Muv-Luv reproductive   作:XxwヒエンwxX

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久々に筆を走らせてみました。
オリジナルとか、書いてみたいものですね。


暗くて、狭くて、コワくて

転生というものを至る所で目にする。

 

通勤中の移動路に、休日の買い物に、何気なく見ている動画の初めの広告に。

 

学生の時にはなんの関心もなく、あぁそういう演出が今は売れるのだろうな。と、その程度の認識でしかなかった。

この世に生を受けて幾年、転生とは一体どういうものなのだろうかと考える事も多くなった。

 

 

そもそも転生とはなんなのだろうか。

 

 

元は宗教における概念の単語であると、軽く調べたときに出てきた。

ある学者の話にはこう書かれている。

 

 

「現世で生命体が死を迎え、直後ないしは他界での一時的な逗留を経て、再び新しい肉体を持って現世に再生すること」

 

 

要するに死んですぐか、その後別の世界に留まってから新しい肉体で現世にまた生まれる事を言うのだという。

 

この場合、現世とはなんなのだろうか。

 

私が見てきた漫画の話はこんな風に始まる。ある日突然魔法陣が現れたり、子供を助けるためにトラックに轢かれたり、はたまた通り魔に殺される。次目を開けたときには謎の空間であったり、草原であったり、王城の大広間が眼前に広がる。そうして物語が始まっていく…。

 

確かに転生と捉える事もできるが、これは現世に生まれる前の「他界」とも見る事が出来るだろう。

しかしその場合、他界から現世へ生まれる際に持っている肉体はどのような肉体になるのだろうか。そして、最初の現世と次の現世が同じなのだろうか。

 

 

疑問は尽きず、謎は深まるばかりだ。

 

 

しかし、このような疑問が今更になって何故生まれてしまったのか。

誠に残念なことにこの本を手に取ってしまわれた方にこの現象を説明するには、この解決しない疑問をありのままに伝えるしかないのだろう。

 

 

 

 

 

私はどうやら、その転生とやらの現場に出くわしてしまっているらしい。

 

----------------------

■■■■年■■月■■日

 

■■ ■■■県■■市

 

 

気づいた時には私は晴れやかな天気の下に立っていた。

 

いつからそこにいるのか、何故ここにいるのかは全く覚えていない。

黒いシャツに黒いジーパンに赤いスニーカーの出で立ちである私は、休日の外出の際に着ていく服装と全く一緒である。

今はいつなのか、ここはどこなのか。少なくとも私は自身の名前と齢を覚えている事は確かである。

少し肌につく暑さとひりつく日差しから、恐らく今は初夏ぐらいの季節だろう。ただし、ここを日本とすれば。

周りを見渡せば住宅街、近くの電柱には住所が書かれている金属の板は無い。

私は海外に出たことはないが、恐らく日本だろう。そう信じたい。

周りを見渡していると、道行く主婦からの視線を感じた。

私の服装を見てなのか、それとも挙動不審な所を見てなのかは分からないが、少なくとも通常の人間を見る目ではないことは感じれた。

私はそそくさとその場から立ち去る事にした。

 

 

 

最初の現場から10分程歩いて、日陰に入りポケットの中身を確認する。

中にはタバコとライターと携帯灰皿しかなく、私の身分を明かすための免許証なり保険証は手元になかった。

タバコを吸おうかと考えていると、またしても視線を感じる。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

振り返ると幼い少女が、自分の背丈よりも大きい竹箒を持ってこちらをぽかーんと口を開けながらみている。

少し見つめ返してみると、私は自分の疑問を一つ解決することが出来た。

ここは日本だ。少なくとも少女の顔立ちからそう様子が伺える。

なら、と思い少女に問いかけをする。

 

「・・・申し訳ないのだけど、ここはどこかな?」

「・・・・・・」

 

少女に反応はなく、ただこちらを見ているだけ。

このままでは不審者として通報されるのもそう遅くないだろう。

私は質問を変える事にした。

 

「家は?」

「・・・・・・」

 

少女は反応を示し、すぐ横の建物を指した。

そこには暖簾がかかっており、【京塚食堂】と書かれている。

恐らく店番か、手伝いで家の前を掃いていたのだろう。

財布はないが、今の状況を解決する事はできそうだ。

 

「中に入ってもいいかい?」

「・・・(コクン)」

 

幸いにも営業中らしい。

少女の前を通り抜け、店の中に入っていく。

中はカウンター席と個別の席があり、カウンターのすぐ向こうには厨房があった。私の記憶の中では、ラーメン屋の店内に近いものを感じる。

厨房には女主人が仕込みをしていた。もしかしたら、まだ営業していないのかもしれないが、食事をしに来たわけではない。

 

「すいません」

「はーい!」

 

女主人が手を止めてこちらに向くと、最初に私を見ていた主婦と同じ視線を向けてきた。

 

「・・・何か困りごとかい?」

「仕込みの最中にすいません、いくつか質問がしたいのですが」

 

最初に向けていた打って変わって気の優しそうな顔になった彼女は、親身になってくれそうな対応をした。

この風体では恐らく交番に尋ねても留置所に入れられてしまう可能性もあるし、彼女に聞いてみる事にした。

 

「近くの駅までの道を知りたいのですが、ここから近い駅はどこでしょう?」

「柊町駅がここから近いよ。この道ずっと歩いていくと大通りに出て、左手に曲がれば柊町駅だ」

 

どうやら近場の駅は柊町というらしい。

聞いたこともないが、駅まで出れば何かしら情報が得られるだろうが、そちらに行くつもりもない。本題は別にある。

 

「ありがとうございます。・・・もう一つお聞きしたいのですが、私はどこかおかしくみえますか?」

「なんでそんなことを聞くんだい?」

「いや、先ほどから不審者を見るかのような視線を向けられてますから。私には心当たりがないもので」

 

そういうと彼女は訝しげに私を見る。

うーん?と言いながら眉をひそめてこちらを見る彼女は、納得がいかないようにも見える。

 

「・・・あんた、脱走してきてるんじゃないのかい?」

「脱走、ですか?」

 

なんと道行く人たちは脱走した人間として見られていたらしい。

一体どこから脱走してきたというのだろうか。そんなことは私自身が知りたい事でもある。

 

「生憎と脱走するような場所にいた覚えもないもので」

「・・・本当かい?あんた、歳はいくつだい?」

「歳ですか?脱走と関係あるのですか?」

 

なんということだろう。私の外見から脱走を疑われている始末である。

 

「そりゃ関係あるだろうよ。今じゃあ二十歳いけば兵隊さんじゃないか」

「兵…隊?」

「知らないのかい?今の世の中訳のわからないヤツが出てきて世界中大騒ぎだってのに!」

 

気が遠くなっていくような感覚に陥る。

二十歳行けば兵隊?それはもはや徴兵制度が復活していることを意味している。戦後日本にある自衛隊を差し置いてそれが起きているという事は、もはや三大原則なんてものは機能していないのだろう。

 

「自衛隊は?そんな世の中で出動していないわけが」

「自衛隊?なんだいそりゃ。日本には帝国軍しかないよ」

「帝国?」

 

どうやら自衛隊は最初っからいないらしい。

その代わりにいるのは帝国軍だという。現代日本において帝国軍という物が存在するのはサブカルの中、それこそ漫画やアニメの世界か、歴史の教科書にちょっと出てくる程度のものだろう。なんだってここでその単語を聞くことになるのか。

嫌な予感がする。

 

「なんだい?世間知らずにしては随分じゃないか。あんた、行っちゃなんだけど頭がやられちまっているのかい?」

「そうではないと信じたいんですが・・・」

「あーじゃああれは知っているだろう!ベータ!」

 

この人は何言っているのだろうか。そんな庶民一般にβの記号名が流行っているわけがないのに。

飽きれと疑いの視線を向けると彼女は溜息を吐いた。

 

「その様子じゃ知らないみたいだねぇ。あんた、ホントに日本人かい?」

「身分証明は無いですけどね。それより、そのベータっていうのは?」

「ホントに知らないのかい!?呆れた」

「嘘ついて知ってるって答えるよりかはマシかと」

 

はぁ、と呆れながら店の奥に何かを取りに行く彼女。

手に新聞のようなものを持って戻ってきた彼女は、それを俺に渡してきた。

やはりそれは新聞で、新聞名の下には日付が書かれていた。

 

 

 

 

 

『1 9 8 9 年 8 月 1 5 日』

 

 

 

 

 

「………は?」

「ちゃんと広げて読みなよ。そこに書いてあるだろう?でっかく『BETA』って」

 

 

彼女に促されているところはもう視野に入れておらず、私の眼にはその日付しか見えていない。

これはさすがにいたずらだろう。しかしいたずらにしては真新しく、まるで今日刷った新聞のような質感だ。

恐る恐る彼女に今日何度目かの質問をする。

 

 

「・・・あの、この新聞」

「ん?新聞がどうかしたのかい?」

「これは、『いつの』新聞ですか?」

 

 

 

 

 

 

少なくとも。そう、少なくとも。

私が生きていた現世よりもずっとずっと前の新聞にしては。

これは、真新しすぎた。

 

 

 

 

 

 

「なにすっとぼけてんだい。これは『今日の朝刊』じゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

1989年8月15日

 

もしも、これがドッキリやバラエティ番組の演出でないとするならば。

私は、何十年も前の日本に来てしまっているらしい。

 




あくしろよって声が上がるとドキドキしながら次を書くかもしれません。
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