三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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新種

 

 21 二人の休日 

 

今日は鍛練もなく、一日中休みの日であった。金と涼はショッピングモールで遊ぶ約束をし、入り口で待ち合わせをしていた。

「あっ!金~!こっち~!」

金を見つけた涼は金に向かって大きく手を振りながら呼ぶ。

「ごめんごめん~!待たせちゃった?」

「いや~全然待ってないよ~今来たとこ~」

「祐成も瞬も来れなくて残念だな」

「しょうがないよ~瞬はみんなで旅行、祐成は実家のうどん屋のお手伝いだし~....」

「まぁ、とりあえず今日は二人で楽しみますか!」

「そうだね~!!」

二人はまず、ゲームセンターへとやってきた。

「よし!エアホッケーやるか!」

「いいね~!負けないよ~!」

目にも止まらぬ早さでパックが動く。二人の戦いを見物する人まで出るくらいだ。

「じ、時間切れか....」

「5対5....また同点だよ~....」

「じゃあ次はリズムゲームだっ!」

「望むところだよ!」

「えっと....二人プレイを選らんでっと....難易度は普通でいいね?」

「いいよ~」

曲が始まると二人の目つきが変わる。

(今度こそ決着を....)

(つける~!!)

「はぁ........どうだっ?!」

「金も俺も両方ともノーミスでパーフェクト....また引き分けだよ~....」

「くっ....俺たちはどうしてもこうなる運命なのかっ........しょうがないな!UFOキャチャーするか!」

「あの人形欲しい~!」

「よ~し!俺が取ってやる!........この辺だっ!........ってあー!....だめか....」

「やっぱりUFOキャチャーって難しいよね~....次は俺が!........よし!引っかかった!........あぁ~!なんで落ちるの~!」

・ ・ ・

「........服、見に行くか」

「そ、そうだね~....」

二人はそそくさとゲームセンターをあとにした。

 

_________________________

 

「ねぇ~金~!似合ってる~?」

「おっ、それもいいけどこっちの色違いもどうだ?」

「さすが金!センスあるよ~」

「へへ....ありがと!」

「金のも見てあげるよ~」

金は自分で選んだ服を持って更衣室に入る。

「どうだ?」

「おお~!かっこいいよ~!金はイケメンだし、すごい輝いて見えるよ~!!」

「さすがにはしゃぎすぎ、誉めすぎ!恥ずかしいだろう....」

「照れてる金も良いね~!」

「やめろって!」

二人は服を何着か買って、フードコートへやってきた。

「見ろよ、涼!新発売のジェラートだって!」

「金はジェラート全般好きだからね~でもそれを食べる前にっ!ご飯でしょ!」

「俺にとってはジェラートがご飯だい!」

「だ~め!ジェラートはデザートにしなさい!」

「は~い....」

「たまには気分転換でラーメンなんてどう~?」

二人は醤油ラーメンを頼んだ。

「ラーメン食べるの久しぶりだなぁ」

金はあっという間にラーメンを食べ終わる。

「よし、食べ終わったぞ!まだ腹には余裕ある!さっそくジェラート買って来るぜい!」

「やれやれ....」

金は両手に新発売のジェラートを持って涼のいる席に戻ってきた。

「見ろよ見ろよ!マンゴー×メロンだぜ!絶対おいしいよなぁ....これ....!」

そして涼もラーメンを食べ終わる。

「じゃあいただこうか~」

「いっただきま~す........う~ん!お~いしい~~~!!」

金はとびきり幸せそうな顔をし、席を立って飛び上がる。

「ほんとだね~おいしいね~」

「俺....本当に....産まれてきて良かった....ぅぅ....ぅぅ....」

「あ~....また泣いちゃったよ~いつも新しいジェラートを食べるたびに泣くんだから~」

「だって....だって....こんなおいしいものを食べて感動せずにいられるか....?」

「そのセリフも何度も聞いたよ~....」

金は一口一口を堪能しながらゆっくり食べてたいらげた。そのあとも金たちは話題の映画を観たり、ボーリングで金が無双したりして休日を楽しんだ。

「いや~もう夕方だな~」

「一日過ぎるの早いね~」

すると突然、金の端末が鳴る。それは東郷からの着信であった。

「?どうしたんだろう....東郷先生....」

金は電話に出る。

「あっ....もしもし?金?」

「どうかしましたか?休みの日にわざわざ電話かけてくるなんて」

「神託が来たの........」

「えっ!?本当ですか!?それで?」

「明日....侵攻があるそうよ....そこにみんないる?」

「涼ならいます。あの....明日のいつ頃か分かりますか?」

「わからないわ....涼くんに伝えといて....祐成くんと瞬くんにはまた電話しておくから....とりあえず明日....部室に集まってちょうだい」

「了解しました!」

そう言って通話は終了する。

「東郷先生なんだって~?」

「明日....侵攻があるらしい....」

「そうかぁ....もうすぐで三回目の侵攻から二カ月だもんね~....」

「俺たちはもうあの時とは違う....成長したんだ....!前みたいにやられてたまるか!」

金は夕日を睨みつけて言った。

 

_________________________

 

金たちは朝早くから部室へ集合する。

「今日のいつ侵攻が来るかわからないから...しばらくここにいてね....」

「夜まで来ない場合もあるってことですか?!」

祐成が驚いて聞く。

「まぁ....そういうことね....」

「そ、そんなぁ....」

「まぁ、夏休み明けの保育園訪問のときに使う道具を作って時間を潰せばいいでしょう」

「それまでにはまだ一カ月以上あるから鍛練してようぜ!」

「おい金!鍛練なんかしたら疲れちゃって戦うどころじゃなくなるだろう!」

「そ、それもそうか....」

東郷は部室を出て職員室に戻る。金たちは保育園に行ったときに披露する出し物を作りはじめる。

「なぁ....東郷先生たちってさ....彼氏とか....いるのかな....」

金のいきなりの発言に部室内が凍りつく。

「い、いきなりどどどどどうしたんですかぁ?!」

瞬が裏がえった声で聞く。

「え~....だってみんな気にならない?」

「まぁ、確かに....結婚しててもいい歳だしね~....」

「僕....こういう話....苦手です....」

「なぁ、前のパーティーでさ、東郷先生たちを見ててすごい仲良いなって思わなかったか?....きっと東郷先生たちはさ、結婚なんかしなくてもずっと幸せなんだよ....ああやって一緒に騒げる仲間がいるだけで....」

・ ・ ・

「な、なんだよ....この沈黙....」

「そんなこと言うなんて....祐成らしくありませんね....」

「前にもその言葉聞いたことがあるような....」

その時、いきなり四人の端末が一斉に鳴り響く。

!!

「来たっ!侵攻だ!」

四人は椅子から立ち上がって窓の外を見る。眩しい光が四人を包み込んだ。

 

_________________________

 

 22 人型バーテックス 

 

「なんだ....この樹海....いつもと違って霧が出てる....!」

「周りが全然見えねぇな....」

「皆さん!バラバラになっちゃいけません!背中合わせになってどの方向から攻撃されても防げるようにしましょう!」

四人は背中を合わせて周囲を警戒する。緊張感が漂う。

その時、自分たちと同じくらいの大きさの黒い影が四人に向かってくる。そして....

!!

涼は黒い影の攻撃を防いだが、黒い影はまた霧の中に姿を消してしまう。

「みんな大丈夫か!?」

「大丈夫だよ....ただ....相手は結構素早いね....」

「今の大きさから考えて....だいぶ小さい敵だと思われます」

「このままじゃこっちが攻撃されてばっかりで仕掛けられない....!早くこの状況をなんとかしなくちゃ!」

「!それなら任せてください!」

瞬が上へ高くジャンプする。

「何やってるんだ瞬!離れると危ないぞ!」

瞬はブーメランを二つ持って空中で回る。すると小さな竜巻が発生する。

「切り札を使わなくてもこれくらいの大きさの竜巻なら作れます!」

「おぉ....!飛ばされそうだ....」

瞬の活躍により、霧が晴れる。

「これでやっといつもの樹海になったな!」

「みんな~!あそこ見て~!人影が!」

三人は涼が指さした方向を見る。そこには四つの人影が見えた。

「俺たちの他にも勇者がいたのか!?そりゃあ心強い!お~い!」

祐成が人影の方に向かう。

「!?ま、待てっ!こいつら人じゃない!」

金の呼びかけにより、祐成はいち早くその本当の存在に気づいて距離をとろうとするが....四つの中の一つに近づかれてしまう。金は高いところに登り、人影の正体を探る。

「こ、こりゃ驚いた....!背格好、姿、武器....俺たちにそっくりだ....けど....全身真っ黒....こんな人間にそっくりなバーテックスもいるのか!?」

四体のバーテックスはそれぞれ似た武器も持つ勇者の元へと向かってきた。

「同じ武器同士で戦おうってか........上等だっ!」

金がそう言ったのを聞き、勇者部一同も戦闘体制に入る。

 

_________________________

 

「目には目を!レイピアにはレイピアだ!」

両者の激しい突き合いが繰り広げられる。

「くっ....なかなかやるな....!なら....俺の....最速スピードだぁぁぁぁぁー!!」

祐成が一気に突きのスピードをあげて攻めるが....

「!?こ、こいつ....俺の突きについてきてやがる!」

なんと祐成の突きのスピードを超えるスピードで突いてきた。

「なんだ.....こいつ........強すぎるっ....!」

祐成はなんとか紙一重でかわす。

「ぬおおっ....!ちっ....少し頬を斬られたか....」

祐成の頬から少し血が垂れる。

「こ、こいつらの攻撃....!精霊のバリアが働かないぞっ!」

金が動揺しながら言う。

「いま撃たれたけど....全く機能しなかった....右足をかすめただけだったから良かったけど....」

「どうやらこいつら....僕たちよりほんの少しだけ強いようですね....僕もちょいと腕を....」

「うん....なかなかやるよ~....」

瞬と涼も歯が立たないようだった。しかし、みんなすり傷程度しかダメージを受けていない。

「そうだ!...あの対人戦のときみたいにすればいいんだよ~!」

「....!そうか、涼!」

いち早く涼の考えていることがわかった金は斧を持つ人型バーテックスの元へと向かう。

「なるほど、そういうことですね....」

「はは~ん....わかったぜ....!」

瞬はレイピアも持つバーテックス、祐成はブーメランを持つバーテックスのもとへと向かう。

「そう!それでいいんだよ~!同じ武器だからって同じ武器同士で戦わなくていいんだよ~今こそあの鍛練の成果を見せるとき!」

「みんな!今度こそ俺たちの強さ、見せつけやろうぜ!」

『おう!』

 

_________________________

 

「瞬よりちょっと強いって聞いたら....無性にやる気が沸いてきたぜ!倒しがいがある!」

瞬に似たバーテックスは祐成目掛けてブーメランを投げる。

「とりあえずこれは弾いとくか....そして....近づいて....斬るっ!」

祐成はレイピアを振るが、もうひとつのブーメランをうまく使われて防がれてしまう。

「なるほど....やるな....」

今度はバーテックスの方から攻撃をしてきた。

「自分から突っ込んでくるとはな....」

祐成はそう言い、向かいうつ。

「なかなかいい感じの振りじゃねぇか....そして........お前はこれが狙いなんだろ....?」

さっき弾いたブーメランが祐成の後ろから飛んでくる。

「前と後ろからの挟み撃ち....前、瞬にやられたようにはいかないんだよ!」

祐成は体を少し傾けてそれを避ける。バーテックスは自分のブーメランを避けられず、バーテックスの首が吹っ飛んだ。

「へへへ....どうだい........そろそろトドメだっ!おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃあっ!」

祐成は残ったバーテックスの体を余すことなくレイピアで貫く。バーテックスの体は跡形もなく、消えてしまった。

-

「このバーテックスは....祐成とは違って少しは頭がきくようですね....」

瞬は祐成に似たバーテックスの戦いで苦戦していた。体中切り傷だらけである。

キンッ!キンッ!バキンッ!

ブーメランとレイピアがぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

「たぁっ!」

瞬はブーメランを鎌のように扱い、力強く縦に振る。その反動でバーテックスは後ろに下がった。

「ようやく距離をとることができました....それでは....!」

瞬は一気に二つのブーメランをそれぞれ違う方向に投げる。バーテックスはその瞬の行動に困惑する。

「くらいなさいっ!僕の新しい技を!」

バーテックスの左右からブーメランが飛んでくる。バーテックスはそれを二本のレイピアで防ぐが....

「ブーメランは弱そうに見えて実はとても応用がきくんです!それでもう....あなたは両腕を使えません....!無防備状態です!そして....」

瞬はなんともう一本ブーメランを出していた。そして近づく。

「三本目のブーメランで終わりですっ!」

瞬はブーメランを振り下ろし、バーテックスを頭から真っ二つに斬ってしまった。

「本当は祐成との組み手で使う作戦でしたが....あまりにもかかんに攻めてくるから使えませんでした....あとは....涼と金だけですね....」

 

_________________________

 

「あのときは速攻銃を破壊されちゃったけど....今は違う!」

金はうまく間合いをとりながら近づかれないように戦う。しかし、金の攻撃はすべて防がれているように見える。

「くっ....!やっぱりダメか....?」

次の瞬間、驚くべきことが起こる。涼に似たバーテックスは大きな斧をブーメランのように思いっきり投げたのだ。

すごい勢いで回転しながらてんでくる。

「うおおおっ!危ねぇ....!」

金はギリギリしゃがんでかわした。

「まさかあんなことしてくるなんてな....でも、よし!これであいつは無防備に....ってあれ?!」

いつの間にかバーテックスは斧を持っていた。

「そんな....!今投げたはずっ....!あいつは何本でも出せるのか!?」

バーテックスは金に向かってジャンプした。距離をつめてくる。しかし、何を考えたのか金もバーテックスの方にジャンプする。バーテックスは金の行動に少し戸惑いを見せ、攻撃が遅れる。

「へへっ!驚いたろ!まさか遠距離で戦う俺が逆に近づくなんてな!銃もな........近くの方が威力出るんだぜっ!!」

バーテックスは少し行動が遅れたせいで斧を大きく振り上げたままで体ががら空きである。

「お前のその腹にぶち込んでやるっーーーー!!」

金の光線がバーテックスを粉々にする。

-

その頃涼は金に似たバーテックスの光線を斧を振り回して防ぐ。

「鍛練のときみたいにやっつけちゃうよ~!」

涼はバーテックスに向かって野球のバットを振るようにして横の一振り。しかし、避けられてしまっていた。

「よ、避けられた....!....うわぁ!」

涼は射撃により、吹っ飛ばされる。

「ふぅ....直撃しなくて良かった~....」

涼はゆっくり立ち上がる。

「なかなかすばしっこいね~....次こそ外したら今度こそ危ないよ~.......ということで!俺も斧を二本使ったら良い~!」

涼はそう言うと当たり前のように斧をもう一本出す。

「斧二本持ちだと結構重たいから使いこなせるかわからないけど....やってみるしかない~!」

涼は片腕ずつで斧を持ち、回し始める。

「ダブルプロペラ~!」

同じようにバーテックスに斧を振るが、またしても避けられる。バーテックスは涼の後ろに回り込んでいた。

「確かに隙は大きいけどね~....さっきと違うところは二本あるところだよ~!えい~!!」

もう一本の斧をバーテックスの方へぶん投げた。バーテックスの体は上半身と下半身に真っ二つにわかれた。

「なかなか楽しかったよ~」

涼はそう言って体が二つになったバーテックスにとどめを刺す。

-

「お~い!みんな~!」

四人は無事勝利し、合流する。

「ケガは?大丈夫か?」

「全然問題なし!これくらいかすり傷さ!」

「今回は余裕があったよ~」

「みんな!やりましたね!」

四人はそれぞれ笑顔でハイタッチをすると徐々に樹海化が解け始めた。

 

_________________________

 

 23 プールで鍛練? 

 

人型バーテックスの侵攻から一週間後、夏休みも半分を過ぎ、この日四人は夏凜に呼ばれて大赦が所有するプールにやってきた。四人は夏凜の指示通りに更衣室で水着に着替え、プールサイドへやってくる。

「とりあえずプールサイドにいろって言われたけど....」

「どこにいるんだ?」

「みんな、来たわね」

後ろを振り向くといつの間にか夏凜が立っていた。

「今日はいつも頑張ってる俺たちにご褒美ですか!」

「違うわ!今日は泳ぎに泳ぎまくってもらうわよ!」

「ですよね~....そうなりますよね~....」

「でもあんたたちだけじゃつまらないから強力な助っ人を呼んだわ!」

夏凜がそういうと奥から誰かやってくる。

「え!?風さん!!」

「私のよきライバル、風よ!」

「みんな、今日はよろしくね!相手が子供だろうが容赦しないわよ!」

「風さん~泳いでる暇なんてあるんですか~?」

「大赦は勇者を支えるのが仕事よ!これも大切な仕事のうちだわ!」

五人は準備体操をしてからプールに入る。するとジャージを着た東郷もプールサイドへ入ってきた。

「私も見学しに来たわ」

「あっ!東郷!私の人魚のような華麗な泳ぎを見てなさい!」

「風さぁ~ん....」

風の隣のレーンにいる金が風に話しかける。

「どうしたのよ?」

「相手は男四人ですよぉ?体力も違えば筋力も違う。しかも僕たちは数ヶ月の鍛練で鍛えられていますし....悪いですが....そんな俺たちに女性の風さんが勝てるとは思いませんけどねぇ~....」

金は余裕の表情で風を見つめながら言った。

「ほう....言ってくれるじゃない....痛い目見ても知らないわよ....?」

「こ、この二人、やけに燃えてる....」

さらに金は夏凜にも

「夏凜コーチもぉ....なんで一緒に泳がないんですかぁ?コーチなら一緒に泳ぐべきでしょう~?あっ!もしかして風さんに負けるのが怖いんですかぁ~?それとも....本当は泳げないとか....」

「な、なに言ってんのよ!ふざけて煽るのもいい加減にしなさい!そんなに言うんだったら....良いわ!私も一緒に泳いでやるわ!」

「じゃあ私も泳ごうかしら?」

「東郷、あんたはやめときなさい。思春期真っ盛りの男子中学生には刺激が強すぎるわ」

夏凜はそう言い、走って更衣室に向かう。

「フフフ....夏凜コーチ....ちょろい....!」

すべては金の思惑通りに進んでいた。

 

_________________________

 

金たちは水になれるため、プールに入って少し泳ぐ。

「じゃあそろそろやるわよー!」

東郷のかけ声で一同はプールからあがった。ついに個人での競争が始まるのだ。

「では一人ずつ意気込みをどうぞ!」

一番右のレーンにいる夏凜は

「私が泳ぐからにはもちろん、一番をとるわ!完成型コーチの実力を味わいなさい!」

その左の風は

「あら、たまたま言うことが被ったわね~。夏凜にだけは負けたくないわ!もちろんあんたたちにもね!」

そのまた隣の金は

「みなさん強がりすぎですよ....一番はこの俺、三ノ輪金太郎様だっ!」

その隣の涼は

「あまり泳ぐのは得意じゃないけど....できるだけ頑張るよ~!」

「僕も同じです」

涼が言った後すぐに瞬はそう言う。

「現役勇者の力を侮ってはいけませんよ....水泳は自信があるんじゃい!!」

祐成がそう叫ぶ。

「それではみなさん、飛び込み台の上へ!」

6人は飛び込み台に乗る。ルールはクロールで五十メートルを一番先に泳いだ者の勝ち。プールの直径は二十五メートルのため、ターンをする必要がある。

「位置について........よーい、ドン!」

東郷の合図で一斉に飛び込む。半分を泳ぎきった時点でトップ争いは風、夏凜、金、祐成だ。

(なかなかやるな....夏凜コーチも....風さんも....女性にしてここまでの早さとは....だが....この三ノ輪金太郎様の力はこんなものではない!)

祐成は残り十二.五メートルを過ぎたあたりでスピードをあげる。

(優勝はこの俺だ!)

しかし、他の三人はあっという間に祐成を追い上げ、越す。そして三人はラストスパートをかける。

(((あと五メートル....!)))

-

「ぷはぁっ!一位は誰っ!」

夏凜が水から顔をあげて東郷に聞く。

「風先輩と夏凜ちゃんが同着でした」

「やっぱりここでも決着はつけられなかったわね....」

風は悔しげに言う。

「しかし........二位で....」

『えっ....?』

夏凜と風は声を合わせてそう言った。

「一位は........金でーーす!!」

「やったぁぁぁーー!!」

金は勢い良く拳を突き上げる。

「う、嘘でしょ....!?私が....負けたの....!?」

「つ、ついに世代交代の時ってことね....先輩は嬉しいワ....」

「三位は祐成くん!四位は涼くんよ!」

「三人とも速すぎですよ....!」

「全然追いつけなかった~」

「あれ?瞬は?」

瞬は二十五メートル地点にも着けず、十二.五メートル地点でぶくぶく言いながら沈んでいた。

「わぁ~~!!大変だ~!瞬ー!」

みんなで瞬をプールからあげる。

「これだから........水泳は........嫌いなんですよ........ガクッ....」

『瞬ー!』

 

_________________________

 

この後も金たちは休憩をはさみながら何時間か泳いだ。大赦を出た四人は歩きながら話す。

「みんな、夜ご飯はうちで食べないか?」

「おっ、いいね~!祐成の家のうどんはおいしいからな~!」

金たちはうどん屋でもある祐成の家へと入る。

「いらっしゃい、我がホームへ!四名様です!」

祐成は厨房に向かってそう叫び、金たちと同じ席に座る。

「お前は店員なのか?客なのか?」

「今はどっちもさ!あとでちゃんとお金も払うし!」

金のツッコミも含めた質問に祐成はまじめに答える。涼は味噌煮込みうどん、金は肉ぶっかけうどん、祐成は激辛うどん、瞬は大盛り素うどんを頼んだ。

「それにしても....今日は特に疲れましたね~....」

「そうか?俺は楽しかったけどなー」

まだまだ泳げるという感じに金は言う。

「瞬は苦手だもんね~俺もちょっとキツかったよ~」

「そう考えるとまだまだたよな、俺たち。俺たちよりも年上で女性の夏凜コーチたちは全然平気そうだったし」

「あの人たちが元気すぎるだけじゃ....」

すると、机の上に四人がそれぞれ頼んだ料理が並べられる。

「ってことで!これからも俺たち四人、頑張っていこうぜ!いっただっきま~す!」

金は元気よくそう言ってうどんにがっつく。

「まったく....そんなに早く食べて喉につまらせないでくださいよ....?」

こうしてまた一日が終わった。

 

(第八話に続く)

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