登場人物は同じ二人。
ヘルムート・ビッツ
元カールスラント軍所属の傷病軍人。オラーシャの設計局で開発主任を非公式に勤める。一度撃墜された彼女は、このユニットの開発を成功させ、再起を図る。
年齢16歳
ヴラジミール・ミハイル・ペトリャコフ
表向きの開発主任
おおらかな性格だが、仕事には厳しい。
ヘルムートの上司にあたる。
年齢60代
「中佐、お客様です。名前は、へルームト?女性です。そう、銀髪の、かしこまりました」
「突き当りを右に進んで、三番目の部屋にお進みください」
黒ぶちで眼鏡をかけたブロンドの女性が、丁寧にヘルムートを案内する。
「ありがとう」
そう答えたヘルムートの姿は痛々しいものだった、左腕はなく、足も自由に動かさないのか残った右手で松葉づえをついている。まるでさび付いて壊れたロボットのように、不満足になった五体を引きずるように、彼女は歩いていく。
「どうぞ、入ってきなさい」
焦げ茶色をした無機質な色をしたドアの向こうから、落ち着いた声がする。
「失礼します」
はっきりと力強いよく通った声で、返事をしたヘルムートは、松葉づえをわきに置いた後、しっかりとした足取りで、部屋に入っていく。
「おお、ムート久しぶりだな、何年振りか、大きくなった」
そういうと、白髪の大きな男は両手を広げ、ヘルムートを抱きしめるが、ヘルムートはそれを心底嫌がっていた。
「そろそろ放してください。熱いです、それにしっとりしていて不快です」
「相変わらず手厳しいな。その体は、撃墜されたのは本当だったのか、可哀そうに」
男はヘルムートの着ていた軍服の垂れ下がった左袖をつかみ、悲しそうにつぶやく。
「可哀そうではありません!こんな姿になったのも、すべて私が選択した結果です!同情される筋合いはありません!ペトチャコフ中佐!!」
ヘルムートは目に見開き、怒りをあらわにしながら叫ぶ。
「そうか、それは悪かった、気には相変わらず強い子だ」
ペトリャコフは落ち着いた返事をした後、ゆっくりと席に着く。
「座りなさい、そろそろ仕事に話をしよう」
「失礼します」
着席をすすめたペトリャコフにヘルムートは、素直に従う。
「君にはストライカーユニットの開発をやってもらう」
そう言うとペトリャコフは、DO NOT CPYの赤い判が押された資料をヘルムートに渡す。
「中佐、私はユニットを使ったり、整備したりは沢山しました。ですが..」
ヘルムートは渡された資料に軽く目を通した後に、顔を上げ何かを言いかける。
「司令部に提出された、君の論文を読んだよ、君は魔法力学に明るい」
ヘルムートの話を遮った後、ペトリャコフは腕組みをしながら、言う。
「片腕では、設計図は引けません」
とヘルムート
「君の代わりに設計図を引ける人間はいくらでもいる、用意しよう」
とペトリャコフがすぐに返す。
「設計の経験がありません」
ヘルムートがまた言い訳をする。
「嘘は良くないな、メッサーシェルフBF109アドルフ―フィーネ・ガランド専用機、あれを設計したのは君だろ?改造案とはいえ、美しい図面に綺麗な数値、実にいい仕事だった」
ペトリャコフはヘルムートを褒めちぎる。
「必要な物資と人員は?」
少し乗り気になるヘルムート。
「私がすべて用意しよう、責任をもって」
腕組みをしたままペトリャコフが答える。
「カールスラント軍機の図面が欲しいです。これは用意できないでしょう?」
口に手を当てた後、ヘルムートは試すように言った。
「君の「お母様」を頼れば、すべてそろう、そうだろ?」
口にくわえたパイプにマッチで火をつけながら、答えるペトリャコフ。
「じゃあ」
ヘルムートがまた何か言おうとした後、
「やるのか?やらないのか!」
ペトリャコフが短くはっきりと言った。
「やります!やらせていただきます!」
ヘルムートは背筋をピンと伸ばし思わず敬礼をしながら答えた。
「決まりだな、明日この場所に9時来るように」
そういうとペトリャコフは、メモを渡す。
「ありがとうございます。ところで今夜の宿は?」
ヘルムートが間抜けな返事をした。
「自分でとりなさい」
と突き放すペトリャコフ。
「お金がありません」
空っぽの財布をわざとらしく振りって見せるヘルムート。
「はぁ、その歳になっても小遣いをせびるのか、ほら」
財布の中身からいくらかを、ペトリャコフはヘルムートに渡す。
「ありがとうございます!おじさん。では失礼いたします」
金を受け取るやいなやヘルムートは短く敬礼をし、足早に部屋を去っていった。
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