千里の果てにあるものは 作:匿名
言峰神父が死んだ。ランサーによって心臓を一突きされ、死亡した。さすがはケルトの大英雄、心臓を自らの手で貫いた程度では死ななかったようだ。そして、俺は千里眼で衛宮の展開した固有結界内でギルガメッシュと衛宮が戦っているのを眺めていた。
「やはりこうなったか」
英雄王の眼は俺と同じく未来を見通すことが出来る、しかし彼は自らが王であるために、王であるが故にその眼を使ってこの戦いに勝利することを認めなかった。故にギルガメッシュの勝ち筋が見えている俺とは違い、自らの力だけで戦った英雄王は今、衛宮によって心臓を貫かれて消滅しかけていた。…まあそもそもサーヴァントである以上、幾ら財を用いて生き続けられるとしてもマスターが死んでいるのだから長くは持たなかっただろうが。
「行くか」
俺はギルガメッシュと衛宮が戦っていた柳洞寺に向かっていた。どちらが勝ったにせよ、ギルガメッシュと最後に話すためにだった。
「来たか、同類」
「ええ、良い夜ですね英雄王──そしておめでとう衛宮。お前は正しく最強の英雄の一角に勝利した」
「薄明!?なんでここに!?」
「…話は後だ。お前は行け、悪の根源を断て」
そう衛宮に言うと、彼は頷いて泥を吐き続けている聖杯の方へと走っていった。さて、こちらもさっさと終わらせよう。
「お待たせしました、英雄王」
「フン、全くよな…同類よ、最後に貴様に問おう。貴様はこれより滅びの解決に向かうことになる──そうでなければあそこは機能しなくなる故な」
「ええ、そうでしょう。彼──宝石翁の関心を失えば彼が起こした聖杯戦争でマリスビリーが得た聖杯は機能を失う。その果てにあるのは滅びだけです」
宝石翁が何を考えているのかは知らないが、10年ほど前に唐突に宝石翁によって起こされた聖杯戦争。その勝者こそが俺が今から向かおうとしているカルデアの創設者、マリスビリー・アニムスフィアだ。かの魔術王を呼び出し、勝利した。その後、その
「だが、貴様は
「
心の底からの答えを返す。すると目を軽く見開いた英雄王は唐突に笑いだした。
「フハハハ!!そうであったな!貴様はそういう男よな!千里の果てすら見渡す眼を持ちながら、その性根はどこまで凡百の物…ああ、そうか。そうであったな…フハハ、ならば良い。往くが良い。思うがままに貴様の道を──その果てに何があろうとも、この英雄王たる
そう言って金色の鍵を投げ渡してくるギルガメッシュ。これはまさか…
「それは我が宝物庫を限定的に開ける鍵のうちの一つ、
そう言って金色の粒子となって消えていくギルガメッシュ。凄まじいものを残していったものだと溜息をつきながら立ち去ろうとして…ある人の元へ向かう。
「こんばんは、アーチャーさん」
「…気がついていたのかね?」
「俺の持つ千里眼は貴方たちサーヴァントが言うランクでいえばEX──英雄王の物と同格です。貴方のことはずっと見ていました」
「ほう、それは凄まじいものだ…羨ましくもある」
「そうですかね?…そろそろ消えるんでしょう?最後の挨拶くらいしていっては?」
「ふっ、それを言いに来たのかね?」
「ええ、放っておけばそのまま勝手に消えるつもりだったでしょう?」
「お見通しか…全く、キミにそう言われては断れないな。…ありがとう」
「…さあ、なんのことでしょう」
アーチャー──エミヤシロウはただ背中を押して欲しかっただけだ。俺が見ていることも、そして俺のことも覚えていたらしい。だから彼にとってはかつての友人になる俺が背中を押しに来ただけだ。
「じゃあな、エミヤ」
「…ああ、さらばだ」
金色の粒子になって遠坂の方へと向かったアーチャーを見届け今度こそ家に帰ることにする。手に持ったチラシを眺めながら。そのチラシには、献血のお願いと書かれており、献血を求めている企業の名はカルデアと書かれていた。
「人理焼却はすぐそこか…」
世界のためなどではなく、死なないために俺は動き始めた。
薄明悠人
色んな人に興味を持たれていることに気がついている。英雄王だけではなく、花の魔術師や魔術王──そして、宝石爺すらも。渡された鍵で開いた宝物庫に様々な礼装などを入れた。
宝石爺/ゼルレッチ
何かしらの思惑と少しの関心を込めて聖杯戦争を起こした。その際の聖杯戦争でマリスビリーが勝利した。聖杯戦争をどこから持ち出してきたのかは不明。
英雄王/ギルガメッシュ
衛宮士郎に敗れた。相性があまりに悪すぎたのと、マスターが既に死亡していたのが原因。最後に特大のアイテムを残して消えた。薄明悠斗に渡した鍵で開ける門の数は四つまで。