それを見たナタリアはある問題に気付く
ナタリア・ルキーニーシュナ・ペトリャコーヴァ
階級:中尉
本名:ヘルムートビッツ
ペトリャコフ中佐の姪として開発主任に抜擢される。
年齢16歳
出身:カールスラント西部
ロイ・カロラー
設計主任を務める
35歳の時にモスクワ在住の若い女性と結婚、子供はなし。
年齢40代
出身:ガリア東部
ヴラジミール・ミハイル・ペトリャコフ
階級:中佐
ペトリャコフ設計局の局長を務める。ナタリアの上司
ナタリア(ヘルムート・ヴィッツ)とは長い付き合いで、彼女に偽の名前と開発主任の席を用意する。
ヘルムートとは長い付き合いで彼女に事を気にかけているようだ。
年齢60代
「ロイさん、引いてくれた設計図を見ました、いくつか質問があります」
ナタリア・ルキーニーシュナ・ペトリャコーヴァは少しため息をついた後、そう設計主任のロイ・カロラーに聞いた。
「ええどうぞ、何か不満そうですね。私が引いた図面に問題でも?」
ロイは少し驚いたのか、一瞬、目を丸くした後、口に手を当てそう答えた。
「まずここ、何でストライカーユニットにプロペラが付いているんですか?」
ナターシャは黒板に張り付けた図面を指で指しながらいった。
「それは、空を飛ぶからです、飛ぶためにはプロペラが必要でしょう、飛行機もストライカーユニットも」
ロイは自分の間違いに気づいていない様だ。
「ストライカーユニットにプロペラはついていません!ロイさんがプロペラと呼んでいるあれは、わかりやすく説明するとですね、魔動力エンジンから発生させた。言ってしまえば魔法力で作ったプロペラ、魔法力の塊みたいな物です!」
ナターシャは黒板に簡単な図を書きながら、ロイ・カロラーに講釈を垂れる。
「知らなかった、あのプロペラの様なものは魔法力で作っていたものだったんですね。シールドと同じように」
ロイは驚きを隠せないようで、手のひらで口を覆いながら返す。
「理解が早くて助かります。後は全体組立図に書いてあるここ、直径200×600mmの筒状の部品があるんですが、これは何です?」
ナターシャは黒板に貼られたA1サイズの大きな全体組立図を指さした。
「それは、ストライカーユニットにウィッチが足を入れるための部品ですね」
ロイは、その箇所には少し自信があるのかはっきりと答える。
「よいしょ!これはその部品に似た、ホウロウ製のごみ箱です。ロイさん、靴を履いたままでいいですから、この2つのごみ箱に足を入れてみてください」
ナターシャはわきに置いてあったごみ箱をロイの前に2つ並べるとそういった。
ロイは言われた通り、靴を履いたまま2つのごみ箱に足を入れる。
「はい、ストライカーユニットに足を入れました。ではそのまま離陸して空に飛び立つ、ことはできないので、足を上にあげてください」
ナターシャはロイに淡々と指示する。
「足を上げました、この行為に一体何の意味が?」
ロイはそういうと、ナターシャの目を見た。
「うーん、分かってくれませんか、このごみ箱を、飛行場を滑走するストライカーユニットだと思ってください。今度は私がこのストライカーユニットを履きます」
そう言うとナターシャは靴下と長ズボンを脱ぎだし、下半身だけ下着姿になった。
「ちょっと!ナタリア中尉!一体何を!」
ロイ・カロラーは驚き、思わず叫んだが、ナターシャはそれを無視しはだしのまま、2本の空ごみ箱に足を突っ込む。
「これからすることを見ていてください、もう一度言いますよ、このごみ箱がストライカーユニットです。クリストファー!お願い!」
そうナターシャが言うと、彼女からまだらのカラスの翼が頭の両側から飛び出る。そしてお尻からは尾羽がとでた!」やがて全身が青白い炎のようなものにつつまれる。
「では飛びます、私とストライカーユニットの位置に注目してください」
ナタリアはふわりと、薄暗く狭い会議室の天井まで手が届きそうなくらいの高さまで浮かび上がると、そのまま話始める。
「ロイさん!ごみ箱はどこにありますか」
天井近くまで浮いたままのナタリアは、驚き茫然とするロイに大きな声で聞いた。
「え?ああ、床の上にありますよ!」
ロイがナタリアに聞こえるように声を大きくしていった。
「ごみ箱がストライカーユニットだったら、ストライカーユニットは飛行場に置いてきぼりになって、私だけこうして飛ぶことになる!そう思えません?」
ナタリアは浮いたままはっきりと大きな声で、ロイに尋ねる。
「ああそうか!足が引っかかるような形状に変えないと、長靴のような形に!」
ロイ・カロラーはようやく自分の間違いを理解したのか、手を叩き納得した。
「よっと、その通りです、ストライカーユニットには魔法力で常に上へ上へと飛ぼうとすので、離陸してすぐに足から抜け落ちる。なんてことは稀です。しかし、空中で魔動力エンジンが一瞬だけ止まった時や、急旋回をした時に、ユニットが足から抜け落ちたり、勢いよくすっぽ抜ける。なんてことが起きたら困るんですよ。そうならないために、ユニットが足から離れないように工夫が必要なんです」
ゆっくりと床に着地したナタリアはズボンをはきながらロイに語った。
「ほぉ。勉強になりますな」
ロイ・カロラーは顎に手を当て感心する。
「一般的に足を入れる部品はジェラルミン製で、長靴のような形をしているので、「銀色の長靴」と呼ばれています。その長靴の内部には、スチールウール製の靴下を付けたり、ヘルメットの内側みたいに革製の輪っかを張って、そこに足を通したり、それぞれのメーカーで工夫しているんです。因みにメッサ―シェルフはスチールウールの靴下に足を通すタイプ、オラーシャのI-16は革製のベルトに足を通させるタイプですね」
ナターシャが長い靴下を、机に腰掛けながら履きつつロイに教えた。
「成程、勉強になりますな、ユニットの開発は航空機開発と勝手が違いますね、これは骨が折れる仕事になりそうだ」
ロイ・カロラーは頭をかきながら言った。
「せっかく組立図まで作ってもらって悪いんですが、やり直しです」
ナタリアは少し困った笑みを浮かべながら、ロイの肩に右手を置いて言う。
「knock!knock!!ナターシャここにいたか、頼まれていたものを持ってきたぞ、おい!この部屋に運び込んでくれ」
二人のいた会議室にペトチャコフ中佐とその部下が次々と、茶色紙に包まれた四角い塊を運び込む。
「おじさん何ですか?これは?」
ナターシャは呆気にとられた様子でペトリャコフに聞いた。
「ほら、頼まれていたストライカーユニットの図面だよ」
ペトリャコフは茶色い包み紙を破き、中の図面をナタリアに渡しながら言った。
「これ何機種あるんです?」
ロイ・カロラー頭を抱えながらペトリャコフに尋ねる。
「知らん。私は予算確保に奔走しなければならんのでね、部下はここに置いていくから使ってくれ、それでは頑張ってくれよ」
そう言うとペトリャコフは部下を置いて、そそくさと部屋を出て行った。残されたのは2人と5人の手すきの兵士。
「えーと、あった、図面のリスト、どれどれ、リベリオンからP-40とF4F、カールスラントからはBF-109とシュトゥーカJu-87、ブリタニアのハリケーンとスピットファイアその他色々あるのね、図面の整理、しないといけませんね」
ナターシャは落ち着いた様子でロイに言った。
「私の部下が手を空けていますから、彼らとこの兵隊さんたちにやらせましょう」
ロイは山と積まれた図面の包みを解きながら言った。
「その間私とロイさんで、設計の再検討ですね」
ナターシャは先ほどまで黒板に広げられていた図面をくるくると丸めながら言う。
「いつまでに仕上げたらいいですか?組立図は」
ため息交じりの疲れ切った声を出しながら、ロイはナターシャに尋ねる。
「明日から試作に入りたいので、今日中に終わるよう頑張りましょう!」
ナターシャは自信に満ちた顔でロイに言い放つ。
「今日は残業ですね、妻に電話しなくては」
ロイ・カロラーは何度目かわからないため息をついた。
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