三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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独りになった勇者

 40.独りになった勇者 

 

あの戦いから一週間が経過した。しかし今もなお、テレビや新聞などでは勇者の話題ばかりだ。一方、四国新聞は社員の一人がインターネット上で偽の情報を流し、一人の少年に暴行を加えたとしてその社員を解雇、謝罪した。後にその社員は逮捕される。一方、大赦は会見を開き、これまで隠していたことを謝罪。そして現在の状況やなぜこのような事態になったのか、すべて包み隠さず公表した。四人いた勇者が、一人になってしまったということも....。

金は迷惑をかけた人々に謝り、改めて勇者として戦うことを決意する。問題を起こしてしまった金は一般市民に理解してもらうため、慈善活動を行い始めた。だが....なかなかうまくはいかなかった。ネットでのイメージが人々の頭に定着してしまっていたのだ。

 

この日、金は一人で部室にいた。あの侵攻以来、東郷は学校に来なくなってしまっていた。金はストレスの溜まりすぎが原因なのか、鬱状態になりかけていた。彼の目には光がない。以前のような明るい金はいなかった。金は部室の隅にある花瓶に入っている水を変え、三色の花を入れた。

「こんにちは~!今日も来たよ!金太郎くん!」

そう言って部室に入ってくる人物が一人。金は完全に一人というわけでもなかった。あれから毎日、友奈が部室に来てくれる。

「....友奈さん、毎回言ってますけど今の勇者部には一つも依頼が入っていないんです....。何もすることはありませんよ....。せっかく友奈さんたちが築き上げてきた勇者部の信頼も....すべて俺が壊しちゃったんですから....。」

金が小さい声でそういうと、友奈は金に近づいて、

「じゃあ、いつものようにこうするだけだね!」

彼の隣に座った。友奈はただ、毎日毎日金の側にいるだけであった。そんな友奈を気にもせずに、金は端末を取り出してイヤホンを耳につけて音楽を聴き始める。

「ねぇ~ねぇ~、いつも何聴いてるの?」

友奈の問に、金は久しぶりに少し微笑んで言った。

「....この人の曲はですね....聴くととても勇気が沸くんです....。元気が出るんです....。今のような時でも....少しだけ。」

「私も聴いてもいいかな?」

「........どうぞ。」

金はそうとだけ言って片方のイヤホンを友奈に渡した。

「あっ....この曲....」

「友奈さんも知ってますか?まぁ、有名な曲ですもんね。」

「フフフッ....」

「?....なんで笑うんですか?」

「フフッ....なんでもないよ~」

「なんですか~?気になるじゃないですか~」

「なんでもない、なんでもない!」

 

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-

 

時は経過し、学校が閉まる時間になった。金はいつも帰り際に友奈に預けるものがあった。

「じゃあ今日もこれ....お願いします....」

彼は友奈に花束を三束渡す。

「はは........すみませんね....まだ....勇気出なくて....この事実を....受け止められなくて....。」

金は下を向き、爪をいじりながら言う。

「別に大丈夫だよ、金太郎くんっ!少しずつで大丈夫!」

「........ありがとうございます....それでは....また明日....。」

「じゃあね~!」

友奈は金と別れ、学校を出ると金から預かった花束を持ってある場所へ向かった。

 

 

 

 

三ノ輪家

「お~い、金~!夕飯出来たぞ~」

「ごめん兄ちゃん....俺、食欲ないんだ....。」

「........お前、ここ最近ずっとそうじゃないか。しっかり食べないと体が持たないぞ」

「........。」

「....金、ちょっとこっちに来てくれ。」

鉄男は金を呼ぶと向かい合って座るように促す。

「俺な、今でも姉ちゃんが死んだときのことをはっきりと覚えてるんだ。昨日のことのようにな。」

「........本当に....ごめん....。勇者のことを兄ちゃんにまで内緒にしていて....」

鉄男の話から、金は鉄男の心の中を先読みして謝った。鉄男は弟まで同じお役目で失いたくないと思っている。だから勇者のお役目をやっていること内緒にしていた金太郎に対して怒っているわけがないと思ったからだ。しかし、

「それは大赦の人たちから言われていたんだろ?勇者のことはたとえ家族であっても言っちゃいけないってさ。それはしょうがないさ。」

鉄男の反応は軽いものだった。思っていることを心の内に隠している感じもない。

「........そうだけど....」

金はそれでも謝ろうとするが、

「さっきの話しの続きをするぞ。」

鉄男が強制的に切り上げて話題を元に戻した。

「........うん。」

金は大人しく鉄男に従うことにする。

そして、鉄男が重い口を開けてゆっくりと話し始めた。

「俺な、姉ちゃんの葬式でいっぱい叫んだんだ。なんで死んだのがよりによって俺の姉ちゃんなのかって。今でもときどき夢に出てきたりして思い出すんだよ。....姉ちゃんと一緒に過ごした日々を。」

「........。」

「もちろん、お前が勇者をしていると聞いて怖くないと言ったら嘘になる。お前が姉ちゃんと一緒の運命を辿ることになっちゃうんじゃないかって思ったら体の震えが止まらないさ。俺の大切な兄弟がまた勇者のお役目で死ぬなんて....そんなの絶対嫌だ。........でもな....俺はお前を信じてる。お前ならきっと、一人だとしてもお役目を最後まで果たせるって。」

「........兄ちゃん....」

金はそこでやっとわかった。鉄男は金太郎のことを信じている....。だから鉄男は何も隠していないと感じたのだ。今の鉄男はとても潔かったのだ。

「お前の体は....お前だけのものじゃないんだ。お前のことを大切に思っている人がたくさんいるんだ。そのことを絶対忘れちゃダメだぞ」

「........ごめんよ、兄ちゃん....ありがとう....!わかったよ....!」

 

---

 

夏凜宅

「くっ....!なんで完成型コーチである私が写真を撮られていたことに気づかなかったのかしら....それさえ気づけていればこんなことには....!」

「いや、違うわ。夏凜ちゃん。私が最初に言わなかったからよ、今の勇者システムではバーテックスを根絶できないということを....きっと、あの記者に会わなくても四人はこのことで心が乱れて、似たような結果になっていたと思うわ....。」

東郷は夏凜の家に訪れていた。東郷は金たちの教師として、大赦の巫女として今のこの状況を打破するべく、様々な行動をとっていたのだ。

「........くっ....私たちは....どうすれば良かったのよ....!どうすれば彼らを救えたの....?」

夏凜は険しい表情を見せ、床を殴った。

「きっと....こうなることは私たちがどうやっても避けられなかったと思うわ。これは....勇者になったら避けられない、運命なのよ。」

 

-----

 

二日後。金は学校の帰りに病院へ寄っていた。前回の戦いで金もかなりの負傷をしていたため、通院しているのだ。

金は診察と検査を終えると病院を出ようとしたところで友奈に会う。

「あっ....友奈さん....」

「おっ!偶然だねー!もうすっかり暗くなっちゃったよね~冬は夜が来るのが早いよーうぅ~....寒い....寒い....」

「大丈夫ですか?友奈さん....病院に来たってことは風邪でも引いたんですか....?」

「あぁ~違うよ!私は元気だよ~!....金太郎くんも本当はなんで私が病院に来たのか分かってるんでしょ?」

「........。」

「フフッ....当たっちゃった?」

友奈は微笑みながら上目遣いでそう聞いた。

「全く........友奈さんには敵わないなぁ....。」

金は友奈に聞こえない声でそう言い、

「じゃ、じゃあ俺帰りますね!」

と言い直してすぐにその場から離れようとする。しかし、友奈が病院を出て行こうとする金の手を絶対逃がさないとでも言うように掴んだ。

「そろそろ....会いに行ってあげたら....?」

「でもっ....!俺は....!!」

「金太郎くん....本当はすごく会いたいんでしょ?三人もきっとそう思っているよ!」

「........。」

金は断りきれなかった。完全に心の内を読まれていた。金はそのとき、こういう面がある彼女だからこそ、昔彼女は勇者に選ばれたのだなぁ、と感じた。

そのまま友奈に連れられ、ある病室へと入る。そこには合計六個のベッドがあり、カーテンがしまっている奥のベッドへと向かった。

(........!)

金は緊張しながらそこに近づく。そして友奈がカーテンをゆっくりと開けた。そこには金の大切な友達が横たわっていた。幸せそうな顔で眠っている。

「くっ........ぅぅ........」

金は久しぶりに見た友達の顔を見ると表情を歪め、唇を強く噛んだ。彼の目の前には二つのベッドに二人の少年が横たわっていた。

 

涼と瞬だ。

 

まだ意識は戻っていない。未だに昏睡状態が続いていた。涼と瞬は かろうじて一命を取り留めていたのだ。涼と....瞬は.......。

 

(第19話に続く)

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