三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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純白の勇者

 

 41. 純白の勇者、華麗に散る! 

 

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『これは、涼と金太郎のやりとりが繰り広げられていた中、残りの二人の勇者が世界を守るために行動した、古波蔵 瞬しか知らないもう一つの戦いを描いた物語である。』

 

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「くっ..........うぅぅ........」

「瞬!大丈夫か!」

「祐成も気をつけてください....あ、あいつの飛ばしてきた毒針が....足に刺さったみたいです....」

「あっ....!本当だ....大丈夫、任せろ!」

祐成はそう言って瞬の左足に刺さっている針をレイピアでとった。これまでの戦いで負ったダメージにより、二人の満開ゲージはもうない。すなわち、精霊バリアは発動せず、ほとんど生身の状態である。祐成と瞬は暴走している金の元へ向かった涼の帰りを待ち続け、ひたすら戦っていた。

「はぁ....はぁ....ありがとう....ございます....」

そんなことをしているうちにバーテックスたちが瞬と祐成を囲む。二人は数時間以上戦っていたがバーテックスは一向に減る気配がない。瞬は足を無理やり動かし、なんとかして立ち上がると、二人は背中を合わせて言った。

「瞬!....まだまだ行けるよな?」

「当たり前です!祐成!」

「よし、行くぞ!」

 

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数分後---

「はぁっ....はぁっ....祐成....ちょっと....助けてください....」

「........!大丈夫か!?瞬!!」

祐成は様子がおかしい瞬に駆け寄る。

「さっきから....めまいがして....左足が....うまく....動かないんです....」

「どれ、見せてみろ!」

祐成は瞬のズボンをまくる。

「なっ!?これは....!?」

瞬の左足の股の下からつま先まで紫色に変色していた。

「そ、そんな....!?どうして....!」

祐成は困惑する。

「おそらく....先ほどの毒針の影響です....。しょうが....ないですね....こうなってしまっては....祐成!僕の足を....そのレイピアで....断ってください!」

祐成は一瞬、瞬の言ったことが理解できなかった。が、すぐに我に戻り、

「!?........お前....何言ってんだ!!!俺にそんなこと....」

と叫んだ。が、

「このままだと....僕はこの毒が全身にまわって死ぬでしょう....?それでもいいんですか!生きられるなら、足の一本くらい軽いもんですよ。」

瞬の覚悟はできていた。なぜこんなに早く覚悟を決められるのか。........いや、彼は勇者になったときからすでに覚悟していたのだ。こうなることも、いずれあるだろうということを。

「........くっ....!わかったよ........くそっ....!ぅぅ....ぅ....ごめん....ごめんな....瞬....!うおおおおおおおおおおっ!!」

祐成は瞬が苦しむ時間を少しでも減らすために勢いよくレイピアを縦に振る。そして瞬の左足は赤い血を巻き上げながら空中に吹っ飛んだ。

「ぎゃああああああああああああっ!!!!うわあああああああっ!!!!くっ....うぐぐぐぐぐぐぐ....!!ぁぁぁぁぁ........ぁ....ぁぁぁ........!」

瞬の血が円形の傷口から大量に吹き出し、祐成の体にふりかかる。

「........ぅぅ....瞬...」

祐成は瞬のことを見ることができなかった。ぎゅっと目を閉じる。

「くはぁっ....!くはぁっ....!だ....大丈夫で....す....これくらいの....痛み....へっちゃら....で....す....から....」

そんなわけないはずなのに。普通なら耐えられるはずのない痛みなのに。この言葉を聞いた祐成はバッと目を開き、すばやく瞬の勇者服を破り、足の止血をする。

「死ぬなっ....死ぬなよ!瞬!!」

「はは....これくらいで、大げさですよ....。はぁっ....!はぁっ....!まだ....まだ戦えますよ....!」

瞬はそう言ってブーメランを投げた。

 

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また数時間が経過する。

「はぁっ....はぁっ....はぁっ....あと....少し....う゛っ....がっ....!」

バーテックスの数も残りわずか。だが、切り札の多用で体への負担が大きかった祐成は思いっきり血を吐き出した。もう祐成はとっくに限界を越えていた。

「ゆ....う....せ....い....」

今にも途切れそうな、祐成を呼ぶかすれ声が聞こえる。

「....!!瞬!」

もちろん、限界を超えているのは祐成だけではなかった。

「も....もう....僕は....ダメです....体が動かなく....なって....きました....出血量もひどいです....めまいと....吐き気と....こんなに怪我してるのに痛みすら....もう....感じないんです....」

「瞬....!」

祐成は瞬に近づくと、樹海に寝そべっている瞬を抱き上げる。

「ゆ....う....せい....僕....怖い....です....いざ死期が近づいてくると....こんなにも....怖いです....国のためなら....人のためなら....と、思ってきましたが....実際に....体験してみて....死というものは....こんなにも恐ろしい....」

「瞬!!大丈夫だ!しっかりしろ!俺がついてる!お前は一人じゃない!」

「........ずっと....そばにいてくれますか....?」

「ああ....『やくそく』だ....!」

祐成はそう言って瞬の手を握る。瞬は安心したのか、すこし微笑んだ。しかし祐成は....。

「........なんてな。残念だけど....『やくそく』はできない。」

「えっ....なぜですか....!」

「お前は....生き残るからさ!」

祐成はそう言うと瞬を地面に寝かせ、ゆっくり立ち上がり、二本のレイピアを取り出して残りのバーテックスの方へ振り向いた。

 

 

「それって....それってどういう....ことですか....!」

「瞬、お前は生き残るべき人間だ。勇者としても俺よりも強い....俺がここでド根性見せてあいつらを倒して、お前が生き残った方がいいんだ!」

「なにを言っているのか....わかりません....僕の現在の体の状態を伝えたでしょう....?僕はもう....助からないんですよっ....!」

「いや、お前は絶対に助かる!俺がそう断言するっ!」

祐成は謎の自信を持っていた。その気迫に瞬は押され、

「........!仮にそうしたとしましょう....でも....今、祐成は僕だけが生きて帰れるみたいな言い方したじゃないですか....。それは....どういうことですか....?」

「........。」

祐成は黙る。彼は依然、瞬に背を向けたまま残りのバーテックスを睨んでいた。

「....祐成っ!僕を一人にしないでください!!一緒に....一緒に帰りましょう....?」

瞬は今にもなくなりそうな意識をなんとか保ちながら必死に訴える。だが、

「........大丈夫だ....瞬。お前は一人じゃない。じきに涼が金を取り戻して帰ってくるさ!」

「祐成っ....!」

「瞬。....俺はもうとっくに限界を超えてるんだ....残りのバーテックスも中型数体と....さそり座のバーテックスだけ....」

「....!!祐成っ!危ない!」

祐成たちが話をしている間にいきなり中型バーテックスが一斉に飛びかかってきた。

「はあぁぁぁ........おりゃぁっ!」

祐成は切り札を使って中型バーテックスを一掃する。が....

「くっ........はぁっ....はぁっ....はぁっ....うぐっ....おげぇ....ぐはぁっ....」

祐成は地面に両手をつき、口から大量の血を吐き出す。

「祐成....!やめてください....もうこのままだと、あなたの体がもちません!涼たちを待ちましょう!」

「無理だ....もう....時間がない....やるしか....ないっ!!」

「祐成ー!!ダメです!」

「瞬....お前は頭がいい....俺とは真反対だ....このお役目が終わったら...将来きっと、社会の役にたてる....!」

「祐成っ!ダメって言ってるでしょう!!僕が....許しませんよ....!」

瞬は残った右足で精一杯地面を蹴り、祐成に急接近して彼の足を掴んだ。

「離しませんよ....絶対に....離しませんよっ!」

すると祐成はゆっくり振り返り、笑顔で瞬にこう言った。

「瞬。....最後くらい....俺にも良いところ、見せさせてくれよ。」

「........!」

その言葉を聞いた瞬は思わず力を抜いてしまう。そして、それを見逃さなかった祐成はサッと足を引っこ抜き、バーテックスに向かって言った。

「さそり座のバーテックスよ!我が名は須藤 祐成!偉大なる勇者である!これから俺がお前を....地獄に葬ってやるっ!........そして........俺も華麗に、散らせてもらおうっ!」

そうして、祐成はバーテックスに突っ込んで行った。

「ゆ........う....せい........!」

瞬は涙を流す。何もできない自分を恨んだ。目の前でどんどん祐成が傷ついていく。地面にレイピアを突き立てながらも、なんとかして立ち上がり、自分よりも数十倍でかい怪物に向かっていく....。まさに彼は、根性で体を動かしていた。

(........ぅぅ....くっ........ぅぅ........ぁぁ....祐成........)

瞬はもう声すらも出せなくなっていた。目もかすみ始めてよく見えない。

「はぁっ........はぁっ........へへっ....やるじゃ....ねぇか....!けどな!ここでやられるわけにはいかねぇんだよ!お前たちなんかに....世界を滅ぼされてたまるかっーー!!」

祐成が真っ白い光を放つ。まさに、これが祐成の最後の力だった。まるで太陽のように明るく、白かった。

(........ぁぁ........ゆ........う........せ........い............)

そこで瞬の意識はとぶ。

そして、祐成はレイピアを構えて大きく飛んだ。

「これが........最後のチャンス!これが俺の........最後の切り札....うおおおおああああっ!! ド 根 性 っ ー ー ー ! ! ! ! 」

祐成の勇者服の胸にある水晶にひびが入る。辺り一帯は白い光に包まれた。やがて、それは嘘だったかのように消えた。

 

 

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六回目の侵攻から二日後。あれから毎日大雨が降り続いている。この日は多くの人が喪服を着て、葬式場に集まっていた。もちろん、泣いている人ばかりだ。奥には微笑ましい笑顔で写っている少年の写真が多くの花に囲まれ、置かれていた。その下には一つの箱がある。

「なんでっ....!なんで祐成なのよっ!うちの息子は何も悪いことしてないじゃない!....むしろ....とてもいい子だったのに....」

「『将来はおとうさんの店を継いでもっと繁盛させてみせる』とか....生意気なことばっかり言って....まだまだ....あいつの味は全然のくせによ....あいつが一人前になって作る....うどんが食べたかった....。」

そう泣き叫んでいたのは祐成の両親らしかった。式場に来ていた金は後方の席からその様子を静かにみていた。

「ねぇっ!なんとかいいなさいよっ!あんた、大赦の偉い人なんでしょ!ねぇっ!ねぇっ!」

祐成の母が、仮面を被った風の肩を揺らして詰め寄る。

「........申し訳....ございません....」

「........謝って....済むことじゃないでしょ....!」

「ただ....私たちがどうしようとも....もう祐成くんは帰ってきません。もうどうにも....なりません....!」

「ううう........ああああああっ~!わああああっ~!!」

祐成は須藤家の一人息子であったという。両親にとってたったひとりの息子。小さい頃から家業を手伝い、なんにでも熱心に取り組んでいたという....。金には両親がいかに祐成を大切にしていたか痛いほどわかった。金も祐成のことを大切に思っていたから。

 

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やがて祐成との別れの時がやってきた。一人一人、彼が入っている箱に近づき、最後のあいさつをする。夏凜は祐成の眠った顔を見たとたん、流していた涙の量が増える。

「....バカっ........あんたって....ほんとバカよ....なに死んでるのよ......ふざけんじゃないわよっ!....死んだら....もう....どうにもならないじゃない....!....あんた....私たちにうどんをご馳走させるんじゃなかったの....?あんたの家、継ぐんじゃなかったの....?........ほんとに....最期まで........ぅぅ....ぅぅぅぅぅ....!」

次は園子が前に出る。

「ゆうくん。....ゆうくんはいつも....みんなを楽しませてくれてたよね。....本当に....ありがとう....。....私たちみんなで....今の勇者たちを守るって....約束したのに....守れなくて....ごめんね....」

その次は友奈が。

「........祐成くん....みんなを....瞬くんを守るために....頑張ってくれたんだね.....あなたが頑張ったから....瞬くんは助かったよ....祐成くんは....立派な....勇者....だよ....!ぅぅぅ....ぁぁぁ....」

風はみんなの様子を仮面ごしから見ていた。もちろん仮面をつけているから表情は分からない。だが、風の拳は強く、強く握られていた。

「........そんな....なんで....くっ....!....祐成くん....あなたは....元気で....面白くて....常に明るかったわね....ぅぅ....ダメよ....こんなの....私....到底信じられないっ....!こんなの....現実だなんて....思えないっ....!」

東郷はどうしても現実を受け入れらないようだった。友奈が泣き崩れる東郷の背中をさすり、一緒に泣いていた。そして、金の順番がやってくる。

 

 

 

金は箱の中を恐る恐る覗く。

「........あ....」

樹海で見た祐成とは全く違う顔をして目を閉じていた。傷だらけだった顔が綺麗になっている。とても気持ちよさそうに寝ている....金はそう思った。そして、ゆっくりと手を祐成の頬に当てる。

「........あああ........ぁぁ....」

金の体は小刻みに震え始める。金の目から涙がこぼれてくる。祐成の顔は氷ではないのかと思うほど冷たかった。金は祐成が本当に死んだのだと実感する。

「........祐....成.....ごめんな....俺が変になっちゃったから....お前を....死なせるなんてことに....!ごめん....ごめんっ....!........お前は....変わったよな....最初は戦うことさえ怖がってたのに....瞬を救うために....命を懸けた....!すごいよ....祐成は........お前と過ごした毎日は....すごい楽しかったよ....ぅぅぅ....いろいろ俺にちょっかい出してきたりさ....いつもふざけたり....調子乗ったり....なんど怒られても懲りなくて....頭が悪くて....自慢して....態度がでかくて............」

金はもう傷が治ることのない祐成の頬を撫でる。

「でも........祐成は....勇者部の太陽みたいな存在だった....いつも....いるだけで雰囲気を明るくしてくれて....みんなを....照らしてくれていた。........祐成は普段あんなことばっかりしてるけど....本当は人のことを思って行動できる、熱いプライドを持った、正真正銘の勇者だよ。....本当に....ありがとう....君に会えてよかった....!」

金は歯を食いしばって言いたくなかった言葉をはなつ。

「祐成........さようなら....」

金はそういい残すとそこから離れた。

「........ぅぅぅ....ぁぁぁぁ....わあぁぁぁぁ........」

ゆっくりと彼から離れていく。そして静かに泣く。拭いても拭いても出てくる涙を一生懸命手で拭うのであった。

 

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翌日。

祐成の名は歴代勇者と巫女たちが眠る墓地に刻まれる。金はこの場にはいなかった。

東郷と園子は墓標を見つめながら話す。

「まさか....銀の隣に祐成くんが行くことになるなんてね....しかも....今日は銀の誕生日だっていうのに....複雑な気持ちだわ....」

「私たちにとっても....ミノさんにとっても....今日は良い日になるはずだったのに....最悪な日になっちゃったね~....」

「銀....そちらに祐成くんが行くわ....よろしく頼むわね....」

 

金は自分の家から空を見ていた。今でもはっきりと、昨日祐成の頬を触った感覚が蘇る。祐成は遠くに行ってしまったのだ。もう一生会えない....。

これから自分に出来ることは....祐成が守ろうとしたこの世界を、最後まで守ること!お役目を果たすこと!金は再び心に誓う。

 

 

須藤 祐成 死亡

 

(第20話に続く)

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