山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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マック「い、今まであり、あ......」T「?」

 

 

 

 

 

マック「はぁぁ.........」

 

 

タキオン「随分大きなため息だねぇ?」

 

 

 季節は9月の終盤。肌寒さがより一層強くなり、秋から冬へと本格的に季節が変わろうとしているのを肌で実感します。

 そんな中で、私はチームルームでタキオンさんの入れて下さった紅茶(甘さ普通)を嗜みつつ、ため息を吐きました。

 

 

マック「.........最近、あの人との仲が進展していないと思いまして.........」

 

 

タキオン「それ最近の話かい?」

 

 

マック「いつの話だと思ってるんですの?」

 

 

タキオン「正直一回目の天皇賞から進んでいない気がするよ」

 

 

 素っ気ない態度で彼女は紅茶を口に含み、私は反論できないために苦しそうな声を出しました。

 だ、だって仕方ないではありませんか.........確かに、私と彼はお互い唯一無二の相棒だと言う確信はあります。ですがそれはトレーナーとウマ娘という間柄に置いて頂点。そしてそれは、私がトゥインクルシリーズを走り始めて三年目で到達した場所です。

 そこから先.........私が求めるのは、その、そういうビジネスパートナーの様な関係では無く.........も、もっと親密な.........///

 

 

マック「.........〜〜〜!!!」ブンブンブン!

 

 

タキオン「おおっと!危ない危ない.........急に頭を振らないでくれたまえよ。せっかくのお茶菓子が.........」

 

 

マック「す、すみません.........つい///」

 

 

 手早くお菓子を乗せたお皿を持ち上げ、ササッと避難させるタキオンさん。そ、そんなに頭を振っていたんでしょうか.........?

 し、仕方ありませんわ。今の私の頭の中ではあのトレーナーさんが私に対して、あんな事やこんな事をしてくるんですもの.........取り乱しもします。

 ふぅ、と息を吐き、何とか平静を取り戻します。その様子を見て、彼女も安心して片手で持ったお菓子のお皿をテーブルへと戻しました。

 

 

タキオン「.........だがこちらとしても面白みがないからね。ここは一つアドバイスとして、感謝を伝えるのはどうかな?」

 

 

マック「か、感謝を.........?それはもちろん毎回.........」

 

 

タキオン「いやいや。その都度ではなく、今までの全てに対してさ。改めてそれを伝えると言うのはどうだろうか?」

 

 

マック「な、なるほど.........」

 

 

 それは、考えても居ませんでした。彼に対する感謝はいつもしておりますが、今までの事を、となるとまた違ってきます。

 ですが、よくよく考えてみたらいい方法だと思っています。これを機に、私と彼との関係性も一段階前へと.........

 

 

マック「.........そもそも、どう伝えましょう?」

 

 

タキオン「ふむ。練習が必要かな?ではまずは私に日頃の感謝を伝えると良い!!」バッ!

 

 

マック「えぇ.........?」

 

 

 椅子から立ち上がりながらその両腕をバッと広げる彼女を見て、私は自分でもびっくりするほどの困惑した声を出してしまいました。

 感謝.........この人に、感謝.........?そもそも、感謝される事はあれど、この人に何かされて良かったことなんて.........

 

 

タキオン「.........あ〜!!あの幼い頃のトレーナーくんは実に愛くるs「この世に生を受けて下さり本当にありがとうございます」えぇ.........?」

 

 

 そうでしたそうでした。この方が居なければあのれおちゃんに出会う事などありませんでした。全く、こんな事を忘れてしまうなんて私は人として最低です!

 若干引きつった様な顔を戻しながら、彼女は椅子に座り直し、また紅茶の美味しさを堪能し始めました。

 

 

タキオン「まぁ、まだ難しいのならチームメイトに感謝して回りながら最後に彼に伝えれば良いさ」

 

 

マック「ええ。そうしてみますわね。タキオンさん」

 

 

 優雅なティータイム。私はその時間を楽しみつつ、今後の予定について頭の中で整理をし始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「ウララさん。いつも貴女の明るさには助けられております。これからもぜひ、よろしくお願い致しますわ」

 

 

ウララ「わーい!!ウララもマックイーンちゃんと一緒にチームで嬉しいよ!!いつもありがとうね!!」

 

 

マック「ライスさん。貴女のおかげで、私はステイヤーとしての新たな道を見つけられた気がします。これからもその隣を走らせてください」

 

 

ライス「ま、マックイーンさん!ライスもマックイーンさんの背中があったからここまで来れたんだよ?だから.........いつもありがとう.........!」

 

 

マック「ブルボンさん。その新たな夢に向かう姿勢は、私にも持ち得ていない強さです。その姿を見ているお陰で、私もチームのエースとして背筋を伸ばす事が出来ます」

 

 

ブルボン「ステータス[高揚]を確認。はい。私もマックイーンさんのレースで得たデータを元に長距離走法を構築しています。復帰した際にはまた、よろしくお願いします」

 

 

マック「デジタルさん.........あら?どこにいるのでしょう?いつもは探せば直ぐに見つけられますのに.........?」

 

 

デジ(私は壁私は木私は空気.........!!!)

 

 

 違う時間帯で違う場所。出会ったチームメンバーの方々にお礼(何故かアグネスデジタルさんだけ見当たりませんでした)をしてきました。

 勿論、私のチーム[スピカ:レグルス]だけでなく、[スピカ]の面々や、お世話になったトレーナーの方々。色々な人にありがとうを伝えてきました。

 

 

マック(ふっふっふっ.........今の私はそう、さながらお礼マスター.........!)

 

 

『なによそれ』

 

 

マック(例えどんな初対面の方でも一言目にありがとうを伝えられる通称[ありがとう仙人]よ!!!)

 

 

『それはもう皮肉よ.........?』

 

 

 これは成長。いいえ、誰がなんと言おうと進化です。私は今日を持って普通のメジロ家のウマ娘から、メジロ家のウマ娘兼ありがとう仙人に進化しました。

 そう思い、胸を張りながら廊下を歩いていると、そういえばまだ感謝を伝えていない方がいるとふと思い、その場に立ち止まりました。

 

 

マック(いつもありがとうございます)

 

 

『え?』

 

 

マック(貴女との付き合いはまだ短いですが、それでも助けられた数は多いです)

 

 

マック(貴女が居なければ.........私はこうやって、相談相手もろくに作れませんから)

 

 

『.........買い被りすぎよ』

 

 

 その声は、彼女から今まで聞いた事ないほど弱々しいもので、私も思わず驚いてしまいました。

 きっと照れているのでしょう。そう結論付けた矢先に、そうでは無いと否定されました。

 

 

『私は私の見たい景色の為に、言うなれば貴女を利用してる様な存在よ』

 

 

『感謝なんかされても.........困るわ』

 

 

マック(それでも助かっている事は事実ですから、素直に受け取ってください!!!)

 

 

『感謝の押し売りってこういう事を言うのね』

 

 

 身体の奥底から呆れた溜め息が聞こえてきます。全く、こちらは真心を込めて感謝していると言いますのに。

 私も溜息を吐き出しそうになりますが、心の内に広がる不安に気を取られ、そちらの方に意識を向けます。

 

 

マック(.........どうしました?)

 

 

『.........私は本来、存在しては行けないのよ』

 

 

『[貴女が居て]、[私も居る]。これはイレギュラーに他ならないの』

 

 

『だからあまり情を向けないで。一緒に居られるのもそう長くないし、失った時泣いちゃうわよ?』

 

 

 淡々と彼女はそう言いますが、その心の内は悲しみがしっかりと感じとれました。そんな彼女に釣られて、私も少し、悲しくなってしまいます。

 長くは無い。それはなぜかなんて分かりはしませんが、彼女にはきっと分かるのでしょう。理由など怖くてとても聞けませんが、私はそれを黙って聞きました。

 確かに、彼女の存在は異質。今までそのような存在が私の中に生まれた事はなく、今でも不思議な感覚です。

 

 

マック(.........三度目の天皇賞、私は貴女と共に走る事を拒絶しました)

 

 

マック(ですが、多少気心の知れた今なら、それも悪くは無いと思っています)

 

 

『.........そうね。最後に一緒に走るのも、悪くは無いかもしれないわね』

 

 

 そう言って、彼女の心から少し悲しみが薄れました。こうして不思議な、よく分からない存在にここまで心を許すなんて、今までの私だったら有り得ませんでした

 これも、きっと彼のせいであり、おかげなのでしょう。彼の影響で私も随分と絆されてしまったと思います。

 暖かい感触を胸に抱きながら歩いていると、それに意識を向けていたせいか、誰かとぶつかってしまいます。少ししてぶつかってしまったのだと気が付き、慌ててその人に対して謝ろうと離れました。

 

 

マック「す、すみません!!ボーッとして......て.........」

 

 

桜木「あ、なんだマックイーンか〜。びっくりしたけど大丈夫だよ?.........どうしたの?」

 

 

マック「.........あ、い、いや.........えっと」

 

 

 彼でした。私のトレーナーさんその人に私はぶつかってしまったのです。それを知った途端に、直ぐに離れてしまっては勿体ないと思う気持ちと、これは絶好のチャンスだと言う気持ちを押しのけ、恥ずかしさが追い込みから追い上げてきました。

 彼と目を合わせようと何度も何度も目線を真っ直ぐにしますが、気がつけば右に、意識が緩めれば左にと行ってしまいます。

 

 

桜木「.........マックイーン?」

 

 

マック「ひゃ、ひゃい!!?」

 

 

桜木「顔赤いけど大丈夫?風邪とか.........」

 

 

マック「ひいてません!!!至って健康体ですわ!!!」

 

 

 私が強くそう言うと、彼は若干身を引いてそう?と言いました。うぅ.........彼の心配を無下にしてしまった自分の至らなさに嫌気がさします.........

 で、ですが!!!ここであったが百年目!!!このお礼マスターのありがとう仙人となったメジロマックイーンのお礼を受け取ってもらいます!!!

 

 

マック「と、トレーナーさん!!!」

 

 

桜木「は、はい!!!」

 

 

マック「.........あの、その.........」

 

 

マック「えっと、うーんと.........?」

 

 

 彼の目に何度も視線を合わせている内に、周りの声が耳に入ってきました。今思えばここは学園の廊下.........何度もこんな大声を出していれば、目立つのも無理はありません。

 完全に失念していました.........今から冷静に.........そう思っていても、周りからはやれ告白だのやれうまぴょい(?)だの、私の想像とは違った憶測が飛び交っていました。

 

 

マック「こ、こっちに来てください!!!」ギュッ!

 

 

桜木「え!!?ちょ、マックイーンさん!!?」アワアワ

 

 

 周りの目に耐えかねて、私は彼の手を引きました。今のこの時間帯ならチームルームに誰も居ないと思います。居たとしても私は日頃の感謝を伝えるだけですので、差支えは無いはずです。

 全く.........なんなんですかうまぴょいって。この私がこんな場所であんな踊りをする訳ないではありませんか。

 

 

『何やってるのよ。すぐに伝えれば早く終わるじゃない』

 

 

マック(貴女!あんな所で言える訳ないではありませんか!!!恥ずかしいにも程があります!!!)

 

 

『ふ〜ん.........お礼マスターのありがとう仙人ともあろうお方が?』

 

 

マック(〜〜〜!!!言ったわねぇぇぇ〜〜〜!!!)

 

 

桜木「ヒェ.........なんか怖い.........」

 

 

 心の中で私のことを鼻で笑う存在に苛立ちを覚えながら彼の手を引っ張ります。心做しか少し抵抗感が無くなりましたが、これはこれで好都合です。

 多少人の目に触れましたが、何とかチームルームにたどり着くことができました。扉を開けると、幸い誰も居ない状況.........これで心置き無く、感謝を伝えられます。

 彼を奥へと押し込み、チームルームに鍵を閉めた後、彼に背を向けるようにして深く息を吸って心の波を鎮めていきます。

 

 

桜木「.........マックイーン?」

 

 

マック「.........トレーナーさん」

 

 

 覚悟は決めました。私は言います。今まで彼が私の隣で歩んできてくれた事を、数々の困難を乗り越え、それでも嫌な顔一つせずにその手を引いてくれた事を嬉しく、そして誇らしく思っていると。

 

 

マック「その、あの.........いつもあり、あっ、あり.........」

 

 

桜木「.........?」

 

 

マック「あ、あ.........」

 

 

 言葉がまるで、蛇口を強く閉め忘れた水道の様に歯切れが悪いまま出て行きます。なぜでしょう?彼にただ、日頃のお礼を伝えたいだけなのに.........

 ピンと伸ばした背筋は少し曲がり、彼の目をしっかりと捉えていた筈の視線も、先程同様右往左往。前の方で組んでいた両手も胸の位置まで来てしまい、指を遊ばせてしまう始末.........

 

 

桜木「マックイーン。やっぱり熱が.........んー?」ピト

 

 

マック「ひっ!!?そ、そういえば私!!!今日は英語の小テストがありましたわ!!!このお話はまた今度!!!」バッ!

 

 

桜木「え!!?あっ、ちょっとー!!?」

 

 

 気が付かない内に彼は私に接近しており、その手で私の額の熱さを計りかね、終いにはおでこ同士で熱を測るという暴挙にでました。

 彼の吐息と存在感がより一層に伝わってしまい、私の心臓はバクバクと強くなるしかなく、耐えきれなくなって遂には教室を出て行ってしまいました。

 

 

マック(なんでなんでなんで!!?ありがとうなんていつも言ってる事じゃない!!!)

 

 

『.........お礼マスターへの道はまだ遠いわね』

 

 

 悔しい.........彼にただ今までありがとうございます、これからもよろしくお願いしますと改めて言うだけのはずが、ここまで動揺してしまうだなんて.........

 以前までは言えてました。ですがそれも思い返してみれば、彼が最初に私に言ってくれたり、そもそもそういう流れが始まって.........私はその流れに身を預けて言っていただけでした.........

 

 

桜木「.........大丈夫かな?」

 

 

 

 

 

 ―――突然、ぼふんと音を立てて走り去って行ったマックイーン。その姿は見えなくなったが、未だに意識は彼女の方へと向いている。

 .........いや、俺のせいか。流石に距離感近すぎたかもしれない.........いくら他の子たちより仲がいいって実感してるからっておでこ同士は流石にまずかったか.........

 

 

桜木「どうすんだよ〜.........」

 

 

「お困りのようですね!」

 

 

桜木「!!?誰だ!!!」

 

 

「私はホワイトボード!!!貴方達の今までのワチャワチャはここからずっと見てま―――」

 

 

桜木「うるせェェェェェッッッ!!!!!」グルグルグルグル!!!

 

 

ボード「ギャァァァァァァ!!!??」

 

 

 突然話しかけて来た無機物野郎。ソイツを拷問するようにボードの面を勢いよく下に降り、激しく回転させる。

 最近は俺の意思に関係無く突然話し掛けたり、かと思えば俺が話しかけてもうんともすんとも言わなかったりとストレスが溜まる一方だった。

 

 

桜木「おいッッ!!!テメェらなんなんだよ!!!こっちはなァ!!!テメェらのせいで狂人扱いされてんだよ!!!この前だって―――」

 

 

 思い起こされる記憶.........

 

 

蝿「僕を殺すの?これから子供もこの家で沢山生まれるのに.........?」

 

 

桜木「クソッッ!!!そんな情報聞きたくなかった!!!今すぐ殺してやる!!!」

 

 

殺虫剤「ダメよ!!!生き物を無闇に殺しちゃダメだわ!!!」

 

 

桜木「お前殺虫剤だろォ!!?」

 

 

隣人「うっせぇぞ!!!今何時だと思ってんだ!!!」

 

 

桜木「隣人が喋った!!?」

 

 

隣人「なんだコイツ!!?」

 

 

 以上、このように俺は既に狂人として隣人に認知され、避けられ始めている。そろそろマジで家のドアが落書きで刃牙ハウスにされてしまうかもしれない。

 まぁそんな既に半分確定している事は放っておき、今はマックイーンの方だ。今日は一体どうしたのだろう?

 

 

桜木「う〜ん.........勝手に憶測で行動するのは悪手よなぁ.........」

 

 

ボード「.........憶測じゃなければよろしいので?」

 

 

桜木「え?」

 

 

 うろうろと顎に手を当てながら、彼女の行動を振り返ってみる。しかし、思い当たる節は残念ながら俺の中には無い。

 そうやって右往左往している内に、普通は喋ることの無いそれから提案を受ける。

 

 

ボード「引いてダメなら押してみろ。と言う奴です!」

 

 

ボード「時期は秋!つまり、ハロウィンデートに誘いましょう!!!」

 

 

桜木「な、なるほど!!!」

 

 

 その手があった。もしかしたら彼女の事だ。普段頑張ってる俺にご褒美に誘おうとしてたのかもしれない。全く、俺の鈍感さには困ったものだ。

 

 

ボード「ふふふ、私はここで数多の恋愛の成就を見守ってきた存在。お役に立つのは当然です」

 

 

桜木「サンキューホワイトボード!!!卒業式にはボードアートにして飾ってやっからな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の帳が降り、薄暗さが支配し始めたこの時間帯。それは、寮の通路でさえも変わる事無く当たりを包み込んでいました。

 

 

イクノ(体調は良好.........しかし、いささかはしゃいでしまいました)

 

 

イクノ「チームの雰囲気が良いと言うのも考えものですね。ただいま戻り.........」

 

 

掛け布団「.........」クタァ...

 

 

 自室の部屋を開けた時、鍵がかかってなかったのでマックイーンさんは既に帰って来ている。そう思いただいまを言いかけましたが、その彼女のベッドの上にある掛け布団(私の分も巻き込まれている)の惨状を見て、言葉を飲み込みました。

 

 

イクノ「これは.........間違いありません」

 

 

イクノ(空き巣)

 

 

 瞬間。脳裏を駆け巡る様々な憶測。ウマ娘は人以上の強さ。しかし、いくら強いと言ってもフィジカル的なものであり、エスパー的な物は一切存在していません。

 故に視覚外、又は視認していない相手には歯も立たない。現にこういった空き巣や下着泥棒の被害は一人暮らしのウマ娘には割と多いと言われています。

 そしてこの目の前に居る犯人(断定)。恐らく初犯。私の帰ってくる時間を把握出来ず、足音を聞いて慌てて隠れたのでしょう。ここは再犯を防ぐ為にもしっかりとときふせるべきです。

 

 

掛け布団「.........イクノさん?」

 

 

イクノ「.........?マックイーンさん.........?」

 

 

マック「はい.........」モゾモゾ

 

 

イクノ「空き巣は?」

 

 

マック「え?」

 

 

イクノ「いえ。なんでもありません」

 

 

 

 

 

 ―――見られてしまいました。いつもよりイクノさんの帰りが遅かったため、寄りにもよってこんな恥ずかしい状態を.........

 いいえ。こんなの大切である彼に対してありがとうを言えない事の方が恥ずべき事です。

 私は顔の上半分だけを出した状態から、体全身を出して行きます。防音性はありますが、万が一泣いている声が周りに漏れないか心配した為の行為がまさかこんな事になるなんて.........

 

 

イクノ「それにしても、またどうして.........」

 

 

マック「.........実は」

 

 

 これまでの経緯をイクノさんに話しました。話している時、それはいい案ですとか、それは難題ですねとか、所々共感や問題点の指摘をして下さりました。

 そうして、話は先程掛け布団に埋まっていた所まで行き着き、そこは恥ずかしく思いながらもしっかり話しました。

 

 

マック「私もう.........どうしていいのか.........!!!」ヨヨヨ...

 

 

イクノ「.........そういえばマックイーンさん。今日はトレーニングに参加していなかったのですか?」

 

 

マック「へ?え、えぇ。先日のライブで迷惑掛けて、精神的に疲れてるだろうからとあの人から連絡が.........」

 

 

イクノ「!なるほど、道理で.........」ガサゴソ

 

 

マック「?」

 

 

 何かを思い出したように、彼女は自身の鞄の中身を漁り、クリアファイルを取り出しました。そしてその中から一枚一枚捲り、小さい紙を難なく取り出してきました。

 

 

イクノ「実はお昼に桜木トレーナーと会ったんです」

 

 

マック「トレーナーさんと!!?」

 

 

イクノ「はい。明日でもいいからこれを渡すようにと。どうぞ」

 

 

マック「は、拝見致しますわ.........!」

 

 

 それは、オシャレな装飾が施された手紙の便箋でした。まさか彼がこんな物を持っていたなんて.........震える手付きで、それを開きます。

 爪で丁寧にノリを剥がし、恐る恐る中身を、目を瞑り、片方を薄めにしながら中身を確認します。そんな訳あるはずないのですが、どうしても嫌な想像をしてしまうのです。

 ですが、その予想を完全に裏切るように、その文字の羅列は私の目に飛び込んで来る度に、私の心を踊らせました。

 

 

拝啓 メジロマックイーン様

 

 この度は突然のお便り、申し訳ございません。言葉ではなく、こうして文字で思いを伝えれば下手な事は言わないと思ったからです。

 貴女様にはとても助けられました。つきましては今度の土曜日、ハロウィン祭りを開催している商店街に出かけませんか?

 お返事は当日で構いません。楽しみにしております。

 

敬具 桜木 玲皇

 

 

マック「!!?〜〜〜///!!?」バタバタ!!!

 

 

イクノ「マックイーンさん!!?」

 

 

 私は手紙を読んでいる最中、身動ぎだけでは嬉しさが堪えられず、遂にははしたなくその両足をバタバタさせてしまいました。

 驚いて対面に居るイクノさんが、彼女のベッドから迅速に私の隣に移動してきました。

 そんな彼女に内容を言えず、ただ口を開閉させ、その手紙に指を指すと、彼女はそれを受け取り、隅々まで読み始めました。

 

 

イクノ「こ、これは.........!!?」

 

 

イクノ「正にデートのお誘い.........!!!」

 

 

マック「!!?しーっ!!!イクノさんしーですわ!!!」シー

 

 

イクノ「!す、すみません。つい.........」

 

 

 あまりにも大きな声でデートだと言葉を発する彼女に、私は人差し指を立てて静かにするように言います。周りに聞こえる懸念もありましたが、今はそれより、私がそれを聞いて恥ずかしいからという思いが強かったからです。

 で、でもまさか.........あの奥手な彼からこんな、デートのお誘いが来るだなんて.........!

 そう思い、私は彼女からもう一度受け取った手紙を、胸に押し当てるように両手で抱きしめてしまいます。きっと顔も傍から見れば真っ赤っかになっているに違いありません.........

 

 

イクノ「.........応援しています。マックイーンさん」

 

 

マック「はい.........!必ずや、良いデートにして見せますわ.........!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木(来ない)

 

 

 日付は土曜日。時間は午前10時。場所はトレセン学園正門前。約束の時間からきっかり30分の遅刻。

 おかしい。こういう時って俺が「遅れてごめん!」って言って、「別に待ってませんわ?」or「遅いです!一体どれだけ待ったと思っていますの!!?」の二択かと思った。まさか俺がそれを掛ける側になるとは思ってもみなかった。

 さっきから腕時計をチラチラとみて、空を眺めている。後ろ指でヒソヒソと囁きながら休みのトレーニングの為に登校してくるウマ娘達の声から意識を外し、羞恥心を押さえ付ける。

 

 

桜木(こんな事ならこんな所で待ち合わせすんじゃなかった.........!!!)

 

 

 もうね。アホかとバカかと。自分を呪いたくなりますよ。そら片方遅れる状態になったら見世物にされるのがオチですよ.........こんな事ならマントなんて付けずに普通の仮装にしとけば良かった.........

 

 

「トレーナーさーーん!!!」

 

 

桜木「!マックイーン!!」

 

 

マック「すみません!普段慣れないお洋服でしたから、着るのに手間取り.........」ジー

 

 

桜木「.........」ジー

 

 

 

 

 

 ―――遅くなってしまいました。もう既に実家から出た時には遅刻は免れなかったのですが、せめて早く着こうと走り、彼の前で膝に手を着きました。

 そして謝罪と共に彼の姿を改めて見ると、そこには以前、私が最優秀シニア級ウマ娘に表彰された際にお召になられたスーツにマントを付けた姿でした。

 

 

マック「.........ハッ!」

 

 

桜木「.........あっ!」

 

 

二人「ごめん(なさい)!!」

 

 

二人「え?」

 

 

 何も言わずにただただ彼の姿を見てしまい、思わず謝る事さえ忘れてしまっていました。言い訳にもなりませんが、本当に素敵だったんですもの.........

 しかし、それに被さるように彼も謝ってきました。そんなお互いを見て、彼も私も思わず笑い出してしまいました。

 

 

マック「ごめんなさい。あまりに似合っていたものですから.........つい見入ってしまいました」

 

 

桜木「俺もだよ。魔女の姿も素敵だね」

 

 

マック「ふふ♪ありがとうございます」

 

 

 彼にそう言われ、ついつい心が弾んでしまいます。彼も言ってから恥ずかしくなったのか、少し頬をかいて視線を逸らしました。

 そうしてどちらが合図をした訳でもなく、その場から一緒に歩き出します。その瞬間瞬間が、まるで通じ合っているようで.........心が温まりました。

 

 

マック「トレーナーさん。本日のデートプランはどうなさいますの?」

 

 

桜木「デっあー.........うん。そうだよね。デートだよね.........ごめん。反射的に否定しようとしちゃった.........」

 

 

マック「あら酷い。女の子のお休みを使わせて置いてデートでは無いと?」

 

 

桜木「ごめんって〜!商店街でイベントやってるからそこ行くよ〜!商店街デートしましょうよ〜!」

 

 

マック「ふふふ♪どうしましょう〜?」

 

 

 その気品漂うスーツ姿に似合わず、オロオロとしながら私の後を歩く彼。そんな彼をいじめるように、私は見て見ぬふりをして前へと歩きます。

 思えば、こうしたやり取りも久々です。最近はテイオーやタキオンさんの事もあり、一息吐く暇もなにもあったものではありませんでした。

 

 

マック「さぁ!今日は遊び尽くしましょう!トレーナーさん!」

 

 

桜木「!おうっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「おー!色々スイーツとか売ってるぞマックイーン!」

マック「本当ですわ!でも、カロリーが.........」

桜木「ククク、安心したまえ魔女よ.........我が献立表は今この時も進化しているのだァ」スッ

マック「そ、それはスペシャル献立表XI.........!!?完成していたのですね!!」

 

 

 

 

 

マック「見てくださいトレーナーさん!わたあめが作れますわよ!」

桜木「おー!いいじゃんいいじゃん!作っちゃうべ!!」

マック「ふふふ♪芸術的なわたあめを作ってみせますわ.........!」

 

 

 数分後

 

 

マック「見てくださいまし!タキオンさんの顔をしたわたあめが完成しましたわ!!」

桜木「やったなマックイーン!!これでうちのチーム全制覇だ!!」

「いやそうはならんやろ!」

 

 

 

 

 

マック「狙い撃ちますわよ〜.........!」パンッ!

 ポコン.........

桜木「うへぇ〜.........一発じゃ倒れないのか.........」

マック「むぅ、では二人同時に.........!」

桜木「ダブル狙い撃ち作戦か!よ〜し.........いっせーのーでッッ!!!」

 バキン!!!

二人「人形の首が!!?」

「そうはならんやろ〜」

 ダラァ〜...

二人「きゃぁぁぁ!!?血がァァァ!!?」ダキィ!

「そうもならんやろ〜」

 

 

 

 

 

マック「!.........!!!」ジュ〜

桜木「あはは、そんな大きなタピオカ飲み切れるか?」

マック(!こ、このままでは彼とのデートがタピオカで潰されて.........仕方ありません!!!)カパッ!

桜木「えぇ!!?」

マック「ゴクゴクゴクゴク.........ぷはっ」

桜木「あ、あはは.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいどうぞ〜」

 

 

二人「ありがとうございます」

 

 

 商店街の出店。そこには色々な形をした風船が取り揃えられており、私と彼はそれぞれ、かぼちゃの風船と、可愛らしいコウモリの風船を頂きました。

 

 

桜木「いやぁ、まさかこの歳になって風船を持つことになろうとは.........」

 

 

マック「あら、お嫌でしたの?」

 

 

桜木「まさか!ちっちゃい頃は欲しくても手に入らなかったからね。あの時の俺をしっかり供養していこう」

 

 

マック「ふふ、なんですかそれ.........」

 

 

 お店の前でそんな会話をしてから、二人一緒にお店の人に頭を下げ、また歩き出します。

 どこか嬉しそうに自分の持つ風船を見る彼。その彼の風船を見て、私は何も考えずに自分の持つ風船の持ち手を、彼の方にある右手に持ち替えました。

 

 

風船「.........チュ♡」

 

 

桜木「!」

 

 

マック「.........ふふ、仲良しですわね♪」

 

 

 その風船達の姿を見て、彼は凄く動揺を見せました。私も恥ずかしいですが、それでも彼の姿を見る方がとても楽しかったので、それも見て見ぬふりをします。

 彼は素知らぬ顔で風船の持ち手を変えていきます。ずるい人ではありますが、そんなのいくらでも対処できます。

 

 

桜木「.........あ!ちょっと!!?」

 

 

マック「持ち手を変えるだけでは、こうして回り込まれたら元通りになりますわよ?」

 

 

風船「スリスリ.........♪」

 

 

 今度はまるで頬擦りをするように擦り合う風船達。それをあまり見ないよう視線を外に向けるトレーナーさん。案外恥ずかしがり屋さんなんでしょうか.........?

 

 

 一方桜木視点

 

 

コウモリ「旦那ァ、そこのガールにこうしたいんでしょう?」

 

 

カボチャ「さっきみたいに〜、チュ♡とかしたいんでしょ〜?」

 

 

桜木(コイツら.........マックイーンが居なかったらそのまま割ってゴミ箱行きにしてたのに.........!!!)

 

 

 そんな事態が起きている事など知らず、メジロマックイーンはただ彼が恥ずかしがっているとしか思えなかったのであった.........

 

 

 

 

 

マック「.........あら?ゲームセンターが賑わってますわね?」

 

 

桜木「ホントだ。なんかイベントでも.........!!!」

 

 

マック「?」

 

 

 そのような賑わいを見せているゲームセンターに少し近付いてみると、彼の目付きが少し変わりました。どこか子供のような、ワクワクを隠せない。そんな目で中の様子を見始めたのです。

 

 

マック「.........行きます?」

 

 

桜木「え!!?い、いやいや!流石にデートの最中にそんな.........」

 

 

マック「.........一緒にプリを撮ってくださるならいいですよ?」

 

 

桜木「.........良いの?」

 

 

 少々恥ずかしい提案をしてしまったため、少し頬が赤くなっている事を自覚しますが、言った手前引くことは出来ません。私は黙って頷きました。

 彼は一層嬉しそうな感情を強めると、そのままゲームセンターの中へと向かい、私も彼へと着いていきました。

 

 

『うぅ〜.........何よこの騒音〜』

 

 

マック(確かにウマ娘にとっては苦痛ですが、慣れると意外と悪い物ではないですよ?)

 

 

マック(それにしても、彼は一体何に目を.........)

 

 

 その外界とはまるで違う世界に迷い込んだような内装。毒々しい、と言いますか、派手派手しいと言いますか、何はともあれ、普段は見ないタイプの豪華さが感じられます。

 その中の一角で、少し賑わいを見せているスペース。あそこは確か、彼もよく遊んでいるあーけーど?ゲームがある.........

 

 

「さぁ!ハロウィン限定大会!魔王は俺だ選手権!!!参加する方はこちらの方にサインをー!!!」

 

 

マック「.........まさか」

 

 

桜木「ごめん.........!俺はてんでクソザコなんだけど!98無印の野良大会に一度でてみたいんだ.........!」グッ

 

 

 まるで自分の衝動を押さえつけるかのように目を瞑り、握った拳を胸の位置で震わせるトレーナーさん。そんな姿を見せられたら、断れる訳もありません。

 私はため息を吐き、ここで待っていると伝えると、彼はもう一度謝ってからそちらの方へと向かいました。

 

 

「お名前は?」

 

 

桜木「獅子十六でお願いします」

 

 

 彼の名前、おそらくリングネームのような物でしょう。本名では無いとはいえ、ここでもライオンの名を冠するということは、それほど好きなのでしょうね.........

 

 

マック「.........クレーンゲームでもしましょうか.........?あれは」

 

 

「ワー!マタオトシチャッタヨー!」

 

 

「大丈夫ですよ!さっきより近づきました!」

 

 

「がんばってください!」

 

 

 クレーンゲームが並ぶスペースまで来ると、見覚えのある三人がそこに居ました。どうやら、あの大きいぬいぐるみを取ろうとしているらしいです。

 微笑ましい場面に出くわしたので、ここは取れるまで様子を見ておきましょう。そう思っていると、彼女達は直ぐに、そのぬいぐるみを取る事が出来ました。

 

 

「トレター!はい!これキタちゃんの分!」

 

 

キタ「わー!!ありがとうございます!テイオーさん!!これでダイヤちゃんとお揃いだね!!」

 

 

ダイヤ「うん!!.........え!!?マックイーンさん!!?」

 

 

マック「あら、見つかってしまいましたか.........お久しぶりです。キタサンブラックさん。サトノダイヤモンドさん」

 

 

テイオー「んもー!!見てたんなら声掛けてよー!!」

 

 

 両手を上げて怒り始めたテイオーを見て、私達三人は苦笑いを見せました。そうして、改めてお二人とテイオーの格好を見て見ます。

 キタサンブラックさんとダイヤさんは可愛らしいカボチャの魔女の姿を、テイオーはまるで絵本から出てきた様な赤ずきんの姿が印象的でした。

 

 

マック「今日はお二人と?」

 

 

テイオー「うん!今までみんなに迷惑掛けてきたからね!!そのお詫び!!昨日はネイチャとツインターボ師匠の蹄鉄選びに付き合ったんだー!!」

 

 

マック「.........そうですか」フフ

 

 

 楽しそうに、その時の事を思い浮かべる素振りを見せる彼女を見て、ようやく[トウカイテイオー]が戻ってきたのだと安心しました。この様子では、もう走らないとは言うことは無いでしょう。

 そう思っていると、不意にテイオーの表情が可愛らしい笑顔から、意地の悪いニヤニヤとした物に変貌している事に気が付きました。

 

 

テイオー「マックイーンは〜、デート〜?」

 

 

マック「なっデっ.........いいえ。否定は出来ませんわね.........」

 

 

テイオー「ヒュ〜!!♪やるじゃん!!」

 

 

 うぅ.........他人から指摘されるというのは、これほど恥ずかしい物なのですね.........テイオーは調子に乗り、二人はキラキラとした目を向けてきます。

 ですが、これはそんな純粋なものでは無いのです。このデートは言わば、勇気を出せない私に彼がくれた絶好のチャンス.........絶対物にしなくては.........!

 

 

マック「.........その、突然の相談で申し訳ないのですが」

 

 

三人「?」

 

 

マック「皆さんは.........誰かにこう、お礼を言いにくかったりした事はありますか.........?」

 

 

 何を言っているのでしょう?そんな感情をあらわにするように、三人は同じ表情、同じタイミングでその首を傾げました。私だって、突然そう言われたらきっと困ります。

 けれど、これは由々しき事態.........こんなに時間が経った今でも、彼に一言もまだ、これまでのお礼を伝えられていないのです.........

 

 

テイオー「.........居るよ!!いるいる!!」

 

 

マック「!ほ、本当ですか!!?」

 

 

テイオー「うん!!中々言い難い事ってあるよね〜」

 

 

マック「ふふふ、そうでしょうそうでしょう.........ここはどうです?一つ共同戦線と行こうでは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもありがとう!マックイーン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........はい?」

 

 

 突然の感謝の言葉。しかも、それは私に対して送られたものでした。それを全て受け止めきれずに、私はつい保けたような声を出してしまいました。

 それとは対照的に、その言葉を発した張本人は満足したかのようにけのびをして見せます。

 

 

テイオー「ん〜〜〜!やっと言えた〜〜〜!!後はマックイーンだけだったんだよね〜〜〜♪」

 

 

マック「あ、あの。事態が飲み込めないと言いますか.........何が何やら.........」

 

 

テイオー「にしし♪マックイーンと一緒ってこと!!ボクも今まで沢山迷惑掛けたから、色んな人達にありがとうを伝えてたんだよ?」

 

 

 まさか、彼女も私と同じような事を.........?そう思うと、なんだか悪い気分ではありませんでした。そういえば、彼女にお礼を伝えた時、なにか言いたそうにしていた節がありましたが、そういう事だったのですね。

 その時、彼女のポケットからはみ出ている[お守り]に目が向きました。それは、キタサンブラックさんがテイオーの為に作ったお守りだと、彼から聞いたものです。それが、当たり前のように彼女のそばにある。そう思うと、微笑ましい気持ちになりました。

 自分の中で一度生じた疑問が、解ける糸の様にストンと気持ちよく一直線になる感触がしました。そんな私を見て、テイオーはその笑顔をまた、意地悪そうな物に戻していきます。

 

 

テイオー「ボクは頑張ったから♪マックイーンも頑張ってね〜♪」

 

 

マック「は、はァ!!?あの!せめてアドバイスを!!!」

 

 

テイオー「ガンガン行こうね!!」

 

 

マック「そんなガッツ頼りなアドバイスなんてありませんわ!!?」

 

 

 藁にもすがる思いで彼女の肩を掴もうとしましたが、その身軽な身体を活かし、ササッと私の拘束しようとする手から逃れ、お二人を抱えてその場から足早に逃走していきました。

 

 

『.........お礼マスターとしては、あちらの方が上手だったわね』

 

 

マック「くっ、くぅ.........うぅ〜〜〜!!!」

 

 

 恥ずかしい.........もはや、恥ずかしいと思う事すら恥ずかしい.........あんな程度でお礼マスターなどと.........何がありがとう仙人ですか.........誰なんですかありがとう仙人って、今すぐ目の前に連れてきてください.........

 地団駄を踏みそうになりながらも、その衝動を何とか抑えてみせます。大きく息を吐き、力を抜いて、身体を自然の状態にしていきます.........まさか、こんな所で彼のトレーニングが役に立つなんて.........

 

 

桜木「ただいま.........」

 

 

マック「!あ、あら?お早い帰りですわね?」

 

 

桜木「一回戦で負けちった.........」

 

 

 背後から突然現れた彼は、静かに淡々と、俯いたままそう言いました。こんな様子の彼は今まで見た事がありません。

 そういえば、彼はあのきゅーはち?無印というゲームをかなりやり込んでいると言っていました。中々ショックが大きいのでしょう。そう思い、落ち込んでいるであろう彼の背中をさすろうとしました。

 

 

桜木「.........マージで最っっっ高だったわ!!!」

 

 

マック「.........へ?」

 

 

桜木「いやーマジでさ!!いおりんとクリスが先に溶けるようにやられちまって!!推しで大将の草薙さんで頑張って大将引きずり出したんだけど!!相手の人マージで上手すぎ!!!」

 

 

桜木「しかもその後さぁ!!俺の草薙さんが凄かったって言ってくれて.........もう、格ゲーマー冥利に尽きるわ.........!!!」

 

 

マック「そ、そうだったんですの.........」

 

 

 今まで見せたことの無い彼のテンションの上がり様を見て、少し気圧されてしまいます。こういう部分は私達もレースで感じる事がありますから、理解はできますけど.........

 そんな突然の豹変を見せた彼も直ぐにそれを謝り、条件としたプリを一緒に撮ったのでした.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック(.........はぁ)

 

 

 あれから、随分と遊び尽くしました。出店も全制覇。イベント事を全て遊び回った事など今まで無く、達成感のような物が身体の内側に広がって行くと共に.........

 未だ、そう。未だに彼に対して、ありがとうの一言も言えていないという始末であります.........もう既に太陽は茜色を空へと広げ、カラスは巣に帰る為に奮起して飛んでいるというのに.........

 

 

桜木「いやぁ〜.........久々に遊び尽くした〜」ノビー

 

 

マック「.........ふふ、ここの所、全然リフレッシュ出来ませんでしたものね」

 

 

 ショッピングモールの屋上。夕日の色が移された様に、そこにある全てに茜色がほんのり乗せられた空間。そこに私達は二人。ベンチの上に座っていました。

 彼はそれを肯定し、夕焼け空を見上げました。それに釣られて、私もその綺麗な空を見上げてしまいます。

 

 

桜木「.........こっからまた、忙しくなるな」

 

 

マック「そうですね。私は京都大賞典からそのまま秋の天皇賞。タキオンさんは、試薬品を試して感触が良かったなら、菊花賞へ.........」

 

 

桜木「.........本当。[退屈しない]な」

 

 

マック「!.........ええ。[退屈しません]わね」

 

 

 [退屈しない]。彼は深く考えずに言ったのでしょうけど、今の私に撮ってその言葉は、最大限の褒め言葉でした。

 私は、今や現役最強のステイヤーと人々の間で言われ、その安定したレース方法から、多くの人に[退屈なほど強い]と言われています。

 確かに、そのレースだけを切り取ってみれば、退屈に他ならないでしょう。ですが、そこに至るまでのトレーニングや彼や皆さんとの日常は、[退屈]とは程遠いもの.........

 そんな日常を、素敵な。本当に素敵な毎日をプレゼントしてくれる彼に、伝えたい.........

 

 

マック「.........トレーナーさん」

 

 

桜木「?」

 

 

マック「貴方に、言いたい事があるんです」

 

 

 こちらを向いて、キョトンとした顔を見せてくる彼の目を、今度は逸らすことなく、その私の両の眼を持って見つめます。

 今の彼には、[仮面]はありません。自然体の彼に、自然体のまま、私はそのまま言葉を続けます。

 

 

マック「ずっと、考えていました。貴方と他の方と、何が違うのか」

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「今までは、私の持っていないものを持っている事に対する、憧れだと思っていました」

 

 

マック「私より大人で、それなのに私より子供らしくて、ハチャメチャでドジでいつもトラブルばかり起こして.........」

 

 

桜木「.........それ、褒めてくれてる?」

 

 

マック「もちろんです♪」

 

 

 少々げんなりとした顔で、私の言葉を受け入れてくれる彼。その姿を見て、私は思わず笑みが零れてしまいます。

 そう。最初は本当に、私の 持っていないものを持っている貴方に大しての、羨ましいという気持ちや、憧れのような物でした。

 けれど蓋を開けてみれば.........それは私の中にもしっかりとあって、ただ厳重に鍵をかけられていただけでした。

 

 

マック「.........けれど、今は少し違います」

 

 

マック「今は.........なんと言いましょうか?家族でいて、友人でいて.........そのどちらとも言えない。そんな感情です」

 

 

マック「そんな感情を抱く方は、今まで居ませんでした。だから、貴方は私にとって、特別な存在です。今までも、そしてこれからも.........」

 

 

マック「だから―――」

 

 

 その一言を言おうとして、息が詰まります。今まで自分に向けていた意識の配分を、全て彼に向けたせいか、その顔を見ただけで、胸が苦しくなってしまう。

 今必要なのは、勇気?それとも、流れ?それでも、この自然の動きになるよう訓練されたこの身体は、NOと言うように動きません。

 一つ一つを手探りで探して行くうちに、一つの正解に辿り着きました。その感情を拾い上げると、今までてこのように動かなかった身体も、恥ずかしさを感じながらも、ぎこちないながらも良く動くようになってくれました。

 だったら、やることは一つだけ.........その感情を乗せて、言葉を紡ぐだけでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。トレーナーさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、複雑な感情が絡まりを見せ、既に一つの物となった感情。言うなれば、[愛]という以外にほかなりませんでした。

 夕日の色がお互いの姿をグラデーションの様に掛かっていきます。しばしの沈黙の後、彼が最初にとった行動は、その顔を微笑ませる事でした。

 

 

桜木「.........それを言うなら、俺の方こそ」

 

 

マック「え?」

 

 

桜木「.........俺の心には、いつも君が居るんだ」

 

 

 そう言いながら、彼はまた、空の方を見ました。今度は、空そのものではなく、まるで空の向こう。それこそ宇宙の先を見るように、遠くを見るような目で、空を見上げていました。

 

 

桜木「挫けそうな時。ノリと勢いで生きようとする時、君がいつも背中を押そうとしたり、励ましてくれたり、止めたりしてくれる」

 

 

桜木「.........[一心同体]ってのは、[退屈しない]んだね。初めて知ったよ」

 

 

マック「!.........ふふ、なんですのそれ.........」

 

 

 彼があまりにも真剣な表情で、そんなことを言うものですから思わず笑ってしまいました。彼もそれに釣られるように、笑い声を上げます。

 そこには、もはや恥ずかしいという思いはありませんでした。これこそが、彼と歩んできた。チームで歩んできた道のりなのだと、私は知ったからです。

 

 

桜木「はぁ、お腹すいたなぁ」

 

 

マック「ふふ、もう出店はしまってますわよ?」

 

 

桜木「ではメジロマックイーンよ。我輩とディナーでもどうだ?」

 

 

マック「.........仕方ありません。魔王にそう言われたら逃げられませんわ」

 

 

桜木「決まりだな」

 

 

 ようやく、彼にありがとうを伝えられたせいか、妙な脱力感と清々しさが私を包み込みます。

 これで一つ。前へと進むことが出来ました。後は、目の前の事に集中するだけです。そう思いながら、今日のディナーはどうしようかと、彼と他愛もない話をしながら、この屋上を後にしました.........

 

 

 

 

 

『.........これ。結局進展したのかしら?』

 

 

 

 

 

 ......To be continued

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