千里の果てにあるものは 作:匿名
年代としては2014年くらいに起こってることになってます。人理焼却までもう少しってところで聖杯戦争が始まるわけですね。なんだそれは地獄か?
生まれた時から、俺は両親や親戚から成長が早かったと言われてきた。肉体的な成長ではなく、精神的な成長のことだったが、確かに自分でも成長が早かったなとも思う。
──というのも、俺は両親や親戚、友人などに秘密にしていることがあるのだ。それは、未来や過去、現代の全てを見ることが出来るということ。俺以外にも過去には英雄王ギルガメッシュ、魔術王ソロモン、花の魔術師マーリンも同じような眼…ある人が言うには最高位の千里眼を持っていたようで俺からも相手からも認知自体はしている。時代が違うので接触したりは出来ないのだが。だがこの世に生まれて十七年、魔術師連中が躍起になって神秘を秘匿しようとしているからか、俺が魔術関連のことで絡まれることはほとんどなかった。
マーリンやソロモンの魔術を真似してみたり、ギルガメッシュの持つ武具を模倣したりをして魔術師相手にもそこそこ戦えるようにはなっているとは思うが、さすがに自分から首を突っ込もうとは思えないので試そうとは思っていない…そう、思ってはいなかったのだ。彼が俺の家に来るまでは。
話は数日前に戻る。俺の住む町、冬木市には魔術師連中が存在しており、数十年置きくらいの頻度で聖杯戦争なる殺し合いが勃発しているのは知っていた。友人の中にも魔術師が紛れ込んでいることにも気がついていたし、今年聖杯戦争が起こることも知っていた。何せ、外から来た魔術師を千里眼を通して見つけることが出来たからだ。魔術師が増えたとなれば怪しいこと極まりない。なので教会を千里眼で調べてみると明らかにやばそうなエネルギーを纏っている金色の杯とそれを見て愉悦の笑みを零す金髪のイケメン…そう、その容姿はよく見た事のあるもので、そして明らかに相手も千里眼を通してこちらを見ていた。
「…ギルガメッシュ王?」
千里眼を持つ者の中で最も最悪の奴がいた。賢王のギルガメッシュであればまだなんとでもなるだろう。いや、戦いになれば一秒も掛からず鏖殺されるのは目に見えてるので賢王だろうが暴君のギルガメッシュだろうが関係ないのだが、だが精神的に成長しているかどうかは話が変わる。賢王となったギルガメッシュはエルキドゥの死によって精神的に王としても人としても成長している。故に賢王と呼ばれ人々に尊敬されて来た。…が、暴君ともなれば話が違う。あれは本物の理不尽だ。気に食わないから殺す、興味が湧いたから殺す、自分のものにならないから殺す──ふっ、終わってるな。もうどうしようもない。そう思っていたのが数ヶ月も前のこと。今ではと言うと──
「…はあ、どうしたものか」
「フハハ!何がどうしたものなのだ?言って見せよ、同類」
「──唐突に後ろに現れるのはおやめ下さいと何度言えば良いのですか英雄王」
「そんなことはどうでも良い、早く酒を注がぬか!」
「はいはい、わかりましたよ」
こんな感じで時々家に英雄王が来るようになった。初めは興味本位といった感じだったが、今やとある理由で家に入り浸るようになった。今現在上機嫌の英雄王は英雄王の口に合うよう専用に拵えた──と言うより、
「やはりこのエールは美味いな…今の時代の酒は不味くて堪らん」
「今の時代は質より量が重視ですから…おつまみです」
「ほお、キュウリの浅漬けとやらか。ふむ、そこそこ美味いな」
「それは何よりです」
酒は昔と比べて不味いらしく、ギルガメッシュの口には合わなかったようだ。まあ、貴族制や王政が無い分平民と呼ばれるものたちの権利が大きい時代だ。ギルガメッシュが生きてきた時代の王たちが飲んできた酒と比べると質は落ちるだろう。だが逆に料理はギルガメッシュの口に合うものが多かったらしく、おつまみは割となんでも好んで食べる。ただ、何故か麻婆豆腐だけは無理らしいが。なにかあの愉悦神父の件でトラウマでもあるのだろう。
「この時代に来た時はあまりにつまらぬ故に欠伸が出そうであったが…ふむ、こういうのも悪くない」
「…え?何か言いましたか?」
「なんでもないわ!さっさと次のエールを運ばぬか!」
「…はいはい、分かりました!」
何か言ったような気がして、問いかけるがさっさとエールをもってこいと怒鳴られる。何故か俺はギルガメッシュに気に入られている節がある。何せ、普通の人間であれば
「フハハ!次のエール用の材料も用意しておいた…感謝しろよ?同類」
「自分が飲みたいだけでしょう…ええ、お任せ下さい。満足出来るような物を作っておきますよ。幸い材料は最高品質ですし」
「王たる
「そうでしたね。…そういえば、次はいつ来られるので?」
「そうさな…次は言峰と共に来るやも知れぬ。その眼でしっかりと見ておけ」
「かしこまりました」
「ではな」
金色の粒子になって消えていくギルガメッシュに苦笑を零し、さっさとエールの材料の麦を地下の工房へと持っていく。工房で次用のエールの仕込みをさっさと終わらせると魔術でエールを作る準備をする。言峰神父が来るなら激辛の食べ物を用意しないといけないな…。何を作ろうか。
「あ、ギルガメッシュ王が麻婆豆腐が嫌いなのはそのせいか」
あの劇物を食べれる人物で無ければ確かにトラウマにもなる。俺は食べれるタイプだったが、下手すればあの麻婆豆腐は人が死ぬ。…いつかマーリンに出会えるような機会があれば作ってやろう。そう決意した俺は、麻婆豆腐の材料をメモに纏め始めるのだった。
主人公
基本的には気前が良く、敬意を払うべき相手にはどれだけ気に食わなかろうと敬意を払う。千里眼EXを生まれながらに持ち、あらゆる時間軸の知識を学び、力へと変えてきた。その戦闘能力は凄まじいものとなっており、低級のサーヴァントと互角に戦い、あのギルガメッシュ相手でも運が良ければ逃げれるかもしれないというレベル。魔術の腕も高い…と言うより、マーリンやソロモンの魔術よ模倣ということもあり神代クラスのものとなっているが如何せん比較対象がおらず、魔術師という存在の所業を気に食わないと思っているため魔術師を好んでみることもしないため理解していない。というか、そもそもソロモンやマーリンの魔術と比べてる時点でお察し。最近はギルガメッシュ用にエールを作ったり言峰に激辛麻婆豆腐を作ったりしている。
ギルガメッシュ
主人公に対してあらゆる不敬を許した。理由としては礼節がしっかりとしていた事(ウルク基準で見ても合格)、同じ最高位の千里眼所有者であること、そして何よりエールが美味かったこと。この三点…特に最後に限る。友人と言うより気の許せる給仕係といった感覚で接している。
言峰綺礼
激辛麻婆豆腐を食べられる同士かつギルガメッシュに気に入られていることの畏怖を感じ、そして心の底から同情している。