すべてをオレンジへと染め上げ、自分の色彩感覚が狂っている錯覚に陥る
まるで、色を失ったかのように
なんだか自分も溶けてしまっているようですごく心地が良い
すっかり馴染んでしまったこの世界に暖かさを感じた。
今回は百合小説のタイトルっぽい名前選手権ってツイートをしたらフォロワーさんが気に入っちゃってそれを小説にしちゃったって感じです。
「白は匂えど散りぬるを」
以外にも、「特効薬は君の花びら」「マッチングハンドレッド」「ささやかなリリー」「在りし日のアネモネ」「繋がれど繋がれず」などがエントリーしてました。
とにかく、こういう企画でこの小説が立ちました。
書きながら、これ百合。。?って思わなくもなくなってしまいましたが、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。
では、いつも通りに。至らぬ点や稚拙な文章多々あると思いますが、生暖かい目で楽しんで頂ければと思います。
木枯らしが吹きすさぶ帰り道
すべてをオレンジへと染め上げ、自分の色彩感覚が狂っている錯覚に陥る
まるで、色を失ったかのように
なんだか自分も溶けてしまっているようですごく心地が良い
すっかり馴染んでしまったこの世界に暖かさを感じた。
「いろは?どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
私は一緒に帰っている雪那(せつな)ちゃんの方へと向き直り、小さく首を横に振る。
そしてそれを誤魔化すように雪那ちゃんの腕に手を絡ませる
「11月にもなると結構寒くなってきたね」
「確かにね。ちょっ、歩きづらいよ」
口ではそういうものの手を振り払おうとはしない。
腕のぬくもりを感じながら独り言ちる
「あと3か月もすれば卒業なんだなぁ」
「ちっちゃい頃から一緒だったいろはと離れるなんて考えられないな…」
思えば、幼馴染である雪那ちゃんと離れるのは初めてかもしれない
「雪那ちゃん嬉しいこと言ってくれるじゃん!でもね、人には出会いがあれば別れもある。誰だってそうだよ」
「それが、私たちの場合、3か月後ってだけだと思うんだ」
そうだ、別れはこの世の常だ。あらゆる環境、外的要因でいとも簡単に訪れてしまう。
「いろはは寂しくないの?」
「もちろん寂しいよ。でも、今までの思い出が消えるわけじゃない。こうして雪那ちゃんと過ごした時間は消えるわけじゃない。だから迷わない。今頑張れることを頑張るだけ!だから雪那ちゃんも、、ね?」
迷いと後悔が心狂わせるなら、今後悔が無いように。
それに電話したりできるしね、と付け足しながらはにかむ。
「いろはは強いね。私は怖いよ」
雪那ちゃんは絡ませた腕をさらに引き寄せ、不安そうな顔でうつむく。
「実は、雪那ちゃんにあげたいものがあるの」
私はおもむろに立ち止まり、カバンから本を取り出して手渡す。
「これは?」
「エンディミオンって物語詩。私はこの本を初めて読んでから好きになっちゃってそれからずっと繰り返し読んでるんだよ!だから、あげる」
「え、いろははもう読まないの?」
「私はもう何回も読んでるからね。大事な本だからこそ、雪那ちゃんに」
「ありがとう!大事にするね!」
「それと、今渡しちゃったんだけどさ、これを読むのは私がいなくなってからにしてくれないかな?」
「どうして?」
「どうしても!」
なにそれーと不思議がってはいるものの、さっきのような不安な顔はもうどこにもなかった。良かっt….
「危ないっ!!!」
雪那ちゃんに強く手を惹かれたと同時に私の耳元わずか数センチ左を大きな鉄の塊が通り過ぎて行った。
「がしゃーん!!!!」
その大きな塊は猛スピードのままに十数メートル先の電柱に衝突し、大きな音を喚き散らした後、息絶えたようにあたりを静寂が包む。
「いろは!!大丈夫???」
ものすごい形相でこちらを心配する雪那ちゃんに少し嬉しさを覚えながら未だ冷めやらぬ脈動を感じる。
「な、なんとか。雪那ちゃんのおかげだよ。ありがとね。」
「いろはが無事なら良かった。ほら、代わって、私が車道側歩くから」
「えー、そしたら雪那ちゃんが危ないじゃん~」
「その時はいろはが助けてね」
「もちろんだよ!!もうぐいーってやるよ!ぐいーって!」
「あはは、楽しみだな」
今でも少し怖いけど、雪那ちゃんと話してるとなんだか少しずつ安心していく。
今日も少し怖いことがあったけど、こうして私の1日が終わっていった。
「雪那ちゃんおはよー!!」
「あ、いろは。おはよう」
清々しい朝に今日も二人で登校。これが私たちのルーティーン、私たちの日常。今日も良い一日になりそうだ。
「そういえば、昨日の事故ニュースでやってたね。居眠り運転だって」
「それなら私も見たよ。怖いね。。ほんと周り見て気を付けて歩こうね。いろは」
「あ、じゃあさ、手繋ごうよ!そしたら安全だよ!」
「え!?は、恥ずかしいよ。。そんな子供じゃないし」
「えー、私が危ない目にあってもいいのー?」
「それはダメ!!!」
交渉の結果渋々繋いでくれることになった。嬉しい
「これで安全だね」
「学校の近くになったら離すからね」
「えーけちー」
だだをこねた結果、結局教室までしっかり手を繋いで辿り着いた
「もう、いろは!そろそろ」
「はーい」
事惜し気に手を離すとおもむろに雪那ちゃんが声を上げる
「え?今日って木曜日だっけ!?火曜日の時間割持ってきちゃった」
「雪那ちゃんにしては珍しいミスだね~」
「雪那また曜日間違えたの?しょうがねーなぁ。ほら、見せてあげるから机くっつけて」
「う、うん。ありがとうございます…」
「いいっていいって、困った時はお互い様っしょ?」
雪那ちゃんはクラスの隣の席の子に見せてもらうらしいです。珍しいとこ見れちゃったな~
授業が終わり、お昼時間。
いつもの通り、雪那ちゃんと二人でお弁当を食べる。
場所は教室の雪那ちゃんの机だ。
「雪那ちゃん、授業大丈夫だった?」
「うん、なんとかね。隣の木津さんにはほんと助かった」
「なら良かったよ~。それにしてもほんと寒いね」
「いろは最近寒いしか言ってない」
「だって寒いんだもーん」
少しずつ冷え込んでくる季節に合わせ、教室は少しずつ賑わいを増していく。口々にクリスマスや終業式の単語が見え隠れする教室の端っこで今日もゆったりとした時間を過ごす。
「ご飯を食べたらなんだか眠くなってきちゃった」
「雪那さんは冬眠の季節ですか~?」
「そうですよ。少しの間だけ夢に揺蕩うんです。時間なったら起こしt…」
まどろむ世界にケリを付けて浅い夢へと浸っていった。
「….ちゃーん!!おーい!!雪那ちゃーーん!!」
揺さぶられ起きた時にはとっくに授業は終わり、教室すべてを溶かすように一色に染め上げていた。
「え?もうこんな時間!?!」
「雪那ちゃん時間になって揺さぶっても全然起きてくれなかったんだよ!!」
「そうだったんだ。ごめんね。ありがとう」
「どういたしましてー、じゃあ帰ろっか!雪那ちゃん!」
いつもの帰り道
色を見失うほどに濃い夕日に照らされ、道行く道は一寸先は光。何も見えない。だけども雪那ちゃんだけがはっきり見えて燦燦と降り注ぐ光の道を示してくれる。
そして、雪那ちゃんと私は「あの場所」へとたどり着いてしまった。
「雪那ちゃん….あのね…」
いろはの問いかけが耳に届く少し前に、私は電柱に置かれた花束を見つけた。花束と一緒に手紙も置かれており、その時やっとここは昨日の事故現場だったことを思い出した。
「そういえば、ここ、昨日の…」
それにしては、手紙に年季が入りすぎてる気もするが、道路脇の電柱ということもあるし、そういうこともあるのだろう。
ドライバーの方が亡くなったのだろうか。確かにあのスピードだ。人間にはひとたまりもない
「雪那ちゃん….あのね….」
改まった声音が妙に珍しい。目の前の花束から目を離し、振り返ったそこにはいろははいなかった。
「え?いろは?どこにいったの?いろはー!!」
ここは開けた一本道だ。そんなすぐに隠れる場所はない。ならいろははどこに?
あたりを見渡していると、先ほども見た花束に置かれた手紙が目に入る。そこに書かれていたのは
“いろはちゃんへ”
という見知ったクラスメイトの筆記体で書かれた文字だった。
これも、これも、これもこれもこれも全部全部全部!!!!
全てがいろは宛だった。なんの冗談なのだろう。おかしい。
呼吸が定まらない。脈打つ心臓がうるさくてもう何も聞きたくない。耳をふさぎ、道路の壁にもたれかかる。
少しずつ、そう少しずつ。知ってたはずの知りたくない記憶が溢れ出す。
あれは4年前、小学5年生だった私の記憶。
3か月後に転校が決まったいろはとの帰り道。
夕焼けに染まるアスファルト、寒々しい大気に対抗するようにわずかに浮かぶ頬の桃色、おしとやかでありつつしかし目を引かせる赤色の髪留め。私の目に映るすべてに色が存在し、私の世界を彩っていた。
「あと3か月で転校しちゃうんだなぁ。」
「嫌だよ。いろは、、嫌だ」
「決まったことだもん。しょうがないよ。」
「いろはは寂しくないの?」
「もちろん寂しいよ。だから、これ受け取ってほしいな」
「これは?」
「いろは歌って知ってる?五十音余すことなく使った歌なんだけど、私と同じ名前の歌ってすごい偶然じゃない?だから好きになっちゃったの。それを私の文字で書いたお手紙。気持ちもたくさん入ってるからね!」
「うん。いろはの歌!ずっとずっと大事にする!!」
「じゃあ、私も一つ渡したい。これ」
「なんだか、結構厚い本だね」
「和訳版エンディミオン。物語詩って言うんだよ。この物語がすごい大好きで、だからいろはにも読んでほしいからあげる」
「え?せつなちゃんはもう読まないの?」
「私は何回も読んだしね。大事な本だからいろはに。あ、あと読むのは向こうに行ってからにしてほしいな」
「え、どうして?」
「“この本はまたいつか会った時に語り合いたいから”」
「うん!わかった!」
しかし、その色は一瞬のうちに奪われてしまった。私を彩り、道しるべとなっていた色はすべてを瓦解し、無色透明へと姿を変えた。
「いろはっ!!!!」
がしゃーん!!!!!
居眠り運転だった。猛スピードで突っ込んだ軽トラックはいろはを引きずりながら電柱へと激突した。トラックと電柱に挟まれたいろはほぼ即死だったと後から先生から聞いた。
残されたのはその場に落ちたエンディミオンと呆然と立ち尽くす私だけだった。
「ううううあぁああああ!!!!!」
全てを思い出した私はその場でうずくまっていた。いろははここには存在しない。その事実だけで私の心を壊すには十分だった。
世界が無色へと姿を変える。私の目には何も映らない。何も映してほしくない。色のないこの世界なんか
私はおもむろにいつでも持ち歩いているよれよれになったいろはからの手紙を取り出す。涙のあとがそこかしこに存在していた。そんな手紙の中には、懐かしいいろはの字で丁寧にいろは歌が綴られていた。
「あれ?これは」
手紙と一緒にもう一つ何か入っている。
「押し花の栞?」
きっと本好きの私を思って入れてくれたのだろう。白色の花びらがあの日と変わらずに彩っている。
「そうだ、そうだよね。いろははそれを望んでいるんだ」
世界が変わる。いや、変わらないように私が変えるんだ。
白。純白でなんにも汚されない、汚せないその色で覆われた世界は瞬く間に私を包み込み閉じ込めた。
世界から色が消えたなら、私の色で染め上げよう。
私の色は意味をなさないかもだけど、無色な世界より全然マシだ。
いつだって色は白の上で彩られる。
ならば、私はいろはの白になろう。
一段と冷え込みが激しくなってくる夕方。いつも通りの一人きりの帰り道。
雪でも降ってきそうな寒さに辟易する。でも、雪は嫌いじゃない。
あたり一面を白で覆ってくれるから。残酷な現実を隠してくれるから。
今日も自分を染め上げたキャンバスに偽りの色を重ねていく。色彩感覚を狂わせるほどの夕焼けにいろはは何を思うだろうか。何度も繰り返し、何度も問いかけたわかりきっている質問をいろはに投げかける
「いろは?どうしたの?」
そうしたら、いろはは色んな意味を含ませてこう答えるはずだ
「ううん、なんでもない」
これでいい。これでいいんだ。私の中の事切れそうな切ないキャンバスに色を描き続ける。
雪はいつだって春に溶かされ散っていく。
色ですらいつかは散ってしまう。
でも
この世界が何度終わりを迎えようと、誰もがいろはを忘れようと、私は迷わずに何度だってこの浅い夢に酔い浸る。
刹那の思い出で終わらせない。私はいろはを一生忘れないから
カバンの中には、いろは歌と共に「ピンク色の勿忘草」の栞が入った封筒が白の匂いで塗りつぶされていた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
作中に出てきた、「いろは歌」「エンディミオン」「勿忘草」はこの物語を構成する重要なキーワードになってるので、そちらの意味も調べてもう一度見てみると面白いかもしれないです。
それと、作者ネタもちょろっと入れたりして個人的に楽しくできました。ちょろっと(ちょろっととは言ってない)(エンディミオンの作者)
ということで、今回はこの辺りにしたいと思います。
フォロワーさんの期待に応えられたかはわかんないですけど、個人的には一応上手くできたかなって思います。
結局これって百合なんすかね。。。?女の子の恋愛というか友愛というか偏愛というか。。
まあ、気にしないことにします。それではまたいつかどこかで