桜咲く。   作:LCRCL (エルマル)

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ゼイルの過去が判明します。
前半と後半のギャップが凄い。


悲しい過去

side桜木咲子

 

ー花町公園ー

 

ベンチに座って秋風を浴びる。涼しい。

 

咲子「……プハァ、生き返るわね」

 

ちょうど近くの自販機で買ったミルクティーを飲みながらそう言う。

 

咲子「………?」

 

スタスタ

誰かが来た。

 

ゼイル「隣、いいか?」

 

来たのはマッ缶を持ったゼイルだった。

 

咲子「ええ」

 

ゼイル「あざっす」スッ

 

ゴクゴク…。

しばらく無言が続く。でも、悪くない。

 

咲子「…………」

 

ゼイル「………」

 

咲子「ねぇ、アンタ、質問があるんだけど…」

 

ゼイル「なんだ?」

 

咲子「…アンタ、なんでそんな"目"してるの?」

 

ゼイル「っ……何のことだ?」

 

咲子「その半分腐ってる目のことよ。私以外気付いてなかったわね。…余程の事がないとそうはならないわよ?」

 

ゼイル「気付いてたのか……。話してもいいが、気分が悪くなったらすぐに言えよ?決していい話じゃないからな?」

 

咲子「ええ、知りたいの。話してくれる?」

 

ゼイル「…分かった」

 

side飛羽野ゼイル

 

俺の家族は俺、妹、両親の4人で、そこそこいい家庭だった。

ある日…

 

母「ゼイル、茜(あかね)、いい子にしてなさいよ?」

 

父「お菓子はテーブルに置いてあるから、仲良く食べろよ?」

 

2人「はーい!」

 

両親は出かけた。しかし、帰ってくることはなかった。

数時間後、家に何故か警察が来た。

 

警察「新宿(あらやど)さんのお子さんですね?」

 

ゼイル「はい、そうですけど…」

 

警察「………。あなた方のご両親は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…先程、交通事故に遭い亡くなられました」

 

2人「………え?」

 

両親は死んでしまった。俺と茜はかなりショックを受けた。

だが…不幸はそれだけではなかった。

 

叔父「オラァ!」ドゴッ

 

ゼイル「…グハッ!」

 

叔母「ふんっ!」ドガッ

 

茜「…キャアッ!」

 

叔父「何でこの俺が…こんな、餓鬼どもを!」ドガッ

 

叔母「ストレス発散用のサンドバッグにはなるわね!」ドゴッ

 

俺たちは叔父と叔母に引き取られたが、毎日虐待を受けた。しかも…

 

「おー!脱ゼイルだぜ!」

 

「変な名前だなー!」

 

自分の名前が少しユニークなだけでずっと虐められる毎日…。ただ、

 

一郎「おいお前ら、やめてやれよ!」

 

「…ちぇっ、冷ーめた」

 

「いこーぜ」

 

ゼイル「ありがとな、一郎」

 

一郎「どうってことねーよ」

 

親友の雷落一郎(らいらくいちろう)だけが唯一の味方だった。しかし、それは中学校までの話だ。

一郎は総武高専(千葉にある戦闘専門学校)に入学し、俺はそこそこの高校に入学した。流石にここは平和に過ごせるだろう…と思っていたが…

 

「おい、まさかお前脱ゼイルか!?」

 

ゼイル「…っ!?」

 

中学校で俺を虐めていたヤツが偶々同じ高校に入学していた。それから、俺は学校では虐められ、家では殴られ蹴られる毎日だった。

 

茜「お兄ちゃん…私達…いつまでこんな生活を続ければいいの…?」

 

俺は泣いてる茜の頭を撫でながら、言った。

 

ゼイル「……今日までだ」

 

その後俺は荷物をまとめ、茜と一緒に家から逃げた。

1週間ぐらい過ぎただろうか。

持っていた金は底を尽き、俺は茜を背負って夜歩いていた。そこで俺が倒れそうになったのを…

 

きじお「おい君、大丈夫かい!?」

 

命の恩人であるきじお兄さんに助けられた。

その後、きじおさんに匿われ、虐待をした叔父と叔母は逮捕された。

俺と茜はきじおさんに引き取られ、俺はここに転校してきた。

 

side桜木咲子

 

ゼイル「……これがこの目の理由だ。きじおさんに匿われる前はもっと酷かったぞ」

 

ゼイルの体験は残酷だった。残酷すぎてしばらく言葉が出なかった。

 

ゼイル「で、お前はどう思う?ただの作り話だと思うのか?」

 

私は……

 

咲子「…信じるわよ。アンタの目は嘘をついてない」

 

ゼイル「………」

 

咲子「アンタの過去は残酷だった。……でも、もうそれは起きないわ。だって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…今のアンタには、味方がいるから」

 

ゼイル「……!」

 

咲子「きじおさんも、私も、さとかに隊のみんなも、アンタの味方よ。裏切ることは絶対にないわ」

 

ゼイル「そう…なのか?」うるっ

 

咲子「そうよ。……肩、貸すわよ?」

 

ゼイル「……ちょっと…借りるぞ…ううっ…」

 

ゼイルは私の肩で静かに泣いた。そんなゼイルの頭を私は撫でながら言う。

 

咲子「……私がアンタを守ってやるわ」

 

ー数分後ー

 

ゼイル「…ありがとな、桜木」

 

咲子「ええ、どういたしまし……て?」

 

…え、どうしたの、その目!?

 

ゼイル「ん?どうした?」

 

咲子「いや、あの、その…目が…」

 

ゼイル「さらに腐ったのか?」

 

咲子「いや、その…めっちゃカッコよくなってるのよ///」

 

ゼイルの目は完全に腐りが取れ、綺麗な黒になっていた。そのせいか顔イケメンになってる。

 

ゼイル「……は?」

 

咲子「ほら、鏡」

 

ゼイル「…誰だ、コイツ?」

 

咲子「……///」

 

ゼイル「どうした?そんなに顔赤くして?熱か?」スッ

 

咲子「…!?」

 

ゼイルは手を私の額に当てる。いやいやなにやってんの!?

 

咲子「べ、べべべ別に熱なんてないわよ!?」

 

ゼイル「そ、そうか、スマン」スッ

 

咲子「…それと、私のことは咲子と呼びなさい」

 

ゼイル「いや、そんなに親しく「文句あるの?」…分かった。咲子」

 

咲子「………///」プシュー

 

な、なんか、照れちゃう///

 

ゼイル「?…ま、いいや。じゃあな、咲子」スタスタ

 

咲子「え?え、ええ、また…」

 

ゼイルは公園を去っていった。

 

咲子「……後でベットで叫ぼう」

 

うん、双子葉。




↑漢字にしたのはわざとです。

次回もよろしくお願いします。

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