〜ハイスクールD×Dに転生したらしい〜 特典は『市丸ギン』…ってはぁ!? 作:四木シロ
廃工場に集まったオカルト研究部。そこでリアスからの『はぐれ悪魔』についての説明が行われた。
ーはぐれ悪魔とは呼んで字のごとく主の下から逃れた悪魔で、力に溺れ理性を失い人を襲う危険な悪魔であるー
ギンはそれを聞きながら内心
(まぁ、はぐれの比率は純粋な悪魔より断然転生悪魔に多いんやけどな)
と独り言ちた。そんな中、部員以外の声が響く。
「いい匂イがスる。あマいのカナ?それトモ…まずいノかな?」
その声に全員に緊張が走り空気がひりつく。声のする方を見ると棚の間から一人の女性が姿を現す…上半身裸で。
「ウオォォォォ!」
「兵藤君うるさい。緊張感大事に。」
「先輩。下品です。」
「朱乃、結界をお願い。」
「はい部長。」
しかし、そんなイッセーの勢いもすぐに減衰した。なぜなら、その女性の下半身を見てしまったから。それは四足獣のようだが、既存の動物のものではなかった。恐らく猪や鹿、更には爬虫類やほかの動物のものが混ざり混ざってその結果、名状しがたいものとなってしまったのだろう。
「うげぇ…美人なのにもったいねぇ。」
「吐くんやったらそこの角でやってな?」
「ギンは大丈夫なのかい?」
「まぁそこまでやね。」
「はぐれ悪魔バイザーね?依頼により貴女を討伐するわ!」
「ダレがやラレるか!返り討チニしてやル!!」
ーアアアアアアアアアアアア!!ー
ビリビリと工場全体が震えるほどの咆哮を上げると、バイザーの姿がミチミチッ、グチャッ、ブチブチ、などと音を立てながらさらに変化していった。咆哮が治まる頃にはもうバイザーの面影はなく、体格も数倍にまで膨れておりもはや混合獣(キメラ)のようであった。
「それじゃあ、二人とも、悪魔についての講義を始めるわよ。」
「今ここでっすか?!」
「大丈夫よ。皆バイザーよりもずっと強いもの。まずはそうね…小猫!!」
「はい!」
リアスの号令とともにギンの隣にいた小猫が飛び出す。
「それじゃ、まず第一に悪魔の駒はその形通りにチェスの駒みたいに種類があるの。そしてそれぞれに能力があるのよ。」
リアスによる講義が行われている中、飛び出した勢いそのままでバイザーへと突貫した小猫だったが、変異前にはなかったバイザーの突然伸びてきた尻尾によってカウンターをくらい弾き飛ばされてしまう。そしてそのまま工場の壁に激突する。その勢いと強さは生じた土煙が物語っていた。
「小猫ちゃん!!」
「あらあら。新人さんの前だから張り切りすぎたみたいですね。」
「大丈夫よイッセー。言ったでしょ?皆バイザーよりもずっと強いって。」
リアスの言葉を証明するように起きた土煙から小猫が平然とした様子で出てくる。どうやらカウンターに対しては腕をクロスし防いだようだ。
「講義の続きよ、悪魔の駒には種類があり、それぞれ能力があるって言ったわよね?小猫の持つ駒は『
言われた通り目をやると丁度、小猫がバイザーを殴るところだった。
「フッ!」
「ギャアッ!」
驚くべきはその音。ガコン!!、とその華奢な身体のどこからそれほどのパワーを出すのか、さっき吹き飛ばされたとは思えない威力。くらったバイザーはと言うと、変異してかなりの重量と体積が増加しているにもかかわらず、パンチの威力でかなり後退させられている。しかし、そこでバイザーは何かハッと気付いたかように一定のラインからビタッ!!っと止まった。
「それじゃあ次は…裕斗!!」
「はい。それじゃ行ってくるよ。」
「おう行ってr」
イッセーが返事を言い終える間もなく木場はその場から消え、気付けば木場はバイザーの頭上まで跳んでいた。木場は消えたのではない。ただ
「裕斗の持つ駒は『
リアスの言ったことは正しく、ギンの目にはしっかりと木場がバイザーに接近し、ジャンプするまでの
一挙手一投足ハッキリと見えていた。
「まぁ、このくらいって言っていいのかわかりませんけど、出来ひんかったらそもそも堕天使相手にケンカ売りませんって。」
「それもそうね。それと、これは悪魔の駒とは関係ないのだけれど裕斗もイッセーと同じく神器持ちよ。」
その言葉に答えるように空中の木場の手にはいつの間にか剣が握られていた。
「木場の神器ってあの剣か?」
「その解答じゃ三角ね。
裕斗の神器は剣自体じゃなくて剣を造る創造系の神器よ。」
「たタき落とシてやる!!」
バイザーが木場を迎え撃とうと腕を伸ばすが、それは叶わなかった。木場の背後に雷を纏った剣がどこからともなく5本現れ、
バイザーの腕を地面と縫い付けた。
「裕斗の神器の名前は『
迎撃するはずだった腕を縫い付けられ、完全な無防備になったバイザーに木場の持っていた剣が襲い掛かる。
「ガァアアアアアアア!!うデが!腕がァぁぁァァぁ!!」
見事木場の振るった剣はバイザーの腕を一刀両断し、すぐに木場はその場を離れた。
なぜならリアスのもとを既に離れていた姫島がバチバチ言わせながらいい笑顔を浮かべていたそこにいたのだから。
腕を再生させたバイザーの前に
「最後に朱乃ってもう…もう少し待てなかったのかしら?」
「うふふふ♪私も混ぜてくださいな。」
「イッセー、ギン、最初に言っておくことがあるわ。朱乃は『究極のS』よ。」
「「見ればわかります。」」
目の前の光景は悲惨と言う他なかった。そこは言うなれば地獄。バイザーの周りには雷が降り注ぎ、
それをバイザーは必死に避けていた。そして姫島はと言うと…
「うふふ♪うふふふふ♪」
恍惚とした表情を浮かべていた。『究極のS』。その言葉に違わずバイザーを襲う雷はどれも急所を外されており
しかし、足の先など痛覚が通っているとされる場所を的確に撃ち、時に回避させ、時に防御させ、
それに伴う再生によって着実にバイザーを疲弊させていった。
「朱乃の持つ駒は『
「チェスの駒で言う『女王』は確かほかの大駒を合わせたような動きやから…ってまさか?」
「そのまさか、『女王』は『戦車』の攻撃力、防御力と『騎士』の機動力を併せ持つ。
因みに、もう一種類『僧侶』って言う駒があるのだけど、その能力は魔法力の向上となっているわ。
この朱乃の雷の威力が高いのは本人の地力もあるけど『女王』が『
「なるほど…」
納得するイッセーを傍目に、今までじっとしていたギンが動き出した。
「ギン?どうしたの?」
「いえいえ、そろそろ選手交代でしょう?部長としてもボクの実力知りたいでしょうし…」
スタスタとドS化した姫島のもとに近づき
「いいですね、いいですねぇ!ホラホラァ!!避けなきゃ当たっちゃいますよ!」
「ていっ。」
「痛っ!」
拳骨を握った手で軽く小突いた
「!?」
「あはは…」
「あら?」
「うぉぉぉい!」
背後でなにやらキーキーとうるさいがギンは無視した。
「気ぃつきましたか?姫島先輩?」
「何をするんですか?ギン君。」
「ボクらは彼女を討伐しに来ただけで、甚振りに来たわけやないんですよ?やりすぎです。」
「ですが!せっかく楽しくなってきたというのに…」
「先輩は部長の『女王』なんですよね?」
「そ、それがどうかしたんですか?今何の関係が?」
「副官である先輩はリアス眷属の中で一番見られるゆう事です。なのにそんなんでええんですか?
リアス眷属はこんなもんなんだ、って下に見られませんか?」
「む、むぅ~。」
「そないむくれんでください?なにもするな言うてるわけやないんです。
時と場合を考えてくださいってだけで…」
そう言って姫島の頭を撫でるギン。
(あら?この感じ…前にも?って私は何を考えて…。)
「やっぱりギン、貴方悪魔にならない?朱乃の暴走を抑えられるのは貴重な戦力なんだけど。」
「答えはあん時と変わりませんよ~部長。というわけで、交代です姫島先輩。」
「やっぱりギンが使うのってそれなんだね?」
「そらまぁ、ぶら下げてるもんは飾りやないよ?」
そう、ギンの腰からは一振りの刀が着けられていた…
「…かなりの再生能力を持ってるみたいやけど、度続く負傷でそれも限界やろ?」
ギンの目の前にはシュウシュウと音と煙を立てながらうずくまっているバイザーが…。
再生時の煙によってその姿全体が一瞬隠れる。
「ならどうなるか。修復も追いつかず、かと言って黙ってこのまま消えるか?
いや違う、その中間、ケガの無い頃に戻る。つまりは小さくなる。若返り、言うわけや。」
煙が晴れるとそこには先程の巨躯の女はおらず、バイザーと思しき幼い少女がいた。しかしその容姿に似合わずその目には変わらない戦意を滾らせ、こちらを睨んでいた。そしてその少女の姿が掻き消え、耳を劈く轟音が響き渡る。思わず体が硬直してしまっていた一同はすぐに周囲を警戒するが、そこにバイザーの姿はなく、よくよく見るとギンの姿もないことと先程まで何もなかったはずの壁に大穴が開いており、それが外まで続いていることに気付いた。一同はすぐにさっきの轟音がバイザーが壁を壊して外に出た音だと察した…
それにギンが巻き込まれたことも。
♦
急いで外に向かう一同が目にした光景は、凄まじい、の一言に尽きた。その視線の先ではバイザーの攻撃をギンが凌いでいた。しかし言うは易く行うは難し、だ。バイザーはまず小さくなったことでスピードがかなり上がっており、その持ち前のスピードで以て接近戦に持ち込んでいた。かなりの速度の拳や足に襲われているのだが、それに対しギンはギリギリのところで体を逸らし、半歩ずらすなどして躱していた。そんなバイザーのラッシュの合間の隙を見計らい、ギンはその腕を掴み、一本背負いの要領で投げ飛ばした。空中で体勢を立て直し何とか受け身をしながら着地したバイザーとそれをじっと見るギン。少しばかり沈黙が続いたが、その沈黙を今度破ったのはギンであった。鞘に手をやり、鍔を押し上げ、すらぁっとその刀身を露わにする…。それは何の変哲もない刀であり、一見何もおかしなところはないように見える。
(おおきに、『神槍』。)
そう、ギンは神槍を始解し、脇差から一般的に刀と呼ばれる長さまで伸ばしていた。まぁ、今回は神器持ちとバレるわけにはいかないため死覇装は纏わずの戦闘なので瞬歩は使えないのだが、ギンの様子を見る限り何ら問題はなさそうである。刀を抜いたのを見たバイザーは投げられたのも踏まえ、近距離戦は不利と思ったか、背中から触手を何本も伸ばしギンへと向ける。
一本、瞬きをする間もなくギンの顔面へと迫る……すんでの所で切り払われた。
二本、三本、一本目に隠れるようにして同じように迫る……いつの間にか切られていた。
四本、五本、軌道は同じようにして目前で左右に分かれ挟み撃ちにする……一歩引かれて重なったとこ
ろを切られた。
六本、四本五本目と一緒に伸ばし、頭上から一気に振り下ろす……上段で防がれダメージは与えられなかったが少し動きが止まる。
七本、地面スレスレの横薙ぎで足払いをかける……六本目を力ずくではねのけられ、跳躍によって躱される。
八、九、十本、三本をまとめ、強度を上げ、なぎ倒す勢いで振るう……刀を腕で支えるように防がれる。
かなりの勢いと力であるはずなのにビタッと触手は止まり、バイザーがどんなに力を入れようとしてもギンは一歩も動くことなどなかった。
「ッフ!!」
ギンが気迫のこもった声を上げると触手たちをはねのけ、あっという間にバイザーのもとにたどり着き、斬りかかろうとする。ギンが刀を振り上げた時にようやくバイザーも反応できたようで、残っていた触手を総動員して壁を作るがギンはお構いなしとその壁ごと切り伏せた。バラバラ、と触手が落ち切り口から遅れて血が飛び出す。その滴った血が地面に落ちその部分が溶け落ちる。
(酸、か…。まぁ関係ないかな?)
切れた触手を振り回しその強酸性の血を振りまくが、その先には既にギンはおらず、その血を搔い潜って神槍がバイザーの胸を刺し貫く。
「ガハッ」
「終わりや」
神槍を引き抜き、叩き切った。
♦
力尽き、とうとう膝をつくバイザー。どうやらもう抵抗する力も尽きたようである。残心していたギンはリアスの方を振り向いた。
「もうええですかね?最後頼んます、部長。」
「え、ええ。貴方ってよく嘘つきって言われない?今日学校で『少し動ける程度』って言ってたけど、全然それ以上じゃない。」
「いえいえ、じぶん力あんまりひけらかすんが好きやないだけですよ。」
「まあいいわ。はぐれ悪魔バイザー、何か言い残すことはあるかしら?」
「…さっさと殺せ」
「そう。」
リアスの構えた手に魔力が集中し、徐々に高まっていく…それに合わせて空気もピリピリとプレッシャーが強くなる。
「なんすか、あれ。」
「どう見てもフツーの魔力弾やないデショ。」
「フフフ♪ご明察です。グレモリー家はある魔力で有名なのですよ。その魔力は『消滅』。その力から部長は巷では【紅髪の殲滅姫】なんて呼ばれていたりするんですよ?」
「うへぇ、おっかないですわぁ…」
魔力をチャージしていたリアスがゆっくりとバイザーが近づいていく…どうやら準備が整ったようだ。
「それじゃあ、さようなら。」
リアスの腕が振るわれ、それに沿うように魔力波が炸裂した。
「うわっぷ!!」
「っと」
「あらあら♪」
その場に爆風が吹き荒れその余波がギンたちを襲う。
「キャッ!」
「よいしょ!」
爆風は小柄な小猫を攫い、フワッと浮かび上がりそうであったがギンがその腕を掴み、踏みとどまることができた。
「塔城さん大丈夫?」
「あ、ありがとうございます///」
「グギギギギギ…」
「羨ましそうに見るんやないよ兵藤君。」
辺りに爆風による土煙が充満し、リアスが一仕事終えたように一息ついて、気を緩めながらこちらを向いていた…。
「みんなお疲れさm」
しかし、そのリアスの背後の煙がおかしな動きを見せた。煙を割いて伸ばされる触手、そのすべてがリアスを害そうと牙をむく。
「部長!!」
「っ!!」
一番に動き出したのはイッセーであった。
悪魔のスピードでリアスのもとまで行き、そのまま抱きかかえるようにして後方へ下がった。
入れ替わるようにして次に動いたのはギン。
触手をすべて切り落とし、
(破道の五十四っ!這炎!!)
紫の炎の円がバイザーに触れた瞬間、炎が上がる。正真正銘力を使い尽くし、その場に崩れ落ちたバイザー。その目には憎悪が浮かび、射殺さんばかりに目の前のギンを睨みつけていた。それに対しギンは…
「
その言葉にバイザーは目を見開いた。今まで自分を狙ってきたのはどちらかと言えば姫島の様に狩りの対象として見ていた…のに目の前の男は自分に『恨んでいい』と言ったのだ。その言葉は相手は自分と対等なのだと言外に言っているようにも感じ、そんな風に言ってくるやつなど今までいなかったのだ。その上この男は続けて言った。
「恨んでええ、許さんでええ。君にはその資格がある。ただ…
バイザーは今度こそ目を剝いた。
ーき・づ・い・て・た・の?ー
正しく発音できていたたかわからない、でも確かめなければならない。
「あんだけあからさまやったらね?まぁ気づいとんのはボクだけみたいやけど…けど安心しぃ、君の思いは無下にはせぇへんよ。やから心配せずもう休んでええんよ?」
ーあ・り・が・とー
今度は、今度こそはしっかり言えただろうか?伝わっただろうか?重くなった瞼に従い徐々に意識が落ちてきた頭の中でそれだけが気がかりだった。
♦
「じゃあ頼んだで?」
後ろのメンバーに聞こえない声でギンが呟くとどこからか、にゃーんと猫の鳴き声が聞こえた。チラッと後ろを見るとイッセーがリアスに対して謝り倒していた。近づくと徐々に会話が聞こえてくる。
「ほんっっっとに!!すいません!!」
「いえ、そんなに謝らなくてもいいのよ?おかげで助かったわけだし…」
「ただいま戻りましたよーっと。」
「ああ、お帰りなさいギン。貴方もありがとね?」
「いえいえ、ところでこれは?」
「実は…」
イッセーがリアスを抱え、バイザーの攻撃から逃れ退いた時、退いたところまでは良かったが問題はその後。新米悪魔であるイッセーはスピードを出したはいいが止まり方がわからず、さらには足をもつれさせ見事ヘッドスライディングを決めた。リアスを抱き寄せていたため彼女自身には怪我がないことが不幸中の幸いであった。
「で、それに申し訳なくなった兵藤君はこうなってると…」
「ええ、できれば彼を戻してくれないかしら?私じゃどうやら逆効果みたいなの。」
「はぁ~、しゃーない。ほら!兵藤君!」
「な、なんだよ、市丸?笑いたきゃ笑えよ…かっこつけて飛び出した挙句、最後の最後で大失敗した俺の事なんか…」
「ボクが言いたいことは
「…ゴクッ」
「……おおきに、助かったわ」
「へ?」
「部長が襲われた時、多分ボクやったら間に合わへんかった。しかも、あん時ボクら以外は咄嗟のことで動けへんかったし…」
なんなら、ボクは君の声で動けたようなもんやしね?と続けて
「で、大体よ?この間まで一般人やってた君がこん土壇場であない動けた時点でたいしたもんや。力加減についてはこれからおいおいやっていけばええやろ?部長さんもケガしてないみたいやしそれでええやないの。」
「う、お前に褒められるなんて…。っていうかなんであんな早く動けたんだ?俺。」
「なんや気付いてへんかったん?ほら、自分の腕見てみ?」
そう言われイッセーが自分の左腕には籠手が出現しており、それはイッセーの神器『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』であった。
「無意識的に使うてたみたいやね。確か能力は力の倍化やっけ。やからあない速かったんやね。さて、ボクがさっき言うたことも踏まえて部長さんの話を聞こか?」
「その言い方はズルいんじゃない…ないかしら?…コホン。イッセー、それにギンもありがとう。おかげで誰もケガなく、無事バイザーを討伐できたわ。」
心なしか『誰も』と『無事』を強調しながら高らかに言うリアス。
「ギンも言ったけど、イッセー。貴方が助けてくれなかったらまず間違いなく私はバイザーの攻撃を受けていたでしょう。正直、貴方がここまで動けたことに驚いているわ…。そう言えばギン、バイザーのは?」
「バッチリ倒しましたよ?あ、でも燃やし尽くしてもうたんで死体の方は諦めてください。」
「魔法を使ったの?」
「まぁうちの術、とだけ言うときます。」
「そう、じゃあ一件落着!!ということで解散しましょうかしら?朱乃、結界を解いて頂戴。」
「はい、部長。」
「あ!ところで部長!」
「何かしら、イッセー?」
「俺に使われた駒の能力って何なんですか?」
「あぁ、そう言えば言ってなかったわね。イッセー、貴方の駒は『
「能力は?」
「ないわ。」
「無い!?」
余程ショックだったのか、それとも緊張の糸が切れ気が緩んだからのか、イッセーはその場から動かなくなってしまった。それをスルーしてリアスは部員全員を見渡すと、ふと、一人に目が行った。
「朱乃?」
「……」
「朱乃?朱乃ってば!」
「!!はい、どうかしましたか、部長?」
「どうかしたって、そっちこそどうかしたの?何か考えふけっていたみたいだけど。大丈夫?」
「いえ、何でもありません。大丈夫ですわ。」
(結界を解いたときの違和感…例えるなら
「ほら、イッセー。いつまで白くなってるの。早く帰るわよ?」
「……」
「…だめだこりゃ。裕斗と小猫、引きずってもいいから連れて帰るわよ。」
「「はい。」」
リアスの声に応え右手を木場が、左手を小猫が掴み言われた通り引きずるのもお構いなしに引っ張っていく。
「変わろか?」
「いいえ、大丈夫です。」
引きずられている張本人はというと、ーー無能無能無能無能無能ーーとうわ言の様に呟いていた。
一行が去った後、月を雲が隠し夜の闇も相まって真っ暗な廃工場。バイザーが最期にいたと思しき炎上跡、小さな影があった。跡を前にして
「やっぱり居はったんやね」
突如として挙がったその声にビクッと肩を跳ねさせ、その方向に視線を向ける。
「まいど、こんばんは」
そこにいたのはさっき帰ったはずのギンであった。それに合わせるように月を隠していた雲が動き、徐々に月明かりがその影を照らす…。ローブを羽織っていたそれは暗闇も相まって姿が見えていなかったが、月明かりによってその姿がようやくはっきり見えた。そのローブから覗く顔はまだ幼く、どこはかとなく
「君は
「……。」
「だんまりか…。それとも喋れへんのかな?参ったなぁ、これじゃ埒明かへん。」
「…姉を殺したヒトが何の用ですか。」
「良かった、口が利けへんわけやないんやね。というか君は彼女の妹さんか…」
「質問に答えてください。それとも今度は私を殺しに来たんですか?」
「う~ん…。別にそんなつもりもあらへんよ?ただ、君をお姉さんに会わせようってだけやよ。」
「!!あってるじゃないですか。殺した姉に私を会わせるんでしょ、言い方が違うだけじゃないですか。」
「?なんや会話がかみ合うてへんね。というかボクは君のお姉さんを殺してへんよ?」
「は?」
空気が一変する。目の前の少女からギンへと向けて突き刺さるような殺気が向けられているが、向けられている本人は全くのどこ吹く風…。
「まぁ百聞は一見に如かずってね」
ギンは何もない空間に手をかざしカーテンを撫でるように手を滑らせるとそこにある空間が裂けていく。そこには先程死んだはずのバイザーとそれを治療している黒歌が居た。
「姉さん!!」
「にゃ!!ギン!!遅いにゃ!!早くこっち来て手伝うにゃ!!」
「ボク、鬼道と違って回道の方は苦手なんやけど…」
「何言ってるにゃ、誰のせいでこんなに治療してると…」
「ハーイ、テツダイマース」
バイザーを挟んで黒歌の反対側に座り手を当てて回道を使っていく。
「な、なんで姉さんが…?いえ、そもそもなんで敵である貴方が治してるんですか!?もう訳が分かりません!!」
「あー、治しながらやから大雑把に言うと今回の一件、臭すぎたんよ。」
「臭すぎた?」
治しながらチラッと少女の様子を見ながらギンはそう、と続けた。
「まず、今回は最初から標的の『捕縛』やなくて『討伐』が依頼者の要望やった。」
「それは…はぐれ関係の依頼なら珍しくもないのでは?」
「確かにはぐれの依頼では討伐が多いけど、それは完全に異形化して暴走してもうた相手に多い。それに対し今回は完全に人型相手にもかかわらずの要望。」
「そうだとしても、それだけで姉さんを助けるには根拠が弱いのでは?」
「もちろんそれだけやないで?理由は後二つある。一つ、これはさっきのにかぶるんやけど、討伐依頼が出てる割にはこん子は理性がはっきりしすぎてた。それに意思の疎通もできとったしね?それなのに『捕縛』や『確保』の一文字すら見せへんのは少しおかしい思うたんよ。」
「最後の一つは?」
「依頼者。」
ギンは短く答えた。
「へ?」
「依頼者がなぁ、どうもどっかで見たことある名前やなぁ思うたら。そこにいる黒歌の資料で見た名前やったんよ。で、よくよく思い出せばそいつ悪ーい噂しかあらへんし…。で一応黒歌に裏取ってもろうたらビンゴ、って言うだけ。」
「ほんと、急に頼んでくるもんだから大変だったにゃ!ギンはもっと感謝してほしいにゃ?」
「お、ようやっと喋った言うことは」
「うん、もうこの子は大丈夫にゃ!ていうかギン。苦手とか言ってその…回道?だっけにゃ?そこら辺のやぶ医者よりも治療上手かったのにゃ。」
「黒歌に比べたら全然やよ。」
「まぁいいにゃ…。ほら、もう少ししたら目を覚ますと思うわ。だから、そんな離れたところにいないで傍にいてあげなさい。」
ギンと一緒に立ち上がり、少しバイザーから離れると、よろよろと覚束ない足取りでバイザーのそばで膝をつきその手を取り、その温かさを確かめるように大事に、大事に抱きかかえるバイザー妹はまた肩を震わせ泣いていた。さっきとは真逆の感情をその内に溢れ返させながら…
それを離れたところから見ているギンと黒歌は、というと…
「黒歌。」
「ん、にゃ~に?」
「おおきに。」
「どうかしたのかにゃ?急に改まって」
「黒歌のおかげであの姉妹を助けられたわ。」
「ふふん。もっと感謝するがいいのにゃ~」
「うん、本当におおきに。」
「…なんか調子が狂うにゃ。いつもならここらへんで落とすか貶すかするはずにゃのに…」
「それだけボクが感謝してるゆうことやよ。」
「まぁ、ギンが感謝するのは嬉しいんだけど
「それに関しましては本気で悪かったと思うてます。」
「あとで彼女たちにもしっかりと謝るといいにゃ。」
「はい…」
「ギンはにゃんでバイザーに妹がいるんだってわかったのにゃ?」
「??」
「いや、彼女見つけた時に『やっぱり…』って言ってたから」
「ああ、そういうこと…これは妹さん時の説明にもつながるんやけど…バイザー、途中から今みたいな小っちゃい姿になりはったんよ、なのにその姿になったとたん外に飛び出したんよな。屋内の方が障害物もあって小さい体の方がスピードも相まって有利なはずなのに。」
一呼吸置いた後ギンはさらに続ける。
「その前からおかしな点はあったんよ。あるエリアへの攻撃をいやに嫌ったり、その場所への攻撃自体をさせないように立ちまわったりね…。やから、あぁ誰か、ないし何か守ってんかなぁって思うたんよ。彼女に理性がちゃんとある思うたんもこれが理由やね。あと、壊れている演技がわざとらしかったし…」
「へぇ、よくそこまで見えていたにゃあ」
ここまでで会話は途切れる。
「……」
「……」
「ところでギン?ギンがあの姉妹を助けた理由ってほかにもあったりするのかにゃ?」
「なんです?藪から棒に…」
「もしかして
「さぁてねぇ?……ところで黒歌さん?」
「なんにゃぁ?」
「
「さぁてにゃぁ?」
「……」
「……」
「あ、そう言えば」
「??今度はなんにゃ?」
「久々に会うた妹さんはどうでしたか?お姉ちゃんとして」
「!!!そらぁ、もう!!めっちゃめちゃ可愛くなってたにゃん!!」
「うわ、うるさ」
「もぉ~あんなにきれいで可愛くなっちゃったら変な男が付きそうでお姉ちゃん心配にゃ!!」
「なら早よ仲直りしぃや?」
「……」
「…なんでそこでだんまりなるかなぁ?」
「うぅ、こればっかりは仕方ないにゃん。」
「はぁ(*´Д`)~、あぁ、妹さんで思い出した。今後二人が仲直りするまで黒歌はスキンシップ禁止な?今日なんか匂いで訝しんではったし、塔城さん。」
「にゃにゃ!!??」
というわけで、バイザー回で救済は完全オリジナルです。そして……
更新遅くて申し訳ありません、四木シロです。本当に遅くなり申し訳ございません。ちょっとリアルが立て込んでいました。感想や誤字指摘、評価していただければとても!とても!!励みになります!!!では、また次回にお会いしましょう。では、
視点の変化
-
正直、邪魔
-
わかりやすくていい
-
どっちでもいい