帰郷したら許嫁が束縛系ヒロインになっていた。   作:黒樹

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エロゲのトゥルーエンドいいよな。


白狐祭

 

 

 

眩い光が彼女を覆い隠す。目を閉じてもなお目蓋を焼く光に抗い、咄嗟に右手を伸ばすと手のひらが何かを掴んだ。柔らかで不定形な弾力のあるすべすべしたもの。指の間から零れ落ちるかと思って強く掴めば、吸い付いたように離れない。覚えのある感触を逃さないように掴み直せば、甘く蕩ける声が耳に入った。

 

「んっ。んぅ……」

 

強い光に続いて、聴覚に届く声に意識が半ば覚醒する。

俺はゆっくりと目を開けて、直面した現実に硬直した。

右手が掴んでいたのは母性の象徴とも呼ばれるもの。それも、何故か“同じ布団”で寝ている智代子のおっぱい。

はだけた浴衣の共衿から手を突っ込み、零れ落ちそうな彼女の乳房を掴むという事態に、俺はただただ呆然と状況を見つめるしかなかった。

すぐに手を引っ込めればよかったものの、衝撃が大きすぎてそれすらもわすれてしまう。

 

「ん、んぅぅ……」

 

そして、タイミング悪く智代子の長い睫毛が揺れる。目を覚ますサインに気づくが時は既に遅く、眠たげな目が一緒の布団に横たわる俺の存在を認識する。

 

「……ふぇ?先輩?」

「お、おはよう」

 

そっと手を共衿から抜いてみたが、ポロリと零れた乳房の桜色の部分が露出する。

思わぬラッキースケベに目を奪われていると、不自然な俺の視線に気づいた智代子が自分の胸元に視線を下ろした。

そこにあったのは、はだけてポロリした乳房。

彼女の顔はみるみるうちに羞恥に染まり、身を守るように腕で自らの体を抱きしめた。

 

「ちょ、ちょこが寝ている間に何をしているんですか先輩!?」

「違う。これは事故だ。事故」

 

慌てて弁明–––否、弁解しようとしたが智代子の目には懐疑的色が宿る。

 

「じゃあ、なんで先輩がちょこと同じ布団で寝てるんですか!」

「起きたら一緒の布団だったんだよ」

「そんなはずありません。だって昨日、先輩は琴音先輩と美咲先輩と一緒の布団で寝てたじゃないですか!」

 

智代子は別の布団で寝ていた。それなのに今は布団が一式しかない。その上で同衾しているとなれば、智代子はまず先に起きて不貞を働いていた俺を疑うだろう。

 

「とにかく、俺は何もしてない」

「ちょこのおっぱい触ったじゃないですか!」

 

–––訂正。襲い掛かったりはしていない。

 

「やっと起きたと思ったら、寝起きから元気ね」

 

俺と智代子が言い争っていると別の部屋からひょこっと琴音が姿を現した。家事をしていたらしく、シンプルなエプロンを身につけてお玉を手にしている。

 

「もうお昼よ。中々起きないから、相当疲れてたのね」

「疲れて……?」

 

何を妄想したのか智代子の頰が赤く染まる。

 

「そう言われればどことなく体が痛い気も……え、まさかそんな……ちょこが先輩と?」

 

あうあうと金魚のように口を動かす。息ができず喘ぐような彼女に、可愛らしさを感じていた。

 

「はぅぅぅぅぅ」

「おまえ、昨日のこと忘れたのか?」

「ま、待ってください。思い出しますから。先輩がちょこの処女をどのように奪ったとか、全部思い出しますから」

 

思い出させようとすればあらぬ勘違いをする。寝起きで寝惚けているのかぐるぐると目を回しながら必死に思い出そうとしていた。存在しない記憶を。

 

「一緒に布団に入った覚えがないのに……よりによって先輩達の眠る横で初体験だなんて……ちょこは、ちょこは……!」

 

何やら存在しない記憶を捏造し始めたところで、見兼ねた琴音がため息を吐いた。

 

「圭にそんな度胸があるわけないじゃない」

 

–––酷い言い草である。

 

「そ、それもそうですね……?」

「おいおい」

 

ようやく落ち着きを取り戻した智代子は胸を撫で下ろして、ハッと顔を上げた。

 

「でも、ちょこのおっぱいに触ったのは忘れてませんよ!」

「ふーん。どういうことかしら?」

 

冷ややかな視線を送る琴音は、不満そうに腕を組み自らの胸を強調するように押し上げる。

 

「昨日、あんなに私達のおっぱいを楽しんでたのにまだ足りないのね」

「だから誤解だって。起きたら何故か智代子が同じ布団にいて、何故か俺の手が智代子の乳房を鷲掴みにしてたんだよ」

 

あ、と口を開けて琴音が固まる。思い当たる節があるようだ。

 

「……いつものことね」

「え?」

「だって同じ布団で寝てるといつもぎゅってしてくるもん」

「じゃあ、智代子と同じ布団で寝てるのは?」

「知らないわよ。家事している間にいつの間にか一緒に寝てたんだもん。それに智代子だって寝転がって誰かに抱きついたりするじゃない」

 

お互いに問題がありそうなので判断に困る。

 

「ねぇ、智代子は嫌だったの?それなら土下座させるけど」

「べ、別に嫌というわけでは……」

「ならいいじゃない。許してあげても」

 

そう言われて、智代子はおとなしくなる。そんな時、思い出したかのように可愛い音が鳴った。

 

「……ちょこじゃないです」

 

本人は顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いた。

 

 

 

 

 

 

「それでは先輩、ちょこはこっちですので」

 

昼食を食べた後、智代子は日和の様子を見にいくと言って島崎さん家へ。

俺たち三人は用事があって琴音の実家の方へ顔を出しに、それぞれ住宅街を歩いていた。

 

「はぁ。しっかし、もうそんな時期か」

 

筋肉痛の体に鞭を打ち、鉛のように重い身体を動かしてアスファルトの道を行く。太陽と地面から立ち上る熱にうんざりしながら悪態を吐くのは仕方のないことだろう。

 

「なにも昨日の今日でなくてもいいじゃないか」

「文句言わない。おばあちゃんに呼ばれてるんだから、ほら早く」

 

昨日、迷子の少女の救出に尽力したにもかかわらず、例年行われる祭事の会議に呼び出されたのだ。当然、拒否しようとしたのだが最高責任者として黒崎と鈴白の両家から必ず一人は会議に参加しなければいけないらしく、当主である祖父が入院している現在、俺しか参加できる黒崎の人間がいないのである。

 

「ほら、ついたよ」

 

十分も歩くことなく目的の家へ到着する。

玄関を開けると、数えるのも億劫になるほど靴が並んでいた。

琴音がいるから挨拶もなしに入る。

琴音、美咲、俺の順に並んで奥の大部屋に行くとそこには漁協の漁師連中や、鈴白の婆さん、それと何故か亮介と真広の姿まであった。

 

「来たね。座んな」

 

お茶を飲んでいた婆さんが気づいて着席を促す。俺は取り敢えず、気の知れた奴の隣に行こうと亮介と真広のところへ向かい五人で固まって座る。

 

「よう団長、元気そうだな」

「元気なもんか、体中筋肉痛だぞ」

「こっちも同じだな。漁がキツかったぞ」

 

昨日、遅くまで少女の捜索をしていたにもかかわらず、今朝になっていつも通り漁をしていた二人に驚く。俺なら仮病を使ってでも休んでいたところだ。

 

–––あれ、今のところ一番怠けてるのって俺じゃね?

 

突きつけられた現実にショックを受け、思考が停止する。そんなことはないと思いたいが、こいつらでさえ漁をしていたのに俺は……。

 

「圭君どうしたの?」

「……なんでもない」

「あれ、元気ないね?やっぱり昨日の疲れが残ってるのかな」

「そうね。智代子背負って帰ってきたらしいし」

 

幼馴染二人に慰められても事実は消えない。

昼まで爆睡していた事実は消えない。

 

「じゃあ、揃ったところで始めようかね」

 

そうして、会議は始まった。

 

 

 

「–––と、まぁこんなところかね」

 

長年祭事を運営しているだけあって鈴白の婆さんを中心にして会議は進められた。滞りなくスムーズに進み、俺なんてただ傍聴しているだけで何もしていない。何度も会議に出席して、祭事の運営をすることで覚えていく必要もあるのだろうが、俺だけまったくなにもさせてもらえなかった。口を挟む隙すらなかったのである。

 

–––俺の存在意義って。

 

本当に形だけ参加した結果に、不甲斐なく落ち込む。

黙って聞いてるだけの楽な作業とは聞いていたけど、何もしないのは逆に辛かった。

 

「これが崩来祭の参加者リストだよ」

 

例年の決め事に準えて進んだ会議の最後方に崩来祭の参加者リストが配られる。ただ、崩来祭に参加者だけ参加して見ているだけは面白くないということで、ちょっとした賭け事も行われていた。これは、役所に張り出されるリストだ。

 

「今年も結構な人数が参加するんだな」

 

総勢四百名。島の男のみでこの人数が大きな鳥居から雪崩のように山を下る様子は圧巻の一言に尽きるだろう。港にいても地鳴りのような音が轟き、大地を揺らすのだから相当なものだと思われる。

 

「へー、いろんな奴が参加するんだな」

 

下は小学生から、上は四十過ぎたおっさんまで。近年では上位の成績を取って島の女に告白する男もいるらしく、一種のアピールする場にもなっているらしい。賞品もあり、参加者の多くが狙っているらしい。当然、前回優勝した龍之介の名前もそこにあった。

 

「……ん?」

 

そこに、あるはずのない名前を発見する。

疲れているのかと目頭を揉んでリストを見直すと、間違いなくその名は参加者に名を連ねていた。

『黒崎圭』つまり、俺の名だ。

 

「なぁ、琴音。何故か俺の名前があるんだが……」

「あぁ、あたしがエントリーしておいたのよ」

「えっ!?」

「あんた忘れたの?黒崎家からは男が絶対に参加しないといけないのよ」

 

そんな掟聞いたことないぞ、と婆様の方に視線を向けるとゆっくり頷かれた。

 

「掟さね。まぁ、婿殿は小学生になってから自分で立候補して参加してたから知らないかもしれないけどね」

 

参加できるのは小学生以上。そして、小学生になってから遊び感覚で参加していた俺はまったくその話を聞いていなかったらしい。

 

「えー」

「もし圭が上位に入ったらご褒美あげるから、ね?」

 

そう可愛くお願いされたら断れない。ご褒美の内容は気になるが変なものではないだろう。あまり過度な期待はしないくらいに、期待しておくことにする。

 

「やめてくれ鈴白の嬢ちゃん。そいつが本気出したら勝てっこねぇ」

 

漁協の漁師達は徒党を組んで勝ちを狙っているので、俺が本気を出すと困るらしく冗談めかして諌めようとしているが、完全に目は本気だった。豪華な晩酌がかかっているのかも知れないが、こっちは琴音からのご褒美がかかっているのである。適当に流そうと思っていたが、俄然やる気が出てきた。

 

「これで“崩来祭”についての話は終わり。次は“巡礼祭”についてだね」

 

一つの祭事の話が終わり、話は次の段階に移る。

崩来祭の翌日に行われる、巡礼祭と呼ばれる祭についてだ。

『崩来祭』は『前祭』、『巡礼祭』は『後祭』と呼ばれており二つ合わせて『白狐祭』と総称される。

 

しかし、同じ祭だというのに一転、巡礼祭の話を始めると場の雰囲気が厳かなものになった。巡礼祭は基本的に後祭と呼ばれているが、本祭とも呼ばれる大事な祭事なのだ。

 

「去年と同じく、“巫女”の役目は琴音だよ」

 

『巡礼祭』は“巫女”を含めた十人で島の各地にある五つの赤い鳥居を巡り、舞を奉納する祭事である。原理はわからないが巫女が舞を奉納すると灯籠が青い火を灯すので、幻想的な光景に島では昔から大事にされてきたのだ。

 

「ひとついいか婆さん」

「なんだい婿殿?」

「もし俺が崩来祭で一番になったら、どうするんだ」

 

その巡礼祭の参加者の一部は確定している。“巫女”、“狩人”、“防人”の三役だ。

“巫女”は鈴白の家系から。“狩人”は黒崎の家系から。そして、“防人”は崩来祭の優勝者からと決まっている。

もし俺が崩来祭で優勝すれば、重複することになるのだ。

 

「やれやれ、もう勝った気でいるのかい」

「もしもの話だよ」

「その場合、二位の人がやることになるかね」

 

巡礼祭は五つの赤い鳥居を巡るまでに半日ほど歩くため、それ相応の頑強さが求められるのである。その点では琴音が心配だが、そこばかりは仕方がない。それに十人のうち巫女以外の残りの三人は、女性から選ばなければならない。巫女の補助役なので親しい人間から選ばれることが多く、美咲と智代子、あと一人が担当していたのだとか。

 

「琴音は去年と同じく三人補佐を選ぶこと。それからお清めは毎日するんだよ」

「わかってるわよ、おばあちゃん」

「それと婿殿」

「ん?」

「婿殿は琴音に付き添ってやりな。いくらお狐様が見張ってくれているとはいえ、女の子一人じゃ危ないからね」

「わかってるよ」

「それからもうひとつ、婿殿には大事な頼みがあるんだが」

 

琴音の沐浴に付き合うのは致し方ないとして、鈴白の婆さんに念押しされると嫌な予感がして止まない。そして、その予感は的中した。

 

「五つの鳥居を巡るルートの確認をしてきておくれ」

「あれ、それ複数人でやる仕事じゃなかったか?」

「婿殿なら一人で十分さね」

 

半日練り歩く道のリハーサルに一人で行ってこいと言われ、俺は肩を落とした。

 

 




個別ルートを先に作ると後々自分が困ることになりそうなので、ハッピーエンドルート書いてからトゥルーエンドに移行すると思うの。
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