情報量が少ないから書きやすかった
「今日も来たの?毎日偉いね」
「いえ…暇なので」
ここ最近、毎日同じ子が書庫に通ってくれている。
「魔法の勉強?久しぶり見たなー魔法のこと一生懸命調べてる子」
「そうなんですか?絶対便利だと思うんですけど」
最初は素っ気なかったが、だんだんと友好的に接してくれるようになって、嬉しかった。
「打撃魔法…?それは魔法じゃないのでは…?」
「私もそう思います」
同僚以外と話したのは久しぶりで、ついつい楽しくなってしまった。
「じゃあ、次の年から学院に通うんだ!」
「はい。あんま乗り気じゃないんですけどね」
名誉ある称号である『勇者』。
それを手に入れることが出来る王立聖学院。そこに入ることが出来るほど、その子は優秀だった。
「んー?でも、だったらなんで魔法なの?ほら、剣とかそっちの方を勉強した方がいいんじゃないの?体を動かすとか」
「うっ。だって…動いたら疲れるじゃないですか…」
あまり運動は得意じゃないそうだったが、逆に魔法の方に素質があったようで、日に日に使える魔法が増えていた。
「なるほど…えっと、『グラビティ』」
「おぐふっ。お、重…」
「凄い。ほんとに強くなるんだ」
「私で実験しないで…」
自分は頭も良くないし運動も出来ないような落ちこぼれだったから、その女の子がとても輝いて見えた。
「─よし、終わった。次のを読もう」
「もう読み終わったの!?」
何やら速読も出来るようになったようで、一日に何冊も読めるようになっていた。正直、すごく驚いた。
「『パーティタイム』!」
「ぼふっ」
「うわっ、凄いキラキラしてる…」
「ごぼっ。だがらわだじでじっげんじないで…」
一年近い日々会っていたからか、最後にはもう親友と言って差し支えない程になっていたのではないだろうか。
「これだけ使い方が分からない…」
「打撃とか明らかに痛そうだからやめてね?せめて外に行ってその辺の木とかにやってね?」
「それは木が可哀想ですし…」
「私はいいのか、おい」
年上ということで敬語はとってくれなかったが、それでも良好な関係を築けていた。
「暇だなー」
別に崩れた訳でもない。彼女が入学したということで、ここに来れなくなってしまっただけ。実習とかもあるらしいし、書庫には暫く来られないだろう。
それは少し寂しかったが、あの子が頑張っていると考えたら、自分も頑張ろうと思えた。
あの子は勿論だが、自分にも何もなければならない。
自分が居なければあの子には会えないわけで、ならばこの仕事はきっちりとやらなければならないのだ。
物理的にではなく、精神的に死ぬ可能性はあるが、会えた時の楽しみを考えれば余裕も余裕だ。
さて、今日はどう時間を潰そうか。