山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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T「海外研修生のホームステイ先にいくぞ!」マック「この展開、どこかで......?」

 

 

 

 

 

 七月。世間は既にサマーシーズン。海や山に遊びに行く事を国家レベルで推奨されるこの季節。残念ながら道北生まれのトレーナーである俺にとって、この暑さは体感出来る死以外の何物でもない。

 だが、それでも楽しみはある。それは何かと言うと.........

 

 

桜木「そういやニコ。お前寮に入ってないらしいけど、どこに寝泊まりしてんの?」

 

 

ニコロ「ホームステイだ。飲食店を経営してる家で、出てくる飯も美味い」

 

 

桜木「はえー.........遊びに行ってもいい?」

 

 

ニコロ「ああ、事前に連絡をしておけば大丈夫だろう」

 

 

 というような具合でトントン拍子で話が進んで行き、週末にはメンバーを揃えて、コイツのホームステイ先に行く事になった。

 

 

テイオー「ね、ねぇ?やっぱりやめにしない?どうするのさ〜!!こ、殺し屋の.........アジトダッタラ.........」

 

 

ゴルシ「あーんしんしろってテイオー!!殺し屋の一人や二人!!おっちゃんが何とかしてくれっからよ!!」

 

 

 いや、流石に二人は無理だ。あの時は意表を突くようなやり方が運良く何度も通っただけに過ぎない。

 なんて、そんな事を思いながら、休日の街中を集団で闊歩する。目の前には以前大々的にその関係を白日の元に晒された黒津木とタキオン。そしてそれをからかうようにしてちょっかいを掛けるバカ二人。そして何やらタキオンにこちらに聞こえないように何かを聞いているマックイーンが居た。

 

 

桜木「えーっと、確かこの辺で.........おっ、おーいニコーーー」

 

 

ニコロ「.........全く、うるさい奴だ」

 

 

桜木「お生憎様、声の大きさだけが自信の男だ」

 

 

 携帯を確認し、ニコロが待っていると言った場所に視線を向けると、そこには静かに柱に対して背を預けている奴が居た。

 会話も交わさず、俺達を目視で確認した後、黙って先導するように前へと歩いて行く。

 

 

桜木「.........ったく、少しくらい愛想良くしろよな。トレーナーだぞ?」

 

 

ゴルシ「けどよ、愛想良いヒットマンなんて恐怖以外の何物でもないだろ」

 

 

テイオー「う、うん.........ニコニコ笑いながらもし、銃とかパンってしてきたら.........ピェ」

 

 

 うわ、何それ怖。なんでそんな悪魔みたいなこと思いつくの君?そしてなんで自分で考えて自分で怖がってんの?可愛いやつだな。

 まぁしかし、考えすぎで美味しいご飯も喉を通らなくなったら可哀想だ。ここは話題を変えよう。

 

 

桜木「なぁテイオー。足の調子はどうだ?」

 

 

テイオー「え?うん。普通に歩く分には問題ないよ。走ったり、負荷を掛けたらダメだけどね」

 

 

桜木「それにしても、不思議なもんだよなぁ。見た目は全快してるように見えても、走れないなんてなぁ?」

 

 

ゴルシ「ウマ娘の身体は確かに、おっちゃん達人間より早く走れるし、力もあっけどよー。コケたら膝擦りむけるし、車に当たったら死んじまうんだ。脆さは一緒くらいなんだぞ?」

 

 

 頭の後ろで手を組みながら、ゴールドシップは面倒くさそうに言葉を発した。確かに、人より卓越した力を持っているのに、耐久力は人並み。おいそれと力を使えば怪我をするなんて、面倒臭いにも程がある。

 

 

桜木「.........はぁぁ、神様ってのはなんで、こうも自分の造形物に弱点ってのを付けたがるんかねぇ」

 

 

 目の前を歩く集団。その一人であるマックイーンに視線を向け、不貞腐れるようにそう呟いた。別に、怪我をした彼女を責めている訳では無い。ただ、それをケアしたり、助ける事が出来ない自分に、腐っているだけだ。

 話題を変えようとしたら、自分の気分が若干沈んだ。まるでミイラ取りがミイラになった様な気分を味わいながらも、俺達は奴の先導の元、奴のホームステイ先へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........何だか、この通り。いえ、この展開、知っている気がします」

 

 

タキオン「.........奇遇だね。私もだ」

 

 

 海外研修生のニコロさんを先頭に形成された集団ですが、どうやらその事に気付いているのは私達二人だけの様でした。テイオー以外は気付く筈なのですが、皆さん、談笑に夢中になってしまっているようです。

 

 

マック「ま、まぁそんなことそうそうありませんわね.........きっと」

 

 

タキオン「そうともさ、そこまで世間は狭くないよ.........多分」

 

 

 足を進める事に、街の景色は妙に見慣れて行きます。あの道を曲がり、突き当たりまで進み、左を向いて信号を渡ってしまえばそれこそ直ぐに.........

 

 

二人「あっ」

 

 

ニコロ「ここだ」

 

 

桜木「.........ヒョエ?」

 

 

全員「.........」ダラダラ

 

 

テイオー「?」

 

 

 目の前にある飲食店。そこが目的地だと言うのは、目の前に立つニコロさんの表情と雰囲気で分かります。分かってしまいます。

 そこは商店街よりも賑やかな街中で、そのお店は庶民的な風貌をした建物の飲食店.........

 ええ、そのまさかです。まさかがあってしまったのです.........

 

 

テイオー「ねぇねぇ!!入らないの?ボクもうお腹ペコペコだよ〜.........スンスン、ほら!!カレーのいい匂いもするよー?」

 

 

桜木「っ!!!」ダッ!!!

 

 

全員「え!!?」

 

 

 皆が手をこまねいて立ちすくみ、テイオーが来店を催促していたその時、突然トレーナーさんは店の方へと駆け出しました。その表情は鬼気迫る、という表現が正しいと思います。

 そして、その勢いのまま、その店のドアを大きな音を立てて開けました。

 

 

桜木「何やってんだ姉貴ィィィィィッッ!!!」

 

 

美依奈「!!?」

 

 

 ドアを開け放ち、その姿を店の中の人全員に見せながら、彼は叫びました。そう、その店は正に、彼のお姉さんが切り盛りしている飲食店だったのです。

 店のカウンター内で驚きつつも、徐々に冷静さを取り戻し、沈黙を保つ美依奈さん。その無表情のまま、彼女はカウンターから出て、彼へと近づいて行きます。

 

 

美依奈「.........何やってんだはこっちのセリフじゃァァァァワレェェェェッッッ!!!!!」

 

 

桜木「グエッ!!?」

 

 

美依奈「アンタ海外行ってたんだってェ!!?事の顛末をあたしに言わない所か、一年以上連絡も顔も寄越さないのはどういう了見じゃコルァァァァ!!!!!」

 

 

マック(あっ、そこで情報が止まってますのね.........)

 

 

 どうやらトレーナーさんのお姉さんは、彼がこの日本を去った情報から何も更新されておらず、その怒りをぶつけるように彼の首を絞めあげていました。

 

 

美依奈「こっちはねェ!!!アンタが何も言わずにフラっと帰ってきて!!!心底腹が立ってたのよあたしゃ!!!一体!!!どれほど今日という日を待ち望んでいた事か.........!!!」

 

 

桜木「ギブ.........っ、ギブギブギブギブ!!?」

 

 

美依奈「知るかァァァァ!!!」ギチギチギチ

 

 

テイオー「ね、ねぇ?これどういう状況.........?」

 

 

 首を絞め挙げられ、遂には泡まで吹き始めたトレーナーさん。正直この事に関しては自業自得なので、止める気はありませんが、事情は説明した方が良いと思われます。テイオーの為にも、美依奈さんの為にも.........

 

 

マック「とにかく、説明しましょう.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美依奈「へぇ、そんな事があったのねぇ。テイオーちゃんも大変だったわね」

 

 

テイオー「う、うん.........」

 

 

 ボクの目の前にカレーを置いて、サブトレーナーのお姉さんはニコリと笑いかけた。でも、さっきのやり取りが印象に残ってるせいで、ボク。ちょっと怖いかも.........

 

 

美依奈「あはは、ごめんなさいね?今のアイツにはアレくらいしないと、自分責めちゃいそうだからさ」

 

 

マック「自分を.........?」

 

 

 そのマックイーンの言葉に対して、ボク達全員は、ソファーの上に気絶しているサブトレーナーの方を見た。さっきまで凄い剣幕で気絶してたけど、今は普通に寝てるみたいな顔をしてる。

 

 

美依奈「昔っから、自分だけに厳しくてね。それが自分に対する期待なのか、それとも自分が嫌いなのか分かんないけど、ああでもしないと自分で自分を傷付けちゃうのよ」

 

 

白銀「.........まぁ、俺達に付き合ってる時点で、滅茶苦茶優しいのは分かってたけどよ」

 

 

 頬杖を着きながら、白銀はどこかふてぶてしそうに言った。そのイライラがなんか、サブトレーナーに向いているのは分かっちゃったけど、それがなんでかは分からなかった。

 

 

美依奈「.........さぁっ、湿っぽい話は終わり!!これからは楽しい話をしましょう?例えば.........」

 

 

マック「.........?私に何か.........?」

 

 

美依奈「.........マックイーンちゃんの恋の進展とか♪」

 

 

マック「!!!??」ボンッ

 

 

 じーっとカレーを食べるマックイーンの顔を見た後、美依奈さんは楽しそうにそう言ったんだ。

 でも!ボクも気になるかも!!いまマックイーンがサブトレーナーとどんな感じなのか、ボク達知らないし!!!

 

 

マック「し、進展なんて!!そそそ、そんなもの.........まだ、何も.........」シュン

 

 

タキオン「.........どちらも奥手だと、大変だねぇ」

 

 

黒津木「俺達みたいに大人っぽい訳でもないし.........やっぱ告白ありきだよなぁ、そうなると」

 

 

マック「.........うぅ」

 

 

 告白って言葉を聞いて、マックイーンは顔を伏せちゃった。やっぱり恥ずかしいんだと思う。ボク、まだそういうの分かんないけど、もし好きな人が出来て、好きって伝えるってなったら、きっと凄い恥ずかしいとおもうなぁー。

 そんな事を考えてると、保健室のセンセーとタキオンに、美依奈さんは熱い視線を浴びせてる事に気が付いた。

 

 

美依奈「なになに貴方達〜!!もしかしてアベック〜!!?」

 

 

タキオン「まぁそうなるね」

 

 

マック「あ、アベック.........?」

 

 

ゴルシ「ゴクン.........男女の二人づれ、要するにカップルってことだぜ!!マックちゃん!!」

 

 

 へー。そうだったんだ。でもそれなら普通にカップルって言ってくれた方が伝わるよね。絶対。

 でも、本当にゴルシってなんでも知ってるよねー。びっくりしちゃうくらいにさー!!

 

 

美依奈「カップルさんには限定デザートあるよー!!はいッ、抹茶パフェかモンブラン、どちらか選んでねー!!」

 

 

黒津木「うわ、微妙な二択ゥ〜.........」

 

 

白銀「俺も食いたい」

 

 

ゴルシ「一人で食ってろよ」

 

 

美依奈「相手は居るの?」

 

 

白銀「隣に居るかもしれないし居ないかもしれない」

 

 

 う〜ん、一応あってはいるんだよね。その表現。白銀、ゴルシに告白したけど返事は貰ってないらしいから、恋人と言えば恋人だし、そうじゃないって言ったらそうじゃない.........うぅ、頭がこんがらがってきちゃったよ〜.........

 

 

マック「.........そもそも、彼の心境の変化があまり見られないのです。これでは進展してるかどうかなんて.........」

 

 

美依奈「.........よっし!!ここはお姉さんが一肌脱ぐとしますか!!!」

 

 

全員「.........え?」

 

 

 そう言って、カウンター内にいる美依奈さんは力強く、自分の腕を見せるように袖を巻くって見せてきた。なんかこう言う突拍子もない行動力って言うのかな?サブトレーナーにそっくりだと思う!

 

 

美依奈「.........けどその前に、マックイーンちゃんがアイツの事どう思ってるか聞かせてくれる?」

 

 

マック「い、今この場でですの!!?」

 

 

 大きな声を出して、マックイーンはカウンターに両手を着いて立ち上がった。それから周りのボク達の視線に気付いて座った後、しばらくモジモジしてたんだけど、決心したみたいに、その顔をキリッとさせた。

 

 

マック「.........好きです」

 

 

マック「時折感じる兄らしさに対する親愛ではなく」

 

 

マック「関わりやすい、話しやすい友愛でもなく」

 

 

マック「一人の、素敵な.........この世にたった一人の異性として、好き、なんです.........」カァァァ

 

 

 そう行ってる間に、マックイーンはまた顔を赤くさせちゃった。皆でしばらく見てたら、両手で顔を隠し始めた。ボクから見てもこんなに可愛いのに、なんでサブトレーナーは勇気出さないんだろ〜?不思議だな〜。

 

 

美依奈「うふふ、嬉しいわ〜♪こんな可愛い子がもしかしたら、[妹]になるかもしれないって考えると♪」

 

 

マック「なっ、い、いも.........///」

 

 

美依奈「さぁさぁ!恥ずかしがってる暇はないわ!!マックイーンちゃんは一旦外に出て貰って、アイツの話を聞かないと!!!」

 

 

 恥ずかしがるマックイーンの背中を押して、店の外へと出していく美依奈さん。こ、これからどうなっちゃうんだろう.........!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........んあ?」

 

 

神威「お、目ぇ覚ましたぞ」

 

 

 賑やかな声の数々が徐々に音の輪郭を形成し、現実世界へと連れ戻してくる。起き上がってみると、喉に空気が通って咳き込む。

 強く締めすぎだろ.........泡吹いて倒れるなんざ初めて経験したぞ.........俺はそう思い、喉を擦りながらカウンターへ座った。

 

 

桜木「.........あれ、マックイーンは?」

 

 

ゴルシ「アタシがマックイーンのカレーにわさび入れたら怒って出てっちまった」

 

 

桜木「そりゃそうだよ!!!なんで誰も止めなかったの!!?」

 

 

美依奈「いや、突然なんの前触れもなくそんな事されたら身体固まっちゃって」

 

 

 その情景を頭の中で思い浮かべてみる。どこからともなく取り出したわさびチューブを突然、マックイーンのカレーに入れ始めるゴールドシップ.........うん。急にやられたら止められねぇな。これは言った俺が悪いわ。だけど.........

 

 

桜木「飯、粗末に扱うんじゃねぇぞ」キッ

 

 

ゴルシ「お、おう.........」

 

 

全員(ごめんね、ゴールドシップ.........)

 

 

 流石にこれは怒らないと行けない。ご飯というのは俺達の口に入れる為だけに作られているのだ。それを食べずして無駄にするということはつまり、それを作った人に対して無礼を働くということ。それは絶対に許しちゃいけない。

 .........まぁ、過ぎたことだ。仕方あるまい。今日はこのカレーを食べに来たんだ。久々に堪能するぞ〜.........!

 

 

桜木「.........!」

 

 

美依奈「どう?久々の実家の味は」

 

 

桜木「.........鶏肉がいかった」

 

 

美依奈「わがまま言うな」ポコン

 

 

 頭をグーで殴られる。まぁ、殴られるとは言ってもそれほど強くはない。

 .........面白いもんだ。昔は泣き虫で引っ込み思案だった姉、それこそ、俺がしっかりしなければと無理していた時もあったが、今ではちゃんとお姉ちゃんをしてくれる。そう思うと何だか、ちょっと嬉しかった。

 

 

美依奈「.........あっ、そう言えば気になることがあるんだけど〜?」

 

 

桜木「.........むぐ(なに)?」

 

 

美依奈「マックイーンちゃんにいつ告白するの?」

 

 

桜木「ブーーーっ!!!??」

 

 

 俺は壮大に口の中で咀嚼していた途中の、かつてカレーだった何かを放出した。オマケに飲み込み食道に入り、胃の底にこんにちわしかけていたカレーも勢い余って出てきた。4/3はゲロである。お食事中のみんな、申し訳ない。

 でもさぁ!!!そこで今お節介お姉さんし始める!!?こっちはもう成人男性なんですけど!!!もっと早くにしてよ!!!俺ぁもう魔法使いになりかけの男なんですけど!!!25?なんですけど!!!(本当)、トレセン学園所属のトレーナー?なんですけど!!!(本当)

 

 

桜木「.........あのさァ!!?俺トレーナーよ!!?学園の職員なの!!!生徒とそういう関係になっちゃダメなのよ!!!」

 

 

白銀「黒津木はどうなんだよ」

 

 

桜木「コイツは犯罪者」

 

 

黒津木「おっおーい!!!成り行きでなっちまったんだからどうしようもねぇだろぉ!!!」

 

 

神威「ウマ娘に手を出す保健室医なぞ所詮、犯罪者じゃけぇ!!!」ドンッ

 

 

 隣で喧嘩がおっぱじまる始末。神威と黒津木は熱いカードだ。ガチの喧嘩が割と起きやすい組み合わせである。因みにタキオンは意外と笑っていた。怒ってもいいところだぞここは。

 しかし、これで意識がそちらに向くだろう。そう思い、俺は落ち着いてカレーを食べ直そうとスプーンで一口分をすくい上げた。

 

 

ニコロ「.........だがそれは立場の問題であって、お前がどうしたいかは関係ないだろう」

 

 

桜木「.........テメェもか、ニコロ」

 

 

 まさかの伏兵の登場に、俺は思わず手を止めた。すくい上げたカレーを皿の上に戻し、スプーンを手から離して肘を着いた。

 

 

美依奈「そうよ。何に拘ってるのか知らないけど、アンタがどうしたいかをこっちは聞きたいの。今はトレーナーとかそういうの抜きにして―――「うっせぇよ」.........え?」

 

 

桜木「昔は頼りなかったのに、今は姉貴面してよ。いい迷惑だ」

 

 

ゴルシ「おいおい!そんな言い方.........っ」

 

 

 言葉を繋げようとしたゴールドシップを一睨みし、黙らせる。この問題に口を出せる奴なんて、今この場には、俺と姉ちゃんの二人しか居ない。

 

 

美依奈「.........なによ、こっちはアンタの為を思って!!!」

 

 

桜木「それがいい迷惑だっつってんだよッッ!!!」ダンッ!!!

 

 

全員「!!?」

 

 

桜木「前からそうだ!!!俺の考えも知らねぇでお前ら好き勝手に言いたい放題っ、俺とそんな関係になって.........良い事なんて一つも無いんだ」

 

 

 そこまで言って、怒りの感情が弾けていた心の中に惨めさがじわりと広がってくるのを感じる。まるで、子供の頃に戻ったみたいだ。あの時はまるで、隣人の様な存在だった惨めさが、今ではもう、耐性が無くなっている。

 

 

桜木「.........もう良いだろ、俺は一生独り身で良い。あんな思い。家族にさせるくらいだったら俺は.........」

 

 

美依奈「.........!アンタまさか」

 

 

桜木「悪い、ちょっと外の空気吸ってくるわ.........ついでにマックイーンも探してくる.........ごめんな」

 

 

 何かを察したであろう姉に危機感を覚え、俺はこの場から一旦離れる事を選んだ。それは、姉が察したであろう何かが十中八九、俺の問題に当てはまっていると思ったからだ。

 説教はゴメンだ。なんで俺があの時支えてやった奴に、あの時の事を説教されなきゃ行けねぇんだ。だったらもう少し.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺に子供させてくれれば良かったのに.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイオー「.........行っちゃったね」

 

 

ゴルシ「.........ああ」

 

 

 良かれと思ってやった事が裏目に出る。そんな事、アタシにとっては日常茶飯事だし、その誤魔化し方も知ってる。けれど、あんなおっちゃんを見たのは初めてだし、何より.........上手くいくって、勝手に最初から思ってたんだ。

 

 

ニコロ「.........そういえば、何か美依奈さんは察していた様だが?」

 

 

美依奈「.........言っちゃって良いのかしら。家族の問題だし.........」

 

 

ゴルシ「.........うーん」

 

 

 家族の問題。そう言われちまったら、流石のパーソナルスペース破りの達人であるゴルシちゃんも頭を抱える。アタシも出来れば、そういう事には触れられたくない時もある。

 皆、頭を抱えた。聞くべきか聞くまいか、ただそれだけを考えていた所で、とりあえず目の前に出されたカレーを食べ終えたテイオーが最初に口を開いた。

 

 

テイオー「.........聞こうよ」

 

 

全員「え?」

 

 

テイオー「だってさ!!サブトレーナーなんてもう家族みたいなもんじゃん!!チームってそういうものでしょ!!♪」

 

 

ゴルシ「.........確かにそうだ!!アタシはなに悩んでたんだ!!?」

 

 

 アタシらしくもねぇ!!そういうのはアタシが一番得意じゃねーか!!テイオーに先にやられてどうすんだ!!全く!!

 でも、おかげで決心は着いた。後はおっちゃんの姉ちゃんが、話してくれるのを待つだけだ。

 

 

美依奈「.........そうね。それなら、聞いてもらった方が良いのかもね」

 

 

 そう言って、おっちゃんの姉ちゃんは静かに話し出した。時折、悲しそうな表情を浮かべたり、体を震わせたりしながら.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっちゃんの親父は、ハッキリ言ってクソ野郎だった。同じ仕事は長く続かねぇし、稼ぎも少ねぇ。お陰で、おっちゃんと姉ちゃん。そしてその妹は、毎日三食食えるかどうか怪しい生活をしていたらしい。

 おっちゃんの母ちゃんなんて、子供に食わせる為に何日も食ってねぇ時もあったらしい。それでもおっちゃんの親父は働く所か、母ちゃんの心を傷付けていた。

 

 

 そして、 それは時折、姉ちゃんやおっちゃんにも向けられたらしい。悪い事をしたら罰が待っている。それは分かる。けれど、それは躾と言うには暴力的すぎた。

 けれど、それでもおっちゃんはまだ、そのクソ野郎が好きだったらしいんだ.........ある事実を知るまでは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美依奈「.........あたしらが食べてたご飯。偶に盗んできた物だったらしいの」

 

 

 その言葉に、アタシらは全員絶句した。いくら飯が食えねぇからって、それは最低だと思った。しかも、一回や二回じゃないらしい。生きる為には仕方ない事だと、母ちゃんは割り切っていた。

 けれど、それは生きる為の事。悪い事は他にもしていた。友達に万引きさせたりとか、詐欺をしていたりだとか.........本当、聞けば聞くほど、反吐が出てくるレベルの物だった。

 

 

美依奈「.........本当、別れられて良かったわ。ただ.........あの子がもう少し幼くて、あたしがもう少し、強かったら.........」

 

 

テイオー「.........知ってた?」

 

 

白銀「.........知らねぇよ。俺が会ったの、小5の時だからな」

 

 

黒津木「俺が一番付き合い長いけど.........知らなかった」

 

 

 白銀達の反応を見るに、どうやら皆知らなかったみたいだ。でも、仕方ないと思う。普段のおっちゃんの姿を見て、こんな人生歩んでたなんて、想像も出来ねぇ。

 

 

タキオン「.........問題が分かった時点で、離れる事は出来なかったのかい?」

 

 

美依奈「良くあるのよ。こういうのを受けていると、自分が悪いって思い込む母親。母さんもそうだったってだけ。洗脳されちゃうの」

 

 

ニコロ「.........だとしたら、解決するには難しい問題だな」

 

 

 洗脳って言葉に反応したのは、流石元ヒットマンって所だろう。そして、コイツにとってもその問題を解決するのも難しいらしい。

 .........楽しい話になると思ってたのに、まさかこんな事になるなんて夢にも思っても見なかった。これは到底、マックちゃんには言えねーな.........

 

 

美依奈「あの子、良く犯罪者って言葉を使うけど、きっと.........悪い事したらそうなって欲しいと思ってるのよ」

 

 

全員「?」

 

 

美依奈「だって、捕まってないんだもん。あのクズ」

 

 

全員「.........」

 

 

 .........そうか、そりゃ、悪い事した奴の事、許せなくなるもんな。なんも間違ってねーと思う。

 .........けれど、多分それだけじゃない。マックイーンと一緒になろうとしない理由がそれだけじゃ、ちょっと納得がいかねー。

 

 

ゴルシ「それでも、マックイーンが好きだったら行動に移すだろ。そんな程度で止められる程、やわな気持ちじゃ.........」

 

 

美依奈「.........血よ」

 

 

ゴルシ「血.........?」

 

 

美依奈「あのクソ親父の血を、繋ぎたくないのよ。アイツはきっと.........ようやく、アイツの考えてる事が一つ分かったわ」

 

 

 そう言いながら、姉ちゃんは悲しく笑った。ふと後ろを向いて、カウンターに飾られた家族写真を持ち上げると、それを大事そうに抱き締めた。

 

 

ゴルシ「.........んだよ、それ」

 

 

白銀「.........?ゴールドシップ?」

 

 

ゴルシ「なんなんだよ.........!!!ざっけんなよっっ!!!!!」ダッ!!!ドゴォン!!!

 

 

テイオー「あっ!ちょっと!!?」

 

 

 アタシは、いてもたっても居られなかった。あんな事言われたら、アタシは黙っていられねぇ。それはつまり、アタシの存在を真っ向から否定された事になっちまうからだ。

 テイオーの静止を振り切って、アタシは外に出た。外に出て、おっちゃんに柄にもない説教を垂れるために.........無我夢中でおっちゃんを探し回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー」ティロリンティロリン

 

 

桜木「.........1年振り、かな」

 

 

 一人でそんなことを呟きながら、俺はコンビニ横の灰皿に近寄った。壁に背を預け、先程買ったタバコを吸うために、ライターを取り出す。

 新品のそれは、特になんのストレスもなく炎を出す。その炎にタバコの先端を近づけ、一息吸い込むと、独特の苦さとメンソールの爽快感が口に拡がった。

 

 

桜木(.........らしくねぇな、人に当たるなんて)

 

 

 原因は分かってる。タキオンと黒津木の存在だ。二人の関係の進展は喜ばしい事ではあるが、同時に、俺の心を大きく揺るがせている。

 .........俺は、マックイーンのことは好きだ。だけど、それはあってはならない感情で、それと同時に、表に出しては行けないものだと思っている。

 

 

桜木「.........ふぅぅぅ」

 

 

 消えてしまいたい。楽になりたい。この吐き出した煙のように、空に昇って薄く広がり大気に混ざり切ってしまえば、こんな事で悩む事なんて無いのに.........

 

 

桜木(.........そうだよなぁ)

 

 

桜木(俺に、あの子を幸せにする力なんて、ねぇもんなぁ.........)

 

 

 そう思いながら、もう一口。完全に思考を切り替えようとした所で、声を掛けられた。

 

 

「おい」

 

 

桜木「.........よう」

 

 

 全く、相変わらず変なタイミングで現れる奴だ。このゴールドシップというウマ娘はどうやら、俺の都合なんてお構い無しの様だ。

 流石に、彼女の前でタバコなんて吸えない。アスリートにとってこれは、毒以外の何者でもない。せっかく着けたタバコだが、俺は一口だけつけたそれの火をすり潰し、水の張られた灰皿の中へと落として行った。

 彼女からの言葉は無かった。いつもならありがたい展開の動く言葉が来なかった。その空気に耐えられなかった俺は、自嘲するように笑いながら言葉を発した。

 

 

桜木「.........聞いたんだろう?」

 

 

ゴルシ「.........」

 

 

桜木「.........まぁ、そういうこった。俺と一緒に居ても幸せにできる保証はねぇし、俺の子供が.........アレみたくならない保証もねぇんだ」

 

 

 正にお手上げ状態。それを表すようにポーズをとっても、ゴールドシップはその真顔を崩さない。

 それでも、その中でも、何故という疑問を目で俺にぶつけてくる。どうやら、俺に全てを話させたいらしい。それも、俺自身の口で。

 

 

桜木「.........俺も本当に普通の家庭の生まれだったら、そういう気は起きたさ」

 

 

桜木「でも生憎、あんな人生辿れば価値観なんてまるっきり違う」

 

 

桜木「コップは綺麗にすれば別の飲み物を飲める。人間はそうじゃない。それでも気にせず残った物を飲む奴も居るだろうさ」

 

 

桜木「けど.........俺の中身は毒だ。そんなもの、飲ませられるわけねぇだろ」

 

 

 価値観の違いなんて関係ない。なんて、甘っちょろい考え、俺には無い。結局それが違ってしまえば、それを理解するのに時間が必要になる。その時間は、ただただ苦痛を産むものだ。理解出来ないことを理解しようとする行いほど、人間にとって苦痛な事は無い。

 そしてそれは、きっと彼女も同じ事だ。そんなに苦労するって最初から分かっているなら、俺は身を引く。それが俺が彼女を幸せに出来る唯一の.........

 

 

桜木「.........なんだよ、その手」

 

 

ゴルシ「.........」

 

 

 一瞬、息苦しさで思考を止められる。何事かと思えば、ゴールドシップが俺の襟首を掴み、持ち上げていた。その表情は伏せている為、分からない。そして彼女が今抱いている感情も、読み取れずに居た。

 

 

ゴルシ「.........気ぃ付けろよ」

 

 

ゴルシ「アタシ今、プッツンしてっから」

 

 

桜木「.........ああそう、マジギレってやつか?」

 

 

ゴルシ「.........」グイッ

 

 

桜木「っ.........」

 

 

 足は地面に着いている。だと言うのに、彼女に引き寄せられ、真っ直ぐ立つことが出来ず、気道を少し締められる。

 彼女の顔が目前にある。でことでこが密着し、彼女の呼吸がハッキリと感じられた。

 

 

ゴルシ「.........アンタ、だせぇよ」

 

 

桜木「あ.........?」

 

 

ゴルシ「っ、最っっっ高にだせぇ!!!」

 

 

 何かがちぎれたように、ゴールドシップの勢いは完全に振り切れた。俺の顔に唾がかかる事も配慮することなく、ただひたすらに言葉を並べ立てた。

 

 

ゴルシ「アンタの親父がどんだけクソだったかは知らねぇ!!!けどなァ!!!それはソイツの問題であって!!!アンタの問題じゃねぇだろ!!!」

 

 

桜木「.........」

 

 

ゴルシ「ようやく分かったぞ.........!!!アンタが嫌いなのはアンタじゃねェ!!![ソイツから生まれちまったテメェ]が嫌いなだけだッッ!!!」

 

 

 .........全く、痛いところを突いてくる。言われて始めて気付いたが、その通りかもしれない。

 俺は.........クソ親父の子供だ。ソレから生まれちまったからには、それのした事を責任もって償わなきゃ行けない。人の為に、何かをしなければならない。

 

 

ゴルシ「けどよぉ.........!!!んなもん関係ねェんだって!!!アンタはアンタで!!!ソイツはソイツだろ!!?今はもう、血しか繋がってねェじゃんか!!!」

 

 

ゴルシ「いつまで縛られてんだよ!!!オマエは.........!!!終わっちまった話をいつまで引き摺るんだよ!!!なァ!!?」

 

 

桜木「っ、そんな単純な話じゃねぇんだよ.........!!!こんな俺がどうやって!!!あんなお嬢様を幸せにできんだよッッ!!!」

 

 

 無理だ。俺には、出来ない話だ。俺ができるのは精々、あの子が幸せになる為の道を作ることしか出来ない。その隣を歩く為の力なんて.........有りはしない。

 彼女からの言葉は帰って来ない。俯いたまま、体を震わせるゴールドシップ。後味は悪いが、話は終わりだ。そう、思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自惚れんなバカッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「っ!!?」

 

 

 また、彼女の顔がドアップで視界に映る。今度は、額に強烈な痛みのオプション付きだ。

 けれど、他にも違いはあった。それは.........ゴールドシップの目に、涙が溜まっていた事だった。

 

 

ゴルシ「良いかッ!人間に!!!誰かを幸せにする力なんざはなっからねェんだよッッ!!!」

 

 

ゴルシ「ソイツの為に何かをしてもソイツが幸せになる保証はねェし!!!逆にソイツの為にしたことじゃ無くてもソイツが幸せになる可能性はある!!!」

 

 

ゴルシ「人を狙って幸せにする事なんか無理なんだよ!!!ソイツが幸せになろうとしない限り!!!一生!!!」

 

 

 力強く、そして涙を流しながら彼女にそう言われる中で、自分の中で変化が起きた。その通りかもしれない、と思ってしまった。

 だったら自分はどうすればいい?いままでこれを胸に生きてきたのに、今更どう生きればいい?その疑問をぶつける前に、彼女は言い切った。

 

 

ゴルシ「結局!!!人間ってのは自分が幸せになるだけで精一杯なんだよ!!!」

 

 

桜木「自分だけで.........?」

 

 

ゴルシ「だってそうだろ!!?夢追っかけてんのに!!!人の事気にしてる程余裕なんて無いんだ!!!」

 

 

ゴルシ「おっちゃんの幸せはおっちゃんが勝手に何とかしろ!!!マックちゃんは勝手に幸せになってっからよ!!!」

 

 

 衝撃だった。今まで、俺の中の中心になってたものが、見事に打ち砕かれた。嗚咽混じりに涙を流す初めて見る彼女の姿に、何か感じる所もあり、申し訳ないと思いつつも、頭を撫でた。

 

 

桜木「.........悪かった」

 

 

ゴルシ「.........頭、冷やして戻ってこい。マックイーンにはアタシから連絡すっから」

 

 

 不機嫌、とはまた違う何とも言えない表情を見せ、彼女は俺の襟首からようやく手を離した。

 頭を冷やす。そんな事を言われても、もう先程までのやり取りのお陰で、決心は着いた。遠くなっていくゴールドシップの背中を見ながら、俺はポケットに手を突っ込んだ。

 

 

桜木「.........今はまだ、コイツは要らねぇな」

 

 

 大人ぶってカッコつけて、切り替えるためだなんだと言っておきながら、俺は結局逃げてただけだ。答えを出すのを先送りにして、テストの回答を空欄に出す奴ほどダサいものは無い。

 俺は六百円するタバコの入れ物を中身ごと、コンビニのゴミ箱へと投げ捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美依奈「.........っ、玲皇!!」

 

 

桜木「.........ごめん」

 

 

 特に意を決することも無く、俺は姉貴の店の扉を開けた。そこには、昔と変わらない、泣きそうな姉貴の顔と、神妙な面持ちの奴らが揃ってる。

 

 

桜木「.........ガキだった。もう大人しなきゃならねぇのにな」

 

 

神威「.........あんなの聞いちまったら、誰も責めはしねぇよ」

 

 

 そう言って、神威を含めた全員は俺に対して、どこか優しい視線を送る。昔はこういう、同情紛いの感情を貰っても、腹が立っていただけなのに。

 .........俺も変わった。一人で生きては行けないことを知り、そして、人は変われることを、夢を追えば。どんな理想にも辿り着けることを知った。

 ならば、今の俺がやるべき事は一つだけだ。

 

 

桜木「俺、決めた」

 

 

全員「.........!」

 

 

桜木「考えて考えて、何が最善かを考えた!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーンに[告白しない]!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「.........えぇぇぇ!!!??」

 

 

桜木「いや、俺も考えに考えを.........ゴールドシップ?」

 

 

ゴルシ「どうやらおっちゃんにァ.........一発ぶちかました方が良いのかもなぁ.........?」ゴキゴキ

 

 

 カウンター席からふらりと立ち上がり、指の間接を鳴らして近寄ってくるゴールドシップ。そして周りは同調する様に、首を縦に振る。

 ま、まずい.........流石にこの展開は予想外だ.........!は、早く弁解しなくては!!!

 

 

桜木「待て待て待て待て!!!話は最後まで聞いてくれ!!!まだだ!!![まだ]!!!」

 

 

タキオン「.........まだ、という事は、いつかはするという解釈で良いのかな?トレーナーくん?」

 

 

桜木「ああ.........流石に、トレーナーと生徒の関係性で恋人になったら、切り替えが上手くいかないだろう?」

 

 

桜木「[卒業]だ。それまで耐える」

 

 

 俺がそう言うと、目の前に居る全員はまるで一安心したかのように、ホッと一息ついた。なんなんだお前らは、俺の親か何かか?

 全く、勝手に保護者ヅラされるのも気分は良くない。そう思いながら、俺はカウンター席へどかっと座った。

 

 

桜木「.........あれ?マックイーンまだ帰ってきてないの?」

 

 

ゴルシ「あっ、いやー。連絡したはしたけど、既読つかなくてよ〜」

 

 

桜木「ふぅーん.........」

 

 

 頬杖を付きながら、俺はとりあえず。マックイーンからの返事を待った。しかし、待てども待てどもそれは無い。本当に彼女の連絡先に送ったのだろうか?

 そんな思いが募っていくと不意に、テイオーから話を振られる。

 

 

テイオー「思ったけどさーサブトレーナー?」

 

 

桜木「ん?」

 

 

テイオー「[卒業]まで待つって、サブトレーナーは待てるかもしれないけど、マックイーンは待ってくれる確証あるのー?」

 

 

桜木「.........え」

 

 

 その言葉に思わず、だらけさせた体を真っ直ぐ正し、硬直させた。そう。完全に失念していたのである。

 俺は待てる。いや、待つ。しかし、彼女がそうであるかは別なのだ。俺が渋っている間に、誰か好きな人が出来てしまえば、それはゲームオーバー他ならない。

 残念、君の幸せは終わってしまった。と言うやつだ。

 

 

桜木「.........」サァァァ...

 

 

テイオー「今の内に♪カッコイイ所沢山見せといた方がいいんじゃない?例えば、今から探しに行って見つけてあげるとか.........♪」

 

 

 血の気が引いて思考が定まらなくなった俺に、テイオーはそう囁きかけてきた。そうだ、もうそれしか方法は無い。告白が出来ないのだ。せめて他の行動で彼女への好意を示すしか無い.........!!!

 

 

桜木「俺!!!探してくるわ!!!」

 

 

全員「行ってらっしゃーい!」

 

 

 勢いよく飲食店のドアを開け、外へとバランスを崩しながらも出て行ってみる。彼女のゆく宛など知る由もないが、探さなければ始まらない。そう思い、俺は周りを走り始めた。

 

 

テイオー「.........出来ると思う?」

 

 

タキオン「やるさ。トレーナーくんの事だ。言った言葉に責任を持つくらいの大人らしさは持ち合わせているよ」

 

 

ゴルシ「まぁちーっとおせーと思うけどな!!アタシは!!」

 

 

白銀「確かにな!」

 

 

 

 

 

 ―――そう言って、今度はさっきとは違う雰囲気で出ていったサブトレーナーを、またさっきとは違う空気で話題にする。

 きっと、あの人の事だから、ちゃんと告白するんだろう。そして、マックイーンはそれを受けてくれるだろう。そんな他愛も無い話を、マックイーンに連絡を入れながら話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、今この場にいる誰しもが、マックイーンも、勿論。サブトレーナー自身も、[卒業]を迎える前に、この関係が成就する事になるなんて、夢にも思っていなかった。

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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