三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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始まりの春

結城友奈は勇者である 外伝(ゆうきゆうなはゆうしゃである がいでん) 

 

エピローグ

 

「おーい金太郎、早く起きないと学校遅れるぞ~」

「分かってるよ~兄ちゃん」

いつもの朝が始まった。彼の朝はいつもこうだ。いつもギリギリまで寝てギリギリで家を出る...その前に一つ、毎朝することがある。毎日のルーティーンだ。それは記憶に全く残っていない姉への言葉だ。彼はいつも姉の写真に向かって言う。

 

「姉ちゃん、今日も行ってきます!」

 

 

 

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  ①讃州中学勇者部

 

「お~い今日も遅刻かよぉ、毎日待たせないでよ~」

 

「ごめん、ごめん、ほら行こ!」

 

金太郎を待っていた少年は難波涼。金太郎とは小学生からの幼なじみである。

 

「みんなおっはよー!」

 

「なんとか間に合った~!」

 

二人は滑り込むようにして教室に入り込んだ。

 

「おいおい金と涼!今日も遅いじゃねぇかよ!」

 

「そうですよ。もっと余裕を持ってください」

 

この二人は須藤祐成と古波蔵瞬。この四人は中一から同じクラスの仲良し同士で、同じ部員仲間でもある。時間はあっという間に経ち、放課後、部活の時間になった。

 

「さぁ~て、今日も楽しい楽しい部活動の時間が始まりますよ~!」

 

「ホント、この時だけ瞬は性格変わるよなぁ...」

 

「まぁ、そこが瞬の良いところだよな....!」

 

祐成と金が瞬について語る。彼らが入部している部活名は勇者部。変わった名前だが、やる内容はボランティアと似ている。何事にも勇んで行動するを目標に、日々彼らは活動に励んでいた。現在の勇者部は彼らの四名だけ。先輩も後輩もいない。しかし、部の信頼は他部活と比べても群を抜いている。部室の壁には毎年部員全員で撮影する写真が飾ってある。勇者部が誕生した当時から今まで。ずらーっと並んでいる。部室内は決して広いとは言えないが四人で活動するには十分の広さであった。

 

「さぁ~て、本日の依頼は~...........」

 

『........依頼は....?』

 

中々言わない瞬に、一同は固唾を飲んで部活内容を聞く。

 

「........子猫の........お世話で~す!」

 

...部室内に一瞬、沈黙が流れる。

 

「さんざん焦らしといてそれかよ!?」

 

「いつもと同じじゃねぇーか!」

 

「瞬らしいよ~」

 

金と祐成とは逆に、穏やかな涼。涼はいつもそうだ。こんな感じにフワフワしている。こんな涼がいるおかげで部活に活気が溢れているのも事実だが。部室内は今日も笑い声で溢れている。金はこんな日々がずっと続くと思っていた。この日までは...

 

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 ②大赦からの使者 

 

俺の家系は大赦の中でも力を持っている家柄らしい。俺には兄ちゃんと姉ちゃんがいて、姉ちゃんのことは全く覚えていない。姉ちゃんは11歳という若さで亡くなったという。11歳というとまだ小学生だ。俺が中学生に入学するときに誰にも言わないという約束で姉ちゃんがなぜ死んでしまったのか家族から理由を聞いた。最初は信じられなかった。勇者なんて初めて聞くし、神樹様なんてものも俺が物心ついたときにはもう存在しなかったからね。でも大赦という機関の存在、真面目に話す家族の目を見て、信じた。そして自分の中だけで姉ちゃんのことを誇りに思った。仲間、家族、世界のために捨て身の覚悟で敵に挑んだこと。とても怖かっただろうと思った。

 

俺は姉ちゃんに似ていると言われるときもあれば真反対の部分もあると言われる。一番よく言われるのは顔だ。確かに自分でも姉ちゃんの写真を見て自分と似ているとよく思う。次に性格だ。明るい所、友達が多く、どの人に対しても大切に思う所が瓜二つだという。逆に、すぐ熱くなってしまう姉ちゃんとは違い、俺は冷静に判断できる....と兄ちゃんから言われた。

 

俺は時々思う。一度で良いから姉ちゃんにあってみたい、と。

 

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今日はいつもと違かった。いつも来るはずの時間に担任が来ないのだ。ちょっとしてから学年主任が教室に入ってきた。クラスはただごとじゃないぞ、とか、何かしでかしたのか?とか騒ぎ始めた。

 

「はーい、静かに静かに」

 

学年主任が手をたたいて生徒たちを黙らせる。

 

「突然だが、今日から君たちの担任が変わることになった」

 

いきなりの出来事にまたしてもクラスがざわつき始める。

 

「君たちの担任は別の仕事に就くことに決定したんだ。ということで新しい担任の先生を紹介する!どうぞ入ってきてください」

 

そう言われ、扉を開けて入ってきたのは黒い長髪の美しい女性であった。

そして彼女は教卓の前に立って一礼し、こう言った。

 

「今日から皆さんの担任になります。東郷美森です。よろしくおねがいします」

 

 

 

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「朝は驚いたよなぁ~いきなり担任が変わるなんてよー」

 

「そうですね。担当は社会なんだとか」

 

「女の先生で社会は珍しいよねぇ?」

 

今日の部室はあたらしい担任の先生の話で持ちきりだ。

 

「どうした?金、さっきから全然喋らないじゃんか~」

 

いつもと違う金太郎に対し、涼が気にかけてきた。

 

「いや...なんかね...どこかで見たことがあるような感じがしてさ........」

 

コンコン、ガラッ

 

すると急にノックがし、部室のドアが開いた。部活の時間に訪ねてくる人なんて珍しいからみんな驚いて扉の方を向いた。

 

「勇者部の部室...懐かしいわね...」

 

『と、東郷先生!?」』

 

みんなで声を合わせて驚く。

 

「どうも、今日からこの勇者部の顧問になります。東郷美森です!」

 

「あっー!どこかで見たと思ったら初代勇者部の!!」

 

金太郎が指をさして叫ぶ。

 

「ホントだ!てかこの写真の頃と見た目ほとんど変わらない...!」

 

祐成は写真と実物を交互に見てそう言った。

 

「...いきなりいらっしゃっていきなり顧問だなんて....どういうことですか?」

 

瞬が単刀直入に聞く。

 

「実は...みんなに大切なお話があるの...落ち着いて聞いて欲しいの...今日から君たちは...」

 

-----っ!

 

勇者部四人の端末から聞いたこともないアラームが鳴り響く。

 

「なんだこれ!?樹海化警報って...?」

 

「怖い...なにが起きるんだ...」

 

祐成と涼が戸惑っている。

 

「みんな見てください!窓の外!」

 

瞬が外を指差す。鳥が空中でピタリと止まっている。本来あるはずの風や他教室の音も全く聞こえない。

 

「...っ!遅かったか...!」

 

「なんですって...?東郷先生?」

 

金が東郷の言葉について詳しく聞こうとしたとき...

 

「うわうわうわっ!!なんか変な光がこっちに来るーー!」

 

祐成が叫んだ。

 

「これから...なにが始まろうとしているんだ...!」

 

金太郎たちはなにも知らないまま、とんでもない地獄に放り込まれることになる。

 

 

 

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 ③初陣 

 

次に金たちが目を開けたときには見たこともない景色が広がっていた。あたり一面樹木のようなもので、建物ひとつも見られない。

 

「なんだ...これ...!俺たち死んじまったのか...?ここは天国なのか!?」

 

祐成が頭を抱えてパニックになる。

 

「空が星空のようだ....太陽もありません...なのに夜とは思えないほど明るい。ここが地球なのかどうかさえも疑ってしまいますね...」

 

落ち着いた雰囲気で瞬がこの状況を分析しようとしていた。

 

「ど、どどどどうしよう...!帰れなかったりしないよね...?!」

 

涼も祐成同様、パニックになっている。

 

「みんな...端末を見て!」

 

金太郎がそれぞれの端末を見るように促す。そこにはこの現象と彼らがしなければならないことなどの説明が書いてあった。

 

「何だよ...俺らはバーテックス?とかいう怪物を倒さなきゃ元の世界に帰れないのか...?」

 

「しかも...あの奥のでかい虹色の木にバーテックスがたどり着いたら...世界が滅びる...とか...」

 

「そ、そんなの...いきなりすぎる...」

 

「特別な訓練とかもしてないのに...」

 

突然すぎることに四人とも戸惑いは隠しきれない。

 

「こ、こんなの無理に決まってる!ほ、他にも人がいるかもしれないし俺たちはじっとしてよう!」

 

祐成が現実逃避をし始めた。もっとも、このような出来事が現実とは到底思えないのだが。

 

「俺は...やるぜ...」

 

金太郎が静かにそういった。

 

「ここには俺たち四人しかいないって書いてあるし。それになによりも....家族が...友達が...世界の人たちが全員絶望してなくなるなんてそんなこと許せるかよ...!そんなことになるんだったら...俺一人がバーテックスとやらを倒してやる...!」

 

金太郎はそう言ってスマホを握りしめる。その手は恐怖でひどく震えていた。

 

「それに...これは...一族の『運命』だろうしな...」

 

しかし、そんな状況でも金太郎は覚悟を決めていた。

 

「さすが金だ...よし、俺もやるよ!」

 

涼も声をあげる。

 

「そんな怪物なんかに俺たちの日常が壊されてたまるかってんだ!俺は...どんなに傷ついたとしても戦ってやるぜ~!」

 

涼は強い正義感をもっている。それがこの覚悟に繋がったのだ。

 

「しょうがないですね...僕もやりますよ...!この素晴らしい世界の為、友の為...この命...お国に捧げよう!」

 

瞬は極度の愛国者である。

 

「お、お前たち正気か...!?なにも訓練とか受けてないんだぞっ!!死ぬかもしれないんだぞ...怖くないのか...?」

 

祐成は覚悟が決められないようであった。

 

すると、奥に方にかなりの大きさの怪物が見える。あれがバーテックスなのであろう。最初だからか、一体だけのようだった。

 

「見ろよ...きっとバーテックスはあいつのことだ...俺らの学校の大きさの二、三倍はあるぞ...あんなものに...勝てっこない!みんなで逃げよう!ねっ...?」

 

祐成が弱気になるのは珍しいことであった。しかし、金太郎たちは...

 

「それでも...やるしかない...やらないより何かやった方が後悔しないで済む...!それに...俺らはもう...覚悟はできるんだ...!」

 

そう言った途端、三人の端末が光り始めた。

 

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三人の体が光に包まれる。そして、その光がなくなった時には....

 

「おぉ~!かっけー!!」

 

「これが....俗に言う『勇者服』というものでしょうか....?」

 

「俺たち、ホントのホントにあの伝説の勇者になったんだね~!」

 

それぞれ三者三様の勇者服であり、全体的に見て金は赤、涼は黒、瞬は水色をベースとした勇者服だった。武器も三人とも違った。

 

「俺の武器は柄が長い斧だ~!木こりになった気分~!」

 

「僕の武器は...ブーメラン...?」

 

「俺は...見たこともないデカい銃だな...」

 

金は遠距離、涼は近距離、瞬は中距離のそれぞれバランスのとれた武器である。

 

「....よし、行くぞっ!」

 

金の掛け声で三人が一気にバーテックスの元へと走っていく。

 

「あいつら....ゲーム感覚でやりやがって....!どうなっても知らねーからな....!」

 

祐成は下を向いて三人を見送った。

 

「す、すごい...!なんて早さだ...!」

 

「跳躍力も圧倒的に上がっています!あのバーテックスよりすごく高く飛べる!いや~今の我が国にこれほどの技術力があるとは...」

 

「二人とも!まずは俺から仕掛けてみる!」

 

金がバーテックスに向かって何発か光の弾を撃つ。

見事命中。初めてこの武器を扱うにしても、相手の的が大きいため、あてるのは簡単だった。攻撃をくらったバーテックスは進むのをやめ、その場で停止する。

 

「やった!効いてるぞ!よ~し...次は俺だっ!」

 

涼が距離を一気につめて精一杯斧を振りかざす。その一振りでバーテックスの触手の一部が切断された。

 

「やった!どうだっ!」

 

「決して油断しないでください!!涼は一旦距離をとってください!次は僕がやります!」

 

瞬が投げたブーメランはバーテックスに直撃。大きな傷をつけた。

 

「一気に片を付けてやる!」

 

涼がとどめを刺そうと距離をつめ、斧の連撃を放とうとする。しかし...

 

「涼気をつけろーー!!なんかバーテックスの体が光っているぞー!!」

 

「あれは....何か仕掛けてきますっ!」

 

警告は遅かった。涼はもろにバーテックスの攻撃を受けてしまう。

 

________________________

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁー!!涼ーーー!!」

 

金が絶望の表情で叫ぶ。

 

「だ、大丈夫~...なんとか...」

 

しかし、涼は傷一つない状態で立っていた。

 

「金、見てください。涼の隣になにやら浮いています。」

 

「?...あれは...動物か...?」

 

「こ、この子が...俺の...ことを...守ってくれたみたい...」

 

涼が苦しそうに答える。

 

「どうやらあれが僕たちのことを守ってくれるという『精霊』ですね...なんともさっきから非現実的なことが起こりすぎです...」

 

「ご、ごめん...俺は...もう...戦えそうにない...」

 

涼は気を失って倒れてしまった。いくら精霊のバリアがあってもバーテックスの攻撃をもろに受けてしまったのだ。その体へのダメージは大きかった。

 

「...っ!涼...!わかった、後は俺たちに...」

 

「うわぁぁ!」

 

後ろから叫び声を聞き、後ろを振り向くと、さっき切断した触手とは逆の触手で瞬が捕らえられていた。涼に気を取られすぎてしまったのだ。

 

「瞬!!今助けるぞ!」

 

金は触手を狙って撃つが、バーテックスは光線を金の方に撃ってきて触手を狙い撃つ暇がない。

 

(クソっ!こんな初めての戦いでここまで追いつめられるなんて...)

 

そのときであった。瞬を捕らえていた触手が人参を切るかのように縦に切断されたのだ。

 

----

 

「ったく...これだから信用ならねぇぜ...俺を不安にさせやがってよ...」

 

「...!!祐成っ!!」

 

そこにいたのは祐成であった。本来ならば一本だけで戦うはずの武器であるレイピアを二本持っていた。

 

「しょうがねぇなぁ~...本物の戦い方っていうのを...見せてやるよ!!」

 

祐成は鋭い剣さばきでバーテックスの体を切り刻む。

 

「すごい....!....いや、祐成だけに手柄も取られてたまるかっ!俺たちもやるぞ!」

 

「はいっ!」

 

金たちは三人で協力しながらバーテックスと戦い、

 

「今です!金!」

 

「よ~し!とどめだぁっ!」

 

「行けっ!金!」

 

自分の身長の四分の三はあるであろう長さの銃二丁をバーテックスに向ける。そして金が全身に力を込めると、銃は炎をあげ、彼の魂のごとく燃え上がる。

 

「くらえぇぇぇっーー!!」

 

二丁の銃が合体して放たれた一本の太い光線はバーテックスを貫き、御霊も同時に破壊した。

 

「勝った...のか...?」

 

三人は手を取り合って喜び合った。

 

「勝った!勝ったんだ!あの怪物に!!」

 

「僕たちの大勝利です!!」

 

「初めてにしてはよく戦えたな!俺たち!」

 

一人では無理だった。仲間がいたからこそ、この戦いは勝つことができた。仲間の素晴らしさ、大切さを金はこのとき改めて実感したのだった。

 

樹海か解けていく。三人は同じことを考えていた。東郷美森という存在について...

 

 

 

_________________________

 

 

 

 ④勇者の歴史 

 

気がついたときには金たちは部室に立っていた。

 

「...!良かった...!初めてにして無事にお役目を果たすことができたのね...!」

 

東郷が歓喜する。

 

「...これを見ても無事と言えますか...?」

 

金は部室の床に倒れている涼を見る。

 

「バーテックスにやられたのね...でも大丈夫。これぐらいならすぐに目を覚ますわ」

 

「詳しく説明させてもらいもしょうか...?」

 

金が東郷を睨みつける。

 

「もちろん...。最初はそのつもりでこの部室に来たんだから...」

 

東郷はバーテックスとの戦いの歴史について話し始めた。

 

「今から約300年以上前のこと...地球に突如、バーテックスが現れ、人々を襲った...。そのバーテックスを倒すため、土地神様に選ばれた四人の少女がバーテックスと戦ったの...。彼女たちのおかげでこの世界は約300年間平和を取り戻した...」

 

「それで...僕たちが選ばれたんですか...?」

 

祐成が口を挟む。

 

「いや、その前に二回侵攻があったのよ...一回目は新世紀298年...三人の勇者が選ばれた。一人は...私...」

 

三人に衝撃が走る。

 

「東郷先生は....先代勇者....!?」

 

東郷は話を続ける。

 

「二回目は新世紀300年...この年は大変だったわ...最初は四人で...それから五人、最終的には六人で戦った...」

 

「そこまで詳しいということは...東郷さんは二回目も勇者に選ばれたってことですか...」

 

金が緊張した雰囲気で聞く。

 

「そうよ...。そして...勇者に選ばれたからには...過酷な宿命を背負わなければならない...!」

 

三人は真面目な顔で東郷の話に聞き入る。

 

「まず、300年前の勇者たちは四人のうち三人が戦いで命を落としたわ...そして...私が初めて勇者として戦ったときも...大切な友達を一人失い...もう一人の友達も体のほとんどの機能を失った。そして私も記憶と足を...」

 

「?それじゃあなんで今は立ててるんですか?この話をしてる時点で記憶もありますし...」

 

瞬が矛盾点を聞く。

 

「それは二回目の侵攻に打ち勝ったとき、神樹様が私たちの機能を補ってくれたからなの。だから二回目の侵攻の時も私の仲間たちはいろいろな体の機能を失ったわ...最終的に神樹様はいなくなって世界はまた平和を取り戻した...かと思った。けど...」

 

「神樹様は復活し、またしてもバーテックスの侵攻が始まった...と…」

 

「その通りよ...。さらに今回の侵攻について違う点は今まで少女だけが神樹様に選ばれていたのに今回は...少年が選ばれた...」

 

「東郷先生が知っていることについてもっと教えてください!」

 

長い話が苦手な祐成も興味を示しているようだった。

 

「...つまり、勇者になった僕たちは体の機能を失う覚悟...いや、命の覚悟が必要ってことですね...?」

 

金がおそるおそる聞く。

 

「ええ。...そういうことよ...」

 

「俺は元からその覚悟で勇者になりましたから。俺は大丈夫です!」

 

「僕もこの美しい国と国民のためなら、この命を捧げる覚悟ですっ!」

 

「お、俺も.......最初は嫌でしたけど....金たちが戦って傷ついていく姿を見て....耐えられなかったんで....覚悟を決めました!」

 

「祐成....お前にもちゃんとした正義の心が....」

 

金が涙目になる。

 

「はいはい、今はそういうのいいからー」

 

祐成が金のボケを流す。

 

「ですから、東郷先生、僕の姉ちゃんのことについて詳しく教えてください....!」

 

「やっぱり....あなたは知ってたのね....」

 

それを聞いた三人が驚く。

 

「ちょっと待て、金....お前の姉ちゃんのことって....」

 

「それってつまり....」

 

祐成と瞬は驚きを隠せない。

 

「そうだ....。家族に内緒にしてくれって言われてたから二人にも言ってなかったけど....俺の姉ちゃんは勇者だった」

 

「本当にいいのね?金....」

 

「はい....東郷先生。東郷先生の友達が亡くなったって聞いてピンときました。年代的にもピッタリだし....。友達だった東郷先生からみた姉ちゃんの印象も聞きたいし。」

 

「わかったわ....。銀はね....とても明るくて、ムードメーカーで一緒にいてとても楽しかった....すぐにバーテックスに突っ込んじゃうような性格で、よく私たちを心配させていたわ....」

 

「金とは大違いだな....」

 

またしても祐成が口を挟む。

 

「別れは突然やってきたわ....あれは....遠足の帰り道だった....」

 

部室は重苦しい空気に包まれる。

 

「私たちの頃はバーテックスを追い払うことしかできないくらい勇者システムが未熟でね....精霊のバリアも無く....ほとんど生身の体で戦っているようなものだった....三体のバーテックスを追い払うべく、私たちは三人で協力して戦ったんだけど....油断した隙を攻撃されて、私たち二人は一撃で動けなくなってしまった...でも銀だけは攻撃を上手く防いでいてね........私たちを安全な場所まで運んでくれて........ぅぅ........」

 

昔のことを語っているうちに苦しくなったのか、東郷は涙を流し始める。

 

「東郷先生....少しずつでいいですから....あまり無理はしないでください。」

 

金は東郷に近寄って彼女の背中をさする。

 

「銀は一人で....三体のバーテックスに立ち向かっていったわ....最後に聞いた一言は........満面の笑顔で言った........ぅぅぅ........『またね』だった........」

 

いきなり吹いた風が窓を揺らす。ガタガタと窓が揺れる音以外、部室内に音はなかった。

 

「銀は見事にたった一人で........三体のバーテックスを追い払った........さっきも言った通りこのときの勇者システムは未完成で一体を三人で相手するくらいだったから....」

 

金はやはり姉ちゃんはすごいと感じていた。強化された勇者システムで戦った自分たちでも三人でやっと一体倒せたくらいなのに....

 

「銀のおかげで勇者システムが見直しされて....満開と…精霊が誕生したわ....銀のおかげで....!私たちはこの世界を守れた....!銀がいなかったら今のこの世界はないわっ!」

 

(姉ちゃんは俺が想像していた以上の人物だった....小学生でここまでのことは常人ならまずできない....!)

 

全員涙目になっている。部室内はいつもの楽しい笑い声とは違い、一人の嗚咽音が寂しく、寂しく、響いていた。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 ⑤完成型コーチ

 

あの話東郷の話から少し時間がたった。外は夕日が綺麗に輝いている。涼を保健室に運んでベットに寝かし、部室に戻って瞬が四人にお茶を出した。

 

「それから、もう一つみんなに言うことがあるわ」

 

落ち着いた東郷が再び話を始める。東郷が部室のドアをあけると赤ジャージの白ラインが入った服を来ている女性が入ってきた。

 

「新しい勇者諸君!こんにちは!私の名前は三好夏凜!」

 

またしてもいきなりの出来事に三人はポカンとする。

 

「明日からみんなの勇者としてのコーチになるわ!よろしく!」

 

「勇者としてのコーチ、ですか....?」

 

金が目を点にしながら聞く。

 

「そうよ!あなたたち何も鍛錬もしないでこれからの戦いに挑むつもり?それは無理でしょ?だ か ら、コーチ!」

 

「この夏凜ちゃんも勇者だったのよ」

 

「東郷!『勇者』じゃなくて『完成型勇者』!」

 

二人が楽しそうに話している。

 

「ということで、明日の朝6時学校の校門の前に来なさい!」

 

「えぇー!明日ですかぁ?!明日は休みですよぉ!?」

 

祐成がたまったもんじゃないと驚く。

 

「な~に言ってるの!バーテックスはいつ攻めてくるのかわからないのよ!」

 

三人とも何も言い返せなかった。

 

「それじゃ、決まりね」

 

夏凜はそそくさと部室から出て行ってしまった。

 

「ふふふ....相変わらずね、夏凜ちゃん。」

 

うれしそうに笑う東郷。それを横目に、三人は勝手に決められて呆然とする。

 

「明日から頑張りましょう!瞬さん!祐成さん!金!」

 

「りょ、了解しました!」

 

「は~い....」

 

「はいっ!(なんで俺だけ呼び捨て....)」

 

 

 

_________________________

 

 

 

学校からの帰り道、三人は同じ下校ルートを帰っていた。あの後も東郷からいろいろ話を聞いた。勇者のお役目は他の人には言ってはいけないこと、夏凜がやたら強調していた完成型勇者のこと、量産型の防人という存在がいたことなど、この日だけでは覚えきれないほど教えてもらった。『満開』というものについては今話すべきではないと言われたが。

 

「すっかり暗くなっちゃったな~」

 

「明日も早いですから早く寝ないといけませんね」

 

「せっかく明日はみんなと遊ぼうとおもってたのに~...」

 

「また今度遊べばいいだろ?」

 

まだ機嫌が悪い祐成を金が説得する。

 

「涼は大丈夫ですかね....この時間になっても目をさましませんでしたけど....」

 

「俺も心配だけど....東郷先生が大丈夫って言ってたし、信じよう!」

 

東郷がまた涼にも勇者のことについて話すらしい。やがて三人は手を振り合って別れ、それぞれの家と帰って行った。

 

 

 

(第二話に続く)




いろいろと誤字脱字、表現がおかしいところがあるかもしれませんがどうか広い目で見てください....
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