ウマ娘 ∼Antithesis hero∼ 作:Carboxyl
どうしても忙しく、なかなか小説を書く時間が取れない日々が続いていますが、なんとか捻り出して書いております。
「ふぅ〜・・・。」
京都金杯当日、ため息なのか深呼吸なのかよく分からない吐息が、今朝から続いていた。
オレはなんだかんだ言って準備不足が心配でデジタルの事をずっと見ていたのだが、今日のデジタルは一貫としてこのような調子なのである。
このままだとレースに悪影響が出てしまう恐れがあるので、オレは彼女を激励することにした。
「色々あるかもしれないが、とにかく今はレースに集中するんだ。な、頑張ろうぜ。」
デジタルは応援に反応したかと思ったら何やら意味ありげにじいっとオレを見つめてきた。しかしそれも束の間で、彼女は小さく頷いた。
デジタルの特徴の一つに何を考えているのか分からないというものがあるのだが、喋らないと更にそれが際立つ。本当に何を考えているのか分からない。
「・・・じゃあ、そろそろ行ってきます・・・。」
結局お互いに言葉を殆ど交わさないまま、デジタルはパドックへと向かって行ってしまった。
いつもならウマ娘の良さ、素晴らしさについて演説のように長々と語られるのだが、今回はそれがない。
・・・はっきりと言える。これは異常だと。
レース前こそ楽観的だったが、今更になってオレは不安しか感じることが出来なくなってきて、取り敢えず彼女が無事に走りきれる事を祈るばかりだった。
淀の地には秋のマイル王者決定戦、マイルCSの時よりも更に凍てつくような冷気が辺りを包み、盆地における真冬の厳しい寒さが身に染みてよく分かる。
あの時と全く同じ景色、同じコース、同じ条件。されど、出走ウマ娘ちゃんがちょっと違うだけで全然違うレースのように思える。
「はぁ〜・・・、かじかむ・・・。」
これだけ寒いとなると、念入りに体のアップを済ませておかなければレースで思うように力を発揮出来ないでしょう。
京都金杯はGⅢのレースなので勝負服ではなく半袖半ズボンの体育着で出走することになる訳ですが、こんなの風邪を引けと言われているようなもの。
ターフ入りまでは上着の着用は許されてはいるものの、それまでに体を出来る限り動かして熱を持っておかなければ、凍え死ぬのではとさえ思う。
「お〜い、デジちゃん!今日のレースも頑張ろうね!」
フジノネヴァーさんの挑戦状を受けて再びこの地にやって来たのですが、そこにたまたまグリーンモーガンさんもいて、マイルCSに続いて二戦連続で一緒に走ることになっていた。
「・・・はい!お互い頑張りましょう!」
「お、今日のデジちゃんもやる気一杯だね!私も負けていられないな〜。」
そう言うグリーンモーガンさんも、やる気に満ち溢れているようでした。ここ最近あまり元気が無い様子が見受けられたので心配していたのですが、それは無用だったようです。
「・・・しかし、グリーンさんは何故京都金杯に?」
あたしも人のこと言えた立場ではないですが、京都金杯は本来、GⅠを獲ったウマ娘が出走するようなレースではない。
朝日杯を勝った事があるグリーンさんもまたその範疇に漏れず、他にも様々な選択肢があったハズなのです。
「ネヴァーちゃんにはデビュー戦で負けたっきりだからね〜・・・。ここら辺であたしもあの子に勝って、成長した私の姿を見せつけちゃおうかな、と思って!」
「ああ、そういえばグリーンさんのデビュー戦ってフジノネヴァーさんいましたね。」
「・・・え?デジちゃん見てたの?」
「ええ、同世代の方々のデビュー戦は出来る限り網羅してそのお名前とお顔を覚えておこうと思って・・・。」
「す、すごい胆力と研究心・・・。
・・・なるほど。そう考えると、マイルCSを勝ったのは必然だったのかも。」
「へ?今なんと?」
「ううん、何でもない。ほら、そろそろゲートインの時間だろうし、行こ!」
そう言うと、あたしが何か言う前に彼女はスタート地点目指して勢い良く走り去ってしまった。
何度見ても思いますが、グリーンさんの走りは惚れ惚れしますなぁ。疾風のごとく駆け抜け、マイラーならではの強烈なパワーで一気に加速していく。
マイルなら、近い将来向かう所敵無しの無双状態になってもおかしくない。URA最優秀ジュニア級ウマ娘の名は伊達ではありませんなぁ。
「・・・グリーンと、仲が良いのね。」
突然後ろから声がしたので振り向くと、いつから居たのか、フジノネヴァーさんが静かに佇んでいた。
「な、仲良くさせてもらってますぅ・・・。あたしなんかよりももっと良いウマ娘ちゃんは沢山いるでしょうに、何時も何時も話しかけて頂いて・・・。幸せいっぱいですよぉ・・・。」
「ふ〜ん・・・。」
彼女はまじまじとあたしの足から顔までなぞるように視線を徐ろに移し、目と目が合う位置で止めた。
「・・・全力で来てよね。じゃなきゃ、意味が無いんだから。」
「も、勿論ですとも!」
やや含みのある言い方が気になりますが、ネヴァーさんはそれだけ言うと、ゲートへと向かって行った。
あたしは、これまで推しの皆様を前にして手を抜いてレースを走ったことなどないし、これからもするつもりはない。
けれど、中途半端で不安定な走力と中途半端に芝もダートも走れる適正を持つあたしは周りからすれば、遊んでいるようにしか見えない・・・。
──何の為に走っているのか。
それは、ウマ娘ちゃんの為。きっと、今のあたしは「徳」が足りていないのでしょう。よりウマ娘ちゃんの為に影となり壁となり尽くさなければ、行動を起こしたという自己満足で終わってしまう。ウマ娘ちゃんが幸せにならなければ、意味が無い。
ここで勝とうが負けようが結果は二の次で、とにかくやることは精一杯頑張ることなのです。彼女もそれを望んでいる。
「・・・よし!」
まだまだ気になることや考えたいことは沢山ありますが、目の前の事に集中するべく、あたしは頬を軽く何度かはたき、気合いを入れたのでした。
ゲート前にばらばらと集っていたウマ娘たちは係員の指示で、徐々にインし始めた。デジタルはいつも通りすんなりと入る。
ウマ娘によっては狭いところが大嫌いであったり過去にトラブルがあったりすると中々ゲートインしないという子もいるので、その点の素直さは割と周りに誇れるデジタルの強みの一つだったりする。
間もなくしてウマ娘達全員のゲートインが終わり、それからまた間もなくガコンッ、と金属の重い音とともに、レースの火蓋が切って落とされた。
勢い良く飛び出すウマ娘達。先頭争いの為にスタートからぐんぐんと飛ばしていく者から、後方でじっくり展開を伺おうとするウマ娘までそれぞれ。
デジタルは後者だった。しかし本来の位置取りよりも後方であり、少し後ろは最後尾であった。
マイルCSとほぼ同じ展開。少なくともデジタルにはそう感じているだろう。となれば、直線向いてから彼女の鋭い末脚で全て捲くるつもりだろうか?
しかし、忘れがちだがデジタルはGⅠウマ娘となったのだ。しかも13番人気という低評価を覆しレコードを叩き出すという華々しい勝利だった。
そんな勝ち方をしておいて、全く同じレース条件で全く同じことを周りがさせてくれるとはとても思えない。
マイルCSはたまたまだという声もあるが、少なくとも今の彼女はあの時よりも注目を浴びている。
──そう。今回のレースにおいてマイルCSとは違う唯一の点は、周りから警戒されている、ということなのだ。
もしこの注目の中でレースを勝てたなら、彼女の実力は本物だと証明されるだろう。勝ち続けるということは、それだけ視線を向けられることを意味する。
だからこそ、一年間にGⅠも交じる8レースのその全てにおいて勝利を掻っ攫っていったオペラオーの凄さが際立つというものだ。
最早強いとかそういう次元の話ではなく、オレ達からしてみれば雲の上のウマ娘、と言ったところか。彼女こそ、「絶対」。オレも周りのトレーナーもウマ娘もそれを信じて疑っていない。
さて、レースはというと、やはりデジタルは直線まで動くつもりがないのか、最終コーナーに差し掛かっても最後方付近を走行していた。
ここまで来ると、流石に動くウマ娘も出てくる。実際、フジノネヴァーやグリーンモーガンらは既に仕掛けに来ていた。
最終直線に入り、ようやくデジタルもギアを入れる。強く踏み込み、一気に加速。前を走るウマ娘を次々と躱していく。
・・・ハズだった。
「・・・ずっと足をため続けた割には、動きが鈍いな・・・?」
マイルCSの時のように、最後方から追込をかけてぐんぐんと順位を上げていくが、既に先頭に躍り出ようとしているフジノネヴァーを躱すには距離が、スピードが足りない・・・!
何かバグってもう一度加速しないかと無理なお祈りをしたが、結局フジノネヴァーがそのまま先着。デジタルは、三着だった。
「う〜ん・・・。まぁ、同じ作戦が通じるような相手じゃないか。」
三着とはまぁ、微妙な順位ではあるが、次戦にフェブラリーSを見据えているとなると、前哨戦としてはそこそこの出来、ではなかろうか。とにかく、今は無事に走りきった事を喜ぶべきだ。
オレは彼女を労うべく、タオルやスポーツドリンク等を抱えて選手待機室へと向かった。
しかし、わざわざその場所へ行く必要は無かった。というのも、途中でターフから戻ってきたデジタルとばったり出くわしたからだ。
「おお、丁度良かった。良いレースだったよ、おつかれさ・・・。」
オレはレース後の高揚感で、すぐそれに気付くことが出来なかった。よく見ると、デジタルはこの世の終わりのような、今まで見たことがない絶望を抱えた表情でとぼとぼと歩いて来ていた。
いつもニコニコと天真爛漫な笑顔のデジタルに慣れているだけに、オレは思わず彼女を見て後退ぞり、手に持っていた物を全て床に落としてしまった。
「・・・え、あの。デジタル・・・さん?」
何と声をかければ良いか・・・。適切な言葉が見当たらず、彼女がデジタルかどうかの確認しかオレには出来なかった。
彼女はようやくこちらに気付いたのか、機械のようにおぼつかない動きをしていた足を止め、オレを見上げた。
その途端に、死んだ魚のような目をしていた彼女から涙がぼろぼろと零れ落ち、それが染み渡るように顔に生気が戻っていった。
オレは何が何だか分からず戸惑っていると、彼女はオレに勢いよく抱きついてきた。
「うごっ・・・。ど、どうした・・・?何があった・・・?」
オレが着ている黒色のダウンコートに顔を沈めたまま、彼女は何も言わない。
「・・・分かった。反応はイエスかノーかだけでいい。今から幾つか質問するから、応えてくれ。
・・・その涙は、レースに負けたことから来ている悔し涙か?」
彼女はダウンコートに顔を沈めたまま、小さく横に首を振った。
「・・・じゃあ、どこかケガをして、痛みから来ている涙、なのか?」
彼女はダウンコートに顔を沈めたまま、小さく横に首を振った。
「え、じゃあ何の涙なんだ・・・?さっきすごい顔してたのも気になるし・・・。」
彼女はダウンコートに顔を沈めたままであった。時々、肩を小刻みに揺らし、すすり泣く声だけが聞こえてくる。
仕方が無いので、オレは彼女の背中を擦りながら落ち着くのを待った。ウィニングライブも控えているから、それまでになんとか気分を変えさせておきたいという気持ちもあった。
それからようやく彼女が口を開いたのは、ウィニングライブの時間まであと僅か、といった時であった。
「・・・トレーナーさん。」
「うん?」
「・・・あたしは、もう、どうしたら良いのか・・・。分からないです・・・。」
「・・・うん?」
それだけでは情報が少な過ぎる。と、焦る気持ちが出てきたが、オレはぐっと堪えて彼女が話してくれるのを待った。
が、それよりも先にライブの時間が迫ってきてしまい、スタッフに声をかけられた。
「あ、いたいた。デジタルさーん!そろそろウィニングライブの準備をお願いしますー!」
デジタルは耳だけぴくりと反応したが、相変わらず顔を埋めたまま動こうとしなかったので、代わりにオレがスタッフに「了解です」と返事しておいた。
「・・・だそうだが、大丈夫か?行けるか?」
「・・・てば、・・・ですか。」
「え?」
「どんな顔をしてあの場に、ウィニングライブに、立てば良いのですか・・・!」
ようやく埋めていた顔を離したかと思ったら、彼女は悲痛な声で事情を訴えてきた。
「・・・走り終わった後・・・、あたしはやりきったつもりでした。調子は絶好調とまでは行きませんでしたが、それでも出来る限りの力を出し尽くしたつもりでした。
・・・でも、フジノネヴァーさんは、満足していませんでした。レース直後に、あたしに近づいて来て・・・。
『・・・ねぇ、その程度?完膚無きまでに私やグリーン、先輩達を叩き潰したGⅠウマ娘の実力は、その程度なの?』
『・・・す、スミマセン・・・。万全の状態で望みたかったのですが、絶好調とまでは行かず・・・。』
『言い訳なんか聞きたくない。』
『す、スミマセン・・・!』
『・・・私、すっごく悔しかったんだよ?あと一歩の所でGⅠに手が届いた。届いていたハズだった。残り200mを切った辺りで勝ちを確信したくらいだった。
でも、気付けばあなたが私より前にいた。自分でも文句無しの完璧なレースが出来たのに、負けた。
理不尽極まりないよ。正直、泣きたくなった。こんだけ用意周到に挑んで頑張っても勝てないなんて、一体全体どういうことなんだ、ってね。
けどね、掲示板に出たレコードの鮮やかな赤い文字と、それを背後にターフに立つ凛々しい君の姿を見たら、悔しさとか自分の未熟さへの怒りとか、全部吹き飛んじゃった。
ああ、この子に負けるなら仕方無いな、と。
諦めに聞こえるかもしれないけど、それだけあの時の君は輝いていた。
間もなくして、そんな君に何としてでも勝ちたいっていう思いが生まれた。いつの日か、超えて見せる。君は私の目標になった。
それでまた戦えたら良いなとか思ってたら、まさか京都金杯に出走してくるとは思いもしなかったよ。何のためにという疑問は一先ず置いておいて、再戦の機会が到来したのは素直に嬉しかった。
今度は勝ってみせるって、マイルCSの時より張り切ったくらい。
・・・でも、結果はご覧の有様。何の苦労もなく先着。あっさり過ぎて、拍子抜け。
そりゃ、調子の浮き沈みは誰にでもあるよ。けどそれを考慮するにしたって、あっさり過ぎる。
私が目指したモノは、こんなのじゃない。少なくとも、今の君からはあの時の覇気は微塵も感じられない。
・・・失望した。じゃあね。』
・・・その言葉を聞いた時、私は一番やってはいけないと心に刻んでいたことをやってしまったと、己の喉を穿き足を砕きたくなりました。
私は、中途半端なウマ娘です。何をするにしたって、中途半端。その中途半端さがウマ娘ちゃんに迷惑をかけないよう心掛けてきましたが、最早これまで。
私はこの界隈に片足突っ込んでからというものの、URAに会長さんに、グリーンさんやネヴァーさんに、そしてトレーナーさんにと色々な方に迷惑しかかけていません・・・。
そんなどうしようもないヤツは今すぐ、極刑に処されるべし。」
「そ、そんなことないだろ・・・。オレは、デジタルにものすごく感謝してるぞ?
迷惑だなんて一度も思ったことはない!」
「・・・有難いお言葉ですが、トレーナーさんは思っていなくても、周りのウマ娘ちゃん達は思っているんですよ・・・。」
「・・・ならっ、中途半端を一流にしようじゃないか!幸い、お前にはまだまだ現役として輝ける時間が沢山残されている。その間に・・・!」
「私もさっきまでは、そのつもりだったんです。ターフに立つウマ娘の一人として恥の無い走りを心掛けようと、そう思っていたのです。」
そう言うと、デジタルは腰を直角に曲げ、勢いよく頭を下げてきた。
「・・・でも、ごめんなさい・・・!あたしは・・・、あたしは弱かったんです・・・!
GⅠウマ娘として相応しい立ち振舞いも、皆さんの期待に応えられるような実力も、何も無い!
・・・何より、周りに迷惑がかかっていると知りながら、素知らぬ顔で図々しく走り続けられる程の胆力を、あたしは持ち合わせておりません・・・。」
「・・・・・・。」
今の彼女に、どんな声をかけるのが正解なのだろう。
彼女は、いつだって真剣に走っている。誰よりも長く練習して、誰よりも多く勉強して、誰よりもレースを、ウマ娘を愛しているのをオレは知っている。
愛しているから・・・、ちょっとのことでも自分が問題の発端となるのを忌み嫌っているのだろう。
思えば、彼女の「推し」への関わり方からもそれが見受けられる。
好きだから、なるべく側にいたい。だけど、それよりも推しには自然体でいて欲しい。自分が関わる事で変わって欲しくない。だから彼女は目立たないよう、影となるように徹してきた節がある。
しかし、良くも悪くも、マイルCSが彼女を変えた。今まで影に徹して来たのに、ここに来てスポットライトが当たり、戸惑っている。そんな所だろう。
・・・ならば、オレがかけるべき言葉はただ一つ。それは皮肉にも、デジタルからの説教でオレが学んだ事だった。
「自信を持て。お前を嫌っているヤツも居るには居るだろうが、それ以上に好印象を持っている人の方が多いと思う。
例え、中途半端で未完成で未熟者だとしても、そんなお前を支持してくれている人は沢山居るさ。」
「・・・そんな人、居るんですか・・・?」
「居るさ。」
オレはどんと右の拳を胸に当て、自信を持って答えた。
「例えば、オレとか。」
「・・・ぷっ。」
先程まで涙でクシャクシャになっていた顔に再び、笑顔が少しだけ戻った。デジタルが、笑った。
「・・・いや、トレーナーさんは・・・。ふふっ・・・。」
「なんだよォ、オレじゃ不満かぁ?」
「は、反則ですよ・・・。ノーカウント、ノーカウントですって・・・。あははっ・・・!」
「なんでだよー。オレだって、お前の立派なファンの一人だろーがい。」
みるみる曇っていた表情が晴れていく。彼女の笑顔は、暖かな日差しが降り注いでいるかのよう。彼女が笑うことで、オレも笑顔になり、心が温まる気がした。
やはりデジタルは、こうでなくては。
「・・・はぁ〜〜〜・・・。ああ、面白かった・・・。」
「何も、そんなに笑わなくても良いじゃないか。」
「いやなんだか急に、あたしってほんとバカだなぁって思えてきて・・・。」
「・・・まぁ、少しでも立ち直れたなら良かった。」
オレはデジタルの前に、徐ろに右手を差し出した。
「オレもさ、人のこと言えないくらい中途半端で未完成で未熟者だけどさ。まぁ、ここから頑張ろうぜ、お互いに。」
彼女はオレを見上げ、じいっと見つめてきた。まだ快晴ではないけれど、雨上がりの空のようにすっきりしたような、澄んだ瞳であった。
「・・・こちらこそ。改めて宜しくお願いします。」
デジタルも右手を差し出し、オレたちは力強く握手を交わした。
人生、上手くいくことばかりじゃない。誰にだって躓くことはある。
「あの、デジタルさん。強く、握り過ぎ・・・!折れる!」
「・・・あ、す、スミマセン!思わず・・・!」
でもオレたちはその度に起き上がって、心身共に強くなっていく。オレたちなら、二人三脚でどんな困難も乗り越えられる。
・・・なんとなく、そんな気がした。