SCAPEGOAT~他者の命を踏みにじることでしか能力を使えない~   作:アフロマリモ

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1-2 不穏な眼腔

 現場は街から少し離れたろくに整備もされていないような森の中で、 既に20名近くの異端審問官が現場を囲っていた。

 

「カレン!」

 

 フリードはその中の1人に声をかけると、カレンと呼ばれた女性は振り向きもせず反応する。

 

「遅いですフリード! もう少ししたら始めるところ……って、ライアンも連れてきたんですか」

 

 ライアンの姉であるカレンは、少し不機嫌になりながら振り向く。

 その目は、独特な模様の布に覆われていた。

 

「俺もやめとけって言ったんだが、熱意に負けてね。こいつの頑固さは姉であるお前がよく知ってるだろ」

 

 フリードは、答える。

 

「ですが、この事件には業魔が関わっていると考えています。戦闘になった時、まともに自分の"奇跡"も使えない新兵の世話をしてる暇はありません」

 

 ライアンは、カレンの厳しい発言に、悔しさと怒りのようなものを感じた。

 その感情に背中を押され、衝動的に反論する。

 

「俺は!」

 

「俺は未熟かもしれないけど、異端審問官です。 あんたに心配してもらう為になった訳じゃない。業魔を倒し、人々を救うために異端審問官になったんだ!」

 

 カレンは俺の言葉に反論しようと口を開こうとするが、割って入るようにフリードが口を挟む。

 

「まぁまぁ、2人とも熱くならないで」

 

 フリードはカレンの方を向き、諭すような口調で続ける。

 

「カレンちゃんさ、心配なのも分かるが、経験を積ませるためだと思って協力してくれや。それに俺たちの主力は王都に主張中だ。人手が増えることに越したことはないだろ?」

 

 カレンは不服そうだったが、分かりました。と呟くと遺体へ俺たちを案内し始めた。

 

 現場に近づくと、存在を主張するかのように強烈な腐敗臭がライアンの肺に潜り込んできた。悶えながらその場所を覗き込むと、それはあった。それはとても人とは呼べなかった。

 ライアンは思わず目を背ける。

 

「こりゃ酷いな」

 

 フリードがまじまじと見ながら口にする。

 

「3人とも、拷問を受け、目をくり抜かれてますね」

 

 カレンは遺体に近づきながら説明を続ける。

 

「遺体は最近ここに埋められたみたいですが、浅かったようで野良犬に掘り返され、発見されました」

 

「最近ってどのくらい?」

 

「なんとも言えないですが、1 日か 2 日くらい前ですかね。近くに焚き火の跡があったので夜に埋めたのかと」

 

 フリードは質問を続ける。

 

「遺体3つも運ぶの大変だろ。馬車かなんかで運んだ跡とかあった感じ?」

 

「近くに馬車が通れる道がありますが。日常的に馬車が通ってるので跡を追えるかどうかなんとも言えません」

 

「ふーん」

 

 フリードは少し考えた後、ライアンに質問する。

 

「これどっちだと思う?」

 

 その質問の意図が汲み取れず、ライアンは聞き返す。

 

「というと?」

 

「人がやったか、業魔やったか」

 

 その質問がライアンの頭の中でまわる。あまりに無惨な犯行。どう考えても業魔だろう。

 10年前と一緒だ。自分の快楽のために俺たちの故郷と父を踏みにじったあの黒い業魔と……。

 ライアンの心に憎悪が渦巻く。

 

「ライアン、行方不明の子、どこで行方不明になったっけ?」

 

 業魔に対する怒りに熱くなっていたライアンに、不意に質問という冷水がかけられた。

 

「街中ですね。買い物中に行方不明に……」

 

 ライアンはハッとした。街には囲うように外壁が築かれている。それを出入りするためには人権印が必須だった。人権印を持たない業魔に、その出入りは不可能だ。いくつかの可能性が頭の中に浮かび上がる。

 

「ここに数名残して一旦街へ戻ろう。確認したいことができた」

 

 フリードの発言に、カレンは頷くと数名残る者を選び、残りは着いてくるように指示を出す。

 ライアンは困惑しながらフリードの背中を追う。

 近くの馬車道を進んでいくと、街の外壁が見えてくる。早足に進んでいるフリードに、走って追いつき横に並び、疑問をぶつける。

 

「隊長、この事件の犯人もしかして人間なんですか?」

 

「その可能性もある」

 

「もって…… 他の可能性もあるんですか?」

 

「あぁ、可能性は3つある。1つ目は犯人が人間の可能性。これなら街の出入りは自由だ。2つ目は業魔が10 歳になる以前から隠れ住んでいて、それを世話してる人間がいること。そして3つ目は……」

 

 フリードは言葉に詰まる。

 

「3つ目は?」

 

 ライアンは、言葉の先を促す。

 

「3つ目は……、絶対にあってはならない可能性だ。この国のシステムが根底から崩れ去ることになる」

 

 フリードのいつになく真剣な瞳が、ライアンの不安そうな顔を映していた。

 

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