁ・・・。こ、こんなに視線を感じるものなんです

ねぇ・・・。」

 

 「・・・確かに、今日は何かとボク達から目が話せない者達が観客席に大勢いるようだね。

 なぁに、ボク達のダイナミック且つ美しいショーの始まりを今か今かと待ち続けているだけさ。心配する事など微塵も無い!は〜っはっはっはっ!!!」

 

 オペラオーは高らかに笑い声を上げたが、ドトウはやはり視線が気になって仕方が無かった。観客では無い。もっと近くの・・・。そう、このレースに参戦してきているウマ娘達からのものだ。

 どう考えても、そんなポジティブシンキングに到れるような視線ではない。獲物に狙いを定めるライオンのように、それは鋭く冷たい。

 オペラオーの事だから大丈夫だろうという気持ちもある反面、周りのウマ娘が何をしてくるのか、気が気ではなかったのも事実だった。

 

 「・・・が、頑張りますぅ〜・・・。」

 

 しかし、他人の心配をしている場合ではない。オペラオーに勝たなければならないのに集中力を切らしてしまってはきっと、今までと同じ結果になる。まずは自身の最善を尽くす事。話はそれからである。

 波乱の予感を感じさせる最中、中山レース場に軽快なファンファーレが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さぁファンファーレが鳴り止んだ所で各ウマ娘達の様子を見てみましょう。」

 

 「え〜、どの娘も非常に落ち着いていますね。」

 

 「レース展開はどうなるでしょうか。」

 

 「・・・やはり逃げを取るウマ娘達がどれくらいのペースで走るか、どのようなポジションを取るかに注目でしょうね。今年は割とどうとでも動ける娘達が揃っていますから、他の有力ウマ娘はそれを見ながらと言った所でしょうかね。」

 

 「なるほど。さぁゲートイン・・・、残りは二人でしょうか。」

 

 「キングヘイローは入りました。残るもう一人も無事収まりそうです。」

 

 「さぁ年末最後のビッグレース、有馬記念。今、十六人全員が収まりました!」

 

 盛り上がっていたレース場内は自然と静まり返っていき、誰もがスタートを今か今かも見守った。

 そして、ガコンという重い金属の音が辺りに鳴り響く。

 

 「ゲートが開きました!大歓声の中でのスタートです!」

 

 スタートからやや団子状態となりながらバ群は中山の道を進んでいく。テイエムオペラオーはやや中段に位置取りしていた。

 三コーナーから四コーナーを周り、一周目のホームストレッチへ差し掛かる時になってもバ群はギチギチの状態であり、内ラチを走るウマ娘達は若干走りにくそうな苦悶の表情を浮かべていた。

 

 「・・・最低のレースになりそうですね。競争ウマ娘史上最大の汚点とか後々言われても仕方が無いですよ。」

 

 サスミはいつまで経っても団子状態のまま展開していくレースを見てそう吐き捨てた。

 弱気そうなウマ娘が言っていた通り、オペラオー包囲網が形成されていると見て良いだろう。

 オペラオーは、強過ぎた。強過ぎたが故に、不滅の栄誉を手にすると共に周りから妬まれるようになってしまった。

 デジタルとしては、ウマ娘の幸福が何にも代えがたい彼女にとっての幸福であったから、このような重い雰囲気でのレースは見るに耐えられるものではなかった。

 

 (・・・いや、しっかりするのだデジたん。あたしは、見届ける必要があるのです。キングさんも、オペラオーさんも、ドトウさんも・・・、皆の頑張りから、戦いから、目を背けてはならないのです。)

 

 オペラオーが強かった以外にも原因は様々にあるだろうが、このような事態になることは避けられなかったのだろうか。自分はほぼ蚊帳の外の存在とは言え、各々のウマ娘の気持ちを思うとデジタルは胸が苦しくなるのを感じた。

 

 「向こう正面を抜けて第一コーナーから二コーナーへ。オペラオーは後方三番手、じっくりと行きます!」

 

 当のオペラオーはと言うと、ウマ娘達が中々左右前後にバラけない事を少し妙に感じていたが、そこまで気にしている様子でも無かった。

 

 (恐らく今日のレースは皆余計な駆け引きはしないつもりなのだろう。なるほど、ボクが真の覇王に相応しいかどうか、最後の試練として正々堂々全力で勝負する場を整えているんだね!

 ああ、ボクはなんて素敵なライバルに恵まれたのだろう!それに、ここにはドトウにトップロードもいる。強力な刺客達を押し退けての栄光の戴冠・・・!心が躍るじゃないか!)

 

 スタートから最後方付近に置いていかれた事はやや想定外であったが、先頭から後方までそこまで縦長になっていない事から、冷静にレースを進めれば第三コーナー辺りから捲っていけるとオペラオーは判断していた。

 

 (・・・やっぱり、何かが変ですぅ・・・。)

 

 レースは中盤、バ群は向こう正面へ差し掛かっているのだが、序盤以降、周りのウマ娘達に特にこれといった動きが無い。気の所為と言われればそれまでなのでドトウはあまり気にしないで行く事にした。が、違和感を完全に払拭する事は出来ず、心に蟠りを抱えたまま走っていたのだった。

 

 (・・・キングヘイローさん・・・。)

 

 一方弱気そうなウマ娘は、すぐ近くを走るキングを尻目に、彼女やデジタルがレース前に言った事を思い出していた。

 

 (私は、逃げ出そうとしていた。目の前の現実に、何もかもに嫌気が差していた。それなのに、彼女たちはまだ私に期待を寄せているように思う。

 ・・・何故だろう?いつも地味な成績しか残せなくて、皆の期待を裏切るような結果なんて数え切れないくらい出しちゃってる。それにも関わらず、まだ私なんかを応援してくれている人がいるんだ・・・。

 ・・・何故だろう?私には、分からない。でも、一つだけ、確かな事があるんだ。)

 

 弱気そうなウマ娘は終盤に向けて十分に足を溜めていた。それに加え、周りのウマ娘と打ち合わせした通りの本来の位置取りではない所で走っていた。

 

 (私、まだ勝ちたいと思ってる・・・!)

 

 それもこれも、終盤で本格的になるオペラオー包囲網から抜け出す為だ。

 自分が包囲網の話を周りに持ちかけた首謀者の一人と言っても良い。なのにその首謀者が裏切って勝ちにいこうとするのだから、これ以上滑稽な話は無いだろう。

 周りのウマ娘は自分の事を蔑むかもしれない。口汚い言葉の数々を並べ立て罵り、もしかしたら絶縁までされるかもしれない。

 

 (皆、ゴメン。許されない事だとは分かってる。それでも私は、最後にもう一勝負、精一杯走りたいんだ。未だに、私を応援してくれている人達の為に・・・!)

 

 気付けば、終盤は目前。ウマ娘達は各々ペースを上げ、団子状態のままコーナーを周る。

 

 「さぁウマ娘達が第三コーナーを周って行きます!オペラオーがグイグイと前に出ている!オペラオーがグイグイと前に出ている!」

 

 仕掛け始めたオペラオーに対して、周りのウマ娘の対応は早かった。オペラオーの進行方向は何人ものウマ娘達が壁となって塞がれ、外を取ろうにもすぐ隣にはピッタリと付いてくるウマ娘がいるせいでどうにもできない。

 

 (・・・なんだコレは。何処にも進路が無いぞ!?)

 

 オペラオーは体勢をやや起こして抜け道はないかと周りを見渡し探したが、万事休すと誰もが確信する程オペラオーは囲まれていた。

 

 「早くもナリタトップロードが外の方から来ている!オペラオー・・・、オペラオーは抜け出せない!どうするのでしょうか、残り310mしかありませんっ!」

 

 直線を向いてもなおオペラオーは囲まれたままであり、観客席からは「流石にもうダメだ」と悲観的な空気が流れていた。

 しかし、このような絶望的な状況下でもなお、オペラオーは諦めずに闘志を燃やしていた。

 

 (何処か、何処でも良い!僅かな隙間を見つけるんだ!)

 

 その刹那、オペラオーの左手前に僅かな隙間が出来た。奇しくもそれは、前を進んでいた、彼女の現在一番のライバルであるメイショウドトウが外へ進路を取った事で出来た、小さな小さな隙間であった。

 

 (・・・ココだ!少々手荒だが、無理やり体を捩じ込むしかないっ!)

 

 オペラオーはドトウに接近し、バ群をこじ開けた。────道は、切り開かれたのだ。

 

 「・・・やぁ待たせたね、ドトウ。」

 

 「・・・ッ、オペラオーさん・・・!」

 

 こうなると、最早彼女達の一騎打ち。中山レース場の最終直線は短いとは言え、彼女達が全力の勝負をするには十分過ぎる長さだった。

 

 「さぁ。最強の名はボクか、ドトウか?白黒ハッキリさせようじゃないかっ!!!」

 

 「はい・・・!絶対に、負けません・・・!」

 

 二人は共に最後の余力を振り絞り、ターフを力強く踏み込んだ。

 

 「だぁぁぁあああああッッッ!!!」

 

 「テイエム来た、テイエム来た、テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!!テイエム来た!!!抜け出すか、メイショウドトウとオペラオー!勝つのはどちらかッ!?」

 

 二人は熾烈な先頭争いを繰り広げた。差して、差し替えし、またまた差し替えして、ゴール板を目指し突っ込んだ。

 

 「オペラオーか、ドトウか!オペラオーか!?僅かにオペラオーか!!!」

 

 二人がゴール板を踏み抜くと、会場には割れんばかりの大きな歓声と拍手が飛び交った。

 

 「ふっ・・・。良い勝負だったよ、ドトウ。」

 

 「ぜぇ、ぜぇ・・・。オペラオーさんはやっぱり強いですぅ〜・・・。」

 

 着順表には一着にテイエムオペラオーのゼッケン番号、ニ着にメイショウドトウゼッケン番号が表示されていた。

 鳴り止まぬ歓声の中で、オペラオーはスタンドに向かってボウアンドスクレープをし、大きく両手を掲げた。

 

 「おお、大いなるオペラ王国の市民達よ!ボクはとうとう栄華の頂点へと辿り着いた!そして手にした!紛れもない、『最強』の肩書きをっ!

 如何なる強敵が現れようとも、如何なる逆風が吹こうとも、最後にはボクが勝つ!

 ボクこそが、"絶対"なのさッ!!!は〜はッはッはッはッ!」

 

 オペラオーの高笑いと共にもう一度、会場に割れんばかりの拍手が起きた。

 

 「オペラオーすげー!!!」

 

 「あんなに囲まれてたら普通は抜け出せないでしょ・・・。流石はオペラオーだな・・・。」

 

 辺りは既に彼女の異次元の強さに魅入られ、また一つ勝利を重ねた事を喜ぶ者、末恐ろしさすら感じている者など様々であった。

 「世紀末覇王」。後に彼女はこう呼ばれる事になる。この年の中長距離レースを総なめしたのは勿論の事、このレースは特に伝説として語り継がれた。

 道は途絶えた筈だった。なのに何故、君は勝てたのか。人々は口々にこう言う。

 「強いウマ娘は沢山いるし、後に彼女を超えるウマ娘は幾らでも出てくるだろが、彼女はウマ娘の中でも一番勝負根性があったのだろう」、と。

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