32.二代目国防仮面!
10月ももう終わろうとしていた頃。金はこの日、珍しく朝早くに起きており、テレビのニュースを観ながら朝食をとっていた。
「朝早く起きるのも悪くないかもな....」
そんな言葉を呟きながら白米を口いっぱいに放り込む。するとテレビから、
「続いてのニュースは、二代目国防仮面と名乗るヒーローが逃亡中だった泥棒を捕まえました。実際の映像がありますのでこちらをご覧ください。なお、この映像は警察が到着した直後の映像です」
アナウンサーがそう言って映像が流れる。
「国を護れと人が呼ぶ!愛を護れと叫んでる!我が名は憂国の戦士、二代目国防仮面!警察のみなさん!人の物を盗んだこの悪党は僕が捕まえました!僕は人が困っているところにできるだけ現れます!恩などいりません。それではまたどこかでお会いしましょう!」
二代目国防仮面と名乗ったその人物はそう言って画面上から消えた。
「ほえ~....国防か....瞬や東郷先生みたいな人が他にもいるんだなぁ....しかもこんな目立つ&勇気のいる行動をして....」
金は若干ひき気味にそう言う。
「続いては今話題の人気歌手....」
話題が切り替わった瞬間に突然テレビが消える。
「あっ!兄ちゃん!消さないでよ!今から俺の好きな歌手さんが出るところだったのに~!」
「金太郎....時計を見ろ」
「でっ....!もうこんな時間!?」
鉄男は金に時間のことだけ伝えるともう外へ出てしまった。
「ちょっと待ってよ、兄ちゃん!....姉ちゃん、今日も行ってきます!」
金は毎日のルーティーンを忘れずに行い、バックを持って外に出た。
-
「なぁなぁ、今日のニュース観たか?二代目国防仮面ってやつ!」
「ああ!観たぞ!すごいよなぁ....あれ....」
「俺も観たよ~感心はしたけどあれをするには勇気もそれなりに必要だよね~....」
涼はあれから少しずつ元気を取り戻していた。が、まだ『完全』とまではいかないようだ。
「あれ?瞬は?」
「それがね....まだ来てないんだ....」
「え!あの瞬が~?休みなのかな~?」
そんな話をしていると突如、勢い良く教室のドアが開いた。
「はぁ....はぁ....何とか間に合いましたね....」
「瞬!今日は珍しく遅かったなぁ....なんかあったのか?」
金が瞬に聞く。
「あ、い、いや、特に何も....ちょ、ちょっと寝過ごしちゃっただけですよぉ!」
「むむむ........なんか怪しい~....」
「何が怪しいって言うんですか!僕だって寝坊くらいするときだってありますよ!」
この日の瞬の荷物はやたら多かった。
_________________________
「さぁ、今日も元気よく部活!....と言いたいところですが...今日は僕、用事があるので先に失礼します」
「えっ?用事?今までにそんなことなかっただろう」
「うっ....!い、いやまぁ、東郷先生に呼ばれたんですよ~何の話かわからないですけどね~...」
「東郷先生ならまだ学校にいるんじゃないか?」
「い、いや、でも東郷先生に呼ばれたのは本当ですよ~!そ、それじゃまた~.......」
瞬はいつもより多い荷物を持ってそそくさと部室を出て行った。
「ん~........なんか怪しいね~....」
「今日は九月にやる予定だった保育園訪問の最終的な話し合いだったのに....こんな重要な日に東郷先生も瞬を呼ぶかなぁ?」
「よし!部長の瞬がいないんじゃ話にならない!今日は瞬を尾行するぞ!」
「尾行!?本気で言ってんのか?!金!」
「尾行!おもしろそう~!一回やってみたかったんだよね~」
「じゃあ決まりだな!」
「おい、俺はまだいいとは言ってないぞ!」
なんだかんだ言って金たちは瞬を尾行することになった。瞬は商店街の中に入っていく。金たちはそれを追いかける。
「東郷先生に呼ばれたって言ってたけどどこで待ち合わせなんだろうな?」
「もしかして東郷先生の家かな~?」
「そういえば東郷先生の家ってどこにあるか知らないな。夏凜コーチの家と園子先生の豪邸は知ってるけど....」
三人はそんな話をしながらバレないように瞬のあとをついて行く。金たちは通行人から変な目で見られていた。すると瞬は携帯を手に取り、誰かと電話すると一目散に走り出した。
「うおっ!?なんだ?急に走り出したぞ!」
「祐成、涼、走るぞ!」
-
「はぁ....はぁ....あれ?見失っちゃった~....?」
「クソッ!ここまで来たのに....!」
「いや、まだどこか近くにいるはずだ。探すぞ!」
「そこまで熱心にならなくても~....」
「気になるだろ!涼!」
「いつになくまして熱いね~....金~....」
三人は諦めずに歩き始めた。すると前に人だかりができているのを見つける。
「なんだ?あれは?」
金たちも人混みの中に入っていくとその奥には店に入った強盗ともう一人の人物が対峙していた。
「あ、あれは....!」
祐成が目を見開いてそう言った。その先にいたのは....
「観念しろ!店の商品を奪った悪党よ!この二代目国防仮面がやってきたからには逃げられないぞ!」
「うおおおお!!国防仮面だ~!こんなところで会えるとは....!」
祐成は目をきらきらさせて二代目国防仮面をみる。
「お前....国防仮面のファンだったのか....?」
「だってかっこいいじゃん!正義の味方って感じで!男心がくすぐられるぜ~!」
「祐成らしいっちゃ祐成らしいね~....」
そんなことをのんきに話していると強盗が二代目国防仮面に向かって叫ぶ。
「へへっ!なめてもらっちゃあ困るな....お前みたいなヒーローを名乗るオタクにゃあ負ける気がしねぇ!逃げ延びてやる!」
「ヒーローでもオタクでもないっ!正義の味方だ!」
「うるせぇ!どうでもいいわ!そこどけぇ!」
強盗は二代目国防仮面に向かってタックルしてきた。
「通さないぞ....!」
国防仮面はどこからか木製のブーメランを2つ出し、向かってくる強盗に対して構えをとった。
「........!あの構え....!」
それを見た金は見覚えのある構えに反応する。
「ははっ!ブーメランなんかで倒そうって言うのか?笑わせてくれるぜぇー!」
「たぁっ!」
一瞬。二代目国防仮面はブーメランを素早く振った。
「うおおおっ!?」
強盗はその場に倒れ込む。強盗自身も何をされたか分からなかった。
「今の一瞬で足と急所をうちました....じゃなくて!足と急所をうったんだ!」
二代目国防仮面は倒れた強盗を縄で縛る。そしてそれを見ていた多くの人が歓声をあげた。
「やっぱりかっこいい~!国防仮面~!!」
祐成は他の人に混ざって歓声をあげる。
「なぁ....涼....あれって....」
「そうだね~瞬だね~敬語使ってないし声も少し変えてたからすぐに気づかなかったけど~」
「国を護れと人が呼ぶ!愛を護れと叫んでる!我が名は憂国の戦士、二代目国防仮面!それではみなさん!またどこかでお会いしましょう!」
そう言ってどこかに走り去ってしまった。
『国防仮面~バンザ~イ!!』
野次馬たちはそう言って二代目国防仮面を見送った。
_________________________
「今日は何の用でしょうか?風先輩」
東郷は風に大赦に呼び出されていた。
「東郷....何....これ?」
風が新聞の小さい一面を指差し、東郷に見せる。
「『二代目国防仮面』って....絶対あなたが関わってるわよね....?」
「い、いいえ!わ、私は何も知りません!きっとあのときの私を見て憧れを持った人が真似してるんですよ!」
「そこまで有名にならなかった国防仮面を十二年越しに誰が真似するって言うのよ....正直に言いなさい、東郷....」
「だ、だから私は....」
「東郷!!」
「ひっ!........わかりました....実は....」
-
「なぁ!瞬!昨日国防仮面に会ったんだぜ!俺たちの目の前で強盗を捕まえっちゃってさぁ~!すごいかっこよかったんだよ~!」
「そ、そうなんですか~....僕も見てみたかったです~....」
祐成の勢いに瞬は押される。
「国防仮面は十二年前にもいたらしいぜ。だから二代目なんだろうな。あっそうだ、それで?昨日はどこ行ってたんだ?」
「へっ!?ああ、東郷先生の自宅ですよ~!」
「なんの話をしてたんだ?」
「個人に関することですから祐成には関係ありません!ささ、授業始まりますよ!」
-
今日の放課後。今度は部室自体にすら瞬は来なかった。
「あいつ....今日は何も言わずに部活に来ないなんて....何かあるな....部長のくせに勇者部六箇条を破ってるんじゃないか!」
祐成は頬を膨らませながら怒る。
「きっとあれだな....」
「あれだね~....」
そんな祐成を片目に、金と涼は向き合ってそう小声で言った。
「二人とも!なにのんきに意味わかんないこと言ってるんだ!」
「もしかして....祐成は気づいてないのか?いつも一緒にいるのに?」
「えっ?なんのことだ、金?もしや、なにか瞬のことについて知ってるのか?!」
祐成が金の顔に近づいて問いただしていると金の電話がなる。
「おっ。東郷先生だ」
金は電話に出る。
「みんな、至急私の家に来てちょうだい。私の家で話したいことがあるわ。私の家の位置は部室の机の上にある地図に書いてあるわ。それじゃ、よろしく。今すぐね!」
「ちょっ!?東郷先生!?」
東郷は一方的に伝え、すぐに電話が切れた。
「一体どうしたんだ....」
「本当だ~この地図のここに丸つけてあるよ~」
「って涼!電話の内容聞こえてたのか!?」
「東郷先生は絶対なにか瞬のことについて知っているに違いない!よし、いくぞ!」
祐成は地図を持って部室を出て行こうとする。
「東郷先生....なんか妙に用意周到だな?まるでこうなることがわかっていたかのような....」
金は東郷の行動に不信感を募らせる。
「はっ!もしや....」
金は記憶を巡らせる。
(瞬....いや、あの国防仮面とやらは二代目と言っていた....つまり、初代がいる?瞬は東郷先生ととても仲がいいし、二人とも国への愛がすごい....)
「そういうことか....!」
「金も気づいた~?」
「えっ?」
「十二年前にも国防仮面と名乗る正義の味方がいたんだってさ~髪の長さと声からして女性だったとか....ある日急にいなくなっちゃったみたいだけどね~」
「十二年前....女性....東郷先生が中学二年生だった頃!しかもちょうどお役目を果たしていた頃だ!」
「そう!東郷先生と特徴も合うし、つまり今回の出来事はすべて........」
「涼!そのこといつから気づいてたんだ!?」
「フッフッフ~....内緒だよ~」
そんな会話をしながら金と涼は急ぎ足で東郷の家へと向かう祐成を追う。
_________________________
「この地図だと....あの家だな!」
祐成が指を指す。
「ん....ちょっと待って!なんか怪しい人物が~!」
涼がそう言うと東郷の家の前に全身黒ずくめの黒帽子とサングラス、マスクをした黄色の長髪の人物が中を覗いたりうろちょろしていた。
「こ、こういうときは警察....!」
祐成がそう言って端末を手に取る。するとそこに
「人の家の前で何をしている!」
「はっ!この声はもしや....!」
祐成が声のした方向を見る。そこには日に照らされて仁王立ちする人物が一人。
「やっぱり!あれは国防仮面~!!」
「国防仮面かどうか声で気づいたのに瞬だということは気づかないのか....」
金は二代目国防仮面に釘付けの祐成を見てぽつりと呟いた。
「国を護れと人が呼ぶ....愛を護れと叫んでる....憂国の戦士、二代目国防仮面!ここに見参!」
「うほほぉぉぉぉ~!!何度見てもあの名乗りと佇まい....かっけ~~!!」
「ぬ、ぬうう~....なんだ貴様は~!」
「お主....今この家に盗みに入ろうと企んでいたな....?」
「う........逃げろ~!」
「あっ....!こら、待ちなさい!」
全身黒ずくめの人物は二代目国防仮面とは真反対の方向に逃げ出した。逃げた先には金たちがいる。
「うわわ~~!こっち来たぞ~!どうするどうする!?」
祐成は慌てふためく。すると、金たちの目の前に黒い人影が一つ。
「!?へっ!?一体....?」
祐成は戸惑った。
「国防仮面が....二人!?」
「ぬ、ぬうう~....またなんだ貴様は~!」
「国を護れと人が呼ぶ!愛を護れと叫んでる!憂国の戦士、初代国防仮面!ここに見参!」
「しょ、初代~!?」
祐成は驚き、思わず腰を抜かしてその場に尻餅をつく。
「やっぱりな。何かこのシチュエーションおかしいと思ったら....」
「うん、これは東郷先生だね~」
金と涼はジト目で成り行きを見守る。祐成には金と涼の会話はまるで聞こえていなかった。
「観念しなさい!悪党よ!お前にはもう、逃げ道はない!」
初代と二代目は挟み撃ちをする。
「え、ええい~~!強行突破だ~!」
黒ずくめの人物はまた方向を変え、今度は二代目の方へ走る。
「逃がさないぞ!」
二代目はいつの間にか縄を持つとどこからかロープが出てきて黒ずくめの人物の体を縛った。
「な、なんだこれは~!一体どこから~!?」
「フッフッフ....我が縄の呪縛にかかったな....これでもう動けまい!」
「す、すごいっ!!一瞬で捕まえた!ここからでもどうやったか分からなかったぜ!!さすが国防仮面ー!」
「前、瞬にロープマジックを教えて欲しいって言われたのはこれがしたかったからか~」
「それだけじゃないぞ涼。強盗の方も....あの口調....髪色....」
「うん、あれは園子先生だね~」
祐成は二人の国防仮面に近寄る。
「お願いします!サインと、握手してください!」
「ちょっと待ったー!」
国防仮面と交流を交わそうとする祐成を、金は大声で止めた。そして続けてこう言う。
「東郷先生、園子先生、瞬!三人そろってなんでこんなことしてるんですか!」
「えっ....?東郷先生....?園子先生....?瞬....?何言ってるんだ金....?」
「そ、そうよ!東郷なんて人知らないわ!」
「ぼ、僕も初耳です!....じゃなくて....初耳だ!」
祐成は三人を睨めつけ、そして身動きができない黒ずくめの人物に近寄る。
「な、何をするつもりなんよ~!?」
祐成はロープで縛られている黒ずくめの人物の帽子とサングラスとマスクをはぎ取った。
「....!?園子先生....!」
「........あはは~........ついにバレちゃったね~....」
「園子先生....何してるんですか!東郷先生の家に盗みに入ろうだなんて!園子先生の家は立派でお金持ちで困ることなんてなかっただろうに........!ショックです....!」
「祐成ちが~う!そうじゃな~い!」
「えっ?違うの....?」
祐成は涙ぐんだ顔で金の方を向いた。
「まさか....こんな感じでバラさなきゃいけなくなるなんてね....」
「金と涼は....だいぶ前から気づいてたみたいですね....」
二人の国防仮面はそう言って顔を隠していた目のマスクと帽子をとる。
「........えっ....!?そんな....!?」
祐成はこの世の終わりのような顔をして驚く。
「二代目国防仮面は瞬で、初代国防仮面は東郷先生~!?」
「本当はこの後、私たちがバシッとかっこいい感じてバラしてみんなが驚くのを見たかったんだけど....」
「すでにバレていたとは....」
「いや、バレバレですよ....」
「祐成が鈍感なだけです~」
「なんだよお前ら....気づいてたのかよ....」
悲しんでいたかと思ったら祐成はすぐに立ち上がり、
「でも!瞬があんなかっこいい勇気のいることをやっていたなんて尊敬するっ!やっぱりお前はすごいよ~!!」
祐成は瞬の両手を握ってぶんぶん振った。
「あ、ありがとうございま~すぅ~」
両腕を思い切り振られ、瞬はふらふらになる。
「もちろん、これをみせるためだけに私の家に呼んだわけじゃないのよ。みんな、どうぞ中に入って!....ようこそ、東郷家へ!」
(第十二話に続く)