34.超巨大バーテックス
「なるほど....東郷先生の言ってた意味が分かったぜ....」
「てっきり今までの侵攻を超える敵数なのかと思ったけど~....」
「こういうことだとはな....」
金たちははるか頭上を見上げていた。
「上には上がいるとはこういうことですね....」
まさにその状況は絶望的であった。壁のようにそびえ立つ目の前のバーテックス。その大きさはもはやこの世のどんなものでもたとえようがない。ゆうに巨大バーテックスの大きさを超えていたからだ....。しかし、金たちは全く恐怖していなかった。
「だからと言って....僕たちが負けるわけにはいきません!」
「図体でかいから攻撃も当てやすいしな!」
「でかいだけかもしれないしね~」
「よ~し!俺たち讃州中学勇者部の力を見せつけてやるぜ!みんな、最初から本気でいくぞ!」
『わかった!』
金のかけ声に他の三人は答え、それぞれ動き始めた。
「四人で一体の敵と戦うの何気に初めてじゃな~い~?燃えてきたぁ~!」
「みなさん!くれぐれも攻撃は受けないように。どんな攻撃方法かわかっていませんし、威力も計り知りません!」
「わかってるって!」
「じゃ、行くか!」
祐成と涼が同時に超巨大バーテックスの方へと高くジャンプした。それを見た瞬は二人とは逆に樹海を走り始める。金はジャンプした二人の援護をする。すると超巨大バーテックスは火球による攻撃を仕掛けてきた。
「うわぁぁ!なんて広い攻撃範囲!まるで太陽だな!」
「こんなの避けきれるわけないから....突っ込んでぶち壊すよ~!」
二人はそのまま炎に突撃した。
『うおおおおおおお~!炎を....斬るっ!』
火球に苦戦している二人に、
「援護するぜ!」
金が後ろから銃を数発放って援護する。そして、見事に大きな火球は破壊された。
「よし、このままいくぜ、オラァ!」
「突撃ぃ~!」
涼と祐成はさらに距離をつめる。すると下からも声が聞こえてきた。
「僕は下から....攻めますっ!」
『たあぁぁぁぁぁー!!』
三人は息を合わせて超巨大バーテックスをそれぞれの武器で斬りにかかる。
ガッキーンッ!!
鈍い金属音がして樹海に響く。彼らの刃は全く通っていなかった。
「か、硬いぃぃ~~....!」
「きょ、強化された勇者システムでもダメですかぁぁ~........!」
その衝撃で三人の手は痺れる。
すると超巨大バーテックスの体から突然強風が発生した。
『あ~~れ~~~~』
「うごっ.....!なんて風の強さ....うわぁぁ~!」
近くにいた涼たちだけでなく、少し遠くにいた金までもが吹っ飛ばされる。
「ぅぅぅ....みんな、大丈夫か....?」
「な、なんとか~....」
「しかし....あいつ、技のバリエーションが豊富だな....しかも攻撃の強さもピカイチと見た....」
「やはり....あれをやるしかないみたいですね....」
「いや....!待て!全員する必要はまだない....まずは遠距離攻撃ができる俺がして、それから判断してくれ....!」
「わかったよ~金~!」
「 満 開 っ ! ! 」
金の体に光が集まり、空中に大きな牡丹の花を咲かせる。
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「何回見ても綺麗だね~....」
「そうだな....『金』太郎って名前のくせに赤が似合うぜ....」
「あぁ~もう!....満開するたびに伸びるこの前髪....邪魔でしょうがないな....!」
「ゲ○ゲの鬼太郎みたいでかっこいいと思うよ~!」
空を飛んでいる金に向かって涼はそう叫んだ。
「そう....?涼がそういうなら....じゃなくて!今は目の前の敵だ!」
超巨大バーテックスはさっきまでとは雰囲気がまるで違う金に対して警戒するようになったのか、攻撃の手を強める。雷、岩、炎、毒....。金はそれらの攻撃を避けたりクリスタルによる狙撃でふせいだりしながら戦う。
「ここから見て気づきましたが....あのバーテックス、これまで僕たちが戦ってきた巨大バーテックスの技をすべて使いこなせるみたいです....しかも、巨大バーテックスが使うよりも高威力で....」
「........そうみたいだね~....」
「うおおおお!これでもくらわせてやるっ!」
金は攻撃を避けながら手のひらを超巨大バーテックスに向け、少し力を込めると金の周りを浮く八個のクリスタルから太い光線が発射された。見事に超巨大バーテックスに命中する。
「やりぃ!!........はっ!」
確かに命中した。....が、バーテックスはまだまだピンピンしていた。
「まぁまぁ力を込めて放ったのに....!そんな....満開でも一人だと厳しいか....?」
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「....!金の攻撃は間違いなく直撃したのに全然効いてないよ~!」
「金っ!大丈夫ですか!」
「ちょっと一人じゃ厳しいかもしれない!みんな....満開だっ!」
「了解っ!その言葉を待ってたぜ!」
「祐成....調子乗りすぎないでくださいよ!満開するからと言っても危険なんですから!」
「わかってるって!」
『 満 開 っ ! ! 』
三人一遍の満開はとても幻想的で見る分にはとても美しかった。三人はすぐに金のもとへ駆けつける。
「よし、みんな!俺は一つ、作戦を思いついた。一回その作戦に乗ってみてくれないか?」
「祐成ならともかく金のなら安心できますね!」
「おい!俺をなんだと思ってるんだ!」
「もちろんだよ~!金~!」
「無視しかされない........」
「まず、あいつの前後左右に一人ずつ回り込んで囲むんだ!そして、一斉に攻撃を放つ!多分距離遠すぎて声は届かないだろうから電話で指示を出す!わかったか?」
「なるほど....別々の方向から攻撃を放てばいくらあの広範囲の攻撃でも怖くないってことですか....!」
「こちらの攻撃が防がれる心配もないってことだね~!」
「そういうことだ!じゃ、俺はあいつの正面から攻撃する!」
「じゃあ祐成様は右側にいくぜ!」
「僕は左側で。」
「俺は後ろだね~!」
「よし、作戦決行だ!」
金の合図で四人はそれぞれの方向へ散らばった。超巨大バーテックスはその不審な行動を見て攻撃をしかけてくる。
「満開状態なら....お前の攻撃は怖くないんだよ!」
祐成はそう言って素早い動きで飛びながら避け、自分の配置についた。
「みんな、聞こえてるか~?」
「大丈夫だよ~!」
「みなさん配置につけたみたいですね」
「それじゃ、早速試してみるぞ!せーのっ........今だっ!」
四人はそれぞれの方向からほとんど同時に攻撃を放った。しかし....
「!?全部防がれた!?」
「こいつ....体の全方向から攻撃を撃てるみたいだ....!」
「しかも....同時にね~....」
「あいつを怒らせたら....樹海も俺らもひとたまりもないな....」
「たあっ!」
その時、瞬が不意打ちを狙って見事、ブーメランの一つを超巨大バーテックスに命中させた。
「おっ!瞬か!」
「満開したことによって生まれたこの大きい九つのブーメランは....僕の意志で自由自在に操れます!油断しましたね....超巨大バーテックスよ!」
超巨大バーテックスはゆっくりと瞬の方向に正面を向いた。
「お前は....憂国の戦士、この二代目国防仮面によって倒されるのだ!」
次の瞬間、超巨大バーテックスは瞬目掛けてとんでもない数の攻撃を放った。
「なっ!?」
その攻撃はとても大きく、瞬には光で作られた津波に見えるほどだった。不意打ちとは思えないほどの強力な不意打ちであった。
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「うわぁぁぁ~........!」
超巨大バーテックスが放った攻撃による影響は金たちのところまで届いていた。凄まじい爆風に満開した金たちでも吹き飛ばされそうになる。
「はぁ....ふぅ....やっと収まったか....はっ!瞬!大丈夫か!」
「瞬!応えてくれ!」
三人は電話で応答を願う。すると....
「はぁ........はぁ........危なかったです....ブーメランが僕の近くになかったら....」
瞬は間一髪残りの八つのブーメランでバリアをつくり、ガードしていた。
「しかし........なんて力だ........うおおっ!?」
超巨大バーテックスは瞬が無事なのを確認すると瞬に向かって容赦なく、次々に攻撃を放つ。
「うおおおっ!........くそっ!ガードするので........精一杯........」
「まずい!瞬が危険だっ!」
金は瞬を救いに瞬のところへ行こうとする。
「待てっ!金。瞬のところには行くな!」
金を制止したのは祐成だった。
「!?なぜだっ?!祐成!このままじゃ........」
「逆に考えろ!今こいつは瞬を集中攻撃しているから俺たちからの方向の攻撃は防ぎきれないかもしれない!つまり....今がチャンスだ!」
「その間にこいつを倒せれば瞬も救える....一石二鳥ってことだね~?」
「その通りだ、涼!」
「....わかった!みんな、放てー!」
金たちはそれぞれの方向からもう一度攻撃を放った。が、それでも....
「なっ!?また防がれた....!?」
「もうさっきみたいに不意打ちは食らわないってか....!しっかりこっちにも意識してやがる....!」
そんな中、瞬は孤独の戦いを続けていた。
「くっ........うおおおおおおお!!負けるかぁー!!」
いつも冷静で物静かな瞬とは違い、雄叫びをあげる。しかし、一瞬。一瞬だけ瞬の動きに隙ができたとき。超巨大バーテックスはそれを見逃さなかった。超巨大バーテックスはそこに鋭い触手によるパンチをうつ。
(はっ!?しまっ....)
瞬はブーメランをすばやく戻し、直撃は避けた。が、力強いパンチは、防いだブーメランごと瞬を遠くに殴り飛ばした。
瞬は樹海の壁にすごい勢いで叩きつけられる。そして瞬はその場から動かなくなり、そのまま満開がとけてしまう。
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「瞬ーー!!」
遠くから瞬が殴り飛ばされた様子を見ていた金はそう叫んだ。
「早く....助けに行かないと....!」
「待て、金!」
また止めたのは祐成だった。
「何でまた止めるんだっ!このままじゃ瞬が....」
「瞬はきっと大丈夫だ!俺は信じてる....!しかもお前が瞬のところに行ったらこいつの思うつぼだ!」
「....じゃあどうすれば....」
金は考える。
(四方向からでもダメ....なおかつ威力が高く、多種多様な攻撃............そうだ....!あとはこの方法しかない!)
「祐成、涼!俺のところに....」
「もういるぜ。」
「こうなったら残りの思いつく作戦はただ一つだよね~」
金が後ろを振り向くとすでに二人がいた。
「ふ、二人とも....!」
「フッ....金、あれだよな?」
「あれだよね~!」
「....ははっ....うん。あれだ!」
『気合いと根性で、力ずくで乗り越える!!』
三人は声を合わせてそういった。
「あははっ!やっぱりそうだよなぁ!それしかないよな!」
「時にはごり押しも必要だよ~!」
「よ~し、みんなぁ!讃州中学勇者部の全力、見せつけてやろうぜ!」
「ああ!」
「任せて~!」
超巨大バーテックスも三人が一つの場所に集まったのを確認すると、エネルギーを溜め始めた。
「あいつも....決めにくるみたいだな....」
「最初は俺が行く!そのあとに三人で攻めてくれっ!」
『了解っ!!』
「はあああああああっ.....!」
金は両手の平を広げて前に構える。金の体と胸の水晶は赤く、赤く輝き始め、周りに浮いているクリスタルは金の両手の平に光を集める。
「これが....俺の....全力だっーーー!!」
金は燃え上がる魂のごとく、エネルギーを放出する。超巨大バーテックスの攻撃とぶつかり合い、樹海に衝撃が走る。
「うおおっ....!!す、すごい....まるでか○はめ波の赤バージョンだ....」
「かっこいいよ~!金~!」
それでも超巨大バーテックスの攻撃の方がおしている。
「く、くそっ....!ぬおおおおおっー!」
「もう十分だよ~!」
「俺たちも加わるぜ!」
涼と祐成の体と胸の水晶もそれぞれの色で光り始める。涼はこの前のようなことにならないように下から上に巨大な斧を振り上げた。祐成は超巨大バーテックスに突っ込み、蜘蛛の鋭い脚を巨大化させ、連撃を放つ。
『うおおおおおおおおおっ~~!!』
「いけぇ~!みんな~!!フルパワーだぁぁぁぁ~!」
やがて樹海を光が包む。
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樹海には三人の少年が大の字で寝転がっていた。
「はぁ....はぁ....はぁ....勝った....勝てた....!あいつに!」
「ああ....俺らでしてやったぜ....」
「みんな~....怖かったよ~....」
涼は笑いながら涙を流す。
「涼....泣くなよ....ぅぅ....」
「おいおい、金までかよ....はぁ....はぁ....」
少ししてから三人はよろよろと起き上がり、ある場所を目指す。三人は荒い息づかい以外無言であった。しかし、考えていることは同じであった。
(頼む....瞬....無事であってくれ....!)
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「お兄さん大丈夫~?」
「お外で寝たら風邪引くよ~!」
金たちはもとの世界へ戻ってきていた。傷だらけで戻ってきた彼らを見て、園児たちが駆け寄ってきた。東郷が地面に倒れている瞬に近寄り、体を起こす。
「そんな........瞬くんっ!!」
「....大丈夫です、東郷先生。まだ瞬は息をしています。かろうじて....ですけど....」
祐成が東郷にそう告げる。
「ぅぅ....瞬くんっ....!せっかく....演劇、成功できたのに....」
涼はスマホですぐに救急車を呼んでいた。園児たちの騒ぎを聞き、奥から保育士さんたちがやってくるのが見える。
「とりあえず園の中から出ましょう....このままじゃ騒ぎになります....」
祐成はそう言って瞬を背中に担いだ。東郷と涼は瞬の姿を園児たちから見えないように祐成のあとをついて行った。
金はレンズが割れ、フレームがねじ曲がった瞬の眼鏡を拾う。すると金は後ろから袖を引っ張られた。後ろを向くとそこには、小さい女の子が立っていた。
「ねぇねぇ。あの人って国防仮面でしょ?悪い人に負けちゃったの?」
「え....」
瞬が国防仮面だということがわかっている園児もいたのか....金はそう思った。そして金は一呼吸おいて園児にこう言った。
「....いや、国防仮面は負けてないよ。国防仮面は仲間に敵を倒すチャンスを与えたんだ。国防仮面が倒したみたいなもんさ!国防仮面が....ぅぅ....国防仮面が....勝ったんだよ....」
金は涙をこらえきれなかった。もしこのまま瞬が....。そう考えてしまったのだ。金はすぐに涙を拭いて祐成たちのあとを走って追った。その後、救急車が保育園のそばに来て東郷と瞬を乗せた。東郷は最後に「また連絡するわ。みんなとりあえず今日は家に帰りなさい」とだけ言い残し、行ってしまった。
翌日。金たちは朝から部室に集められた。三人で部室にいる間は誰も一言も言葉を発さなかった。やがて東郷が部室にやってくる。
「東郷先生!瞬は....?」
金は立ち上がって東郷に聞く。
「なんとか....一命は取り留めたわ........意識はまだ....戻らないけど....」
「そう....ですか....」
「話はまだこれだけではないわ」
「もしかして....また神託ですか....?」
「ええそうよ。」
「!?もう次の侵攻かよっ....!」
祐成は眉間にしわを寄せて呟いた。すると東郷は、
「祐成くん....それが今回はいつ次の侵攻が来るかという神託じゃないの....」
「え........」
東郷は目を閉じ、心を落ち着かせてから言った。
「残りの侵攻の回数は........あと二回だそうよ....」
(第14話に続く)