山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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トレーナー「タキオンが退学勧告されたらしい」

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「.........」

 

 

 いつも通りの噴水の音、いつも通りの食事。だが、なぜか居心地の悪い空間。食事もなぜか味がしない。

 

 

桜木(なんで!?昨日決着つけたじゃん!!)

 

 

 自分の心に問いかける。お前さん、結論はつけたんだろ?なんでご飯を食べる手を止める?

 

 

 隣を見なさい、桜木。隣の子も、手を止めてらっしゃるではありませんか。

 

 

 なるほど、では貴様は隣の子が手を止めているから手を止めているのか(?)

 

 

 はい(??)

 

 

 そうか(???)

 

 

桜木「.........何か悩みでもあるのか?」

 

 

マック「あ.........いえ、そういう訳では無いのです」

 

 

 困った様に笑うその姿に、確実に何かがあると思った俺は、マックイーンが開けたまま一口も食べていない弁当を取り上げた。

 

 

マック「ト、トレーナーさん!?」

 

 

桜木「カフェテリア行くぞ!!」

 

 

 慌てふためくマックイーンを後目に、カフェテリアへと直行して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「あの、私のお昼ご飯は.........?」

 

 

桜木「コイツは俺が食べる」

 

 

 トレーナーさんは獲物を見つけた様な目で私のお弁当を見つめていました。では私は何を食べれば良いのでしょうか.........

 カフェテリアの一つの席、トレーナーさんとは向かい合って座っております。どうしても自分に変な所が無いか気になってしまいます。

 

 

「お待たせ致しました、当店大人気のフルーツましまし特盛りパンケーキパフェでございます」

 

 

マック「え!?」

 

 

桜木「食べてくれ」

 

 

マック「トレーナーさん!?」

 

 

 テーブルに置かれたのは、スイーツと形容していいのか分からない、丼一杯に盛り付けられた甘味でした。

 

 

桜木「サンキューゴルシ」

 

 

ゴルシ「おうよ!!マックイーンの為ならこれくらい寝てても作ってやるぜ?」

 

 

マック「あなたが作ったんですの!?」

 

 

ゴルシ「あ?んなわけねえじゃん。ただの生徒がカフェテリアの厨房使えるわけねえだろ」

 

 

 なんなのですのこの人.........そう思っていると、ゴールドシップさんから長いスプーンが手渡されました。

 と言うより、先程のウェイターさんはあなただったのですね。声の調子に全く気付きませんでしたわ.........

 

 

ゴルシ「.........ハッ、何処かで腹を空かせたウマ娘のアタシを呼ぶ声が聞こえる!!まってろ!!!今すぐ焼きそばを持っていくぜーー!!このスイーツパラダイスゴルシ様がなーーー!!!」

 

 

マック「あ、嵐の様な方でしたわね.........」

 

 

桜木「ああ」

 

 

 微笑みながら肯定するトレーナーさん。そんな姿に気持ちを乱されてしまいます。

 渡されたスプーンも動かさずに、ただただ、目の前にどっしりと存在するスイーツと、彼の意図を読んでおりました。

 

 

桜木「.........なぁマックイーン。俺は君が何を迷っているのか分からない」

 

 

マック「っ.........」

 

 

 それは恐らく、単純に何を迷っているのかが分からないという意味です。決して、分かりきった答えに、今更何を粗探ししているのかという意味では、無いはずです。

 

 

桜木「もし、今は答えが出ない問題に、ずっと悩まされ続けているのなら、一度保留したらどうだ?」

 

 

マック「保留.........ですか?」

 

 

桜木「マックイーンはまだ若いんだ。今は見つからなくても、これから先成長していく上で、きっとその答えを見つける時が来る。」

 

 

 .........良いのでしょうか、今、この気持ちに名前を付けなくても.........

 ですが、彼の提案はとても嬉しいものでした。この胸にある気持ちを否定せず、無理に肯定もしない彼に、心の中で感謝しました。

 

 

「あ!!!おったおった!!!ちょっと来てくれや!!」

 

 

 カフェテリアに響き渡る特徴的な声。その方向に目を向けると、一人の小さい芦毛のウマ娘が、明らかにこちらへと向かってきました。

 

 

「すまん!!!ちょっとおっちゃん借りるで!!!」

 

 

桜木「どうしたんだタマの姉御!?」

 

 

タマ「説明は後や!!!クリークがやばい!!!」

 

 

 それだけ言うと、タマと言われたウマ娘はトレーナーさんの腕を強引に引っ張って行かれました。

 

 

マック「な.........なんだったんですの.........?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タマの姉御。タマモクロスに手を引かれてやってきたのは、チーム[アルデバラン]の使う空き教室であった。

 クリークがやばい。それだけ聞かされてここまで来たが、今までの経験上。どういうことかなんて手を取る様に分かってしまう。

 

 

桜木「溜まってるのか、フラストレーションが.........」

 

 

タマ「そや、お陰でウチを含めたチームメンバーが文字通り赤子扱いされる。けどおっちゃんなら話は別や」

 

 

 そう、俺なら話は別だ。スーパークリークに赤子扱いされれば最後。その聖母ぶりに中毒者が多発し、依存性にまで発展する。笑い話じゃない。実際、古賀トレーナーに勉強させてもらっていた時にその一部始終を見ていたのだ。

 それでも俺が平気な理由。それは俺の実際の母ちゃんがクリーク寄りではなく、どちらかと言えばタマモクロス寄りだった。それだけの話だ。

 

 

桜木「母ちゃん、行ってくるよ」

 

 

タマ「ああ!.........って誰が母ちゃんやねん!!」

 

 

 意を決してその扉を勢いよく開ける。部屋の中央には背を向けたまま静かに座っているスーパークリーク。教室の端々には餌食にならないように他のチームメンバーが震えながらうずくまっていた。

 

 

桜木「俺が来たからにはもう安心だ!!!!」

 

 

「やった!!!赤さんが来た!!!!!」

 

 

「これで勝つる!!!!!」

 

 

クリーク「桜木さん!」

 

 

 俺の声を聞き、振り返るスーパークリークを見て、俺は絶句した。

 普段は掛けない眼鏡姿に?違う。

 母性を遺憾無く発揮するエプロンに?違う。

 その溢れ出るバブみオーラに?違う。

 俺は.........俺は、その手に持っている物に絶句したのだ。

 

 

桜木(は、歯ブラシ.........だと.........!!!??)

 

 

タマ(な、なんや自分、歯ブラシが弱点やったんかい!!?)

 

 

桜木(ああ、つい先日な.........)

 

 

 まさかここに来て俺にとってタイムリーな歯ブラシで攻めてくるとは思わなかった。身体ガチガチに硬直してわなわなと震えていても、スーパークリークはジリジリとにじり寄ってくる。

 まるで、純粋ブウに殺されそうになるベジータみたいに.........

 

 

桜木(こ、殺される.........!!!)

 

 

クリーク「はーい♡いい子でちゅねー♡」

 

 

 そんな俺に構わず歯ブラシを口に突っ込んでくるクリーク。どうやらあちらもなりふり構ってられないらしい。

 わなわなと震える身体に喝を入れるように、右手の拳を思い切り握り、その手を開く。

 

 

桜木(思い出せ、修行の日々を.........!!!)

 

 

タマ(なんや知らんけど手伝ったる!!!)

 

 

 その手の平に対し、とてとてとやってくるタマモクロス。その両手でガシガシと空気を回していく。名付けて[螺旋丸作戦]だ。

 あの木の葉マークに意識を集中し、クリークの攻撃に耐える。原作でも.........あれ?手のひら出してる方ってなんかしてたっけ?

 

 

桜木(た、タマさん?)

 

 

タマ(うっさい!!今集中しとるんや!!!)

 

 

桜木()

 

 

 どうやらタマさんが集中してしまったらしい。ははは、南無三。

 死を覚悟していたその時、誰かがまたその扉を勢いよく開けた。誰だ?背中から多大な圧を感じ「トレーナーさん」.........

 

 

マック「覚悟はよろしいですか?」

 

 

桜木「やれェェェェ!!!!マックイィィィィィーンッッ!!!」

 

 

 差し出した左腕が犠牲になった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマ「おおきになメジロの嬢ちゃん。お陰でクリークも落ち着いたわ」

 

 

桜木「ああ、俺も意識を持ってかれなくて済んだよ」

 

 

 俺はちゃんと笑顔で居られているか?ちなみにマックイーンから出ている圧は先程のそれと何ら変わりない。

 

 

マック「トレーナーさんはどうしてあのような事をさせていたのですか?学園の生徒に」

 

 

タマ「ちゃうちゃう!!クリークが進んでするねん!!アイツ人を甘やかさないと死んでまう病やから!!」

 

 

 そう言うと、マックイーンの圧もだいぶ収まってきた。ありがとう母ちゃん。今度お土産に夕張メロン買ってくるよ。

 

 

タマ「だから誰が母ちゃんや」

 

 

マック「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「全くもう、トレーナーさんは説明が少ないですわ」

 

 

桜木「悪かったって.........お昼からずっと謝ってるしょや.........」

 

 

 方言混じりに謝る彼を見るに、どうやら結構真面目に謝っているようです。

 ですが、あの姿を見た時は流石に目を疑いました。あの丼スイーツを食べ、問題も時間を置くという解決法を提示され、気分が良くなっていた所に、彼の友達である黒津木先生が教えてくれたのです。

 実際、行ってみると、彼は固まりながら右手を横に差し出し、隣にいるタマモクロスさんに何かをさせており、スーパークリークさんには歯磨きをさせていました。

 あの状況で、平静を保てる方がおかしいのです。

 

 

桜木「と言うか、今日はいいのか?トレーニングは」

 

 

マック「ええ、トレーナーさんが変な事をしないよう、今日は見張る事にしましたので」

 

 

桜木「お、俺の信頼が無くなっちったお.........」

 

 

 とほほ、と言いながら、トレーナーさんは肩をがくりと落としました。

 実際、それからの授業は身が入りませんでした。彼がどんなウマ娘と、何をしているのか気が気で無くなり、集中出来なかったのです。ですので、今回くらいはトレーニングはお休みにして、トレーナーさんに着いていく方が良いと思いました。

 

 

桜木「.........お?あれは.........」

 

 

マック「またですの.........?」

 

 

 何かを見つけたように目をこらす彼の視線の先には、またしてもウマ娘の姿がありました。あれは確か.........

 

 

桜木「タキオンガンダムだ!!」

 

 

マック「アグネスタキオンさんですわ」

 

 

桜木「いだだだだ!!?容赦ないねー!?」

 

 

 当たり前です。人の名前を間違えて覚える程無礼な行為は存在しません。痛みを持って覚えてもらいます。

 彼の左手を掴み、捻りあげました。

 

 

タキオン「おや.........君は、あの時のモルモット君じゃないか」

 

 

マック「.........トレーナーさん?」

 

 

桜木「いや、比喩とか暗喩じゃないよ。本当にモルモットだったんだ」

 

 

 それはそれでいいのでしょうか.........?そう思っていると、彼女、アグネスタキオンさんの方からこちらへと近付いて来ました。

 

 

タキオン「実は、退学勧告を受けてしまってね」

 

 

二人「え!?」

 

 

 その言葉を聞いて、驚きました。アグネスタキオンの名を聞いて連想されるもの。それは極端に早いという事と、極端に走りたがらないという事でした。

 隣にいるトレーナーさんも同じ様に驚いています。

 

 

タキオン「まぁ、素質に胡座を掻いて自由にしていたら、このザマさ。いくらウマ娘の自主性を重んじる日本ウマ娘トレーニングセンター学園も、走らない私はどうやら目の上のたんこぶだったらしい。アッハッハッハ!」

 

 

 高らかに笑う彼女の姿は、少し寂しく感じてしまいました。確かに、噂というものは信ぴょう性が無いにしろ、火のないところに煙は立たないとも言います。

 走らない、という分かりやすい噂などと言うものは形を変えづらく、それ自体は事実なのでしょう。

 しかし、そんな私達の寂しい雰囲気を消す飛ばすような言葉が、アグネスタキオンさんの口から飛び出しました。

 

 

タキオン「私は僥倖だと思ったんだが、生徒会長に併走を頼まれてね.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「凄いですわ.........!超高速と言われる末脚を持つタキオンさんと、生徒会長の直接対決なんて.........!!そうそう見られるものではありませんわ!!!」

 

 

桜木「ああ.........」

 

 

 隣で興奮するマックイーンを後目の、レースの条件を確認する。芝2000m。バ場状態は非常に良好だ。勝負をするなら持ってこいだろう。

 

 

ルドルフ「やあ、講和会ぶりだな、桜木トレーナー」

 

 

桜木「ああ会長。その節はどうも」

 

 

ルドルフ「礼を言うのは私の方だ。あれから生徒から相談される回数が増えてね。以前の悩みだった私を取り巻く雰囲気が、君のおかげで長所になった。感謝するよ」

 

 

 俺は別に何もしていない。ただ似合いそうだなーと思っただけで、アドリブであの役をお願いしたのだ。例を言われる筋合いは無い。

 アグネスタキオンは既にコースの方へと入っていっている。念入りに芝の状態を確認している姿が見受けられた。

 

 

ルドルフ「.........」

 

 

桜木「何か気になる事でも?」

 

 

ルドルフ「ああ.........彼女がなぜ、研究を優先しながらも、それを許さないここに居続けたのだろうか」

 

 

ルドルフ「[邪魔者]である[担当トレーナー]からは決して逃れ得ぬ、このトレセン学園に」

 

 

 口元に手を当て、その答えを求めるようにそう呟くシンボリルドルフ。その姿は、生徒の模範でありながら、その生徒を導く若きリーダーの姿だった。

 

 

ルドルフ「君は、どう思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートインから程なくして、特徴的な扉が開く音が響き渡る。観客席には二人だけ、走るウマ娘も二人だけ。とても静かで、胸に火を滾らせるレースの幕が開いた。

 

 

桜木(流石にシンボリルドルフが頭を行くが.........どうする?タキオン。どこで仕掛けるんだ.........?)

 

 

 どちらに才が多くあるかは把握が出来ない。と言えど、簡単に勝敗を予想するなら、このレースを見る誰もがシンボリルドルフと名をあげるだろう。俺も、その一人だ。

 レースの結果だけを見るならば、日々を走り抜けるシンボリルドルフが有利だろう。単純に、経験値の差がある。データと経験では、脳の演算処理部分までの直接的な距離が遠いからだ。

 それでも、レースの結果だけを見るならばの話だ。

 

 

桜木("タキオン"。確定付けされていない光速で飛び回る仮想粒子。あるものと位置づけられながらも、その存在をきっと誰もが諦めている)

 

 

 その名を冠する少女の可能性を、俺は未だに、諦めてはいない。

 最終コーナーを超え、そのまま直線へと差し掛かる。この時点であのシンボリルドルフへ着いて行ける彼女は素晴らしい。だが、変化は確かに起こった。

 

 

桜木(ッッッ............!!!!!)

 

 

 風が吹いた。熱い風。何よりも、人を立ち止まらせ、胸を打つような衝撃を浴びせてくる風だ。薬品のように刺激的で、一度味わえば忘れられる事の出来ない風の味。

 やはり、その風は次元を跨いで、もう一度俺の側で吹き荒んだ。まるでその存在を誇示するように。

 思わず席から立ち上がり、前へと足を運んでしまう。

 

 

マック「トレーナーさん?」

 

 

桜木「見つけたぜ.........三女神さんよ」

 

 

 俺は今、きっと嬉しそうな顔をしているだろう。目の前のシンボリルドルフを抜き去り、それすら構うことなく、ゴールに向かうでもなく、ただひたすらに早くあろうとする彼女を見て、笑っているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝負の行く末は、シンボリルドルフ生徒会長のハナ差での勝利だった。生徒会長はその脚で勝ちながらも、私に対して全力を尽くしたと言ってのけた。

 

 

ルドルフ「.........しかし君を手放すのは、損失が過ぎるな。心変わりの兆しは?全く無いのか?」

 

 

タキオン「残念だけど、私の心は変わらないよ。生憎、私はこの研究を阻害されてまでここに居続ける気は無いよ」

 

 

 そう言うと、ルドルフ会長はその目を伏せた。

 

 

ルドルフ「そうか.........それは、彼の話を聞いてもなお、か?」

 

 

タキオン「ん?彼.........?」

 

 

 会長はそれだけ言うと、もう心配事は無いと言ったように私の前から離れて行った。一体何の話だろうか。そう思っていると、相手をするのも面倒臭い新人トレーナー君が姿を現した。

 

 

桜木「よっ」

 

 

 立ち振る舞いは以前の通り。何ら変わりはしない。側に居るメジロ家のお嬢様も、変わりは無い。ただ一つ.........おかしな点があるとすれば.........

 

 

タキオン「.........ふぅン?君、どうしたのかなその目は」

 

 

桜木「目?」

 

 

タキオン「随分と.........狂った色をしているが?」

 

 

 そうして指摘してあげると、彼はまず、隣にいるマックイーン君を見つめ始めた。躊躇の無い左腕の関節攻めが始まるが、彼はそれでも気になる様で、彼女に手鏡を要求し始めた。

 

 

桜木「あー.........目の色って言うより、深さかな」

 

 

 隣に居るマックイーン君がきょとんとした表情で彼を見る。だが、その表現である程度は分かってしまう。どうやら彼も、私と同じく速度の果てに魅入られてしまったようだ。

 

 

タキオン「まさか、[スカウトしたい]とでも言うつもりか?」

 

 

桜木「ああ」

 

 

タキオン「おいおいよしてくれ。これ以上研究を遅延させるつもりは無いんだ」

 

 

 鬱陶しいったらありゃしない。こうして走って見せれば直ぐにこういう輩に目をつけられる。私は別に、レースを走りたい訳でも、数いるウマ娘の頂点に立ちたい訳でもないのに、それを強要される。トレーナーと言うのはそういう物だと認識している。今後、改まることは無いだろう。

 そう思っていると、彼はまた、特に考える素振りを見せずに発言した。

 

 

桜木「この間の薬って持ってる?」

 

 

タキオン「ん?あるにはあるが、どうするんだ?」

 

 

 まとめられた荷物を漁り、蓋を付けられた三本の試験管を外の空気に晒す。自分で見てもこれを実験以外で飲みたいとは思えない。

 しかし、それを特に気にした様子もなく、自然な手付きで私の手からそれを奪って行った。おいおい、マックイーン君が困ってるじゃないか

 

 

タキオン「それをどうするんだい?」

 

 

桜木「飲む」

 

 

タキオン「?????」

 

 

 隣に居る彼女は頭に手を当て、大きくため息を吐いた。今彼はなんと言った?飲む?これを?私ですら戸惑う配色をしているこれを?

 なにかの聞き間違いだと思った。そうだと思っていたのに、なんと彼はそう発言してから三秒もせずに器用に三本一気に飲み干したのだ!!

 

 

タキオン「クッ、クク.........アッハッハッハッハッハッハッハ!」

 

 

 思わず笑い声を上げてしまう。類は友を呼ぶと言うように、私の今まで知り合ってきた中には、俗に言う頭のおかしい連中も居た。けれどそれは自分に安全が最低限保証され、そして他人と違う事を生きがいにしかけている奴らだ。

 それが、目の前の男はどうだ?堂々と普通ですと言ったような顔で、得体の知れない私の薬品を一秒も掛からずに飲み干したんだ!!そんなの.........

 

 

タキオン「まるでモルモットじゃないか!君は!!」

 

 

桜木「俺は最高のモルモットなのかもしれない」

 

 

マック「もう着いていけませんわ.........」

 

 

 目の前の二人はコントを繰り広げている様に軽快な会話をしている。呆れながらも、彼女は彼の事を全面的に信頼しているらしく、その言葉に失望は無い。

 

 

桜木「まぁ、それでもいいのかもな」

 

 

タキオン「ふぅン?それは君の人権が、今後一切、私の前では消え去る事を意味しているが、本当にいいのかい?」

 

 

桜木「ええよ」

 

 

タキオン「だからなんで君はそんなに軽いんだ.........」

 

 

マック「こういう人ですわ。諦めて下さいまし」

 

 

 諦めのポーズで彼の隣に立つマックイーン君。どうやら彼は決めた事に従わないと生きていけないのかもしれないね。

 

 

桜木「とにかく!!俺はお前のその速度に対する探究心が気に入った!!」

 

 

桜木「ぜひ担当させてくれ!!」

 

 

タキオン「断る!!」

 

 

桜木「うるせぇ!!行こうッッ!!!」ドン!

 

 

 なるほど、断るとこういう反応をするのか。いやはや、こういう人間は選択肢を考えさせる前にまず、方向性を決めてから詰ませる方が扱いやすいのかもねぇ.........

 

 

タキオン「冗談だよ。じゃあ早速行こうか」

 

 

マック「ええ!トレーニングですわね!」

 

 

タキオン「何を言ってるんだい?退学勧告を受けたウマ娘が最初にやることはまず、職員室に行くことだろう?」

 

 

マック「そ、そんなの知りませんわ!!」

 

 

 確かに真面目に授業を受けているであろう、メジロ家のお嬢様には分からないかもしれないな。存外、彼女はからかいやすいのかもしれない。彼も隣で頷いている。君と意見が合うのは少々癪だがね。

 

 

タキオン「クク、君の扱いはモルモット。あるいはそれ以下だが、それでも良ければ来るといい」

 

 

マック「ではマウスと同等ということでしょうか?」

 

 

桜木「いや、案外教室で飼ってるメダカ並みの扱いはしてくれるかもしれない。確かあれ実験動物扱いだし」

 

 

マック「そうなのですか?」

 

 

桜木「あいや、鮭だったかな?でも鮭だと放流されちゃうんだよな」

 

 

マック「では一年経って帰って来たらよろしいと思いますわ! 」

 

 

桜木「死ぬやんけぇ!」

 

 

タキオン「仲良く漫才しないでくれたまえよ」

 

 

 本当に仲がいいな、この二人は。目の前で一体何回漫才を見せられてるんだ私は、そう思っていると、マックイーン君が露骨に怯え始めた。

 

 

桜木「え?どうしたんだマックイーン?」

 

 

マック「と、トレーナーさんが.........」

 

 

タキオン「ああ、君、発光しているぞ。緑黄色に。最初に言っただろう?」

 

 

 そう言うと、彼はああと言い、片手の平にぽんと拳を置いた。本当に、面白い人間だよ。君は

 

 

タキオン「改めてよろしく頼むよ、トレーナー兼モルモット君」

 

 

桜木「こちらこそよろしく!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオンドラゴン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言った彼の腕を、隣に居るマックイーン君が思い切り捻りあげた。夕陽が沈む学園の芝2000mは、彼の大絶叫が響き渡ったとさ

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued

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