SCAPEGOAT~他者の命を踏みにじることでしか能力を使えない~   作:アフロマリモ

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1-3 調査

 異端審問官達は外壁の門に到着する。フリードは横にある受付へ質問をぶつけた。

 

「人の出入りの記録は」

 

「あーちょっと待ってくださいね……。どうぞこれが出立の記録です」

 

 フリードは記録を貰うと。記録を確認しながら質問をぶつける。

 

「1日2日前の深夜に警備を担当してたのは?」

 

「あっ……はい、えーと一昨日の晩から昨日の朝方まで警備したのは私です。その前の晩は別の方ですけど」

 

「そいつ呼べるか?」

 

「へ? あーまぁ呼べると思います」

 

「じゃあ一通り質問するから、それが終わったら呼んできてくれ」

 

 フリードは、その指示に門兵が頷くのを横目で確認し、記録を見ながら質問を続ける。

 

「お前が担当した晩にここを通った馬車は3台らしいが、それぞれの詳細は覚えてるか」

 

「いやー、なんとも言えませんね。あまり記憶力には自信がなくて……、 へへ」

 

「どんな事でもいい、少しでも怪しいと感じたことはなかったか?」

 

 フリードは食い下がる。門兵は少し考えると、あぁ! と声を漏らす。思い当たる節があるようだ。

 

「そういえば久々に面白い人と再会したくらいですかね」

 

「どんな奴だ」

 

「1週間くらい前も私が受付をしていたんですが、明らかに挙動不審だったんです。でもちゃんと人権印は刻まれているし……、まぁ流石に怪しすぎるんで積荷を確認して、話をしたんですが、これがとても面白い方でかれこれ1時間くらい話し込んでしまったんですよね」

 

 話を遮るようにカレンが質問する。

 

「挙動不審で怪しい、と言いますが具体的にはどのような感じでしたか?」

 

「あぁ、いや何、一切目を合わせてくれないし、その人を見ようとすると手で顔を隠してしまうんですよね。なんでも極度の視線恐怖症らしくて……見られたくないとか。珍しいですよねぇ」

 

 笑いながら門兵は答える。

 

「目かぁ」

 

 あの遺体たちの真っ黒な眼腔がよぎる。気になる関連性がそいつへの疑いを濃くする。

 

「この街に入った時の積荷は?」

 

「いくつかの家具と食料ぐらいですね。あと御家族が2人」

 

「家族?」

 

「妹が2人、荷車に乗っていましたね。その時は寝息を立てて寝てましたけど」

 

 遺体は3名その内2名は街の女性ではなかった……。

 

「出ていく時は?」

 

「その時も特にこれといった怪しい積荷はありませんでしたね。仕事で使うと言っていた道具くらい……、あと不機嫌そうな青年が乗ってましたね。仕事仲間とかなんとかって言ってました」

 

 明らかに怪しく、状況証拠のようなものばかり目に付いてしまう。遺体が見つからなかった理由も、荷台にカラクリがあり遺体を隠せるスペースがあるとか、適当に言ってしまえば犯人にできてしまいそうだ。

 

「明らかに怪しいけど、状況証拠ばっかりなんだよなぁ。決めつけも視野を狭めてしまうし」

 

 フリードはため息をつきながら、頭を掻く。

 

「そうですね。仮に犯人だとしても、もう街を出ている可能性があります」

 

 カレンのその言葉に門兵が反応する。

 

「いえ、その人朝日が昇る前あたりにこの街に帰ってきてるんですよね」

 

「まだこの街にいるのか!?」

 

「はい、また仕事がしたくなったとかで」

 

 犯人だとしたら明らかにおかしな行動だ。なぜリスクを取ってまでこの街に戻ってくる必要があるんだ?

 思わずライアンは質問する。

 

「行きと帰りで何か変わった様子は?」

 

「そうですね…… あー、ちょっと暗くてよく見えなかったんですけど、少し汚れてたような気がしますね。それと青年と言い争うような声もこの門に着く前に聞こえたような気がします。積荷の内容は変わってなかったです」

 

 ライアンはフリードの方を見る。思考を巡らせているようだった。

 ライアンは意を決して話しかける。

 

「隊長、もう1人の門兵に事情聴取する前に1度こいつに会うべきでは? 疑問もいくつかありますが……、会えば解決すると思います。それに次、この街から出ていったら戻ってこないと思います」

 

「……そうだな。そいつの風貌と住んでる場所分かるか?」

 

 フリードは納得したようで、門兵に問いかけた。

 

「住んでる場所は……確か街の南の方に一軒家を持ってるとか言ってましたね。風貌は身長 160cm くらいで顔は……」

 

 門兵の言う特徴を書きまとめ、街の南へ向かった。

 

 

 煉瓦造りの住宅が並ぶ中、ひたすら聞き込みをしていた。

 聞き込みによって住んでると思われる場所を見つけた時には、太陽は頂点過ぎ、これから沈むための準備をしていた。

 

「近隣住民へ避難の要請と念の為、少し離れたところに魔法団を配備しておいてくれ、あと俺の剣と"ハチ針"数本持ってきて」

 

 フリードは忙しなく他の審問官に指示を飛ばしていた。一軒家は不思議なほど静かで、実はもう誰もいないのではと錯覚してしまいそうだった。カレンも程なくして到着する。

 

「おうカレン。あの家の中、お前の奇跡で見える?」

 

 フリードが指を指した方にカレンは顔を向ける。

 

「いえ、少し遠いので見えないですね。もう少し近づかないと……」

 

 その時は背後からガラガラとタイヤを転がす音が聞こえ、振り向くと

 

「フリード隊長! 周辺の住民の避難終わりました。それと剣とハチ針です」

 

 フリードの指示した物資が馬車によって運ばれてきていた。

 

「ありがとさん。魔法団は?」

 

「配置には時間はかからないそうなので、程なくしたら行けるとのことです」

 

「そっか。じゃあぼちぼち準備するか」

 

 フリードはそういうと、馬車から荷物を下ろし、数十本の剣とハチ針と言われる特殊な剣を数本出した。

 フリードはその剣一つ一つに触れていく。すると剣たちは人の手を借りずに、勝手に空中へ浮かび上がり、フリード隊長の周りを整列するかのように漂いだした。これがフリードの"奇跡" 。

 我々異端審問官は、異端審問官に就任する前に必ず洗礼を受ける。洗礼を受けた際、体に障害が出たり、最悪死亡したりする場合があるが、常人が生涯鍛錬を積んだとしても手に入らない身体能力や、奇跡と呼ばれる能力が発現することがある。

 ライアンももちろん洗礼を受けたが……、 まともな能力は手に入らなかった。けれど倍率の高い大都市に就任できたのは、カレンの実績のおかげだろう。

 カレンは自分の束ねている部隊に指示を出していた。その凛とした背中には隊長の証であるマントがたなびいている。故郷と父を失ったあの日から、カレンは家族全員の家計を、業魔への怒りを、全てあの背中に背負って異端審問官となった。ライアンはは少しでもその背負ってくれたものを軽くしてあげたいと、カレンの後を追った。

 俺は姉の負担を少しでも軽くできているのだろうか、またあの日のように背負われているだけになっていないだろうか。

 ライアンは自分の心に問いかける。

 

「ほいっ」

 

 フリードがこちらに何かを放り投げる。それを落とす寸前でキャッチする。

 

「あぶっ……これは?」

 

「ハチ針だよ。使い方わかるよね」

 

 ハチ針、一種の魔法誘導器具と言われている。 剣の部分がハチの針のように尖っているのでハチ針と呼ばれていると習ったが、実物は初めて持った。

 柄の部分は円柱が2つ直列に繋がっていて、それぞれを逆の方向に回転させることで、剣と分離する仕組みになっている。対象が業魔化した際、このハチ針を刺し、剣を分離させ、業魔の体内に留置することで、遠距離からでも業魔を認知し、魔法を命中させることが出来る。

 異端審問官のような身体能力のなく前線にでることの出来ない魔法団も遠距離から火力が出せるというものだ。逆にいつまでも刺すことが出来なければ、魔法団からの支援は無いと考えた方がいい。

 故に重要。

 

「俺なんかでいいんですか」

 

 ライアンは不安そうな顔をしていた。だが同時に期待も心の底から溢れてくる。

 カレンの……姉さんの役に立てるのではと。

 

「無理に刺そうとしなくて大丈夫よ。俺も刺すし」

 

 フリードは、複数あるハチ針の1本に触れ、宙を漂う剣の隊列に加えながら言う。

 

「じゃあそろそろ行こうか」

 

 20名近くいる異端審問官が、フリードの司令に呼応し、一軒家に歩み出す。

 

「カレン、中の様子は?」

 

「2人、中にいます。1人は男でもう1人は女性のようです。 男が女性に対して馬乗りになっているように見えます」

 

 まだ一軒家まで10m近くにあるが、カレンには中の様子は筒抜けであるようだった。

 これがカレンの奇跡。盲目になる代わりに手に入れた能力。

 カレンが言うには、説明するのは難しいが強いて言うなら目が見えた頃より良く見えるらしい。

 一軒家にどんどん近いていく。 フリードがハンドシグナルで数名に裏口へ回るように指揮する。

 ライアンは、その指示に従い裏口へ向かう。

 裏口の扉前までつくと、自分の鼓動が激しくなるのを、ライアンは感じた。緊張をかみしめながら、いつでも踏み込めるように構える。

 表の扉が蹴破られる破壊音が聞こえたと同時に、ライアンも裏口を蹴り飛ばし中に踏み込む。そこからは一瞬だった。

 

 

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