千里の果てにあるものは 作:匿名
相変わらず燃え続けている街に出る。メドゥーサとエルキドゥの召喚によって戦力的に余裕が出たので、警戒はしつつも、千里眼の出力を弱めておく。エルキドゥという神代の英霊を使役している俺にあまり無駄遣いをする余裕はない。とはいえ、危険が迫ればオートで千里眼は起動するが。
「ロマン、敵は見つかったか?」
『いや、キャスターの情報にあったアーチャーも見つからないね。もしかするとアーサー王のいる場所に残りのシャドウサーヴァントが集まっているのかもしれない』
「…面倒だな」
ロマンと同意見ではあったが、そうなるとどうも面倒だ。この街が──いや、世界そのものがこのような状況なので、知名度補正に関しては気にする必要は無いだろうが、それでもアーサー王は強い。それに加えアーチャーが居ればさらに面倒だ。
「まあ任せな。最悪アーチャーは俺が───いや、その必要はねぇみたいだな」
「ああ、捕捉した!マシュ!」
「は、はい!」
一番前で索敵していたキャスターが俺を掴んでマシュの所まで下がる。俺が空を指さして叫ぶと咄嗟にマシュは盾を空に向ける。すると、空から大量の剣が降り注いで来る。
「うぅああああああああ!!!!」
「この、魔術は…まさか!」
ガガガガガ!と鉄と鉄がぶつかり合う音が数秒響く。それが止んだかと思えば、フラリとマシュが膝を突く。…やはり、アーチャーはお前か。
「エミヤ…!」
「──ほう、キミが居るとは。キミも相変わらず面倒事に巻き込まれる体質らしいな」
「お前にだけは言われたくないな!」
崖の上からやけに通る声で話しかけてきたエミヤに叫び返すと数本剣を門から射出しエミヤのいる崖を崩して無理やり落とす。
「おっと、危ないな」
崖の上に飛び上がろうとするが、そうは問屋が卸さない。
「ランサー!」
「捕縛だね?分かるとも!」
俺の背後に控えていたエルキドゥがバァン!と目にも止まらぬ速度で空を翔ける。俺やエミヤどころかキャスターも一瞬見失うほどの速度だったのか口笛を吹いて笑っていた。戦うなよ。
「ッ!?速い!?」
「キミが遅いのさ!」
エルキドゥに蹴りを入れられたエミヤはこちらに向かって吹き飛ばされる。地面にめり込み仰向けに倒れていた。
「ぐっ…全く、ここまで強力な英霊を呼んでいたとはね。私の読みが外れたわけだ」
「バカが、今のお前の思考力で読み切れるわけが無いだろう」
ただの蹴り一発とはいえ、シャドウサーヴァントの身ではキツかったのか、魔力反応が消えていくエミヤ。…だが、違うだろう?お前はこの程度で消える男じゃないはずだ。
「そうか…ならば、最後の悪足掻き位はさせてもらおう!」
エミヤは黒い洋弓を引き絞る。すると、手元には捻れたような剣が精製される。それを見たキャスターが目を細めて笑う。あれはエミヤの切り札の一つだ。あれを受ければエルキドゥはまだしも他の人間は木っ端微塵だろう。そして、あれはエルキドゥの力を使えば防ぐことが出来る。…だが、それではダメなのだ。
「…下がるぞ」
「了解」
俺とエルキドゥ、キャスターはマシュ達がいる場所まで…いや、さらに後ろ。マシュが俺たちを守れる位置まで下がる。
「は、ハルトさん!?何を!?」
「マシュ、あれを防ぐのはお前だ。あれは正しくエミヤの全身全霊。命そのものが乗った必殺の矢。あれを受ければここにいる全員が死ぬ」
淡々と告げると顔を青くするマシュ。隣にいる立香は唇を噛んではいたが、先にこの事は伝えておいたため、何か言うこともない。
「で、ですが!今の私ではあれほどの一撃は…!」
「防げなきゃ死ぬ。それだけだ」
マシュの必死の訴えにも耳を貸さない。じっと俺はエミヤの矢を見つめているだけだ。
「I am the bone of my sword!!」
スっと矢から離される指。空間を捻じ曲げながら突き進んでくる矢を見て笑う。なるほど、未来を軽く見た程度とはいえ目の前にするとこれほどの威圧感があるのか。
「
「さあ、マシュ・キリエライト!今すぐに決めろ!ここで諸共全員死ぬか、抗うか!」
「…私は…私はッ!諦めませんッ!」
グッと足に力を込め、俺たち全員の前に出るマシュ。盾とエミヤの宝具がぶつかり合う。数分前に降り注いだ剣全ての威力を合わせても、児戯であったかのように感じる一撃。地面に足がめり込む。それでも諦めずに抗うマシュの元へ全速力で立香が走っていく。
「藤丸!?貴女なにを!?」
「…そうか、お前はその道を行くのか」
自らの身を犠牲にしても…いや、違うな。あれは信じてるだけだ。マシュ・キリエライトという1人のサーヴァントを信じて駆け抜けただけか。
「行こう!マシュ!」
「はいっ!先輩!うぅぅああぁぁぁぁああぁあああああああああッ!!!!!!」
盾の前にさらに魔力で出来た障壁が展開され、マシュと立香の背後に一瞬だけボロボロになりつつも美しい白亜の城が展開される。その障壁──いや、マシュの宝具によってエミヤの宝具は完全に防ぎ切られた。
「…まさか、キミたちに防がれるとはね。全く、頼もしい限りだ。さあ、行くといい。この先にいるのが騎士王だ」
清々しいと言った様子で消滅したエミヤの背後にあるのは洞窟だった。この奥に、騎士王がいる。千里眼で奥を軽く見てみると、膨大な魔力が渦巻いていた。さあ、大変な戦いになるだろう。だが…彼女たちなら乗り越えられるだろう。駆け寄り、苛立った様子で怒鳴るオルガマリーとその説教を受けながら笑っている立香とマシュの姿を見てなんとなくそう思う。…そうだな、無駄になるかもしれないが。
「オルガマリー」
「なによ!今私はこの考え無しに宝具に突っ込んでったバカを怒らなきゃ行けないのよ!」
「それは好きにしろ。これをやろう」
ポイッと投げ渡したのは一つの魔術礼装に見える物。それを訝しげに眺めるオルガマリーに手を振ってエルキドゥたちの元に歩いていく。
「──種は巻いた。お前の道はお前が決めろ」
生き残れるかはお前次第だぞ、オルガマリー。
今回はマシュの宝具回でした。
それと最後の魔術礼装…イッタイナンナンダロウナー(棒)
そういえば、お気に入り2000越えありがとうございます。作者史上最大の伸びで恐れ戦き、大地は揺れ、大海は氾濫し、俺の自動車講習のテストはバツ印が溢れていました。
投稿頻度は気まぐれになるのでユルシテ…ユルシテ…
ということで千里眼のせいでサクサクRTA化している特異点の解説です。
立香たちに語った策というのはズバリシャドウサーヴァントの宝具を何とかマシュに受けきってもらおうというやつです。まあマシュの宝具がないと詰む点が多すぎるからね、仕方ないね。まあその詰む点はさすがのハルトくんの千里眼でも見えてませんが、どっちにしろ開帳させてないと困る場面は出るだろうからね、仕方ないね。