三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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最後の日常

35.ハロウィン 

 

 

 

金と涼は両手いっぱいに何かが入ったダンボールを持っていた。そして体をうまく使って部室のドアを開け、机に荷物を置く。

 

「はぁ~....大変だったな....」

 

「金~。後ろ、見てみて~」

 

「ん?なんだ?」

 

金は涼に言われるがまま後ろを向くと祐成が縄に縛られ、吊されていた。しかし、金と涼は特に驚かない。

 

「またやったのか....?祐成....」

 

「祐成も懲りないね~」

 

「ぅぅぅ~....そんなこと言ってないで助けてくれよ~....」

 

「とりあえずどういう課程でそうなったか言ってみろ」

 

金は腰に手を当てて祐成を問いただす。

 

「うっ....この前の社会のテストで....ちょいと低い点数をとってしまいまして....」

 

「確か祐成、前吊られたときもそれが理由だったよね~もうちゃんと勉強しますって言って許してもらえたのにダメだったの~?」

 

「いや~勉強するっていうのは大変なものですなぁ~あははは....」

 

「うん、それは祐成が悪いな!よし、このままでいろ!」

 

「わ~!そんな~!お願いだよ~金ー、涼ー!」

 

「さて、涼。やるとするか!」

 

「そうだね~!頑張ろう~!」

 

「まずい、いつものように無視タイムが始まった!」

 

そこに東郷が入ってくる。

 

「あっ。二人とも荷物運びご苦労様。」

 

「東郷先生~こんにちは~!」

 

「さぁ、明後日までに作業を終わらせますよ~!!」

 

「東郷先生~!もう許してください~!本当にすみませんでした~!あのような点数は二度ととりません~!」

 

「じゃあ私はこっちを縫うわね」

 

『お願いします!』

 

「ダメだ....誰にも俺が見えてない....俺はずっとこのままでいつか餓死するんだ....」

 

_________________________

 

 

 

『こんにちは~!!』

 

「邪魔するわよ」

 

「夏凜ちゃん、そのっち、友奈ちゃん!」

 

「お手伝いしに来たんよ~!」

 

「ひさしぶりに部室に来ました!」

 

園子と友奈が金と涼の二人に挨拶を交わす。

 

「友奈さん!お久しぶりです!」

 

「久しぶりだね、金太郎くん!涼くん!」

 

「わざわざ来てくれて、ありがとうございます~」

 

「.....三人ともよく来てくださいました!東郷先生を説得してください!」

 

まだ吊られたままの祐成が三人に呼びかける。

 

「それで?私たちは何をしたらいいのかしら?」

 

「そうね....涼くんが今やってる作業を手伝ってくれるかしら?」

 

「了解~!」

 

「友奈さんたちも無視!?俺の存在って一体....」

 

祐成が落ち込んでいると、そこに金が近づいてきた。

 

「はっ!金....助けてくれる気になったのか....!俺は信じていたぞ....お前は俺をずっと....ちょっ!?あははははっ!な、何するんだよぉっ!?はははっ!」

 

金は不自由な祐成の体を好きなようにくすぐる。

 

「フフフフ........いつものお返しだ....!」

 

金は小声でそう言うとさらに激しくくすぐる。

 

「あははははっ!はははっ!わ~!やめて、やめて~!あははっ!」

 

「金!作業に集中しなさい!」

 

「ちょっと待ってください東郷先生!今だけはこいつに報いを受ける時間を!祐成には....普段からひどい仕打ちをですね........ぬおっ!?ふあぁっ....!」

 

東郷は金に近づいて金のわき腹をつついてくすぐる。

 

「........こんな風に....?」

 

「シュールな絵ね....祐成をくすぐる金太郎が東郷にくすぐられてる....」

 

夏凜は軽蔑する目で三人を見る。

 

「ちょっとぉ....!東っ....郷....ちぇんちぇいぃ....!ふぁっ、あぁっ!長い....ですぅ....ひゃっあっ!あっ、んっ、ふぁっ、ひゃぁん!あはぁんっ!」

 

「あはははっ!東郷先生すごい....はははっ!....俺はここまでの声を金から出すことはできなかった....プロですね....」

 

祐成は金にくすぐられながらも東郷に尊敬の眼差しを贈る。

 

「なんか見ちゃいけない物を見てる気がするよ~」

 

涼がそう言った途端、金はやがて力が抜けて地面にぺたりと座った。

 

「はぁ....はぁ....もうっ!東郷先生!恥ずかしい声、こんなに出ちゃったじゃないですかぁ!しかも、こんな大勢の前で!」

 

「ごめんね、金。ちょっとやりすぎちゃったわ。ウフフ....」

 

「ウフフじゃないですよぉっ!」

 

「はいはい、そろそろ作業始める!」

 

夏凜がそう言うと、

 

「終わったよー!」

 

と、友奈の元気な声が響く。

 

「さすが友奈さん、早~い!」

 

「じゃあ次、友奈ちゃんと私と涼くんはこっちやりましょうか。夏凜ちゃんとそのっちと金はそっちをお願い」

 

『了解!』

 

「あっ....まだ俺は許されないんですね....」

 

_________________________

 

 

 

「やったー!できたー!」

 

「友奈さん器用ですね~」

 

「こっちもだいたい終わったわ。」

 

「これであとは明後日を待つだけですね!」

 

「さてと....」

 

一段落ついたところで東郷はゆっくり立ち上がると祐成を吊していた縄をほどいた。

 

「........。」

 

「やっと解放されたって言うのに何も言わないね~」

 

「ちょっとやりすぎたかしら?」

 

「いやいや、これくらいしないとダメですよ」

 

金は祐成のことをわかりきっているかのような口調でそう言った。

 

「リトルミノさんは厳しいね~」

 

「さぁ!この明後日配るお菓子を今日のうちに下に運ぶわよ!」

 

「みなさん、もう準備は終わったみたいですね。」

 

『えっ!?』

 

一同はここにいるはずのない聞き覚えのある声を聞き、部室の入り口を見る。そこには少年が壁に手をついて立っていた。

 

「瞬!?」

 

「もう大丈夫なのか!?」

 

「はい、おかげさまで!」

 

「嬉しいよ~!瞬はハロウィン参加できないかと思ってたから~....」

 

「ハロウィンじゃなくてはろえんですけどね」

 

「瞬くん....おかえりなさい....!」

 

「ただいま戻りました....東郷先生....!」

 

前回の侵攻の後、大怪我を負った瞬はしばらくの間入院していたのだ。それで今日、退院して戻ってきたらしい。

 

 

 

 

 

「夏凜コーチ、その荷物は多すぎます。俺が持ちましょう」

 

「わっ!祐成....あんた気を取り戻したのね....別にあんたの助けなんかいらないわ!これくらい私一人で....」

 

夏凜はそう言って中身がパンパンのダンボールを持ち、部室を出る。

 

「ほらね....?完全型コーチを舐めないで....わっ!」

 

夏凜は段差につまづいてバランスを崩す。

 

-

 

ダンボールが大きな音を立てて落ち、中に入っていたお菓子が飛び出る。

 

「ほら....言わんこっちゃない....」

 

祐成は荷物よりも夏凜を優先し、夏凜が転ばないように支えていた。

 

「なっ........!!」

 

夏凜の顔は赤くなる。

 

「やっぱり俺が運びますよ....夏凜コーチじゃ危険です」

 

「は、ははは早く離れなさいよぉっ!」

 

「あっ、すみません....」

 

「す、すみませんじゃないわ!もう!....」

 

祐成は落ちたお菓子をダンボールの中に綺麗に入れ始める。夏凜は無言でそれを手伝い始めた。すべて入れると祐成がダンボールを持とうとする。

 

「半分!........持つわよ....」

 

「夏凜コーチ、大丈夫ですから....」

 

「........いいから貸しなさい....!」

 

「........分かりました。」

 

二人は無事、協力し合って一階まで運び終わる。

 

「........あんたも....良いところあるじゃない....」

 

夏凜は小声で呟いた。

 

「はい?何か言いました?」

 

「........なんでもないわよぉっ!」

 

_________________________

 

 

 

『トリックオアトリート~!』

 

金たちは商店街で昨日まとめたお菓子を街ゆく人に配る。

 

「勇者部の方々かい?毎年頑張ってるね~」

 

「おかげさまで!ありがとうございます」

 

「あなたたちのような人が増えればね~」

 

やがて夕方になり、金たちは部室に戻ってきた。そしてそこで風も合流する。

 

「さ~てみなさん!ここからが本番です!今から勇者部はろえんの会を行いま~す!」

 

『イェーイ!』

 

瞬の合図でハロウィンパーティーが始まる。金たちはそれぞれが作った衣装を着て仮装をした。

 

「俺はドラキュラだ!フッフッフッ....お前の血を吸い取らせてもらうぞ....」

 

「俺は~ミイラです~」

 

「僕は唐傘お化けです....!」

 

「フハハハハハ!俺はフランケンシュタインなり~!」

 

四者四様。金はドラキュラ、涼はミイラ、瞬は唐傘、祐成はフランケンシュタインになった。

 

「フランケンシュタインって見た目そんな感じだったけ~?」

 

「うるせー、涼!実物を見たことないくせに!」

 

「いや、誰でもないだろ....」

 

金のツッコミをよそに、旧勇者部組も仮装を始める。

 

「幽霊だぞ~ヒュ~ドロドロ~」

 

「友奈....あんたは布を被っただけじゃない....」

 

「こっちは吸血鬼だぞ~!」

 

「そのっち、金と被ってるわよ!」

 

「別にこれでいいんよ~!」

 

「俺たちは....二人で一人....!」

 

金と園子はそう言って肩を組んだ。

 

「私は....魔女よ....!」

 

「夏凜には似合わないわね」

 

「なによ、風!じゃああんたはなんだっていうの!」

 

「私は....ってあれ?私の衣装....」

 

「すみません、風先輩のは作ってないです....」

 

瞬がペコリと頭を下げて詫びる。

 

「ガーン....!そんな...!」

 

「てっきり自分で持ってきてるかと....」

 

それを見た夏凜は得意げにこう言った。

 

「フッ....あんたに限ってはなにもないじゃない....」

 

その言葉を聞き、風は機転を利かせる。

 

「じゃ、じゃあ私は....大赦の亡霊なり~!」

 

「今着てる服で誤魔化すなっての!」

 

一方、東郷は

 

「私は....一つ目小僧だぞ~....」

 

「東郷先生はわかってらっしゃる!やっぱりはろえんと言ったら妖怪ですよね!」

 

「その通りだわ!瞬くん!」

 

東郷と瞬は手を取り合う。そしていつものようにこの二人は一同にほっとかれ、

 

「今日は夜まで騒ぐわよー!」

 

風がそう叫び、

 

「やったー!お化けのお祭り騒ぎだー!わっしょいわっしょい!」

 

「わっしょいわっしょい!」

 

と、友奈と祐成はテンションで応えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 36.動く影

 

 

 

これは、10月中旬の話である。

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

戸塚が思いっきり机を叩く。

 

「くそっ!あれから全然手がかりが見つからねぇじゃねぇか!一体どこにいるんだ....」

 

それを見た芹沢は同感するように反応する。

 

「大赦が持っている敷地とか思いつく限りは探しましたもんね....あとは....」

 

「ああ....そうだな....最後に残ったあの場所しかない....」

 

「しかし、あの場所は警備が厳重です....もしバレたら....!」

 

「この際だ芹沢!多少強引になっちまうがやるしかない!」

 

「........わかりました!僕たちが必ずやり遂げます!」

 

そう言って芹沢は部屋を出ていった。

 

そして、10月31日。ハロウィンの日。

 

 

 

 

 

戸塚の部屋のドアが勢いよく開く。

 

「なんだ、芹沢!ノックもしないで入ってくるなんて!」

 

「戸塚さん!大スクープですっ!!ついに....ついに例の証拠写真を手に入れました!」

 

「何!?本当かっ!?」

 

芹沢は戸塚にある封筒を渡すと戸塚は無造作に中身の写真を取り出す。そしてそれを舐めるように一枚一枚見まわした。そして....

 

「ハハ........ハハハハハハハ!よくやったぞ、芹沢!この記事は先月の台風より世間の注目を浴びるだろう!今年一番....いや、世紀の大スクープだ!芹沢!今すぐこの記事を完成させろ!11月一番最初の見出しはこれに決定だ!」

 

「わかりました!今すぐ完成させます!」

 

芹沢はそう言うと走って部屋を出ていった。一人になった戸塚は不適な笑みを浮かべ、呟いた。

 

「フフフ....この記事が世に出回れば世界が大混乱....み~

 

んな私の記事を買う....やったぞ....ハハハ....フハハハハハ!」

 

 

 

(第15話に続く)

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