⑭夢
(ぅぅ........うん....?ここは....どこだ....?どっかから赤ちゃんの泣き声が聞こえる....)
金が目を開けたとき、そこは不思議な空間が広がっていた。
(なんだここ....。そ、そうだ!巨大バーテックスは?!もしかして俺....死んじゃった....?)
(おい、お前は歳が離れていても、この銀様の弟だろう?)
金は目を疑った。目の前には毎日見ている顔があったのだ。毎日見ているが、一度も会ったことも、話したこともない人物が....
(この顔は....姉ちゃん....?しかも俺、姉ちゃんの膝の上に寝てる....!?)
(だから泣くなって。泣いていいのは、母ちゃんに預けたお年玉が帰ってこないと悟ったときだけだゾ)
(はぁ!?泣いてないし!?)
そう答えたつもりだが、銀には聞こえていないようだった。
(ほ~ら、よい子だ、マイブラザ♪おー泣き止んだ!エラいぞ、エラいぞ、マイブラザ♪)
(姉ちゃん!聞こえないのか....?気づいてくれ!ずっと会いたかったんだ!もう俺は中学二年生だ!)
金は手をじたばた動かす。
(!?手がやけに短いぞ!?もしかして....この赤ちゃんの泣き声は俺が出してるのか!?)
(甘えん坊な弟め。大きくなったら舎弟にしてコキ使っちゃうからな、ニヒヒ!)
(そんな冗談言って....俺は舎弟になんかならないぞ!)
(へうっ!?もうこんな時間!?まず~い!遅刻遅刻!)
(あっ!待ってくれっ!姉ちゃんっ!行かないで!聞きたいこととか話したいこととかたくさんあるんだ!!)
すると、不意に銀の足が急に止まる。なんだかその場の雰囲気がさっきとはまるで別だ。金は急に空気が変わったことに驚き、思わず姉を止めるのをやめる。
(お前は....まだここには来ちゃ行けない....)
(えっ........?今なんて....?)
その瞬間、光に包まれる。
(うわぁっ!!待って、姉ちゃーーん!!)
「はっ!!」
金が目を開けるとそこは病院のベッドだった。
「あっ........金........!?良かった、良かったよ~~~!!」
ベッドの横に座っていた涼が金に抱きつく。
(夢....だったのか....)
金はさっきの出来事が気になってしょうがなかった。
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⑮苦しみを糧に
「東郷先生~!園子先生~!金が目を覚ましましたよ~!」
涼が病室から廊下に向かって叫ぶと、二人は猛ダッシュで金の病室に入ってきた。
「金....!金っ!良かった....本当に良かった....」
「無茶しないでって言ったのに~....心配かけすぎだよ~....」
二人とも大泣きして金に抱きつく。
「もう、二人まで....恥ずかしいですよぉ!」
「だって....だって....」
「リトルミノさん....二日も目を覚まさなかったんだよ~....」
「えっ!?そんなにですか!?」
「俺と東郷先生と園子先生の三人でかわりばんこでお世話してたんだよ~」
「三人とも....ご迷惑おかけました....」
「リトルミノさんが生きててくれればそれでいいんだよ~」
園子が微笑んで言う。金は周りを見渡す。
「そういえば....瞬と祐成は....?」
「あの二人は今散歩中よ。祐成くんも....いろいろあったし....あっ....みんながお役目から帰ってきてすぐに神託があったの....もうみんなには言ったんだけど...今回のバーテックスは強力だったからしばらく侵攻はこないらしいわ。1ヶ月から2ヶ月くらい」
「そうですか...僕も久しぶりに外の空気を吸いたいです!連れてってくれませんか?」
「いいアイデアだね、リトルミノさん~行こう行こう~!」
「みんなでレッツゴーだよ~金~!」
「涼と園子先生って喋り方だけ似てるな.....」
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金は車椅子に乗り、涼に押してもらいながら東郷と園子と共に病院の庭に行った。そこには、丁度散歩から戻ってきた祐成と瞬がいた。祐成も車椅子に乗っており、瞬が押している。
「おお~!やっと起きたか~金!」
「祐成も元気そうだな!」
「祐成の左足はひどいケガでした....もう少しで切断だったんですから....」
「えっ....!?そんなひどかったのか....」
「まぁ、結果的に足は残ったからいいんだよ!俺は今日からリハビリなんだ。お前の方が全身ケガしてて大変だろ?」
金は左半身に岩による攻撃を受け、包帯だらけの身体になっていた。左目もケガをして包帯を巻かれているため、今は右目だけである。
「まぁ....確かに今もまだ左半身の感覚はないけどな....でもすぐに治るさ!」
「昔の私みたいだよ~....」
園子がそう呟く。この声は誰にも聞こえていないようだった。
「まだ祐成くんのリハビリまで時間があるし、みんなでここでお話しましょうか!」
「賛成だよ~!わっしー!」
明るい雰囲気に包まれる。みんな笑顔であった。
「みんな無事で本当に良かったです....戻ってきたときにはどうするばいいか全くわからなかった....これも....東郷先生たちがいてくれたおかげですね....」
瞬が誰にも聞こえない声で少し涙を流しながら言った。この庭で過ごした時間はいつもの日常の風景であった。
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その日の夜
「はぁ........はぁ........くっ........うっ........おっと!」
「危ない!....もうやめてください!何時間やってるんですか!休憩も大切です!」
リハビリ中にバランスを崩して倒れそうになった祐成を瞬が支える。
「いや....まだだ....早くっ....治さないとな....」
「東郷先生が言ってたでしょう!まだ次の侵攻まで1ヶ月から2ヶ月はあるんですから!」
「いや、ダメだ!体がなまっちまう!せっかくあそこまで鍛錬して強くなったっていうのに....無駄になっちまう....!」
「良い心がけじゃない」
遠くに夏凜が立っていた。
「でも....夏凜コーチっ!」
瞬が夏凜を説得しようとするが
「でもね....無茶しすぎてもっと退院するのが遅くなったらその方が大変よ。さすがにもう....やめなさい....!これは私からのコーチ命令よ」
「........分かりました........夏凜コーチが言うなら........」
祐成は残念そうに返事をし、車椅子に乗って病室に戻る。
「あ、待ってください祐成~!」
瞬は祐成の後をついて行く。夏凜はただ、二人の後ろ姿だけを見ていた。
金太郎の病室
「金~りんご食べる~?」
「........」
「お~い金~?」
「ああ、ごめんごめん!やっぱり左耳聞こえにくいみたいだ。岩当てられたときにやっちまったみたいだな」
金は笑って答える。
(本当はすごく苦しいはずなのに....俺を元気づけようとしてるんだな....)
「りんご食べる~?」
「うん、じゃあいただこうかな」
「わかったよ~」
涼は慣れた手つきでりんごの皮を剥き始めた。
「飲み物、買ってきたわ」
東郷が金の病室に入ってきた。
「東郷先生!仕事はいいんですか?ずっと俺の面倒でろくにできてないでしょう?」
「な~に言ってるのよ、金。仕事よりも金が大切だし仕事ももうとっくに終わっているわ♪」
((この人一体いつやったんだ....まさにオールマイティーって感じ....))
涼も金も東郷という存在にまた驚くのであった。
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⑯三人の夢
「もうこんな時間だ~!もう帰らなきゃ~」
涼は帰る支度をする。外は真っ暗だ。
「本当はこんな夜遅くまでいちゃダメなんだから...家が近いからって。明日は早く帰れよ!」
「わかった、わかったよ~金~じゃあ、またね~」
涼は病室を出て行く。病室には東郷と金。二人きりである。
「ごめ~ん!遅くなった~やっと良いところまで描き終わったから来たよ~」
「園子先生!疲れているだろうに....」
「リトルミノさんの為なら火の中水の中だよ~!」
東郷と園子と金....。三人での楽しい時間が流れる。すると金は急に何かを思い出したかのように話し始めた。
「あ、そういえば....俺、不思議な夢を見たんですよ。まだ意識が戻っていないときに....」
「どんな夢だったのかしら?」
「姉ちゃんに会いました」
二人は驚いた。
「え~!リトルミノさんもミノさんに会ったの~!?夢の中で~!?」
「えっ!経験あるんですか?」
「そのっちと私で同じ夢を見たのよ」
「ミノさんが私たちと一緒の中学の制服を着てお話する夢だったんよ~」
「楽しかったわ....」
「驚きました....!二人も夢の中で姉ちゃんに会ってるなんて....」
「最後にね~ミノさんが『いつかまた巡り会える』って言ってね~....『またね』ってみんなで言って....目が覚めたの~....」
「『またね』って....姉ちゃんが東郷先生たちに最後に言った言葉....」(そういえばさっき涼も言ってたなぁ....)
「........それで金の夢の内容は?」
「俺は....赤ちゃんになってました....姉ちゃんの膝に寝てて、俺をあやしてました。舎弟にしてやる、とか冗談も言ってました」
「その夢、本当のことだよ~リトルミノさんのことすごい可愛がってたんだから~」
「金の記憶のどこかに銀との生活の記憶があるのかもしれないわね」
「園子先生が今言ったことは兄ちゃんからもよく聞きます。不思議な出来事は....この後なんです...」
「やっぱり異変は夢の最後だったのね?」
「俺、気のせいかもしれないんですけど聞いたんです。『お前は....まだここに来ちゃ行けない』って....」
しばらくの間、沈黙が流れる。
「....きっと姉ちゃんが....俺を救ってくれたんだと思います....あそこで姉ちゃんが向こうの世界に行くのを止めてくれたんだ....」
「私たちはずっと....ミノさんに迷惑をかけすぎだね~....」
金はあの夢をもう一度よく思い出す。(今思えば、遅刻遅刻とか言って俺から離れて外に行こうとしてたけど....俺があの後を追っていたら....)
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⑰静かな部活
「それじゃあ、今日も勇者部頑張りましょー!☆」
「お~!」
・ ・ ・
「二人だけじゃ盛り上がらないですね....」
「金と祐成はしばらく入院だからね~....」
「へいへいへ~い!乃木さんちの園子が来たよ~!」
「園子先生....!良かったです!二人だけでは寂しかったもので....園子先生がいれば百人力です....!!」
「園子先生がいればテンション上がるね~!」
「それでぐらさん~今日の依頼は何~?」
「今日は地域清掃ですっ!と言いたいところですが....6月も後半に入って今日も雨なので....老人ホームのお手伝いです!」
「よ~し、任せてよ~!元勇者部の力を見せつけちゃうよ~」
「もちろん私も行くわよ!」
いつの間にか部室のドアの前に夏凜が立っていた。
「いつ入ったんですか!?」
涼が驚く。
「そんなのいつだっていいじゃない。とにかく行くわよ、老人ホーム!」
「その話聞いてたってことはだいぶ前からいましたね....」
涼は夏凜らしいなと思いながら、四人は傘をさして歩き始めた。
「そういえばわっしーは~?」
「東郷先生なら先に老人ホームに行きましたよ、園子先生っ!」
「どうやらツッコミは私だけみたいだから頑張らないとね....」
「夏凜コーチ嬉しそうです~」
「別に喜んでないわよ!!」
そんなことを話しているうちにあっという間に老人ホームに着いた。
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「みなさん久しぶりです!」
「あら~瞬くん、涼くん、お久しぶりね~」
「ホント、いつぶりかねぇ....あれ、金太郎くんと祐成くんは?」
「あぁ~あの二人は今ケガをしちゃって....入院中なんですよ...」
「まぁ!大変ねぇ...同じ時期に入院だなんて...」
「入院ってことはだいぶひどいケガなんじゃないか?」
「トメさん、はじめさん!大丈夫ですよ!そんなことより他のお話しましょうよ!」
「涼と瞬、ここに何度か来てるみたいね...接し方も慣れてるわ....」
「そうだね~。すごいよ~....あっ、わっしー!」
「二人も来てくれたのね。これから涼くんがちょっとした芸を見せてくれるらしいわよ」
瞬と涼のまわりにお年寄りが集まっている。
「さぁさぁ!今回もこの時間がやってきましたぁ!難波 涼によるマジックショーで~す!」
瞬がそう叫び、大きな拍手が起きる。
「えっ!?なんばーマジックできるの~!?」
園子の目がキラキラ輝いている。いかにもマジシャンという格好に着替えた涼が出てきた。
「涼くんの手品は一流らしいわよ!」
「へぇ....お手並み拝見といこうじゃない....」
「レディース&ジェントルメン!難波 涼です!今回も楽しいマジックをお見せしま~す!それでは早速....そこの女性の方!前へ来てください!」
夏凜が涼に指名される。
「えっ?私?」
「そうだよ~ほら~」
夏凜は園子に背中を押され、前に立った。そして涼は目隠しをお年寄りの一人にやってもらう。
「このトランプの中から一枚好きなカードを選んでください」
机の上にシャッフルされてバラバラに置かれたトランプがある。
「そうね....これにするわ!」
「それではそのカードを観客のみなさんに見せてください!....みなさん....そのカードがなんのカードか覚えましたね?」
一同は大きく頷く。
「分かりました....それでは夏凜さん!俺の胸ポケットの中に入っているカードを見てください」
「えっ?まさか....」
そのポケットに入っていたカードはスペードの6であった。
パチパチパチパチパチパチ
部屋中から拍手が鳴り響く。
「や、やるじゃない....」
涼は目隠しをとり、
「まだまだこれからですよ....夏凜コーチ~....ふっふっふっ....」
「なんか....いつもの涼とは人が違うわね....」
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「夏凜コーチの手のひらの中にあったはずの五百円玉が....いつの間にか園子先生のポケットにワープしてま~す!」
「はぁ!?なに言ってんのよ、私はまだ五百円玉を....って、ない!?」
「わ~!五百円玉入れてなかったのに入ってる~!」
パチパチパチパチパチパチ
またしても大きな拍手が起きる。
「タネも仕掛けもわからないわ....」
「当たり前ですよ!夏凜コーチ!タネも仕掛けもないんですから~!........今回のマジックショーは以上で~す!ありがとうごさいました~!」
「プロマジシャンRyoに拍手~!」
瞬がそう言うと涼は別の部屋に入っていった。
「この催しの唯一の悪いところは僕が外来語を無理に言わなくてはいけないところです....それさえなければ...」
マジックショーが終わった後、瞬は一人でそう嘆いていた。
「全部のマジックがどういう仕組みなのか全くわからなかったわ....」
夏凜は肩をおろす。
「さすがね。涼くん」
そのあとも老人ホームの手伝いをし、お礼をもらって外に出た。
「まだ雨降ってますね....」
「まだまだ梅雨だものね....けどまぁ、いろいろとツッコミ疲れたわ....」
「帰ったらみんなでお礼の品をいただきましょう」
「賛成だよ~!わっしー!!」
五人は学校へ足を進める。雨の勢いは変わらず、強いままだった。
「祐成と金もいたらな~........」
涼の呟きは雨の音でかき消された。
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⑱神官
巨大バーテックスとの戦いから1ヶ月以上が経過した。7月も後半に入り、もうすぐで夏休みだ。精霊のご加護もあってか、金と祐成の回復はとても速く、最近退院することができた。
「久しぶりの部室だ~!」
「やっともどってこれたぜ!」
「二人とも退院おめでとう~!ずっと二人のこと待ってたよ~」
「無事に退院できて本当に良かったです!」
夏凜と園子も部室に入ってきた。
「わぁ~!!二人とも退院おめでとう~!!」
園子が二人に抱きつく。
「これからなまったその体、ビシバシ鍛えてやるから覚悟しときなさい!」
「はいっ!任せといてくださいよ!」
「やっと体を鍛えられる....!....てか園子先生っ!いつまでくっついてるんすか!」
「そ、そそそそそうですよ~!恥ずかしいです~!」
「ゆうくんよりもリトルミノさんは恥ずかしがり屋さんだね~」
「夏凜コーチ、園子先生、今日も東郷先生は遅れるんですか~?」
涼が二人に聞く。
「今日はね~....初代の勇者部部長が来るんよ~!!」
「今は大赦で大きな権力を持ってるわ」
(初代勇者部部長で今は大赦のエリート....!一体どんな人なんだ....?)
金は早く会ってみたいと思った。
「相当すごい人なんだろうな....」
「そうですね。緊張してきました....」
瞬と祐成も顔が強張る。
「あんまり期待しすぎない方がいいわよ....」
夏凜がそう呟いたとき、部室のドアが開いた。
「みんなに紹介するわ。私たちと一緒に勇者をやっていて、勇者部部長だった犬吠埼 風さんよ。今は大赦にいるわ」
東郷に紹介された犬吠埼 風という人物は大赦の服、面、帽子をしており、表情も何も分からなかった。
「大赦の人って面被ってて表情分からないから怖いよな....」
祐成が小声でそう言ったのと同時に犬吠埼 風は面をとった。
「どうも~!!犬吠埼 風です!!初代勇者部部長で、頼れる、モテる、できる女っ!!よろしくぅ!!」
あまりにも急なハイテンションの自己紹介により、部室は静まり返る。
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「えっ、ちょっと何この空気?」
固まったままの四人は風をじっと見つめる。
「この子たちの想像してたイメージとかけ離れすぎてびっくりしてるのよ」
「えっ....そうなの?夏凜?」
「美しい....」
祐成がそっと呟く。
「あっ、やっぱり分かる!?この犬吠埼風の美しさがっ!さすが現勇者じゃないの!」
「祐成って....年上がタイプだったんですか....?」
「十五歳も離れてるのに....まさか....熟女好き....うぐっ!?」
そこまで言って金は祐成に腹をど突かれる。
「そう言う意味じゃないんだなぁ....金さんよ~....女優さんとかに通じる美しさってことよぉ....」
「ご、ごめんなさいぃぃ....祐成さん....もう言いません....」
金は腹をさすりながら謝る。
「創作意欲が~!....」
「園子先生でも許しませんよ....?」
「ひっ....分かったんよ~....」
「そのっちまで押されるとは....なかなかの剣幕ね....こほん!それより....今日風先輩は遊びに来ただけじゃないのよ!」
東郷がそう言い、東郷に注目が集まる。風は大赦の面を被った。
「これから....聞いてほしいことがあるわ....」
「テンションの切り替えは大赦の面なんだ....じゃなくて、一体なんですか....?」
さっきまでの和やかな雰囲気とは一転、皆、緊張した顔になる。
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「まず....あなたたちにまだ話していないことの説明をするわ....なぜ今までは無垢な少女が勇者に選ばれてきたのに今回は少年なのか....それは今の神樹様が昔の神樹様とは別個体だからってことが分かった」
「昔の神樹様とは違う神樹様....」
「そう。見た目とかはほとんど同じなんだけどね。所々違うところがあるわ。私たちの頃は何人か勇者候補がいたんだけど....今の神樹様が選んだ勇者候補はあなた達四人だけだった....」
「四人だけって....!?僕たちがあのとき勇者のお役目を断ってたらどうしてたんですか!?」
瞬は前のめりになって風に聞く。
「神樹様は....あなた達が必ず勇者になることを見越してたみたい....勇者になることを断ることはないだろうって....」
「すべては....神樹様の思い通りってことか....なんか神樹様の手のひらで踊らせれてる感じだな」
祐成は嫌そうにそう言った。
「ほんの少しだけ気になってたんですけど~....なんで普通の端末で僕達は変身できたんですか~?特に何も特別なことはしてなかったのに~」
「涼くんいい質問ね。それも話すつもりだったわ。あと、それに対しては謝らなくちゃならない」
風は四人に頭を下げる。
「新学期に入る前、四人とも前使ってた端末が壊れたでしょ?」
「あ~そういえば~」
「ほとんど同じタイミングでしたね....」
「水の中落としたりしてたからな~...」
「もしかして...?」
「そう.......大赦が作った不思議な電波を使ってわざと壊したのよ....そして、勇者システムが組み込まれた端末をあなた達に買わせた....本当にごめんなさい....」
「いやぁ、端末があればいいんですよ!あれば!」
祐成が明るく答える。
「四月から僕達が勇者になることは決まっていたんですね....」
金はそう呟く。
「いろいろ手続きが遅くなっちゃってね....初陣の前に勇者のことについて伝えられなかったけど....」
東郷が申し訳なさそうに答える。
「端末のことなんだけど....金太郎くん以外のは全部新しい端末よ。知ってるだろうけど私たちの頃よりも精霊のバリアも攻撃力も各段にあがってるわ」
「俺....以外....?」
金は風の言葉に違和感を覚える。
「そう....金太郎くんの端末は....昔夏凜が使ってた端末....そして....あなたのお姉さんも使っていた端末をアップデートして新しくしたものよ」
「えっ....!?」
金は驚きが隠せなかった。憧れの姉ちゃんと、今ではプロのコーチである夏凜が使っていた端末。
(これを....姉ちゃんも....夏凜コーチも使ってたのか....!)
「あなたのお姉さんの武器は二丁の大きな斧、夏凜は二本の刀だったのよ....その端末は近距離の武器が出るようになっていた....」
「じゃあなんで俺の武器は....?」
「私が頼んだの」
東郷が話に割って入る。
「銀のことがあってからね....銀の大切な弟までに危険な前衛を任せたくなかった....銀だって....あなたも守るために戦ったんだから....だから私が遠距離型の武器にしてくれって頼んだの....それがあなたの武器の秘密よ....」
少し沈黙が流れる。
「私からの話は以上よ....」
そう言って風は面をとった。
「さぁ~て!今日はこの二人が退院したってことで!夏凜の家でお泊まり退院おめでとう会を開きましょう~!」
「テンションの切り替えどうなってるんだ!?」
金が驚いてツッコむ。
「ちょっと!何勝手に決めてんのよ!........良いけど」
「じゃあ決まりね~!さっそく行くわよ~!」
『わ~い!やったやった~!』
涼と園子は同時に喜ぶ。
「夏凜コーチの家どんななんだろ?」
「そうですね、祐成。楽しみです!」
東郷は隠れて誰かに電話をかける。
「まぁ、とりあえず今を楽しめばいいか!」
金はそう言ってみんなと部室を出る。