三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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姉の秘密

結城友奈は勇者である 三ノ輪金太郎の章

著 きょーせい (第二章第十話~第十二話)

 

 

 ⑩ニューフェイス 

 

二回目の侵攻があった翌日、授業が終わりと金たちは部室にやってきた。

「あら、遅かったじゃない。」

「あれ?!夏凜コーチ!?珍しいですね....!部室にいるなんて」

祐成が驚いて話す。

「ま、まぁ一応勇者部のOBかつ外部コーチだし....?たまには....来たって良いじゃない!」

夏凜は頬を赤らめて言う。

「別にダメなんて言ってないですよ....」

金は本当は今までずっと来たかったんだろうなと思いながら言った。

「むしろ嬉しいです~」

涼は明るい笑顔で言う。

「僕たちが教室を出るだいぶ前に東郷先生は教室を出てったのに、まだ来てないんですか?」

「そうね....まだ来てないわよ」

瞬はそう夏凜に聞いてから顔色を悪くする。

「まさか....また神託....?」

瞬の不吉な考察を聞いて祐成は

「いや~二日連続はないだろ~」

という。

「いや、それ完全なフラグだから....」

「夏凜コーチに先につっこまれた....!!さすが完成型先代勇者っ!!」

「それは関係ないと思うよ~金~」

そう仲良く五人で盛り上がっていると、、、

ガラッ!!

急に部室のドアが勢い良く開く。

「やっと来ましたか~!東郷先生........ってあれ?」

金がそう言いながら部室のドアの方へ走っていく。しかし、そこにいたのは東郷ではない別の女性だった。

「わあぁぁ~~~!本当にミノさんそっくりだ~!」

部室のドアを開けた女性はそう言っていきなり金を抱きしめる。

「うわわっ!!い、いきなりな、ななななな何するんですかぁぁ~!」

金が頬を赤らめて叫ぶ。他の四人も頬を赤らめ、驚いていた。

「あぁ~!ごめんなさい、つい~」

「と、とととところで....だ、だだだだだ誰なんですかっ!いきなりっ!!」

金は抱きつかれたせいで胸の鼓動を高ぶらせながら聞く。

「フッフッフッ~私はね~....」

 

_________________________

 

ガラッ!!

またしても扉が開く。

「あら、そのっち。もう着いてたのね」

「ただいま到着しました~!」

「えっ、東郷先生の知り合いですか?!てっきりヤバ目の不審者かと....」

「金、この人はね、私たちと同じ先代勇者なのよ!」

「みんな~改めましてこんにちは~乃木園子で~す!」

「乃木園子っ!?」

瞬がやたらオーバーに驚く。

「乃木といったら初代勇者の....!」

涼がそう言い、園子の近くへと歩いていく。

「そこじゃないでしょう!!涼!!」

瞬がやたら興奮気味で大声をだし、涼と金を突き飛ばして園子の手を握る。

「僕っ!あなたの大ファンで!あなたの小説にはいつも心打たれて....今放送中の先生原作のドラマも観てますぅ!!会えて光栄ですっ!園子先生~!!」

『えぇぇ~~!?』

他の三人にも衝撃が走る。

「あの視聴率10%後半越えは当たり前の!?」

「あの今話題のドラマの原作者!?」

金と涼がそう言って目を見開いて驚く。

「あのドラマだけではありません!他にもいろいろな名作を....史上最年少でベストセラーを獲得し、今とても注目されている作家さんですっ!」

「いや~誉めすぎだよ~」

「いやいや!これくらいではまだまだ足りません!他にも....」

「は~い、瞬!それくらいにね~」

祐成が瞬の首根っこをつかんで園子から離す。

「でも、なんで急に勇者部に....?」

「フッフッフッ~それはね~....金太郎くんに会いたかったからだよ~!!」

またしても園子は金に抱きつく。

「ふぁぁ~!や、ややややめてくださいぃ~!」

金はまた頬が赤くなる。

「う~ん....あのときのミノさんよりはでかいけど~....ミノさんの弟だから、リトルミノさんで良いかな~?」

「........はい?」

「そのっちはね、あだ名を必ずつけるのよ」

園子のことをよく分かりきっているかのような話し方で東郷が言う。

「ま、まぁいいですけど........と、ととととにかく離れてください~!い、いいいいつまでくっついてるんですかぁ~!」

 

_________________________

 

園子がやっと金から離れ、涼、瞬、祐成がそれぞれ自己紹介をした。

「う~ん....難波 涼くんは....なんばーだね!古波蔵 瞬くんはぐらさん!須藤 祐成くんはゆうくんだね!」

「えっ!?俺、数字!?」

「園子先生にあだ名をつけてもらえるなんて........!!光栄ですっ!」

「俺のあだ名は....素直に気に入ったかも....」

三人とも別々の反応をする。

「瞬に限っては発音変えたらサングラスじゃねーか....」

金が小声でツッコむ。すると夏凜が、

「金!ツッコミはもっと大きい声で言うもんよ!」

「夏凜さんはツッコミにかける思いが強いですね....」

「そりゃあ、ツッコミがちゃんとやんなきゃ成立しないからねっ」

そんな二人の会話をよそに、瞬は園子に質問責めしていた。

「ぜひ、いろいろと聞かせてください!この小説の物語はどのようにして思いつかれたのでしょうか?我々読者をここまで引き込ませるような文をどうやって書いておられるのでしょうか!?えっと....他にも他にも....」

「質問が多すぎだよ~、ぐらさん。ゆっくりゆっくり一つずつ........むにゃ....」

「えっ、寝てる?」

「ありゃ完全に寝てるな」

寝てることに気づかずに質問を続ける瞬を見ながら涼と祐成はそのおもしろい光景を楽しんでいた。

「ほら、そのっち、起きて!」

東郷が園子の体を揺らし、起こす。

「はっ!また寝てた~」

「えぇ~~!!寝てたんですかぁ!」

「あぁ~今ぐらさんが持ってるその小説ね~今度映画化....あっ、まだ言っちゃいけないんだった~」

「えっ!!映画化!?映画化されるんですね!?僕もこの小説の先の読めない展開が好きで....」

「あれはまだ続きそうですね....」

「そうね....」

金と夏凜も二人の会話を見て話していた。金が祐成と涼を押して園子と瞬の会話に混ざる。そのとき、東郷は金たちの楽しそうな様子を暗い表情で眺めていた。その東郷を不審に思いながらも夏凜は静かに窓の外を見た。

 

_________________________

 

 ⑪秘密 

 

この話は約一ヶ月前のことである。東郷が金たちを夏凜と共に大赦の敷地内の砂浜へ連れていき、東郷は、彼らを夏凜に任せて大赦の本部へ向かった。そこで東郷はある人物と話をしていた。

「今回の件は色々とありがとうございます」

「良いのよ、東郷。逆にもっとしてやりたいくらいよ」

「それで....本題に入るのですが....」

東郷ともう一人の人物は顔色を変える。

「本当に....金たち現勇者は....バーテックスを根絶できないのでしょうか........?」

東郷の質問に対し、

「えぇ....100%根絶できない、とまでは言えないけど....今の勇者システムでは........かなり難しいわ....」

「100%ではない....と言うと....?」

「勇者システムは武器の強化や満開システムの強化をいくらでも上げることができる....けど....その膨大なパワーに...とても人間は耐えきれないわ....」

「そんなっ........!」

東郷はうつむき、悲しみの表情を浮かべる。

「でも....!バーテックスの侵攻を何年かの間止めることはできる....!これから天の神が送り込んでくるバーテックスを全員倒せば....」

「....!でもそれじゃあ....また侵攻が来るってことですよね....?その何年後かにまた苦しい思いをしなくちゃならない子たちを生み出してしまうということですよね!?」

東郷が興奮気味で質問する。

「........でも....そうしなきゃ....あの子たちは!」

そこまで言って、ある人物は口を動かすのをやめる。

「すみません....少し興奮しすぎました....」

「いや....私も言い過ぎたわ....」

しばし沈黙が流れる。

 

_________________________

 

 

神世紀299年....二人の少女を勇者部に誘い、現在にまで続く勇者部を作った人物がいた。彼女は大赦の人間であり、バーテックスと戦うという大事なお役目を担っていた。そして当時の勇者部員たちでバーテックスを見事に退けたのだ。彼女はその功績を認められ、大人になってから大赦に正式に入り、いきなり高い位についた。大赦の中には彼女のおかげで今の世界があると言っている人もいる。彼女の名は........犬吠埼 風である。

「また話をしましょう....時間があるときに来ます....ありがとうございました、風先輩」

「うん........お互い頑張りましょうね....」

そう言って二人は別れた。金の端末は姉の銀、現勇者部コーチの夏凜が使っていた端末をアップデートしたものだ。四月あたりに金が使っていた端末を特殊な電波で意図的に壊し、大赦の力によって金はこの端末を手に入れた。銀や夏凜は近距離の武器であったのに対し、なぜ金は遠距離なのかというと、東郷がそう頼んだからだそうだ。他の勇者の端末も特殊な電波で同じようにして壊し、新しく大赦が作った端末を買わせたのだ。もっとも、金たちの誰も勇者システムについて疑問を抱かないが。

 最初に銀の弟である金が勇者に選ばれた時、東郷と園子はひどく悲しんだ。あんなに銀が可愛がっていた弟が自分たちみたいな苦しい目に会うなんてとても心が耐えられないと思ったからであった。また、銀のようなことになるのではないかという不吉なことも考えてしまった。しかし、東郷が巫女の才能がまだあるということが分かり、園子たちと共に先代勇者として次の勇者を支えるという結論に至った。そして、園子と東郷は歴代勇者の墓へ行き、銀とあるやくそくをした。

『私たちが....金を守るからね!!』

 

_________________________

 

勇者システムは改良に改良を重ね、精霊によるバリアの強化と武器の強化、勇者の身体能力の向上などに成功し、以前の勇者よりもずっと能力は上だ。しかし、バーテックスの短期間での成長はとてもめざましく、新型のバーテックスの登場や、繁殖のスピード、強さなどが大幅に上がっている。今現在もそうだ。そして....パワーアップした勇者システムでもその進化しているバーテックスを滅ぼすことは困難であった....

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そして現在に至る。

「みんな!ちょっと聞いてほしいの....」

園子と楽しそうに話す四人は会話をやめて東郷の方を向く。

「なんですか?東郷先生」

きょとんとした顔で金が聞いた。園子と夏凜は表情がかたくなり、東郷の方を向く。。暗い顔をしたまま東郷は言った。

「みんなに....来て欲しい場所があるの....」

 

_________________________

 

 ⑫戦いの歴史 

 

東郷は翌日の部活の時間、勇者部メンバーと園子、夏凜を連れてある場所に向かう。

「学校からだいぶ遠くまで来たね~....」

「ああ....ここら辺俺んちの近くだぞ?」

「そうか、金と涼は家がこっちの方でしたね。」

「毎朝こんな長距離を行ったり来たりしてるのか....バスでどんだけ時間かかった....?」

四人はそんなことを話していると東郷が四人の様子を見て呟く。

「みんな....着いたわ....」

「東郷さん....ここって....」

金が東郷の方を向いて言った。

「そう....大橋よ...!」

「すごい...!僕、生で初めて見ました...」

「俺もだ....」

瞬と祐成は初めて実物で見る巨大な大橋に圧巻される。

「私が一回目の侵攻の時....そのっちと....銀と一緒にここを守ってたの....それが新世紀298年の戦いであり....私たちのお役目だった....」

「え........でも....粉々に壊れてますよ....?」

「ちょっと、祐成!」

瞬が祐成を制止する。

「いいんだよ~今、この世界があるってことは大丈夫だったってことなんだから~」

園子は気にしないでいいという感じで笑顔になる。

「大丈夫ですか....?金....」

瞬は壊れた大橋をずっと見つめている金を心配する。

「あ、あぁ....ちょっとボーッとしてただけ!」

金はみんなの方を向いて笑って見せた。

「大丈夫よ....金。前も言った通り銀がいたおかげで私たちは勝てたんだから....」

「だから、大丈夫ですって!」

そう言いながら金はまた笑って見せる。無理して作った作り笑顔を。金はどこか罪悪感を感じていたのだ。二人はこうは言っているけど二人の体の機能と、大切な時間を奪われたのだ。姉ちゃんが死んだことにより、満開システムと精霊が実装された。満開が無かったら勝てなかったと言っていた。けど........金がいろいろと考えていると涼が背中をさすってきた。

「金....大丈夫....?

「ありがとう....涼。大丈夫!」

と本当の笑顔を見せて言う。

「もう一カ所....連れて行きたい場所があるわ....!」

東郷が真剣な眼差しで言う。

「そこは....歴代勇者たちが眠る場所....」

四人は唾を飲み込む。重苦しい空気であった。東郷、園子、夏凜が歩き始め、四人もその後を追って歩き始める。

 

_______________________

 

「ここが、歴代勇者と巫女たちが眠る墓地よ...」

金たちは伝説の人物たちの名前が刻まれている墓を見て、なかなか声を出せなかった。

「こ、ここが.........」

涼と瞬と祐成は墓石に刻まれている名前を見て回る。

「乃木若葉....初代の勇者で、この世界に約300年間平和をもたらしてくださった方....」

涼が乃木若葉と刻まれた墓石を見てそう呟いた。

「っ!?古波蔵 棗....!?」

瞬が驚く。そう刻まれている墓石をしゃがんで掴んだ。

「その人は....沖縄の勇者だったらしいわよ....沖縄の人たちを船に乗せて遠い四国まで運んだんだとか....」

夏凜が瞬の方を向いて言った。

「そんな話...家族からも聞いたこと無い....自分でも珍しい名字だとは思っていたけど僕はこの人の子孫....?いや、まさかな....」

その場に立っていた金はいきなりある墓石の方へと走り出す。そしてそこに刻まれている名前を呟いた。

「三ノ輪........銀....!」

東郷と園子は墓石の前に座り込んで見ている金に近づき、同じようにしゃがんだ。

「私たちもね....たまに来るんだ~....こっちは元気だよ~そっちは~?って....」

「金が勇者に選ばれたときも....二人で報告に来たのよ....」

金は目を見開いて墓石の字をじっと見つめる。

「俺....当たり前ですけど、まったく姉ちゃんの記憶がないんです.....姉ちゃんが俺にどう接してくれたのかも、姉ちゃんがどんな声をしていたのかも....なにも知らないんです。」

東郷と園子はそんな金を優しく見守りながら話を真剣に聞く。すると、金はなにかを決心したかのように表情を変える。

「姉ちゃん....世界を守ってくれてありがとう....次は....俺たちが守る番だっ....!あの時姉ちゃんが俺たちを守ってくれたみたいに....そして、俺がバーテックスを絶滅させてやるっ!それで....俺は姉ちゃんを超えるんだ!!」

そこには強い意志があった。この言葉を聞いた東郷は目を強く閉じ、うつむくことしかできなかった。ここで風と話した内容をみんなに伝えようとしていたことはとても言えなかった。

 

(第四話に続く)

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