三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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絶望

 

 39. 絶望 

 

例の山で金と出会った涼はみんなに部室に戻るように連絡をした。瞬たちだけでなく、友奈や風などの勇者部OBたちも呼んだ。先ほどの出来事を伝えるために.....。

「今さっき....俺と園子先生は金と会った。....けど....あれは金じゃない....!....怪物だ....!この世のすべてを恨んでいるかのような....鬼のような顔だった....。俺の頭にも....銃を突きつけられた....。」

「私は....『もう二度と顔を見たくない』っていわれたんよ。」

「え....本当に金がそんなことを言ったんですか....?」

「金が人を殴ったって言うのもそもそも信じられないし、この話もとても信じられないな....」

瞬と祐成はいつになく暗い顔をする。

「でも金はあんな精神状態の中でもあの最低な記者以外には人に危害を加えてない....。きっとそれは心の中でわかってるからだと思う。悪いのはすべてバーテックスだってことを....でもね....金は俺と別れるときに言ってたんだ。『もう限界だ....こんな世界』ってね。金が暴れゃうのも....時間の問題かもしれない....。」

「私だわ....こうなったのはすべて私のせい....私が黙ってたからこんなことに....!」

涼の言葉を聞いた東郷は自分を責める。

「いえ、東郷だけの責任じゃないわ....私たち大赦からしっかり説明しておくべきだった....。」

風も東郷と同じように過去の自分を恨むのだった。

 

やっぱりあの時、瞬の制止を振り切って金を止めるべきだったのだろうか。かつて金が俺を助けてくれたときは、東郷先生をなんとか説得して俺に会いに来てくれたみたいだし....。

涼は後悔していた。金は俺を助けてくれたのに俺はなにもできないのか。俺だって金のことを大事に思っているのに....。

「涼くん....もしかして責任感じてるんじゃないかな....?」

「えっ....?」

涼の顔を下からのぞき込むようにして友奈がそうやって言ってきた。

「やっぱりね....涼くんの顔を見てればわかるよ!」

涼は完璧に友奈に見抜かれていた。そして友奈に肩を掴まれてこう言われる。

「涼くんならきっと金太郎くんを救える!金太郎くんだって涼くんを救ったんでしょ?だったら涼くんにも必ずできる。助けたいと思ってるんだよね?大切に、思ってるんだよね?」

「........はいっ!もちろんです!....金は俺を助けてくれた....金がいなかったら今の俺はない....!今度は....俺が金を助ける番だ!!」

涼は熱い眼差しで友奈の顔を見つめ返して言った。それを聞いた友奈は優しく微笑んだ。涼の気持ちを聞いて安心したのか、そのまま何も言わずに涼の肩を放した。

「涼....よく言った!」

「もちろん僕たちも手伝いますからね!」

「........ありがとう....!祐成....瞬....!」

すると突然、いつもの侵攻のときとは少し違う警報音が鳴った。その音は普段以上に不気味であった。

「お、おい....なんだよこの音....!いつもの警報と違うぞ....!」

「見てください。端末の表示もおかしいです....!」

「東郷....これって....!」

それを見ていた風はそう言って東郷の方へ振り返った。

「ええ....。三人とも!覚悟して!いつもとは段違いの数が攻めてくる....!厳しい戦いになると思うわ!」

「そんなっ....!ただでさえ金がいないって言うのに俺たちだけで....!?」

「........それでも....やるしかないよ!」

「祐成、そうですよ!涼の言うとおりです!三人で無事に帰ってきて金を取り戻しましょう!」

「........ああ....わかった!ド根性で勝つ!」

三人は円を作り、それぞれの拳を前につきだして合わせた。

「讃州中学勇者部....ファイトですっ....!」

いつもとは違う不吉な警報音が鳴り響きながら樹海化が始まった。

_________________________

 

「........ぁぁ....すごいな....」

涼たちの目に映っていたのは樹海を埋め尽くすほどのバーテックスだった。こうしている間にどんどん増えているようにも見える。

「おい........あのバーテックスも....あっちのバーテックスも....俺たちが前倒したはずのバーテックスだぞ....!」

「........見たことないバーテックスもいますね....!」

瞬がそう言って端末を見る。

「....星座の名前が書いてあります。いつもとは違う。うわ....マップで見てもヘドが出るような数ですね....。あっ!?見てください!」

瞬は二人に端末を見せて指差した。

「あっ!金がいる....?」

「もうすでに、ひとりで戦ってるんだよ~....」

そう話していると向こうの方から爆発音が聞こえてきた。

 

---

 

「お前らの....お前らのせいでこうなったんだ!....俺の人生も....俺の姉ちゃんの人生も....たくさんの人の人生をぶっ壊した!すべてはお前らのせいだっ!全部、全部、全部、全部、全部!全員俺が倒してやるっ!」

 

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「金のやつ....何やってんだ....!自分の武器が遠距離向きだってのにバーテックスに自分から突っ込んで行ってるぞ....!」

「いつもは後ろで僕らを援護してくれているのに....この数じゃすぐ囲まれて危険ですよ!」

とは言ってもこちらにも数え切れないほどのバーテックスが攻めてきている。

「........!どうすれば....」

迷う涼に対し、祐成が彼の背中を押した。

「ほら、行けよ。今の金を助けられるのはお前だけなんだからさ。ここは俺たち二人に任せとけ!」

「....でもっ!」

「あのままの金だとやられてしまうのも時間の問題です。それでも良いんですか?また後悔することになりますよ。」

そう言って瞬も涼の背中を押した。

「取り戻して来い!涼!また四人でバカみたいにはしゃごうぜ!」

「僕たちは、あなたと金を信じています!」

そう言って二人は、涼を笑顔で送り出した。

「........ありがとう、二人とも!....わかった!行ってくる!」

そうして涼は金のところへ一目散に向かう。

(待っててね....金!君は俺が必ず....!)

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その場に残った二人はこちらにぞろぞろと向かってくるバーテックスの大群を睨みつけた。

「さて!俺たちはこいつらを倒しますか!」

「ちゃちゃっと済ませちゃいましょう!」

 

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「うおおおっ!クソがっ!クソがっ!さっさとくたばれぇっ!」

金は完全にバーテックスに囲まれていた。そんな中でも金はがむしゃらに銃を撃って倒し続ける。

「はぁっ....はぁっ....おりゃあっ!....はぁっ....はぁっ....なっ!?しまった....!後ろか!?」

金は攻撃した隙を別のバーテックス狙われる。が、

 

バシュッ!!

 

襲いにきたバーテックスは突然真っ二つに割れて消えた。

「!!....お前は....!」

「全く~....危なっかしい戦いするんだから~」

涼が一振りでそいつを倒したのだ。

「ちっ........貴様....何の用だ?」

「何の用って....こっちにたまたまバーテックスが見えたから倒しに来ただけさ~!」

涼はそう言いながらまた一体のバーテックスに斧を振り下ろして倒す。

「ふん....邪魔なんだよ....」

金はそう呟いて両手の銃を静かにしたに下ろした。それを見たバーテックスはまたしても金を狙う。しかし、金は攻撃を避けようとしなかった。

(えっ、金!?)

涼は金に攻撃しようとしていたバーテックスを切り倒す。

「金....何してるの~....?」

涼はゆっくり金に近づいて尋ねる。

「....そいつは....俺の獲物だ....」

「えっ.....?」

金は涼を睨みつけ、いきなり彼に向かって発砲した。

「うわっ!!」

涼は思わぬ不意打ちに金の攻撃をまともにくらってしまう。

「お前の助けなんてなぁ、いらねぇんだよ!邪魔なだけだ!そこで寝てなっ!!」

金がそうやって罵声を浴びせる。しかし、涼はなんともなかった。ピンピンしている。

「何っ!?」

驚いた金はすばやく飛び退き、涼と距離をとる。

「ふふふ....残念だったね~....精霊のご加護だよ~!この通りどこも怪我してないさ~満開ゲージは減っちゃったけどね~」

「ちっ........フンッ!....もう勝手にしやがれ!」

「分かったよ~!勝手にさせていただきま~す!」

涼は特に金を説得したり呼びかけるようなことはもうしなかった。いつものように一緒にいて、いつものように一緒に戦う。金に寄り添う。ただ、そうするだけであった。

_________________________

 

「とりゃぁっ!」

「はぁっ!」

一方、祐成と瞬は順調にバーテックスを倒していた。一体も通さず、二人でやりくりしていた。

「はぁ....はぁ....祐成....どうします?この戦いは満開の使い時が試されます....。攻撃を受ければ満開ゲージがなくなって使えなくなりますし、早めに満開すれば満開後が大変になると思います....。さすがにこの数は一回の満開じゃ倒しきれそうにないですしね。」

「........俺は満開を使わない。」

「....えっ?....使わない?この数ですよ!使わないでどう勝とうって言うんですか!」

「....そうだな。」

「『そうだな』って....何を考えて....」

すると祐成は瞬の言葉を遮って話し始めた。

「なあ瞬、さすがにこの数だ....満開中に攻撃をすべてかわすことは不可能だろう....。それに、満開中に少しでも攻撃を食らって、怯んだところを狙われたら一貫の終わりだ。」

「そ、それはそうですが....」

「それにな....俺には夢がある。実家を継いでうどん屋になるっていう夢がな....。それだけは譲れねぇ。俺の小さい頃からの目標なんだ。だから....こんなところでくたばってたまるかってんだ!まだこの後にも最後の侵攻があるし、精霊のご加護がある今の姿のまま戦った方が勝機がある!」

「.........あはは....こればかりは祐成の言う通りかもしれませんね....。わかりました....僕も満開はしません!」

「へへっ!そうは言っても気をつけろよぉ?満開ゲージがゼロになれば満開してる時と変わらないってことなんだからな!」

「もちろん....重々承知ですよ!」

瞬と祐成は背中を合わせる。

「よし、それじゃあ戦い再開だっ!」

「はいっ!」

 

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-

 

金と涼が一緒に戦い始めて数時間が経過しようとしていた。少しずつバーテックスの数が減ってきているように感じる。

「はぁっ.....!はぁっ....!クソっ!おらぁ!とりゃっ!....はぁっ....!はぁっ....!」

二人ともかなり体力を消費しており、満開ゲージも残りわずかだ。この二人も瞬と祐成同様、満開を使っていなかった。

「くっ....!....くたばりやがれぇぇぇっ!ふっ....どうだ....!」

金が一体のバーテックスを倒す。しかし、後ろからまたバーテックスがやってくる。金はギリギリでそれに気づいたが、それをかわす体力は残っていなかった。

「はっ!!ぐわあっっ!!」

金がその攻撃を食らい、遂に満開ゲージがゼロになる。

吹っ飛ばされて地面に転がり、自身の満開ゲージを見る。

「や、やばい....やばいぞ....ついになくなっちまった....次攻撃を食らったら俺は........なっ!?あぁっ!?」

金が満開ゲージに気を取られていると、背後にいつの間にか大量のバーテックスが金を狙って攻撃体制に入っていた。もう避けられない、防げない。何をしても間に合わない。青白い光線が一斉に金に向かってくる。金は死を覚悟した。

_________________________

 

瞬間---

 

金の目の前に一つの人影。それは彼の目の前で大の字で立った。彼を守るように、自らの身体を呈して。そして、バーテックスの無数の攻撃が飛んでくる。

 

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---

 

「....ぅ!....ょう!....涼!」

金の呼びかけで涼は目を覚ます。金を守ったのは涼であった。涼は自分の満開ゲージがゼロギリギリだった状態で金を守ったため、あの量の攻撃をまともに受けた涼は当然、大ダメージを負った。涼の目の前には涙をボロボロ流している金の顔があった。涼は金の手に抱かれ、彼の膝に寝ていた。

「....良かった........無事........みたい....だ....ね....しかも........いつもの........金だ~.......」

涼は傷だらけの顔で微笑み、そう言った。金の手と足に大量の血液が付着する。すべて、涼の血液であった。

「ごめんね........金........お....れ........も....う....だめ........みたい........」

「何言ってんだよっ!涼!!」

金の悲しそうな顔を見ながら、涼自身も涙を流してそれでも笑顔で、一生懸命話す。

「ねぇ........き........ん........楽しかったよね~........カラオケ行ったり........ボウリングしたり........祭りとか........保育園行ったりとか........すごく............楽しかった~........東郷先生たちが来てから........もっと部活が........賑やかに........なった....よね~........とても........充実した........毎日........だった....」

「おい!!しっかりしろ!涼!!」

今にも目を閉じそうな涼を、金は彼が眠らないように激しく彼の体を揺らす。

「ふふふ........瞬と........祐成と........東郷先生たちに........よろしく........ね........」

「だめだ........だめだっ!涼!お前は絶対に俺が死なせないっ!!」

涼は力を振り絞って金の手を握り、こう言った。

「き........ん........最後に言いたいことがあるんだ~........君に会えて........よかった........金のおかげで........俺の人生は........とても....とっても........楽しかったよ....!!........き........ん........は........最後まで........生き残るんだよ......!......あとの........世界は........任せたよ~........俺の........一番の........親友........さ....ん............」

涼はそう言うと、ゆっくり目を閉じ、金の手を握っていた彼の手が、すっと下に落ちる。力が抜けたのが明確に分かった。

「涼....?涼!!おい、涼!!涼っー!!!」

金は何度も彼の名を叫ぶ。何度も激しく彼の体を揺らす。それでも何も返ってこなかった。何も反応がなかった。ただ、ぐらぐら首が動くだけであった。

「おい........涼....!涼ってば....!返事....してくれよ....頼むから........いつもみたいに元気に返事してくれよっ!!」

金の大粒の涙が涼の頬に落ちる。

「ぁぁ........ぅぅ........うわあああああああああああっ!!ああああああああぁぁぁぁぁっ!!うああああああああっ!!」

金は涼の体に顔をこすりつけて泣いた。それでもなにも反応は無かった....。金の悲しみの叫びが樹海に響く。しかし、そんな悲しみなど関係なしにバーテックスたちは容赦なく金に近づいてくる。気配を察知した金は涼をゆっくりと地面に寝かすと、涙を手で拭い、二丁の銃を手に取った。

「はぁっ....!はぁっ....!お前らは絶対許さない....!....俺の親友に指一本でも触れてみろっ!俺がお前たちを死ぬより恐ろしい目に合わせてやるっ!....ここから先は........通さないっ!!」

_________________________

 

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-

 

「はぁっ........!はぁっ........!くっ....!」

金は涼を背負い、祐成たちがいる方向へと進む。

(さっき........白い光が大きく輝いたのが見えた....あれは間違いなく祐成の光だ....!それから爆発音も聞こえなくなった....つまり、祐成たちは勝ったんだ!あの光の一撃で!早く祐成たちと合流しなきゃ....!きっと祐成と瞬もかなりのダメージを受けているはず....!)

金の体もボロボロになっていた。あの数を一人で相手したのだ。それでも金はペースを落とさずに走る。本来なら、倒れてもおかしくないほどのダメージ量。しかし、金は決して立ち止まらなかった。ここで止まったら何もかも壊れる、そんな気がしたからだ。

「はぁっ....はぁっ....うっ....がはっ!!」

金は血を吐き出す。戦闘中、切り札を何回も放ったからであった。その反動に体が耐えきれず、内臓がぐちゃぐちゃに破壊されていた。

「ぐっ....はぁっ....はぁっ....!ダメだ....まだ倒れるな、こらえろっ!三ノ輪金太郎っ!進め、進むんだ....!」

 

金はやがてら祐成たちが戦っていたと思われる場所に到着する。金は端末を見て、祐成たちの位置へと足を進める。

「ひどい....まるで月面だ....クレーターみたいのが樹海にいっぱいできてる....!こっちの戦いもやっぱりかなり激しかったみたいだな....。おーい!!!祐成ー!瞬ー!どこにいるんだ~!!」

体のそこら中がズキズキと痛む中、金は二人の名を叫び続ける。そして、数多くあるクレーターの中でもとびきり大きなものを見つける。金はそのクレーターの中をおそるおそる覗いた。

「あっ....!祐成!瞬!」

大きなクレーターの真ん中に二人が倒れている。

「大丈夫かっ!?」

金はクレーターを駆け下り、二人に近づく。そこで、ある異変に気づいた。....なにかが、おかしい。

「........えっ....?....嘘....だろ....。」

金はさっきまで走らせていた足を緩め、ゆっくりと歩き始めた。

「....そ....そ....んな....祐成....?瞬....?」

遠くからでは分からなかった。ここまで近づいてやっとわかった。二人が今、どんな状態なのか。

金の目の前に倒れていたのは残酷にも、無惨な姿になった祐成と瞬であった。

「........お....おい....二人とも....」

樹海に祐成のレイピアが一本刺さっている。もう一本は折れて転がっていた。瞬に至っては左足がまるごと無くなっていた。二人ともピクリとも動かず、主に白を基調としていた勇者服は全身、真っ赤に染まっていた。

「........こんな....こんなことって........俺の....せいだ....!俺があの記者の言葉なんかで....おかしくなって....そなせいでみんな....俺を....助けるために........。........みんなで協力して戦っていればこんなことにはならなかったはず....!........俺が....涼と....祐成と....瞬を....。」

金は力が抜けて膝を地面につく。

「........ぁぁ........うわあああああああああああっ!!ああああああああっ!あああああああっ!うわああああああああっ!!あああああぁぁぁぁっ!うわああああぁぁぁ~........!ぁぁぁぁぁ~........!」

悲しみや怒り、後悔。金の様々な感情が混ざった叫びがまた樹海に響く。それ以外に聞こえる音はなにもない。ただただ、この叫びを静寂が包み込むだけなのであった。

 

(第18話に続く)

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