~side士郎~
(見たことはない、はず、でも俺はあの子を知っている?)
士郎は戸惑っていた。今まで会ったことがないはずなのに何処か懐かしく感じさせる少女、士郎は今までのことすら頭から抜けて少女を見続ける。
(わからない…なんであの子を見るとこんなにも懐かしく感じるんだ?)
周りでは何かゴチャゴチャと声が聞こえるが今の士郎には何も聞こえなかった。少女はこちらに意識を向けてからイリヤや遠坂には目を向けずにただ士郎のことをじっと見ていた。
(あの子は、あの子の名前は…)
「美遊…」
少女の名前を考えた瞬間、士郎の口から今まで聞いたこともない名前が出てきた、少女はそれを聞いた瞬間驚き、そして泣き出したかと思うとカードを投げ捨てて士郎へと走って飛び込んできた。
「おっと…」
士郎が倒れないように上手く身体を支えると少女は士郎の方を見て泣きながら叫んだ。
「お兄ちゃん‼」
瞬間、周りの空気が凍りついた…
〜side美遊~
私はこの世界に来てから初めて動揺した。
(なんで…なんでここにいるの…)
確かに可能性はあった。しかし、そうでないことを願っていた。世界が違うのだから違う人生を歩んでいると信じていたのに…
(これ以上は考えちゃダメだ…)
美遊はこの世界に来た時に決めていることがあった、それはこの世界に前の世界での人との関係を持ち込まないことだ。たとえどんな知り合いに合っても相手は自分のことを知らないのだから自分も相手に知らない振りをしなくてはならない。
(あれは違う、あれは私の兄さんじゃないんだ…)
隣ではルヴィアさんがカードを渡すように言ってきた。私は違うんだと自分の心に言いつけながらルヴィアさんにカードを渡すためにあの人から目を離そうとすると…
「美遊…」
(………え?今あの人は何て言った?私の名前を……美遊と呼んだ……?)
そこまで考えると美遊の身体は士郎へと向かい、美遊の意識は全て士郎一色に染まった…
〜sideイリヤ~
凛さんが後ろから来た女の人と何か言い合っている、でも私にはその内容が全く頭に入ってこなかった。
(お兄ちゃん、ずっとあの子のこと見てる…あの子もさっきからお兄ちゃんから目を離そうとしないし…二人はどんな関係何だろう?)
私がそんなことをずっと考えていると不意にお兄ちゃんがつぶやいた。
「美遊…」
お兄ちゃんがつぶやくと女の子は驚いた顔になり、そして泣き出したと思ったらお兄ちゃんに向かって突撃した。
「おっと…」
お兄ちゃんがその子を受け止めると泣きながらその子は叫んだ。
「お兄ちゃん‼」
………え?この子なんて言った?お兄ちゃん?おにいちゃん?オニイチャン………
「………ダ、メ。」
その時、私の中で何か入ってはいけないスイッチが入った。
「絶っっっっっ対にダメーーーー!!!」
私は足に力を入れて踏み出すと思いっきりその子を蹴飛ばした。
「お兄ちゃんは………お兄ちゃんは!私だけのお兄ちゃんなんだ‼」
そうしてお兄ちゃんをめぐる絶対に負けられない戦いの火蓋がここにきられた………
次回!お兄ちゃんをめぐる妹戦争です!