三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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勇者として

 

 ⑥鍛練 

 

三人は朝早くに中学校の校門の前に立っていた。

「みんな~....おはよう....」

「....!!おぉーー!涼!もう大丈夫なのか?!」

金が真っ先に駆け寄る。

「金たちが帰った後、すぐに目が覚めたんだけどさ、あぁ、体はもう大丈夫なんだけど東郷先生に勇者のことについて夜中まで話されて....寝不足だよ~」

瞬も祐成も苦笑いしているが、どこかうれしそうであった。

「みんな!おはよう!」

「東郷先生!おはようございます!」

四人そろって挨拶する。東郷は全く眠そうな雰囲気を出していなかった。

「多分夏凜ちゃん、もうすぐ来ると思うわ」

「諸君っ!おはよう!」

金たちが後ろを振り向くと朝日を背にして仁王立ちする夏凜が立っていた。

「か、夏凜さん....?おはようございます」

「声が小さーい!あと、わたしのことは『夏凜コーチ』とお呼びなさい!」

「はっ、はいっ!夏凜コーチ!」

四人は気をつけをして夏凜に挨拶する。

「よろしい。では私についてきなさい。」

夏凜は海へ向かっていき、砂浜に着いた。

「じゃあみんな頑張ってね~」

東郷はそう言い残してどこかに行ってしまった。

「ここは大赦の敷地内よ。ここならどれだけ暴れても一般人には聞こえないし、しごき放題....」

四人の顔が青ざめる。

「か、夏凜コーチ、それで今日やる鍛練の内容は....?」

涼が恐る恐る聞く。

「そうね....まずはウォーミングアップとして体操してからざっと一時間走り込みね」

「えぇーー!」

四人で声を合わせて叫ぶ。

「なによ、最初のうちは軽くしておかないとケガするわ。それとももっときつい方がいい?」

「いやいや、充分ですぅ!ていうか充分すぎですっ!」

祐成は勘弁してくれという感じでツッコむ。(これからどうなっちまうんだ....?)金は不安でたまらなかった。

 

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(僕たちはあの後、腹筋、腕立て、タイヤ引き、それぞれの武器にあった部位の筋肉強化などを嫌というほどやらされ、あっという間に時間は流れ、体はヘトヘトになってしまった)

「うーん....今日は初めてだからこのくらいにしときますか....」

「こ、このくらいって....夏凜コーチ....きつすぎますよぉ....」

「こらっ祐成!弱音を吐かない!まだやらせるわよ!」

「ひいぃぃ~!すみませんでした~」

「夏凜コーチも....ぼ、僕たちと....同じメニューをやったはずなのに全然ばててない....さすが元完成型勇者....」

瞬が夏凜を尊敬した目でみる。

「そうでしょ?完成型勇者はただ一人....この三好夏凛だけなんだから!」

夏凛が鼻を高くする。

「夏凛コーチも....このくらいで気分をよくするなんて....『チョロい!』ですね....」

金が夏凛をいじる。

「な、なによー!バカにしてるのー!」

夏凛の反応を見て四人は笑う。

「よーし!これから頑張るぞ~!」

金が立ち上がった。

「俺だって~!」

「僕も....これしきのこと....我が国の軍隊に比べればチョロいもんです!」

「あぁ~!こうなったらやってやら~!」

「そのいきよ!みんな!これくらいでバテてたらこれからの戦いで生き残れないからね。どんどんハードル上げていくわよー!」

「おー!!」

五人で拳を突き上げる。夕日が砂浜に立つ五人を照らしていた。

 

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 ⑦歓迎会! 

 

今日は午前中で授業が終わり、部室でお弁当を食べていた。

「さて、昼ご飯も済んだことだし、今日の活動内容をお願いします!部長!」

「いいでしょう、祐成くん。今日の活動内容は........東郷先生の歓迎会で~す!!」

「わ~~!♪」

祐成、金、涼が拍手で盛り上げる。

「えっ?私?」

東郷はきょとんとしている。

「そうですよ!いろいろバタバタしてましたし」

「改めまして!古波蔵 瞬です!」

「須藤 祐成ですっ!」

「難波 涼で~す!」

「三ノ輪...金太郎です!」

「........!みんな....よろしく!東郷美森よ!」

「よ~し!自己紹介も済んだし、それじゃあさっさく行きましょー!」

祐成は真っ先に部室を出て行ってしまった。

「それで....どこに行くの?」

東郷が聞き、瞬がすかさず答える。

「僕たちの行きつけのボーリング場とカラオケボックスです!」

 

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「よっしゃ~!ストライク!」

金が両手でガッツポーズをする。

「金はボーリング得意だからね~」

「でも....東郷先生もすごいよ....」

東郷と金は今のところ三連続ストライクである。

「もう....プロの戦いですよ、これは....周りの人も集まってきてますし....」

三人が辺りを見回すと二人の戦いを見る人だかりができている。

「やりますねぇ....東郷先生....」

「金もやるじゃない....」

「うおぉぉぉ~!バチバチだ~!」

祐成が興奮している。

「どうなるんだ....この勝負....」

三人は前かがみになって二人の勝負を見守る。

-

-

-

「くっそーー!!悔ちい悔ちいぃー!!」

金が駄々っ子のように足をバタバタさせている。

「東郷先生....結局全部ストライク....」

「もう....プロも顔負けです....」

祐成と瞬が引き気味に言う。

「でも....ひさしぶりに熱くなれたわ!良い勝負をありがとう....!」

「えぇ....でも次は負けませんよっ!」

二人は熱い握手を交わす。

「ライバル登場だね~!金!」

涼がうれしそうに金と絡む。

「次はカラオケね!行きましょう!」

東郷がさっさと歩き出す。

「いつの間にか東郷先生が前を歩いてる....ちょっと待って~!僕たちがいつも行ってるカラオケボックスどこにあるか知ってるんですかぁ~!」

金はそう言いながらみんなで東郷のもとへ駆け寄って行った。

 

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「な、なんで僕達の行きつけのカラオケボックスが分かったんですか!?」

金が驚いて東郷に聞く。

「この辺でカラオケボックスと言ったらここが王道だからね♪」

金たちはカラオケボックスへと入り、それぞれの十八番を歌い始める。

~♪~♪

(はっ!この曲は!)

「私が入れた曲!」 「僕が入れた曲!」

東郷と瞬が同時にそう言って立ち上がる。

「この二人、どこか似ているって思ってたけど趣味まで一緒とは....!」

「ってことは....面倒くさくなるなぁ....」

金と祐成が顔を見合わせながら話す。

「もしかして....東郷先生も....!!」

「もしかして瞬くん....!!」

二人はキラキラした目で見つめ合い、手を取り合う。

「東郷先生....」 「瞬くん.....」

『一緒に歌いましょーー!!』

((やっぱりこうなった~!))

金、祐成、涼が考えていたことは全く同じであった。金と祐成と涼は慣れているかのように姿勢良く立ち、敬礼する。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

-

-

-

帰り道

「東郷先生と瞬、すっかり意気投合しちゃったなぁ....」

「うん、さっきから二人でずっと盛り上がってるよ....」

「仲良くなるのは何よりだよ~」

涼は依然、呑気である。

それぞれの帰り道が別になる交差点まで来た。なんだかんだあっけど楽しかった。ここにいる全員、そう思っていた。金は東郷の方を振り向き、

「今日は........楽しかったですね!」

と、満面の笑みで言った。

「え........」

東郷の頬に光る筋が一つ。金の笑顔を見て、東郷はある昔の親友の笑顔を思い出していた。それはとても似ていたのだ。

五人は手を振りあって、そのまま家へと帰っていった。

 

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 ⑧恒例

 

初めての戦いから一ヶ月が経過していた。あれから何も進展がない。俺たちは二回目の侵攻に備えて鍛練は怠っていない。もう六月の半ばだ。雨の日も増えていた。

学校での休み時間

「ひゃぁっ!!」

金が女々しい声をあげる。

「あっははは!やっぱりくすぐったときの金の反応は面白いねぇ!」

金の後ろには祐成が立っていた。祐成が金のわき腹をつついたのだ。

「ゆ~う~せ~い~....!」

「うわわっ!くるぞくるぞ!」

「こらぁ!待たんかい!」

全速力で逃げる祐成を金が追いかける。

「相変わらずこりないよなぁ....祐成も....」

涼は呆れた目で遠くからその様子をみていた。

「もはやあれは恒例となっていますからね....あぁぁ...この問題分からない...」

瞬は数学の問題を解きながら答える。

「瞬も休み時間に中谷先生から特別にもらってる応用問題を解くのも恒例になってるよねぇ...まぁ俺はそんな難しい問題さっぱりだけど!」

「あなたも一応学年十位圏内じゃないですか...」

「一位の人に言われてもねぇ...あっ、またあの二人廊下走ってたから怒られてる」

-

放課後

「あっ、東郷先生!こんにちは!」

部室に入ってきた東郷に四人はあいさつをする。このときの東郷の表情はいつになく固かった。そしてその表情を見て...金たちは察した。金が口を開く。

「ついに来たんですね...?神託が...」

 

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 ⑨軍勢

 

「ついに来たんですね...?神託が...」

「えぇ...そうよ...今さっきね」

「いつバーテックスは来るんですか!」

祐成が声を荒くして聞く。

「いきなりだけど...今日の夕方...」

四人に衝撃が走る。

「今日の夕方って...あと二、三時間しかないじゃないですか!!」

涼が汗をかきながら言う。

「でも...いつ来ても良いように...準備してきたろ...?」

金が小声でみんなに向かって言った。

「俺は...もう準備できてる!」

鋭い目をした金が言った。

「しばらく侵攻がなかったから...数が多いそうよ...」

東郷が低いトーンで神託を詳しく教える。

「あぁ~!!もう!こうなったらブチのめすしかねぇ!」

祐成が叫んだ。このときにはもう、勇者部全員真っ直ぐな目をしていた。

(さすが...俺の信用できる大切な友達たちだ...)

金はこのわずかな時間で心を決めた仲間たちに対してこう思っていた。彼らの端末が不気味に鳴り始める。眩しい光が校舎へと向かってくる。金が気合いを入れるため、叫ぶ。

「いくぞっ!俺らの...二回目の戦いへ!!」

 

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「うわぁ~...ちっこいのがいっぱいいるよ~」

涼が気持ち悪そうに言う。

「奥に大型バーテックスが二体いますね...」

「この前は一体三人がかりだったけど、今の俺たちは一味違うぜ!」

瞬と祐成は張り切っている。

「よし!まずは目の前のちっこいのから倒していくぞ!」

金がみんなの気合いを入れ直すと、四人は一斉に端末を起動し、変身する。それぞれ個々に散らばり、無数の星屑を倒していく。

「はっはー!こいつらよえーぞ!余裕だぜぃ☆!」

祐成は二本のレイピアで串刺しにし、切り刻んでいく。しかし、倒しても倒しても星屑は沸いてくる。

「くっそー!何体いるんだこれ...!」

金が息を切らしながら言う。

「こうやって....無限に沸いて来やがって.......僕はこういうちんたらちんたらするヤツとか....終わりが見えない作業は大嫌いなんですよっ....!!」

(はっ!瞬がキレ始めてきている!)

そう早くも感じ取った祐成は金たちに後ろに下がるように誘導する。

「どうした!?祐成!」

「瞬がキレてきてるんだ....あいつは何でも効率化して物事をこなすから終わりが見えないような作業をやるとどうも機嫌が悪くなる....まぁあいつはいつも効率化してから物事に取り組むから滅多にそんなことないんだけどな....」

....!!

金たちは遠くから瞬を見て、瞬の目は何もかも破壊する怪物に見えるほど恐ろしく見えた。遠くからでもその剣幕は伝わってくる。

「あそこまでの瞬は俺も初めて見る!!これは....かなりやばいぞっ!」

金たちはさらに瞬から距離をとる。

プツンッ、

「この古波蔵 瞬....堪忍袋の緒が切れたりぃーー!!」

 

_________________________

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ........!!」

瞬が全身に力を込める。それに反応して瞬の体が水色に光りだし、持っているブーメランが巨大化した。

「僕の怒りの全力を....くらいやがれぇぇぇーー!!」

そう言うと、瞬はその場で勢いよく回り始める。たちまち風が起こり始め、竜巻が起こる。そのまま瞬は上空へと高くジャンプした。瞬を軸とした竜巻はさらに大きくなり、その竜巻は大型バーテックスがすっぽり入ってしまうほどの大きさだった。竜巻は星屑をどんどん吸い込んでいき、瞬の竜巻によって目に見えなくなるほどバラバラに、細かくされていく。

「うわぁぁ~!なんて風だぁぁ~!」

「俺たちも飲み込まれちゃうよ~!」

「みんな~!耐えろぉ~!」

だいぶ遠く離れた勇者に変身した金たちでさえも飲み込まれてしまいそうなほどの竜巻であった。

「見ろっ!瞬の竜巻でちっこいバーテックスどもを一匹残らず一掃したぞ!」

「恐るべし....!瞬の切り札....!」

祐成が竜巻を指差し、涼が瞬の本当の強さを実感している。

「まだまだ....これで終わりじゃないですよ....!!」

瞬はそう叫び、持っている二つのブーメランを一体の大型バーテックスの方へと投げる。瞬が投げた巨大なブーメランは依然、大きな竜巻となったまま大型バーテックスに迫る。大型バーテックスは竜巻に向かって攻撃するが、大型バーテックスの身長よりも二倍は大きい竜巻はびくともしなかった。瞬が作り出した竜巻はそのまま一体の大型バーテックスを飲み込み、一瞬のうちに御霊ごとバラバラに切り刻んでしまった。やがて、竜巻が消え、小さくなったブーメランが瞬の元へと返ってくる。

「はぁ....はぁ....はぁ....どうだ....思い知ったか....」

瞬はすっかりバテながらも大型バーテックスがいた方向を睨みつける。

「瞬ーー!」

金たちが瞬の元へ駆け寄ってきた。瞬は尻餅をついて樹海に座っている。

「はぁ....はぁ....僕は....もう....疲れちゃいました....あともう一体は頼めますか....?」

瞬がすっかり疲れきった顔で金の顔を見る。金はしゃがみこんで瞬の顔を見て言った。

「当たり前だぁ。俺たち三人に任せときなっ!!」

 

_________________________

 

祐成と涼はもう一体の大型バーテックスとの距離を詰める。

「うわっ!なんか針みたいなもんをいっぱい飛ばしてきたよ~!」

「な~に!こんなもんはじき返せ!!」

祐成と涼は突っ込むスピードを落とさずに針を個々の武器ではじいた。二人はうまく攻撃を避けながら確実にダメージを与えていく。

「これが二人で攻める強みだ!バーテックスはどちらかを攻撃しようとしても違う方向から攻撃を食らう!その繰り返しさ!」

祐成が金が考えた作戦を自分が考えたかのように得意気に話す。大型バーテックスはしびれを切らしたのか、針をやたらめったらてきとうに撃ち始めた。

「おっーとっと!やっと自分の状況を理解したかぁ♪金ー!出番だよ~!」

「ああ!!」

涼の合図を聞き、遠くから金が射撃する。

「よっしゃ!どうだ!」

バーテックスの動きは鈍くなっている。

「涼!今だー!とどめを刺せー!!」

「任せといて!金ー!」

今度は金の合図を聞き、涼が全身に力を込める。

「うおぉぉぉぉぉぉぉーー!!」

涼の体は黒く光りだし、斧が超巨大化する。

「真っ二つぅーー!!」

涼は思いっきり振り上げた斧を精一杯縦に振る。大型バーテックスは伐採される木のように一瞬で真っ二つにされた。すかさず金が銃で御霊を撃つ。

「終わった............?」

祐成が呟く。

『やったぁぁ~~~!!』

全員で喜びの声をあげて抱き合う。

「見たか見たか~!俺たちの力!」

「はぁはぁ....鍛練の成果が....しっかり出し切れていました....」

「はぁ....はぁ....すごいよ~!....僕たち!....」

「しかもみんなほとんど無傷だぜ!!」

樹海には四人の笑い声が響いていた。

「あのさ、俺、決めたことがあるんだ!」

「何を....金....?」

「俺、みんなとならなんでもできると思う!どんなことが起ころうと....絶対....!だから....俺、これからいっぱいいっぱい鍛練して....」

金はここで一旦言うのをやめた。

「なんだよ~焦らすなよ~」

祐成が急かす。

「だから俺........姉ちゃんを超える....勇者になる!」

 

(第三話に続く)




本作でいう『切り札』は勇者通常状態時に放つ必殺技のようなものです。『乃木若葉は勇者である』で登場する『切り札』や『結城友奈は勇者である』にて登場する『満開』とは別の力です。
また、本作では新たな進化を遂げたバーテックスが現れ、12星座がモデルとなっているバーテックスの他に様々なオリジナルバーテックスが登場しますのでご了承ください。
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