三ノ輪金太郎は勇者である   作:てんぱまん

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あのときの思い出

 

 24.夏祭り 

 

ある鍛練からの帰り道。夏休みも残りわずかとなっていた。いつものように四人で帰っていると、涼はバックの中身に手を突っ込み、くしゃくしゃになったポスターを中から出し、広げてみんなに見せる。

「じゃじゃ~ん!見てよ~このポスター!」

涼が見せたポスターは夏祭りのポスターであった。

「明後日開催の夏祭りですか....もうそんな季節ですね....」

「いいね~涼ー!今年もみんなで行こう行こうー!」

「浴衣着て、屋台回って....毎年楽しいんだよな....」

「じゃあ決まりだね~!」

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-

あっという間に時は過ぎ、夏祭り当日がやってくる。

「お~い、みんな~!」

金と涼が待ち合わせ場所にいる祐成と瞬に向かって手を振りながら走ってくる。

「お前ら二人とも遅いぞ!学校来るのもいつもギリギリだし、ここでの待ち合わせでも遅れるつもりか!」

「祐成、まだ集合時間の五分前です。僕たちが早すぎただけですよ」

「それよりみんな....浴衣似合ってるねぇ~!」

「涼も似合ってるぞ!」

「えへへ~そう~?」

「まったく....この二人はまたいちゃいちゃしやがって....ほら、もう行くぞ」

『は~い!』

四人は全員で屋台を回る。焼そばとイカ焼きを買い、行列の出来ている金魚すくいの屋台に並んだ。

「さすが夏祭りの代名詞ともいえる金魚すくい!人気ですね~」

「いやいや、夏祭りの代名詞といったら射的だろ!」

「い~や、綿あめだね!」

「どれでもいいよ~」

四人は楽しそうに話していた。とても幸せな時間。ここにいる誰もがそう思っていた。この時間が永遠に流れれば........

(おっ!あんなところにリンゴ飴の屋台が!ちょうど誰も並んでないしちょっくら買いに行くかな!)

そう思った金は他の三人に何も言わずにリンゴ飴の屋台の方へ行ってしまった。

数分後、金はリンゴ飴を持って金魚すくいの屋台へ向かう。

(確かこの辺にいたはず....あれ、三人とも並んでたのにいないぞ!?さっきまで確かにいたのに!)

金の顔は真っ青になる。

(もしかして俺....はぐれちゃった!?)

 

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「わっしー!あっちの屋台いこ~よ~」

「いいわよ、そのっち」

そう話しているのは東郷と園子だった。二人もここの夏祭りに来ていたのだ。浴衣を着て、二人きりで....

するとそこに

「ん?あれは....東郷先生~園子先生~!」

「あら!金じゃない!一人なの?」

「それがですね....お恥ずかしい話なんですがはぐれちゃいまして....」

「じゃあスマホで連絡しなよ~」

「はっ!そうか、その手があったか....!」

「単純なことに気がつかなかったのね....」

金はスマホを取り出し、何かを打ち込んだ後、東郷と園子に元気よく言った。

「じゃあ東郷先生、園子先生、行きましょうか!」

東郷と園子は思いもしなかった金の答えにきょとんとする。

「え....?涼くんたちはいいの....?」

「花火がうちあがる時にまた会おうって言ったんで!東郷先生たちと屋台を周ってみるのも良いかなって....嫌....ですか?」

「全然そんなことないんよ~!!むしろ嬉しいんよ~!」

「そうよ、金!一緒に周りましょう」

「じゃあほら、早く行きましょうよー!」

金は二人の手を握り、走って二人を引っ張る。

「早いよ~リトルミノさん~!」

「そんなに急がなくてもお祭りは逃げないわよ!」

二人はそんなことを言っていたがとても楽しそうに笑っていた。東郷と園子はこんなことを思っていた。あの時、銀がいたらこんな感じだったのかな........と........

「よ~し、今日はいっぱい楽しむぞ~!!」

金はとても幸せそうな笑顔でそう言う。その顔は二人のズッ友がよく見せた顔にとても似ていた。

 

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「射的では負ける気がしませんよ!」

「私だって!」

東郷と金の一騎打ち。二人は景品に見事に当てるが全く倒れなかった。

「私のアルファー波が効かなかった....」

「なんですか!あの射的!ぼったくりですよ!」

「だいたい夏祭りの射的ってあんなものだよ~」

東郷は怒っている金をなだめながらさっきまで並んでいたができなかった金魚すくいをやりにきた。

「よ~し、取りまくるぞ~!」

「私だって負けないよ~!」

「金魚すくいのコツは....」

-

「一匹も取れなかった....」

「金はすくい方が雑なのよ。もっと斜めから素早く、工夫して....」

「わ、分かってます分かってます、うまくできなかっただけです~....」

金は東郷の話が長くなることを察して誤魔化した。東郷は一匹、園子は金魚を二匹すくえたため、一人一匹ずつもらった。

「園子先生、ありがとうございます!この金魚、大切にします!」

「これくらいお安いご用なんよ~」

「さて♪次はどこ行きましょうか!」

金は体を弾ませながら二人に聞く。とても楽しそうな様子であった。

「あれ....?ちょっと、二人とも!僕の顔をじっと黙って見つめてないで何か案を出してくださいよ!」

「あっごめんごめん。少し....ぼーっとしちゃってたわ!」

「園子先生なら分かりますけど東郷先生まで....もしかして....顔にさっき食べた焼そばの青海苔とかついちゃってます?」

「いえ、ついてないわ!....じゃ、今度はヨーヨー釣りに行きましょうか!」

ヨーヨーは無事みんな一個ずつ取ることができた。金はヨーヨーで遊びながら歩く。

「見て~!わっしー、リトルミノさん~!」

園子が指差した屋台ではいろいろなストラップが売られていた。

「かわいいのがいっぱいあるじゃない!」

「有名なキャラクターとか....色違いもあっておもしろいですね!」

「ねぇねぇ~記念にさ~....三人で何かストラップ買おうよ~」

「おっ、いいですね~!!おそろいにしちゃいますか~?!」

「....」

「....?東郷先生?」

「あっ、何でもないわ!」

「何なんですか~さっきから~!」

「ほ、本当に大丈夫よ!何にする?」

「俺、犬が好きなんですよ!だからこの犬のストラップにしません?犬を見てるだけで癒されるんですよね~....」

「いいね~リトルミノさん~これにしようか~」

「........」

三人は色違いの犬のストラップを買う。三人は笑顔で顔を見合わせた。もうすぐ花火がうちあがる時間である。

 

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「わっしー、リトルミノさん~もうこんな時間だよ~もうすぐ花火があがるよ~」

「そうですね~....あっという間でした....」

「........ねぇ、私たち花火を見るのにとっておきの場所を知ってるんだけどみんなを誘ってそこで見ないかしら?」

「そうなんですか!?ぜひそうさせてください!」

三人は人ごみが少ない森の中に入り、ちょっと歩くと少し開けた場所に出た。

「あっ、そうだ~みんな喉渇いたでしょ?何か飲み物買ってくるよ~」

「いやいや、俺が買ってきますよ!」

「いいんだよ~二人でここで待ってて~」

そう言って園子はもと来た道を戻っていく。金は位置情報を涼に送り、ここにくるように言った。東郷と金は横に並んで空を見上げていた。満天の星空が広がっている。

「花火楽しみですね~」

「........」

「........やっぱり........おかしいですよ、東郷先生。何かあったんなら話してください!勇者部六箇条、でしょう?」

「........そうね」

東郷は空を見たまま話し始めた。

「今日はとても楽しかったわ....三人でわいわいはしゃぎながら屋台を周って....」

金は真剣に東郷の話を聞く。

「....私が小学六年生の時もね....夏祭りに行ったの....」

「そうなんですか。」

「そのっちと二人だけでね....」

金はその言葉の意味を察する。

「だから今日は....あの時銀がいたらこんな感じだったんだろうなってずっと思ってた....」

「....やっぱり、姉ちゃんと俺ってそんなに似てるんですね」

「なんかごめんね....あなたのことを銀じゃないのに銀みたいな感じで言っちゃって....」

「いえいえ!逆に嬉しいです!」

「............ぅぅ........」

「?........東郷先生?」

東郷はいきなり金の方を向いたかと思うと強く金を抱きしめた。

「ちょっ!?東郷先生!?」

「私....私すごい怖かった....!金が三回目の侵攻から戻ってきたとき....血だらけで....傷だらけで....意識もなくて....とても怖かった....!」

「........」

抱きつかた金はいつものように抵抗するのをやめる。

「銀が....死んじゃったときとすごい状況が似ていたの....ちょうど遠足からの帰り道で....夕方で....私もそのっちも胸騒ぎがした....」

「........」

金は東郷に抱きつかれたままただ黙って東郷の話を聞く。

「だから....金が意識を取り戻したとき....すごい安心したわ....でも........それから金がバーテックスとの戦いに行くとき....前よりもずっと....とても怖くなってしまった....あなたは大丈夫だと言うけれど!....私は....心配で....心配で....」

「........」

「私は神樹様を恨んでる!銀はあなたを守るために死んだはずなのに、何で金が勇者に選ばれなくちゃならないのよ!どうして....金までつらい思いをしなくちゃならないのよ....幸せに生きてほしいというのが....私たちの....銀の願いだったのに....」

「........」

「私は毎日が恐ろしいわ....いつ神託が来るのか.......いつ侵攻があるのか........」

「........」

「あなたが遠くに行ってしまいそうで........怖いのよ!!」

すると金は優しく東郷の背中に両手をやり、さすった。

「........東郷先生........言ってくれてありがとうございます....でも.......俺は本当に大丈夫です!遠くになんか行きませんし、ずっと東郷先生のそばにいますよ....!それに....俺には強い仲間がついているんです!そして....あなたもその中の一人です........だから........心配しないでください!!」

「金っ........!」

東郷はしばらく金から離れなかった。金もそれを嫌がらなかった。むしろ優しく受け入れていた。

 

_________________________

 

それから少し後、園子と涼たちは途中で会ったのか一緒にやってきた。

「危ない危ない、ギリギリセーフ!」

涼が両手を横に振る。

「さて、金は東郷先生と一緒に何してたんでしょうかね~?」

「祐成....またそんなこと言ってると誤解を生むゾ」

金はそんなことを言いながらもさっきあった出来事を見られていなくてよかったと思った。

(東郷先生ったら....あんなに強く抱きしめたらアレが.......もっと身長低かったら危なかったな....って何考えてんだ、俺!)

「あっ、見て~ついに始まったよ~!」

園子が空に向かって指を指す。

「わ~本当だ~よく見える~!」

「綺麗ですね~」

一同は花火に魅了される。みんなの目は空に釘付けだ。

「........こんな幸せな日常を........バーテックスなんかに奪わせない....!」

金はそっと呟く。

「そうだな....祭りに来てる人たちみんな幸せそうだった....」

「なおさら負けられないね~!」

「忌々しいヤツらを根絶させましょう!」

「ああ!俺たちの手でな!」

四人は肩を組む。

「ほら、東郷先生も、園子先生も!」

「えっ?私たち?」

「そうですよ~先生たちも仲間じゃないですか~」

四人に促された二人も肩を組んだ。

「また明日から頑張ろうな!」

---

---

---

「はぁ~....また地獄の日々が始まる....眠いし....」

祐成は学校の机に顔をつける。

「宿題をあれほど早く終わらせなさいって言ったのに....やらないから寝不足になるんだ!」

祐成は金からお咎めを受ける。

「金のお説教は長くなりますよー」

「そんなこと言ってないで助けて~瞬~!」

「ダメです!全部あなたのせいなんですから!」

「そんな~....あっ、そうだ!」

祐成は金の背中にそっと回り込み、わき腹をくすぐる。

「ふぁぁっ!ひゃあぁぁ~~」

「うししししし!これやるのも一学期以来だな!そしてやっぱり良い反応だ~....」

「お説教中にやるとは....良い度胸だ........ゆ~う~せ~い~!」

「ひゃはははっ!逃げろ~!」

「コラァッ!待ちなさい!!」

祐成と金は廊下へ走っていってしまった。

「いつもの風景が戻ってきたね~」

 

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 25.満開 

 

学校が始まって一週間が経った。金たちは東郷から放課後に大赦に来るように指示され、指定された会議室のような場所で待っていた。金たちがこの部屋で数分くらい待ったとき、風と東郷が部屋に入ってきた。

「今回....みんなを大赦に呼んだのはお役目について大切な話があるからよ....」

東郷はいきなり本題について話し始める。

「この前....ちょっとだけ話した満開のことについてよ」

『....!』

すると今度は風が話し始める。

「今の勇者システムの満開システムの準備ができた....バーテックスたちもどんどん強くなってるしね....」

「それはつまり........戦いも終盤だと....?」

金が初めて口を開く。

「まだそれについての神託はきてないけど....おそらくそうよ....」

「だから....今日は私から昔の勇者システムと....実装予定の満開システムについて話すわ....」

風はそう言って説明を始めた。

「私たちが勇者だったころの満開システムは.....それはひどいものだった....満開はね....満開ゲージが満タンになることでできる技....満開してる間はとても強くなる。けどね....その代わりに....体の機能の一部を失う...!」

金たちは特に驚かなかった。東郷から少しこの話を聞いていたのもあったし、その覚悟で勇者になったからだ。

「一番ひどいのは...その満開の代償のことを大赦が一切教えなかったこと....」

「え........大赦が...」

「騙されてたってことですか...?」

「そうよ....」

今度は東郷が話の続きを話し始める。

「私たちの頃の満開は....敵を倒したり....ダメージを与えることで満開ゲージをためて満開していたわ....でもあなたたちが実装予定の満開システムは....」

『........』

「最初から満開ゲージが満タンの状態で....やろうと思えば最初から満開できる....けど満開した場合、満開ゲージはゼロになって精霊のご加護は働かなくなる....」

「じゃあ....一度満開したら....生身の状態ってことですか....」

「そうよ、金....私たちの頃の満開システムは何度も満開ゲージをためられて何度も満開できたけど....金たちの場合は....一回しか満開できない....満開ゲージが満タンの状態で敵から攻撃を受けたら精霊のご加護が働く代わり、満開ゲージは減って満開できなくなるわ....」

「強い力を手に入れる代わりに生身の状態で戦うか....攻撃を受けない代わりにいまいち弱い力で戦うか....」

瞬がそう呟く。

「昔の満開システムとの大きな違いはもう一つある....それは........供物を捧げることはない。」

 

満開システムを実装しようと思えば最初からできた。しかし、風たち大赦はそれをしなかった。理由は勇者になってすぐに満開を使いこなすことはできないだろうということ、もう一つは....

「けどね....満開は強力な攻撃を放てる代わりに....体への負担が大きいわ。長時間満開状態で戦うほど変身が解けた後の体力の消耗が激しい....特に気をつけてほしいのはフルパワーで戦い続けることね。これが一番危険だわ....」

「あと満開システムを導入するのと同時に通常状態のステータス、精霊のご加護をパワーアップさせるわ」

「おお!それは嬉しいです!」

祐成が体を乗り出して言う。

「今までは巨大バーテックスと人型バーテックスの攻撃に対して精霊バリアが働かなかったもんね....いやはや、バーテックスの進化って恐ろしい....」

「じゃあみんな....満開システムの導入に賛成ということね....?」

風の質問に四人は静かに頷いた。

「分かったわ....それじゃ、端末を渡してちょうだい。」

四人は風と東郷に端末を渡す。

「ついに....大詰めって感じだな....」

「じゃ、瞬くん以外帰って良いわよ」

「え?僕だけ?」

「何で瞬だけ居残りなんですか!」

祐成は不服を訴える。

「これは個人の話なの....瞬くんが良いって言うなら後で瞬くんから聞いても良いわ」

風は冷たい声で祐成にそう言った。

(大赦の本部にいるときの風さんは別人みたいだなぁ....)

そして三人は会議室を後にする。

「それで....僕に話って....?」

「あなたのご先祖さんに関わる話よ」

「僕の先祖....ですか....?」

「ええ....この話はあなたの家族も知らないだろうし私たちもつい最近突き止めたことよ」

「........」

「瞬くんと........沖縄にいたとされる勇者、古波蔵 棗さんの関係について....」

 

_________________________

 

 26.これからの戦い

 

しばらくしてから瞬は部室に戻ってきた。

「おう、おかえり!瞬!」

「何の話だったの~?....話したくなかったら話さなくていいけど~」

「........なぜ僕が勇者に選ばれたのか....それが分かったとだけ言っておきましょう....」

「....そうか」

三人はそれ以上深堀しなかった。

「それより皆さん、神託がありました。さっき東郷先生に伝えてくれと頼まれたので言います。明後日....侵攻があるそうです」

「全く....神樹様は毎回毎回極端なんだよなぁ....日程が近すぎたり遠すぎたり....」

「端末集めちゃってるけどそれまでには終わるのか?」

「明日の夕方には終わるそうですよ、金。....そして明日中にその儀式を行うそうです」

「了解~!」

-

明日の夕方、金たちは大赦に行き、神聖な服装に着替え、儀式を行う。そこで四人は巫女からアップデートされた端末を受け取った。

『........』

四人は儀式を終えた後、もとの服に着替えて風と東郷のもとに会いに行った。

「....とても緊張しましたよ....なんか....本当にバーテックスとの戦いが終わりそうで....」

祐成には似合わない声のトーンでそう言った。

「正直言うと....バーテックスはこの間にもものすごい進化を遂げてる....人型とか巨大型とか様々な形にね....」

「もしかしたらこれからも新種のバーテックスが出る可能性もあるわ....いくらパワーアップしたからって油断しないようにね....」

「もちろんわかってますよ。俺たちだって痛い目見てるんですから....」

「....そうよね!いらない心配だったわ!」

東郷は笑顔でそう言うが四人にはバレバレであった。

(東郷先生....夏祭りの時にああは言ったけどやっぱり心配なんだな....まぁ当然っちゃ当然なんだけど....)

次の日。

神託通り、五回目の侵攻が来た。

 

(第九話に続く)

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